2008/03/14
大食い珍道中(4)~ カメラ編
大食い番組の撮影は、カメラワークも見所の1つです。大口開けた選手が美味そうに食材を頬張る一瞬、限界ギリギリの選手が苦痛に顔を歪める一瞬・・・実際に進行する試合のダイナミズムを、遠景・近景の配分や選手の位置関係も把握しつつ、正確かつ整然とフィルムに収めていくのが、彼らカメラクルーの仕事です。
「元祖!大食い王決定戦」(テレビ東京)では、番組成否のカギを握るこの重要な仕事に、3組のカメラチームを起用しています。ある時は互いに競り合う緊張感、ある時は”あうん”の呼吸と協力体制、そして、何と言っても芸術的というしかない卓越した直観力をもって、彼らは3台のカメラを縦横無尽に駆使します。当番組のカメラクルーは、少なくとも私が参加した2005年の番組再開以降ずっと変わらぬ顔ぶれで、大食い撮影のノウハウを知り尽くした人々です。各カメラチームは、ベテランのカメラマンと、若手の音声さんのコンビから成ります。ベテランカメラマンの予期できぬ機敏な動きに、若手の音声さんは足を踏まれながらも必死についていきます。かくいう私も、最初は立ち位置や立ち回り方がなかなか決まらず、ウロウロしている間に何度カメラクルーに轢き倒されそうになったか知れません。
今日は、そんな本気印のカメラマンの仕事っぷりの中で、比較的頻出の単語をとりあげてみたいと思います。
・「テープ換えます」
選手は既に板につき、スタッフはいつでも本番OK・・・「いざ、勝負!」というそのタイミングに、カメラマンの1人が唐突に発する言葉がこれです。万一、白熱の本番撮影中にテープが切れてしまうと、テープ交換に手間取って珠玉の瞬間を撮り逃すことになりかねません。このためカメラマンは、仮にテープがまだ十分残っていたとしても、念のため本番開始直前にテープを新品に交換するのです。
この発言が出ると、アドレナリン全開に緊張した人々が一斉にズッコケ(?)・・・というより、ホッとした顔になります。野球で言えば、大ピンチの場面で飛び出した弾丸ライナーがファウルだった時の客席のため息のような、そんな数十秒間の猶予時間を、この一言は創り出してくれます。選手もまた、この砂漠のオアシスのような恵みの小休止を味わいつつ、来るべき仕切り直しに備えるのです。
・「○○君、隣見て!」
太鼓の合図とともに勝負はスタートし、選手は互いをけん制し合いながら、熾烈な競争の火花を散らしている・・・オンエア画面を見ると、そんな風に見えるのではないでしょうか。しかし、勝負に入った選手は、なかなか他人の事にまで気が回りません。特にキャリアの浅い選手の場合、自分との戦いに精一杯のことが多く、カメラマンからこの言葉が鋭い矢のように飛んできます。
初めて大食いロケに参加した時の私は、カメラサイドからこのような注文が出るという事実にひたすら新鮮な驚きを感じるばかりでした。出演者がほとんど素人である当番組においては、出場経験の浅い選手を素のままに撮影し無加工で視聴者に届けると、ドラマ無き単調な内容に終わってしまう恐れがあります。その点、大食いキャリアを積んだベテラン選手は、制作サイドがどのような絵を欲しがっているのかを熟知しています。目線の配り方は洗練され、表情は多少オーバーに、自分を演出することに関しても素人離れしています。しかし、彼らベテラン勢にも、どこを見たら良いかわからなかった「キョロキョロ・オドオド時代」があったはずです。きっと、この「隣見て!」攻撃の洗礼を受け、テレビに鍛えられ、今の彼らがあるのだと思います。
・「一回引くっっ!」
当然ながら、試合開始時点は、全員がスタートラインに横一線で並んでいる状態にあります。この時、カメラはやや後方から、全選手を広角で捉えています。そして、試合の進行とともにカメラはズリズリと前に進み(いわゆるトラックアップ)、各選手の表情を個別に追いかけていきます。
しかし、1試合丸々45分間、ずっと各選手のアップばかり映すワケにはまいりません。アップが超どアップになったところで、画面が選手の毛穴で占められて終わりです。そこでカメラクルーから飛び出すのが、「一回引く」です。カメラクルーはザザザッと猛スピードで後ずさりし(いわゆるトラックバック)、画面は再び広角遠景に戻るのです。
オンエア映像を見ると、1試合45分のうち、選手個別映像から全体像に切り替わるシーンが数回あります。司会者が「さあ、ちょうど○○分経過。現時点でのトップは・・・?」などと言いながら皿数を数える場面がそれです。そして、「一回引く」なる号令は、大抵このシーンの直前にかかります。
この号令の度に、若いADやお偉方のプロデューサーまでもが一目散に後方に逃走(?)する様は、まるで夜逃げです。スタッフ・裏方がカメラに映らないための背走とはいえ、何せカメラがあまりに俊敏に後ろに引くものだから、不慣れな人間は大変です。私も初期の頃は逃げ方が下手で、結構画面に映ってしまっていましたが、最近はだいぶスプリント上手になってきました。足がもつれたり転んだりしながら、裏方も戦っているのです。そんな様子をオンエア映像から推察していただければ、嬉しい限りです。
