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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2009/03/06

大食いドクターのカバンの中身(1)・・・イントロ

「元祖!大食い王決定戦」(TV東京)は今年も健在です。
このコラムが掲載される予定の3月6日は、ちょうど私たちが本選のロケから帰国したばかりの頃となります。思えば、3年間にわたる大食い番組自体の放送自粛を乗り越え、2005年春に当番組が放送開始となってから、私が続けてきたこの「大食い競技の健康管理」なる仕事も、ついに5年目に突入しました。それまで大食い番組なるものを全く見たことが無かった私にとって、番組初参加の頃は色々とわからないことも多く、まさに暗中模索の出たとこ勝負の日々だったことを、今となっては懐かしく思い出します。

初めて大食いロケの健康管理医師の仕事を依頼されたとき、私が1番困ったのは、「持ち物」でした。

大会前に選手に配布される資料には、一応「持ち物リスト」があります。この「持ち物リスト」の中に初めて「パスポート」という文字が書かれるようになったのは、2007年の春のことでした。

「パスポートってことは、今回のロケって、海外ってことですよね~?キャ~嬉しい~(←目がハート状態)」
と嬉しそうにはしゃぐ選手に、
「いやいや、パスポートだけ作らせといて、実は(ロケ先は)淡路島だったりして!」
などとからかったりしたのも、楽しい思い出です。

このように、選手には用意される物品リストですが、医師にはそのようなものは用意されたことは1度もありません。医療職でないスタッフにとって、必要な医薬品や医療機器など、なかなか想像しにくいでしょうから、当然のことではあります。従って、初参加となった2005年以降、私は全くの自己判断で物品を選定しなくてはなりませんでした。しかし、それまで大食いというものをまるで見たことがなかった私には、一体どのような疾患や事故が想定されるのか、さっぱり見当がつきませんでした。

知人の医師に相談しても、「やっぱ、胃腸薬とかじゃん?」「ウーン、風邪薬とか一般的な救急セットに入っているものだけでいいんじゃないの?」といった曖昧な返答ばかりでした。

しかし、年2回の当番組参加をこなしつづけてきたことにより、私のドクターバックの中身はどんどん強化されていきました。「今回のロケでは、何が必要だったか、そして何が必要なかったのか」ということを、毎回のロケ終了後に考察・反省して記録し続けてきた結果、回を追うごとに読み違いや物品不足が減ってきたのは、学習の効果と言えましょうか。

ただ、私も随分と経験を積んだと言えば聞こえは良いですが、そもそも医師のキャリアの中で「大食いロケ帯同」のような経験をする者は、日本に限らず世界中のどこにも、そうはいないと思いますし、この経験をすることが果たして通常の医師業に役立つものなのかもまた、何とも言えません。

今年初となる春の女王戦である『元祖!大食い王決定戦』は、3月29日のオンエアが予定されています。はなはだ個人的な話になりますが、実はこの大会は私にとって画期的なロケになりました。というのは、過去のどの大会と比較しても、今回の大会は、私が用意した物品が最も過不足なく使われた大会だったのです。事前のトラブルを予想して物品を揃えようと思ったら、当然、事前のトラブルを正確に予想できる必要があります。5年間のノウハウを蓄積し、苦労も色々とありましたが、これらがここにきてようやく報われたのだ・・・と、ロケから帰国した直後の私は、空港で万感の念と達成感を強く味わっておりました。

ということで、来週からは、私のドクター用バッグの中身について取り上げたいと思います。一医師の思考過程と試行錯誤の顛末をお知りいただくことで、大食い番組をより楽しく、より深く理解していただけるのであれば、これほど幸いなことはありません。