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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2008/11/14

大食い生体実験系?(5)~驚異の梨パワー・後編~

下剤にはさまざまな種類のものがあり、教科書によって微妙に表現が違いますが、大きく分けると以下のように3つのカテゴリーがあります。


1. 刺激性下剤(腸の動きを活発化させて排便を促す)
病院で下剤を下さいと言った場合に通常出てくるのが、このタイプです。中でも、大腸(蠕動)を刺激する作用のものが一般的で、その代表格はセンナ・センノシド(アローゼン・プルゼニド等)です。センナ茶もドラッグストアでよく売られています。ダイオウ・アロエ・カスカラなどの生薬もこのカテゴリーに入ります。他にはピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)やビサコジル(コーラック・テレミンソフト)などが有名です。


2. 機械的下剤(便のカサを増すことで排便促す)
いずれも、大腸の内容物の体積を増すことで腸を刺激する薬であり、上記1.のように腸そのものを直接刺激しようとする薬ではありません。便の体積を増す方法には微妙な違いがあり、さらに以下のように分類できます。

a) 膨張性下剤・・・水を含んで膨張させる(≒フヤけさせる)効果:メチルセルロース、ポリカルボフィル、カルメロース、寒天、ふすまなど。いかにもフヤけて膨張しそうなものばかりですね。アメリカではシリウム(おおばこ)の製剤も人気があります。今も昔も、このカテゴリーの物質を主成分とするダイエット薬品の広告を良く見かけます。ここに挙げたものは、水を吸った紙おむつの繊維のように、その体積が何十倍にも急膨張することもあります。もし腸の壁に炎症やポリープなどがある場合、この薬物の服用により腸閉塞を起こす危険性もあり、十分な注意が必要です。

b). 湿潤性下剤
・・・界面活性作用により、便が水をはじかず、水びたしになりやすくする効果:強力バルコゾル(略して強バル)は、このタイプの薬剤と大腸刺激剤の合剤で、検査や手術の前処置として使用されることが多いお薬でもあります。

c). 浸透圧性下剤
・・・腸から吸収されない塩類(塩類下剤)や、同じく腸から吸収されない糖類(糖類下剤)をふんだんに腸内に送りこみ、腸の中を高浸透圧にすることで、腸管内の水を維持するのみでなく、腸管の外側の水を腸管内に移動させて便を柔らかくする効果:塩類下剤の代表格は酸化マグネシウム(なぜか、略すと「カマ」と呼ばれる)。糖類下剤の代表格はラクツロースとソルビトール。


3.自律神経作用性治療薬
・・・弛緩性、痙縮性、その他の消化管運動調整薬(ここでは説明を割愛します)


さて、梨の成分を見ると、可食部100g中に食物繊維0.9g、ソルビトール0.8g、カリウム140mg、マグネシウム5mgとあります。膨張性下剤としての食物繊維、糖類下剤としてのソルビトール、塩類下剤としてのマグネシウム
・・・見るからに便通を促進しそうな成分ばかりです。この中でも、他のフルーツで起きなかった「集団緩下現象」の原因となりそうな成分は、やはりソルビトールではないかと思います。

糖類下剤は、効き始めも速効性なら効果が切れるのも早いという、いわゆる切れ味のシャープさが最大の特徴です。その切れ味の鋭さゆえに敬遠されたのか、日本ではソルビトールもラクツロースも一般の便秘薬としての処方は出来ません(ただしラクツロースは小児便秘には適応あり)。ソルビトールに関しては、バリウム検査後の便秘防止処置としての処方が出来ることになっています。

「元祖!大食い王決定戦」(TV東京)の選手たちは、一回戦の「梨45分勝負」で最低でも23個の梨(1個200g)をたいらげています。これは、ソルビトール量に換算すると実に36.8gに及びます。1位通過のドクター西川廣幸さんに至っては、実に48gのソルビトールを摂取したことになります。厚生労働省の資料によると、ソルビトールの最大無作用量は12g/日(体重52.6kgの場合)(当番組使用の梨なら7.5個分に相当)とのことで、選手たちは全員がこの3倍以上の「ソルビトール」を食べ続けたことになります。これなら、集団でトイレに駆け込む姿も、合理的に説明がつくというものです。
結局、「お腹こわさないかなぁ」と不安そうな声を漏らした選手の方が正しかったということです。きっと、何か経験があったのでしょう。私たちは、彼らの身に降りかかったこの現実を教訓としつつ、梨は1日に7個以内(?!)に抑えることを心がけることにしましょう。


参考資料
メルクマニュアル家庭版 便秘129章
今日の治療薬 2008年度版
果物ナビ(果物情報サイト)果物図鑑「なし 梨」他
食品添加物に関するホームページ(厚生労働省)「その他食品監視に係る関連情報」
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