女帝の誤算を救った演出家~元祖!大食い王決定戦in Hawaii(2)
「元祖!大食い王決定戦 女王戦in Hawaii」(TV東京)で圧勝した菅原初代さんの強さは、彼女の大食い理論の集大成とも言えるでしょう。勝利をつかむための戦略的な計算には、一分の狂いも無かったはずです。
その彼女に唯一の計算違いがあったとすれば、それは「ライバルの不調」でしょう。特に、大会三連覇のかかっていた『ギャル曽根』こと曽根菜津子さんが苦戦を強いられ続けるという展開は、女帝スガワラといえども読みきれていなかったのかもしれません。裏を返せば、それだけ今大会の出場者のレベルが高かったということです。
万一にも、曽根さんが日本での試合で脱落してしまえば、それは少なくとも、「テレビ的」そして「芸能界的」という観点において、番組視聴率への影響だけに止まらぬ一大事となります。それゆえに、番組はどうしても、「あわやギャル曽根敗退か?」という絵を優先的に追い求めがちです。その結果、首位争いの描写がどうしてもおざなりになります。
人知れぬ努力を積んで臨んだ晴れ舞台を、実力を存分に発揮しての快進撃を、もし誰にも見てもらえないとしたら・・・皆さんならどう思われるでしょうか。日頃とても謙虚かつ冷静な彼女が、番組内でそのような趣旨を匂わせたのも、自分がこのような状況に置かれること自体が、とんだ誤算だったからなのかもしれません。
しかし、そんな誤算を吹き飛ばしたのは、制作会社・零クリエイト所属の辣腕ディレクターで、当番組の演出を担当する内山慶祐氏(以下、内山D)でした。 この「無糖ブラックコーヒーの似合う伊達男」とも言うべき気鋭のイケメンディレクターは、今までの大会同様あるいはそれ以上に、持ち前の鋭い観察力と卓越したバランス感覚を駆使し、切れ味のある演出にその手腕をいかんなく発揮していました。
「はい、菅原さん○○杯完食来るよ~」
「はい、新人二人の追い上げ、来るよ~、カメラさん、もっとあおって」
内山Dは常に試合の全体像の中でのバランスを重視し、選手の扱いはひたすら公平です。司会進行やカメラワークに対し、描写手薄な部分や盲点を次々と指摘し、テンポ良く指示を出していきます。
その真骨頂が現れたのは、本大会での3回戦、『川豊別館』(成田市)での「うなぎ茶漬け45分勝負」でした。「勝てばハワイ」という大事な試合でしたが、 その大事さゆえの無理がたたった選手がドクターストップをかけられ、あっけなく決まってしまったという、いわばアクシデント試合でした。 通常なら、選手のリタイアによる試合終了が予想された時点で、あとは敗戦処理のようなものです。いかに事故なく試合を無事に終わらせるかに神経を注ぐのが制作者の役目です。
しかし内山D、この試合で菅原さんが着々と杯数を伸ばし、驚異的な記録に迫るペースであることをしっかり見ておりました。「菅原さんの記録達成までやるよ~、先生、△△チャンは大丈夫ですかね」と私に尋ねる内山Dの目には、野心的な輝きすらありました。
番組プロデュー サーは思わずため息混じりにこうつぶやくのでした。
「こういうところが内山の凄い所なんだよね。僕なんか、リタイアの方に手一 杯で、1位の記録にまで気が回らない。僕には絶対に出来ない演出」
かくして、こちらがリタイアに向けての説得や心身のケアに明け暮れるその傍らで、ウィニングロードを独走する菅原さんは、その陰日向の努力に対し、 ようやく番組上で堂々とスポットライトを当ててもらうに至ったのでした。かくして戦いの場はハワイへ移ります。これについては次週へ。





