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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2009/05/01

大食いドクターのカバンの中身(9)・・・スリー・イン・ワン温度計の実力

前回紹介したドイツ・サニタス社の「SFT41 Fieberthermometer (3 in 1)」なる温度計は、「体温」「(物体・液体などの) 表面温」「気温」の三通りの温度を測定できると謳われている商品です。サニタス社はドイツではとても有名な家庭用医療機器メーカーで、日本で言う「オムロン」や「テルモ」のような存在です。同社の売れ筋商品としては、家庭用血圧計、体脂肪計、ジョギング用脈拍計などがあり、薬局や大手スーパーの健康器具コーナーなどでよく見かけます。

この温度計は、そのサニタス社の商品としては、いささかマイナーな存在です。そもそも、3種類の温度を測る機能は、何のために必要なのでしょうか。説明書を読むと、どうやらこれは赤ちゃんを育てる母親を想定した商品のようです。泣き喚く乳児やワンパク盛りの幼・小児は、体温測定のために温度計をわきの下に挟んでじっとしていられないことも多々あります。この温度計は、前額にプローブを当ててボタンを押すと5秒程度で測定結果が出ます。

もっとも、いまどきの小児用体温計はすっかりハイテク化が進んでいます。日本ではテルモなどが発売している「耳式体温計」が有名で、ドイツにも普及しています。耳式体温計は、測定結果が1~2秒で出るという速効性が強みです。ただ、耳にプローブを入れられるのを嫌がる子供が結構いるようで、それに対して「前額式」は子供にあまり嫌がられないという利点があるそうです。

また、「スリー・イン・ワン」の2番目である「表面温」の測定機能は、ズバリ、赤ちゃん用のミルクや離乳食の準備を想定したものだそうです。液体の温度を測る場合、通常は温度計を液体内に突っ込まないといけない上に、結果が出るまで結構時間がかかります。この温度計なら、液体内にプローブを入れなくても、液面にかざすだけで温度を即時に測れるため、衛生的観点からもメリットがあります。「赤ちゃんの体温を測るのもいいですが、適正温度のミルクを作るためにも、本商品を用いましょう!その上、ついでに外気温や室温も測れたら、一石三鳥ですね!」ということでしょうか。

もっとも、この「スリー・イン・ワン温度計」にも欠点はあります。1つは、1~2秒で結果の出る耳式に比べたら、測定時間が長く感じることです。といっても、5秒で結果が出るのですから、昔の体温計に比べたら十分速いほうだと思うのですが、何せこの分野の技術革新が凄すぎて、ついゼイタクを言ってしまいます。もう1つの欠点は、特定の条件下で、体温測定の精度が落ちることです。例えば、室温が低い場合や、額にたくさん汗をかいている場合、前額の温度と体温に大きな差が生じてしまうため、測定がうまくいきません。ただし、そんなケースであっても、この温度計をわきの下にあてて測定すると、通常タイプの体温計での測定結果ときわめてよく一致します。ということは、先ほど述べた精度の低下は「前額」という測定部位ゆえの宿命であり、この温度計の性能自体の問題ではないこともわかります。しかも、他の2種類の温度も測れるという付加価値で勝負するのが本商品であり、サニタス社の創意と熱意が一杯詰まった、とても欲張りな一品であることは間違いありません。

さて、2008年秋以降の「元祖!大食い王決定戦」に私がこの「スリー・イン・ワン体温計」を持参した目的は何でしょうか。選手の健康管理の一環として、ロケの合間に手軽に短時間で選手の体温を測れれば・・・というのが、当初の第1の目的でした。しかし、ロケが進むにつれて、このサニタス社の叡智と努力の結晶が真に活躍したのは、実は第2や第3の目的のほうでした。来週は、3月29日にオンエアされた春の爆食女王戦こと「元祖!大食い王決定戦inシドニー」を例に挙げつつ、具体的なデータも示しながら、この温度計の活躍ぶりを振り返ってみたいと思います。