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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2008/03/21

新潟医療崩壊~三条大食いロケ編(1)

最近、急病人を乗せた救急車が、複数の病院に受け入れを拒否され、立ち往生した末に、患者死亡という結末を迎えるケースがよく報道されています。2006年8月には出産中の脳出血で19病院から搬送を拒否されて死亡した奈良県大淀町のケース、昨年12月25日には29病院に34回の受け入れ要請の末に救急車中で急変し死亡した富田林市のケースがありました。近畿地区、それも特に富田林市を含む南河内地域の報道が最近は特に目立ち、救急医療の崩壊、ひいては日本全体の医療崩壊を懸念する声も聞かれます。

しかし、救急医療の危機的状況は、近畿地区だけのものでも三次救急だけのものでもありません。近畿地区という、医科大学も救命救急センターも複数ある地区でこの有様ですから、まして地方においてはさらに過酷な現実があります。生命に関わる重篤患者を診る「三次救急」が多く報道される裏で、実際は軽症~中等症患者を診る「一次救急」「二次救急」も破綻寸前になっています。ただ、そのことをまさか「元祖!大食い王選手権」(テレビ東京)のロケ現場で体験することになろうとは、私も思ってはいませんでした。

事情は良く理解していたつもりですが、「百聞は一見に如かず」でした。2005年秋、新潟での大食い競技の撮影後、滞在していた三条市内のホテルにて、選手が体調不良を訴えました。腹部所見等から二次救急レベルと判断し、救急車を要請しました。救急車はすぐに到着・・・ここまではよかったのです。

しかし、この後が大変でした。新潟は7つの医療圏に分かれていて、三条市の属する医療圏である『県央』は、新潟市のある『新潟』、長岡市のある『中越』の中間に位置しています。この『県央』には二次救急病院は7箇所、三次救急施設はありません。救急隊がこの7病院に次々と受け入れを要請していくのですが、拒否の連続です。一巡目で搬送先が決まらず、ついに二巡目に突入した時は、私の方が寒気に襲われる始末でしたが、救急隊員はこの事態に慣れきっている様子です。ようやく一巡半の頃、ありがたくも受諾回答をいただくまで、ホテル前に路上駐車したまま待機した時間は30分を超えていました。その間に患者容態の悪化こそなかったものの、これが腸管穿孔だったらどうなるのかといった話を救急隊員の人に振ってみたところ


若手隊員A 「三次(救急)レベルなら最初から新潟か長岡。だけど、地元の一次・二次(救急)も結構パンク気味で、時には軽症者でさえ新潟や長岡の病院にお願いするしかないケースもある」

年配隊員B 「場所が少し半端ってのもあるけど、とにかく医者が足りないね。(一次救急を担う)開業医の高齢化も進んでいるし、どうしても二次救急にかかる負担が大きくなる」

・・・などのお答えが返ってきました。

大食いロケの合間に図らずも遭遇することになった救急医療関係者の生の声・・・それは、どんな医療関連の書籍よりも、どんなセンセーショナルなワイドショー番組よりも、心に訴えかけてくるものです。この経験に触発されて新潟の医療事情を調べたところ、この経験を裏付けるデータがたくさん見つかりました。この件については、来週さらに検証を加えます。