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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2008/08/29

大食い甲子園(3)・・・監督・部長・コーチの場合

今夏、甲子園球場で開催された第90回全国高等学校野球選手権大会(朝日新聞社主催)は、大阪桐蔭高校(北大阪)の優勝によって盛況のうちに幕を閉じまし た。決勝戦での記録ずくめの猛打は、打高投低のパワー野球時代の再来を濃厚に観戦者に印象づけました。

この大会期間中ずっと、私はある素朴なる疑問を感じ ていました。高校野球の監督や部長といった人たちは、どうしてこうも異様にお腹が膨れた内臓肥満体型、ないし、メタボリック症候群と思われる人が多いの か…ということです。

高校野球の試合では必ず、試合前に守備練習(いわゆる試合前ノック)が行われます。各守備位置に就く選手を前に、大きなお腹を揺らした監督さんがノック バットを片手でブン回しながら登場します。その腹囲は、遠目に見た限りでも、メタボリック症候群の診断基準の一つとされる「おへそ周りの腹囲が男性で 85cm以上」という数字をはるかに超えていることは疑う余地がありません。

また、このノックの手伝いをする若手の指導者(いわゆるノッカー)も気になり ます。20才代後半~30才代前半の若さながら、彼らの中にもまた、おなかポッコリ体型の者がかなりいるのです。さらに部長に至っては、監督・ノッカーに 負けず劣らず、時には現役力士かと見間違うような人もみられます。

メタボリック症候群がどうして問題なのかというと、「メタボ監督」や「メタボ部長」にみられるような大きなお腹の内側には、内臓脂肪がタップリ詰まってい ると考えられるからです。皮下ではなく内臓周囲に脂肪がビッシリと詰まった肥満は、それ自体は無症状でも、高血圧・糖尿病・高脂血症といったいわゆる生活 習慣病を高率に引き起こす元凶とされています。この腹囲85cm以上の「内臓脂肪型肥満」に加えて、「高血圧」「糖尿病」「高脂血症」のうちの2つ以上を 合併した場合をメタボリック症候群、1つ合併の場合をメタボリック症候群予備群と呼びます(注※)。ちなみに、4つとも揃った場合は「死の四重奏(カルテット)」などというコワ〜イ呼び方もあります。この状態を放置すれば、動脈硬化が潜行し、心臓疾患・脳卒中を高率に引き起こすと警戒されています。今年 (2008年4月)から40才以上の人を対象にメタボリック症候群に着目した健康診断が義務付けられたのも、このためです。

厚生労働省のホームページによると、年代別にみた腹囲85cm以上の男性(20歳以上)の割合は、20歳代で25.0%、30歳代で37.3%、40歳代 で53.2%、50歳代で55.1%、60歳代で59.7%、70歳代で56.2%、40-74歳を合わせると57.6%となっています。ちなみに、40 -74歳でのメタボリック症候群は、予備群も合わせると51.7%とも記載されています(平成16年データ)。

残念ながら、「高校野球の指導者のメタボ率」などという全国統計は存在しません。しかし、全国で野球を見てきた印象では、彼らのお腹ポッコリ率はどう見積 もっても上記のパーセンテージを大きく上回っているのではと疑ってしまいます。そして実際、そんな監督・部長さんたちが心臓発作や糖尿病発作で倒れて救急 車が出動した…といった話もよく耳にします。

今や国を挙げて内臓肥満に対して警鐘を鳴らしまくっている御時勢に、高校野球界はこの問題に対して認識が薄いのではないかと気になるところです。それどこ ろか、パワー野球時代の甲子園で確実に勝つために、選手に「食って、食って、食いまくれ!」と指導することが、以前にも増して全国で受け入れられているよ うにも見えます。他の運動部のことはあまり知らないのですが、少なくとも高校での野球部の活動が、健康増進のためのはずが、長い目で見た場合に「メタボ及 びメタボ予備群」の増加に結びつくということは、果たしてありえるのでしょうか。この点について、来週あらためて別の視点から考えてみたいと思います。

参考資料
日本肥満学会 「メタボリック症候群の診断基準」
厚生労働省 「医療制度改革に関する情報」「生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会 第3回資料」「平成16年国民健康・栄養調査結果の概要」

(注※): 2008年8月20日配信の毎日新聞は、メタボリック症候群の診断基準が国際基準に統一されることになり、腹囲が診断の必須条件から外れるこ とになったと報じています。年内にも暫定基準が公表されるとのことですが、このコラムでは、現行の診断基準を基にした2004(平成16)年の資料内の統 計を引用していることもあり、2008年8月の現時点での診断基準をそのまま掲載しています。
 

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