「元祖!大食い王決定戦」(テレビ東京)では、番組成否のカギを握るこの重要な仕事に、3組のカメラチームを起用しています。ある時は互いに競り合う緊張感、ある時は”あうん”の呼吸と協力体制、そして、何と言っても芸術的というしかない卓越した直観力をもって、彼らは3台のカメラを縦横無尽に駆使します。当番組のカメラクルーは、少なくとも私が参加した2005年の番組再開以降ずっと変わらぬ顔ぶれで、大食い撮影のノウハウを知り尽くした人々です。各カメラチームは、ベテランのカメラマンと、若手の音声さんのコンビから成ります。ベテランカメラマンの予期できぬ機敏な動きに、若手の音声さんは足を踏まれながらも必死についていきます。かくいう私も、最初は立ち位置や立ち回り方がなかなか決まらず、ウロウロしている間に何度カメラクルーに轢き倒されそうになったか知れません。
今日は、そんな本気印のカメラマンの仕事っぷりの中で、比較的頻出の単語をとりあげてみたいと思います。
・「テープ換えます」
選手は既に板につき、スタッフはいつでも本番OK・・・「いざ、勝負!」というそのタイミングに、カメラマンの1人が唐突に発する言葉がこれです。万一、白熱の本番撮影中にテープが切れてしまうと、テープ交換に手間取って珠玉の瞬間を撮り逃すことになりかねません。このためカメラマンは、仮にテープがまだ十分残っていたとしても、念のため本番開始直前にテープを新品に交換するのです。
この発言が出ると、アドレナリン全開に緊張した人々が一斉にズッコケ(?)・・・というより、ホッとした顔になります。野球で言えば、大ピンチの場面で飛び出した弾丸ライナーがファウルだった時の客席のため息のような、そんな数十秒間の猶予時間を、この一言は創り出してくれます。選手もまた、この砂漠のオアシスのような恵みの小休止を味わいつつ、来るべき仕切り直しに備えるのです。
・「○○君、隣見て!」
太鼓の合図とともに勝負はスタートし、選手は互いをけん制し合いながら、熾烈な競争の火花を散らしている・・・オンエア画面を見ると、そんな風に見えるのではないでしょうか。しかし、勝負に入った選手は、なかなか他人の事にまで気が回りません。特にキャリアの浅い選手の場合、自分との戦いに精一杯のことが多く、カメラマンからこの言葉が鋭い矢のように飛んできます。
初めて大食いロケに参加した時の私は、カメラサイドからこのような注文が出るという事実にひたすら新鮮な驚きを感じるばかりでした。出演者がほとんど素人である当番組においては、出場経験の浅い選手を素のままに撮影し無加工で視聴者に届けると、ドラマ無き単調な内容に終わってしまう恐れがあります。その点、大食いキャリアを積んだベテラン選手は、制作サイドがどのような絵を欲しがっているのかを熟知しています。目線の配り方は洗練され、表情は多少オーバーに、自分を演出することに関しても素人離れしています。しかし、彼らベテラン勢にも、どこを見たら良いかわからなかった「キョロキョロ・オドオド時代」があったはずです。きっと、この「隣見て!」攻撃の洗礼を受け、テレビに鍛えられ、今の彼らがあるのだと思います。
・「一回引くっっ!」
当然ながら、試合開始時点は、全員がスタートラインに横一線で並んでいる状態にあります。この時、カメラはやや後方から、全選手を広角で捉えています。そして、試合の進行とともにカメラはズリズリと前に進み(いわゆるトラックアップ)、各選手の表情を個別に追いかけていきます。
しかし、1試合丸々45分間、ずっと各選手のアップばかり映すワケにはまいりません。アップが超どアップになったところで、画面が選手の毛穴で占められて終わりです。そこでカメラクルーから飛び出すのが、「一回引く」です。カメラクルーはザザザッと猛スピードで後ずさりし(いわゆるトラックバック)、画面は再び広角遠景に戻るのです。
オンエア映像を見ると、1試合45分のうち、選手個別映像から全体像に切り替わるシーンが数回あります。司会者が「さあ、ちょうど○○分経過。現時点でのトップは・・・?」などと言いながら皿数を数える場面がそれです。そして、「一回引く」なる号令は、大抵このシーンの直前にかかります。
この号令の度に、若いADやお偉方のプロデューサーまでもが一目散に後方に逃走(?)する様は、まるで夜逃げです。スタッフ・裏方がカメラに映らないための背走とはいえ、何せカメラがあまりに俊敏に後ろに引くものだから、不慣れな人間は大変です。私も初期の頃は逃げ方が下手で、結構画面に映ってしまっていましたが、最近はだいぶスプリント上手になってきました。足がもつれたり転んだりしながら、裏方も戦っているのです。そんな様子をオンエア映像から推察していただければ、嬉しい限りです。





