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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2018/04/06

身長・BMIランキングが見事に予言していた第90回選抜大会の優勝校、そして高校野球の向かうべき方向性

この原稿が掲載される頃といえば、春のセンバツこと選抜高校野球大会の第90回記念大会の閉幕2日後という、大会の余韻を残すタイミングに相当します。今年はセンバツ大会が第90回記念大会で従来より4校多い36校出場、4か月後の8月5日開幕となる夏の甲子園もまた第100回記念大会として出場校が7校多い56校となる予定で、このメモリアルイヤーに便乗するが如く、あらゆる変革が高校球界にもたらされることになっております。

その変革点の一つが、延長戦におけるタイブレーク制の導入です。地区大会では既に一部で導入されており、昨年の18才以下の野球の国際大会ことWBSC U-18 W杯でも行われていました。甲子園大会での導入については現場から根強い反対もありましたが、今年の春のセンバツからついに正式採用となりました(→見てきたつもりのU-18野球W杯(3)…「飛ぶボール」と「タイブレーク」ならどちらを選ぶべきか)。今大会の場合、9回を終えて同点だった場合は延長12回までは従来通り、13回以降は無死一二塁で継続打順からのタイブレークを行う予定でした。しかし、大会中の延長戦は全部で6試合あったものの、1試合(準決勝第2試合の延長12回)を除いて全てが延長10回で決着したため、結局タイブレークの適応事例がなく終わりました。

(2018年4月3日、準決勝第2試合「大阪桐蔭vs三重」の9回終了時点のスコアボードにタイブレークの規定が表示された瞬間)

もう一つ、これは改革というよりも「改悪」と断言できそうなのが、「外野席(現在無料)の有料化」と「中央特別自由席の全席前売・指定席化」です。前者の理由は「開場前に多くの来場者が集まる傾向が強まったことで安全対策を講じざるを得なくなった」というものですが(参考サイトA)、これまで外野席の入場門前にできていた行列が入場券売り場の前に移動するだけの話で、どのみち土日やお盆の季節に大混雑することには変わりがないのではないかと想像します。そもそも、近年の甲子園の高校野球における大混雑の原因は、他ならぬ「阪神甲子園球場のリニューアルに伴う座席数の大幅減少」であったことを、以前の当コラムでも詳細に分析しました(→真夏の邂逅(3)…いつも満員札止め!「フラリと立ち寄る甲子園」の時代の終焉に思う)。この問題に興味がある方には是非ともご一読をお勧めする記事です。とにかく、リニューアル前は56000人を収容できていた球場が今はMAXで46000~47000人程度しか収容できなくなったことが全てのトラブルの元凶であって、観客のせいにされるのは心外です(怒)!

さらに、後者の「中央特別自由席の全席前売・指定席化」はもっと深刻です。現在は2000円でバックネットの裏側の区画のどこに座っても良いことになっているチケットが、今夏はおそらく「中央特別指定席」と名前を変えてチケットサイト販売サイトで扱われるのでしょうが、前の方の人気席などはおそらく投機商品と化して、法外な価格でオークションやメルカリに出品転売されるのが今から目に浮かびます。甲子園球場のチケット売り場での販売も、いちいち席を指定する手間が加わることから、購入に際する一人当たりの所要時間が膨らみ、長蛇の列はさらに長くなるでしょう。80年代の甲子園の高校野球では比較的よく見かけたパンチパーマのダフ屋さんたちも、最近は全く鳴りを潜めていましたが、メモリアルイヤーを機に晴れて復活しそうな予感がします(髪型こそ異なるでしょうが)。しかもチケットは空席になっても再販売されないとのことですから、夕方の第4試合などは「券は売り切れなのに席はガラガラ」となることも間違いなさそうです。

(売り切れとなった中央特別自由席のチケット売り場の前でガックリと肩を落とすIBC岩手放送のオラ君)

