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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2008/08/01

Eating Beauty!! 三宅智子の性善説(3)

人気急上昇中の大食いアイドル・三宅智子さんを、大食い番組の管理医師という立場上、私は文字通り「遠近から」眺める機会に恵まれました。その遠景からは、彼女の無欲かつ中性的な人格が、強烈かつバラバラな個性のひしめく大食い選手集団の中にあって、あらゆるトゲを丸く治めてしまう緩衝溶液(バッファー)のような作用を果たしてきたことを、その近景からは、大食いになる必然性そのものを疑わせるような人並み外れた美貌を、これまでのコラムで描写してきました。

しかし、前述の現象ないし事実は、決して彼女の本質を語る上では十分とは言えません。

「元祖!大食い王決定戦」(TV東京)では、ロケ入りの前日に、本選参加選手全員を対象に健康診断が行われます。誰もが1度は、私との初対面をこの健診で迎える訳です。また、以前のコラムで、ジャイアント白田(白田信幸)さんとの初対面となった2005年秋の大会の健康診断において、私が「彼の健康状態について少し突っ込んだ話をした」とも書きました。(→大食い界きっての理論派!ジャイアント白田(1)

実は、2006年秋の健康診断においても、私は三宅智子さんに対して、同じように「少し突っ込んだ話」をしました。2005年の白田さん同様、2006年の初対面時の三宅さんもまた、その体調は決して万全とは言えなかったのです。そして、長い時間を割いて彼女に健康管理全般についてアドバイスをしていくうちに、私は、あることに気づくのです。

初対面の人間と接する際には、人は多かれ少なかれ警戒心を持つものです。誰もが相手を警戒しつつ観察し、交際が進むにつれて、少しずつ心を開いていく・・・そもそも、人間関係とは、そういうものであって然るべきです。ただ、大食い選手の方々と接してきた経験から言えば、大食い番組での健康診断は、警戒心との戦いという側面を否定しようがありません。病歴・生活歴から自覚症状まで、病院の外来や企業の健康診断では難なく聞きだせることが、この大会では決して容易でないことを、それこそ番組スタッフの方が良く心得ています。だからこそ、番組帯同医師が毎回替わることのリスクを恐れて、毎回私にこの仕事を依頼して来られるのだと思います。

しかし、三宅智子さんはその対極を行く人でした。まず、2006年時点で彼女は、私が指摘した内容を全て自分で分かっていました。そして、警戒するどころか、こちらが聞きもしないことも次々と打ち明け、そして、私のアドバイスに実に素直に耳を傾けてきました。そして、さらに驚いたのは、2007年春の大会で彼女が、半年前の私のアドバイスを比較的忠実にクリアして戻ってきたということです。初対面の医師の言うことなど、右から左に聞き流しても良かったでしょうに・・・。

決して嘘を言わず、耳に痛い話にも嫌な顔一つせず、むしろ自分からいきなり本音を打ち明けてくる彼女のことを私は、「この人は性善説の人だ」と思って初対面の時から見守ってきました。もし相手が悪意のある人間だったら・・・などと考えたことは1度も無かったのでしょうか?以後も注意して見てきましたが、相手が大食い選手だった場合はもちろん、そうでなかった場合でも、彼女はいきなり性善説から入るのです。ただ、相手を間違えた場合、繊細な彼女はきっと、人一倍、心深く傷つくのでしょう。そんなことが彼女の人生に1度も無かったと思うほど、私はおめでたい性格ではありません。

それでも彼女は、いつでも初球からど真ん中のストレートで来ます。そこが彼女の凄いところで、どの大食い選手とも大きく異なる部分だと思います。そんな彼女の直球勝負の性善説は、特に警戒心の強い大食い選手において、心の隙間を埋める存在になってきたであろうことは想像に難くありません。

こうしてみると、前々回のコラムで「彼女ほどの美人がなぜ大食いになるのか」という問いについても、何となく答えが見えてくるのです。これについては次回考えてみましょう。