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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2009/02/27

「人はなぜ大食いするのか?」(8)・・・環境大国ドイツ・リサイクル編

先週のコラムでは、ドイツの家庭ごみが大まかに3つに分別されることを述べました。その3つは、その専用容器の色の違いから、「黄」(プラスチック容器類)「茶」(生物由来のゴミ・・・ビオミュルBiomüll)、「黒」(その他のゴミ)に分類されます。今回は、この「茶色」の容器で出す『ビオミュルBiomüll』(Bioabfallともいう)がテーマです。

『ビオミュルBiomüll』は、「家庭および事業所から発生する全ての動物由来ないし植物由来の有機物ゴミで、微生物・虫・酵素で分解可能なもの」と定義されます。その代表例は、日本における「生ゴミ」に相当すると考えられる食べ残し(Essensreste)、そして庭仕事で出る草・葉(Rasenschnitt)で、これらをまとめて茶色の容器に入れて出すことになっています。

ドイツで収集される『Biomüll』は年間1300万トンで、ゴミ全体の30-40%を占めています。これらは各地方自治体の再処理場で処理され、約400万トンのバイオ肥料に化けるそうです。もっとも、これとは別に、自宅に生ゴミ処理機を設置して堆肥を作って自宅の庭に使用しているケースも、庭付き一戸建て住居に住む人の多いドイツでは多くみられます。また、先週述べたように『Biomüll』を分別せず全て燃えるゴミと一緒に収集する自治体も存在します。その結果、「その他のゴミRestmüll」の中に占めるバイオ由来のゴミの量は48%で、昔と比べて全く減っておらず、『Biomüll』がこの十数年で10倍以上に増えたのとは対照的であるとされています。

しかし、私の周りのドイツ人と話をする度に思うのですが、彼らは環境大国ドイツの国民である割には、ゴミの分別や収集などについて、あまり関心が高いとは言えません。街でのゴミを見ても、分別方法が守られていないケースが目につきます。Wikipediaによると、ドイツの『Biomüll』への有害物質混入率は時に4%を越えるそうで、その原因は乾電池の混入などの分別不良によるものだそうです。「Biomüll」の信頼性を脅かす主要因は、「国民のモラル不足」ということになりましょうか。

それでいて、居酒屋などで料理が食べきれないとき、彼らの口から時々、伝家の宝刀が出ます。

「これはビオミュルになってリサイクルされるんだから、い・い・の!」

ここで思い出したのが、武田邦彦さんのベストセラー『環境問題はなぜウソがまかり通るのか2』の中に出てきた以下のような一節です。

「リサイクルにはもう一つ特徴がある。それは、『リサイクルされるという免罪符のもとに、大量生産、大量消費が心おきなくできる』ということだ」(同著・213ページ)

武田氏はこの本において、ペットボトルのリサイクルを例に挙げています。日本でペットボトルのリサイクルが始まった当初、その生産量は年間15万トンだったのが、その後の十年で50万トンに増えたそうです。その背景には、「リサイクルされるからいいや」という発想があるのではないか・・・武田氏はそう考えているようです。

ドイツのレストランでも、「ビオミュル集めてんだから、食べ残してもいいや」という理屈が見え隠れしている
・・・というのは、やや考えすぎかもしれません。ただ、武田氏の言うところの「リサイクルは大量消費を促進し、売り上げを増やしたいと考えている人たちには最適の社会システム」(同著・215ページ)という論理は、ドイツにおける「食べ物を捨てることへの罪悪感」の低さの一因を『ビオミュル』と結びつける論理でもあるように、日本人である私には思えてしまうのです。

人間が食べ物を多めに用意してしまうのが、「目が胃よりも大きいから」であることは、以前のコラムで説明しました(→人はなぜ大食いするのか(5)
・・・ドイツことわざ編)。そうして宿命的に余ってしまう食べ物を、「食べ残し」を戒めることによって、無理にでも胃に詰め込もうとする風潮が日本にあるとすれば、国民は大食いになるのが日本における「国策」に見えなくもありません。

他方で、ドイツに限らず、ヨーロッパでは最近、「食べすぎるな!→食えなきゃ残せ!→肥満だけにはなるな!」という声の方が圧倒的に強く、いわば国策になっています。ドイツ人が「食べ残し」を「ゴミ」とカウントせず、「廃棄食材のリサイクル」という制度にゆだねている(つもりになっている)ことによって、個人の健康のために心おきなく食事制限に励むことができる・・・ビオミュルにはそんな効果もあるのかもしれません。少し突飛な想像ではありますが、特にヨーロッパとの比較において、『大食い』とは日本的価値観の上に積み上げられた文化であることを、日々実感しております。


参考資料
Wikipedia-Biomüll
Wikipedia-Biotonne
武田邦彦著「環境問題はなぜウソがまかり通るのか2」(洋泉社)

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