2008/09/12
大食い甲子園(5)・・・野球界にみるメタボの構造
これまでのコラムでは、監督・部長などの高校野球指導者の内臓肥満(いわゆるポッコリお腹)ひいてはメタボリック症候群、さらにその前段階としての硬式野球部員の引退に伴う肥満を取り上げてきました。
競技を引退するということは、それまでの人並み外れていた運動量がガタ落ちしてしまうことを意味します。少しずつ運動量を減らしていければ理想的ですが、多くは突然パッタリと運動を止めて、あとは週一回の草野球のみ…というほどの急激な変化が体を襲います。ここで、同じく人並み外れていた食事量を一気に人並みレベルに下げることができない場合、余ったカロリーの分だけ確実に脂肪は体に溜まっていくのです。
一般に男性は、女性に比べて内臓付近に脂肪がつきやすいとされています(特に中年以降)。以上を考えあわせれば、「元・高校球児はポッコリお腹のメタボ体型に移行しやすい」という仮説も、立証可能なのではないかと思えてきます。
ここで考えないといけないのが、上にいけばいくほど狭き門になるといわれる、野球界の構造です。文部科学省の平成20年度データによると、全国の高等学校の男子在学者数は170万3930人です。このうち、甲子園を目指している高校生の硬式野球部員数(いわゆる高校球児)は、2008年5月末時点で16万9298人(加盟校数4163)と、何と11年連続で増加中です。参考までに他のスポーツにおける高校生男子部員数を大まかに挙げると、比較的人数の多い順にサッカー14万3千人、バスケットボール9万人、テニス6万9千人、陸上5万5千人、バレーボール4万3千人といったところですが、これらの比較的人数の多い部の部員数はいずれも減少傾向にあり、この少子化の折、野球以外の競技から高校野球へと確実に人材が流れていることを示しています。
ちなみに、福原愛さんの卓球は5万人、あの北島康介さんの金メダルで話題の競泳は1万7千人で、これらの部員数は若干増加傾向にあります。いずれにしても、全男子高校生の約1割が硬式野球部に流れているという現実は、その良し悪しは別にして、この国の過熱した高校野球人気をよく反映しています。そして、その中から幸運にも甲子園の土を踏むことができるのは49校882名(今年のような10年毎の記念大会の場合は55校990名)で、全加盟部員の約0.5%程度という狭き門なのです。(ここまでの数字は3学年の合計であることに御注意下さい)
しかし、彼らが高校を卒業した途端、この野球人口の受け皿は激減します。大学での硬式野球人口が約2万人(4学年を含む数字)、社会人野球人口が約1万人弱(複数学年に渡る数字)、現役プロ野球選手が約840人(これも複数学年に渡る)となります。もっとも、これは単純な登り階段の構造にはなっていません。高校野球から直接プロ野球入りする人もいれば、社会人・大学野球経由でプロ入りする人、時にはプロ野球を退団して社会人野球に移る人もいます。それでも、野球選手として生計を立てる選手となると、プロ野球選手ないし会社組織所属の社会人選手など、ほんのひと握りに過ぎません。
もし現代の高校野球が、他の部活動に進むはずだった人材までも吸収してその部員数を伸ばし、「甲子園」のブランド力も手伝って、内部競争を過熱させて今に至っているということが真実ならば、全国レベルでの「大食い甲子園」への参加者もまた、かつてないほどに増加している可能性があります。問題は、競技としての求心力が年々強くなればなるほど、卒業後に激減する進路の受け皿の整備が追いつかず、その落差が広がっていくということです。その落差、つまりアスリートとしての野球人生を降りる段階の副産物として、暴走する食欲や急激に進行する肥満に抵抗できない男性が全国各地に発生しているという可能性は果たしてどの程度あるのでしょうか…そんな想像をしてしまうのも、野球取材と大食い番組制作の両方に関わるようになったからなのかもしれません。
いよいよ「元祖!大食い王決定戦」(テレビ東京)も8月末から本選大会のロケに入ります。今年は男女混合戦なので、華やかな女性陣ばかりでなく、たくましい男性陣が大いにその胃袋を闘わせることになります。その中には、元・アスリートの経験を持つ大食いさんもいるかもしれません。番組放映の際には、今回のコラムも参考に、例えば元・アスリートの方々の胃袋拡張に至るまでの壮絶な個人史などにも思いを馳せていただけると、番組がより興味深いものに感じられるのではないかと思います。
参考資料
財団法人日本高等学校野球連盟:平成20年度加盟校部員数・硬式
財団法人全国高等学校体育連盟:平成19年度加盟登録状況、過去の登録状況
