大食いドクターのカバンの中身(10)…スリー・イン・ワン温度計inシドニー
先週まで2週にわたり取り上げてきたサニタス社製のスリー・イン・ワン温度計「SFT41 Fieberthermometer (3 in 1)」は、「1. 体温」「2. (液体などの)表面温」「3. 気温」という、3種類の温度を測定できるとされるドイツ製の多機能温度計です。
春の爆食女王戦こと『元祖!大食い王決定戦inシドニー』(2009年3月29日オンエア、TV東京)のロケで私は、選手の健康管理と試合内容の把握のため、この温度計の2番目と3番目の測定機能をフルに活用し、本大会ロケにおける食材の温度及び競技会場の気温を測定していました。まずは、手元にある具体的なデータを以下に列記したいと思います。
<日本国内ロケーション:2009年2月26日~27日>
一回戦(会場:大山阿夫利神社、食材:湯豆腐)…外気温 5.0℃、食材温 35.9℃
二回戦(万国橋駐車場、鉄板餃子)…外気温 2.4℃、食材温 65.2℃
三回戦(玉姫稲荷神社、天ぷら茶漬け)…データ無し(大雨のため会場が室内へ変更となった他、諸般の事情で測定できず。ただし、食材は比較的ぬるめであった)
<シドニー移動後ロケーション:2009年3月1日~2日>
準々決勝(世界遺産ブルーマウンテン、オージービーフBBQ)…気温 26.1℃、食材温 36.6℃
準決勝(ダーリングハーバー、フィッシュフライ)…気温 21.46℃、食材温 34.1℃
決勝(ボンダイジャンクション商店街、豚骨ラーメン)…気温 28.5℃、食材温 62.9℃
こうしてデータを並べてみると、いかに日本での最初の2試合(屋外ロケ)が過酷な寒さの中で行われたか、そして、シドニーのロケがいかに温暖な気候下で進んだかが、明瞭に数字に表れています。
例えば、アツアツの鉄板に乗って運ばれてきた60℃を超える「鉄板餃子」も、夜の19:30という開始時刻ゆえの気温の低さのため、あっという間に冷めたであろうことを、この数字からイメージすることができます。なお、シドニーでの食材も、実はアツアツではありませんでした。準決勝に使用したフィッシュフライは、作りたてものものは53.7℃でしたが、実際の競技中に提供されたものの温度は、31.7~34.1℃の間に収まっていました。今大会のシドニーロケではスタッフが熱中症対策のために氷や濡れタオルを準備していたものの、決勝を迎えるまであまり出番が無かったことも、これらのデータから合理的に説明できます。
なお、今回のシドニーでの大会と他のバリやタイの大会との最大の相違点として、シドニー独特の気候面を指摘したいと思います。この時期のシドニーは晩夏~初秋にあたり、湿度はかなりあるのですが、気温の割には風がかなり冷たかったのです。そして、これはシドニーに行ってから気づいたことなのですが、前述のスリー・イン・ワン温度計は、放置すればその場の気温を表示しますが、「表面温」の測定モード下でプローブをその風に向けながらボタンを押すと、風の温度を測ることができるようです。(固体・液体のみならず、気体の温度を測ることもできるということ?!)
例を挙げましょう。準々決勝の会場である世界遺産ブルーマウンテン・キングステーブルランドは、下の写真でも分かるとおり、都会の喧騒から遠く離れたところにある岩盤状の高台です。ここでの準々決勝の試合開始時刻は14:45と比較的遅く、この時点での気温は26.1℃でした。しかし、足元の岩盤は直射日光をたっぷり受け、まるで石焼ビビンバの容器のように熱を蓄えており、岩盤そのものの温度を測ると38.4℃ありました。そして、その上空を舞う涼しい風にプローブを向けて測ると、12.4℃と出ました。つまり、26℃という気温は、12℃の冷たい空気が38℃の岩盤からの輻射熱で温められた合わせ技だったのです。ここでの26℃という気温は、日本やタイやバリの26℃とはおそらく内容が異なるものだったでしょう。また、この会場では食材にも常に12℃の強い冷風が吹きつけられており、食材も急激な冷め方をしていったであろうことが、この温度計のおかげで分かるのです。

ちなみに、決勝の会場・ボンダイジャンクション商店街においても、ブルーマウンテンほどの寒さは無かったものの、同様の傾向がみられました。決勝戦開始時の気温は28.5℃でしたが(陽がかげると23.5℃まで低下)、陽射しが降り注いでいる間の道路面の温度は42.3℃、風の温度は20.5℃と、ここでも「涼風と輻射熱の合わせ技」という要素がうかがえます。
さて、大食いロケ全体を通して活躍してきたこのスリー・イン・ワン温度計ですが、その真骨頂が発揮されたのは、やはり「あの食材」に対してでした。その真骨頂とは何か・・・それについては、来週に稿をあらためます。





