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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2008/10/03

徹底検証?! 大食いの資質(2)・・・胃ヂカラ・体格編(座高)

9月28日放映の「元祖!大食い王決定戦」(テレビ東京)は、大食いドクター西川廣幸(元・大食い医大生:射天矢侑大)の優勝にて大変盛り上がりました。長いブランクのあった彼が、猛特訓の末に、決勝戦でラーメン33杯という偉業を成し遂げ、ロケ現場はまさに、イエス・キリストも真っ青の大復活を目の当たりにした興奮に包まれました。テレビをご覧になった皆様の中にも、「あれだけのラーメンが一体どこに消えたのやら」と不思議に思われた方も多かったことでしょう。

食べ物が収まる先が「胃」であることは疑う余地がありません。そういう意味では、『大食いの資質』を規定する最も重要な要素は、何だかんだ言ってもやはり「胃ヂカラ」だと考えるのが自然でしょう。ということで、当番組のロケから浮かび上がる『大食いの資質』について考察する今回の連載は、今週からその最重要項目である第1項:「胃ヂカラ」について、徹底検証をスタートします。

a.)体格の大きさ (参考:→アーチストのはらわた・・・泉拓人(2))

胃は腹腔内にあるので、腹腔の容積が大きければ大きいほど、大きく膨らむことができます。腹腔が大きいためには胴体が大きい必要があり、ひいては体格が大きい人ほど有利となります。ジャイアント白田(196cm102kg)さんがこの代表格でありますが、今大会優勝のドクター西川氏(177cm63kg)もまた体格がガッチリしています。女性陣を見ると、この傾向はさらに明らかです。昨年までは三宅智子さん(152cm)や嘉数千恵さん(155cm)というように身長160cm未満の選手が本選に駒を進めることが珍しくなかった本大会ですが、ギャル曽根さん(162cm)や正司優子さん(166cm)の台頭とシンクロするように、女性選手の大型化が進んできている印象があります。それも、本年に入ってからが顕著で、春の女王戦の本選出場者の8人中7人が身長160cmを越えました。ちなみに、9月28日に放送されたばかりの大会においても、女性大食い界のエース・菅原初代さん(168cm)を筆頭に、梅村鈴さん(168cm)や宮西亜紗美さん(166cm)が並ぶと、比較的小柄な男性の多い制作スタッフとのコントラストは独特で、つくづく日本女性の力強さを印象づけられたものです。

といっても、腹腔とはそもそも、上が横隔膜まで、下が骨盤までです。あくまでも胴体の中にとどまり、決して太ももや二の腕まで胃が伸びていったりはしません。それでは、その胴体を規定する要素とは何でしょうか?

ここで思い出していただきたいのが、数学で習った「円柱の体積の出し方」です。高さをh、半径rとする円柱の体積Vを求める公式は、

V=πr2h

でしたね(π:円周率)。これを大食い界にあてはめるなら、hは座高、2rが肩幅ということになろうかと思います。

このh(座高)については、菅原初代さんが以前、次のような発言をしていました。

 「あたしより座高の低い人には絶対負けない!」

これを聞いた私は、「さすがは菅原初代、数学にも強いのか」と、思わず唸(うな)ったものです。

当番組の試合は、一列に並んで座って行われます。全員が着席して、緊張の面持ちで撮影開始を待つ間、独特の静寂がロケ現場に広がりわたります。その際、彼女はぐるりと周囲を見渡して、座高をチェックするのです。初対面の選手やノーデータの伏兵を分析する場合、こういうことも相手の力量を見定める判断材料の1つとなります。

その話を聞いて、私は妙に納得したのでした。白人や黒人に比べて胴長短足が多いとされる日本人ですが、これは実は大食いに有利な資質である可能性があります。私の住むドイツでも、周囲の人たちはみんな確かに上背が高く、男性で2m級、女性で180cm越えはザラです。これが、いざ会議室で机を囲んで座った瞬間、「アレレレ?」とこちらが椅子からズリ落ちそうになるほどに、彼らの座高の低さは衝撃的なのです。そんな彼らと並んで座ったら、我らが菅原初代さんはきっと、「クックックックッ、これなら勝てるわ・・・」と魔女の笑みを浮かべることでしょう。

来週は、胴体の容積を考える際の指標その2・・・肩幅について考えます。