財団法人日本大学野球連盟:2008年(平成20年)加盟校部員数
文部科学省 平成20年度学校基本調査結果速報
競技を引退するということは、それまでの人並み外れていた運動量がガタ落ちしてしまうことを意味します。少しずつ運動量を減らしていければ理想的ですが、多くは突然パッタリと運動を止めて、あとは週一回の草野球のみ…というほどの急激な変化が体を襲います。ここで、同じく人並み外れていた食事量を一気に人並みレベルに下げることができない場合、余ったカロリーの分だけ確実に脂肪は体に溜まっていくのです。
一般に男性は、女性に比べて内臓付近に脂肪がつきやすいとされています(特に中年以降)。以上を考えあわせれば、「元・高校球児はポッコリお腹のメタボ体型に移行しやすい」という仮説も、立証可能なのではないかと思えてきます。
ここで考えないといけないのが、上にいけばいくほど狭き門になるといわれる、野球界の構造です。文部科学省の平成20年度データによると、全国の高等学校の男子在学者数は170万3930人です。このうち、甲子園を目指している高校生の硬式野球部員数(いわゆる高校球児)は、2008年5月末時点で16万9298人(加盟校数4163)と、何と11年連続で増加中です。参考までに他のスポーツにおける高校生男子部員数を大まかに挙げると、比較的人数の多い順にサッカー14万3千人、バスケットボール9万人、テニス6万9千人、陸上5万5千人、バレーボール4万3千人といったところですが、これらの比較的人数の多い部の部員数はいずれも減少傾向にあり、この少子化の折、野球以外の競技から高校野球へと確実に人材が流れていることを示しています。
ちなみに、福原愛さんの卓球は5万人、あの北島康介さんの金メダルで話題の競泳は1万7千人で、これらの部員数は若干増加傾向にあります。いずれにしても、全男子高校生の約1割が硬式野球部に流れているという現実は、その良し悪しは別にして、この国の過熱した高校野球人気をよく反映しています。そして、その中から幸運にも甲子園の土を踏むことができるのは49校882名(今年のような10年毎の記念大会の場合は55校990名)で、全加盟部員の約0.5%程度という狭き門なのです。(ここまでの数字は3学年の合計であることに御注意下さい)
しかし、彼らが高校を卒業した途端、この野球人口の受け皿は激減します。大学での硬式野球人口が約2万人(4学年を含む数字)、社会人野球人口が約1万人弱(複数学年に渡る数字)、現役プロ野球選手が約840人(これも複数学年に渡る)となります。もっとも、これは単純な登り階段の構造にはなっていません。高校野球から直接プロ野球入りする人もいれば、社会人・大学野球経由でプロ入りする人、時にはプロ野球を退団して社会人野球に移る人もいます。それでも、野球選手として生計を立てる選手となると、プロ野球選手ないし会社組織所属の社会人選手など、ほんのひと握りに過ぎません。
もし現代の高校野球が、他の部活動に進むはずだった人材までも吸収してその部員数を伸ばし、「甲子園」のブランド力も手伝って、内部競争を過熱させて今に至っているということが真実ならば、全国レベルでの「大食い甲子園」への参加者もまた、かつてないほどに増加している可能性があります。問題は、競技としての求心力が年々強くなればなるほど、卒業後に激減する進路の受け皿の整備が追いつかず、その落差が広がっていくということです。その落差、つまりアスリートとしての野球人生を降りる段階の副産物として、暴走する食欲や急激に進行する肥満に抵抗できない男性が全国各地に発生しているという可能性は果たしてどの程度あるのでしょうか…そんな想像をしてしまうのも、野球取材と大食い番組制作の両方に関わるようになったからなのかもしれません。
いよいよ「元祖!大食い王決定戦」(テレビ東京)も8月末から本選大会のロケに入ります。今年は男女混合戦なので、華やかな女性陣ばかりでなく、たくましい男性陣が大いにその胃袋を闘わせることになります。その中には、元・アスリートの経験を持つ大食いさんもいるかもしれません。番組放映の際には、今回のコラムも参考に、例えば元・アスリートの方々の胃袋拡張に至るまでの壮絶な個人史などにも思いを馳せていただけると、番組がより興味深いものに感じられるのではないかと思います。
参考資料
財団法人日本高等学校野球連盟:平成20年度加盟校部員数・硬式
財団法人全国高等学校体育連盟:平成19年度加盟登録状況、過去の登録状況
財団法人日本大学野球連盟:2008年(平成20年)加盟校部員数
文部科学省 平成20年度学校基本調査結果速報