さて、そんな球場を取り巻く変革以外にも、今大会では選手育成の現場にどうやら大変革の序章と思しき兆候が現れているようです。それは、私が毎年作成してきた出場選手の学校別BMI(肥満度)ランキングと身長ランキングの中に隠されていました。ということで、まずは、今大会の全出場選手のチーム別BMI中央値(←平均値ではないことに注意!)から紹介したいと思います↓。(赤字は県立校、緑字は私立校、ベスト4以上は太字、ベスト8以上は戦績を併記。以下同様)

<BMI中央値ランキング>
1位(25.435)  駒大苫小牧(北海道)
2位(24.724)  日大三(東京)
3位(24.675)  星稜(石川)←←←←←←←←←←←←←ベスト8
4位(24.593)  日本航空石川(石川)←←←←←←←←←ベスト8
5位(24.491)  下関国際(山口)
6位(24.456)  英明(香川)
7位(24.412)  富山商(富山)
8位(24.371)  延岡学園(宮崎)
9位(24.364)  静岡(静岡)
10位(24.353) 智弁和歌山(和歌山)←←←←←←←←←準優勝
11位(24.263) 智弁学園(奈良)
12位(24.217) 聖光学院(福島)
13位(24.106) 明秀日立(茨城)
14位(24.087) 大阪桐蔭(大阪)←←←←←←←←←←←←優勝
15位(24.080) 国学院栃木(栃木)
16位(24.022) 花巻東(岩手)←←←←←←←←←←←←ベスト8
17位(23.964) 伊万里(佐賀)
18位(23.963) 高知(高知)
(---全体の中央値:23.939---)
19位(23.882) 由利工(秋田)
20位(23.880) おかやま山陽(岡山)
21位(23.760) 富島(宮崎)
22位(23.724) 東邦(愛知)
23位(23.600) 三重(三重)←←←←←←←←←←←←←ベスト4
24位(23.493) 中央学院(千葉)
25位(23.320) 東海大相模(神奈川)←←←←←←←←←ベスト4
26位(23.289) 慶応(神奈川)
27位(23.197) 創成館(長崎)←←←←←←←←←←←←ベスト8
28位(23.184) 明徳義塾(高知)
29位(23.108) 瀬戸内(広島)
30位(23.008) 日大山形(山形)
31位(22.992) 膳所(滋賀)
32位(22.949) 近江(滋賀)
33位(22.654) 彦根東(滋賀)
34位(22.476) 東筑(福岡)
35位(22.423) 乙訓(京都)
36位(21.972) 松山聖陵(愛媛)

ここで、上記のランキングの特徴をざっと解説しましょう。まず、以前のコラムにも書いた「BMIが大きすぎても小さすぎても勝利が遠ざかる」という法則は今年も健在のようです(→BMIランキング的中!?東海大四の決勝進出が教えてくれた「BMI野球」が不利な理由、→出場49代表のBMIランキングの変遷から占う今年の甲子園の優勝旗の行方)。まず、一桁ランクのトップ9のうち5校が初戦敗退、29位以下のラスト8のうち5校もまた初戦敗退という、「過ぎたるは及ばざるが如し」なる格言を地で行く現象が見られます。それでいて、10位~16位の7校で17勝というピークと、23位~27位の5校で8勝という2つのピークがあります。この「BMIランキングにおける二峰性の勝ち星分布」という現象もまた、実はここ数年の甲子園大会(特に選抜大会)における大きな特徴の一つであり、今回はたまたま上位の方のピークから優勝&準優勝校が出ましたが、例えば2016年の選抜決勝(優勝の智弁学園はBMI 19位、準優勝の高松商は23位)や2015年の選抜決勝(優勝の敦賀気比はBMI 21位、準優勝の東海大四は19位)のように、今回とは逆のケースもかなり多く存在します。

しかし、それよりも何よりも、このBMIランキングで私が腰を抜かさんばかりにビックリしたのは、今年の大阪桐蔭(大阪)の近年稀に見るBMIランクの低さでした。監督がメタボということがよくネタにされる大阪桐蔭ですが、選手の方も近年まではBMIランキング一桁台の常連でした。例えば、藤浪晋太郎(現・阪神)-森友哉(現・西武)のバッテリーを擁して春夏連覇を達成した2012年の場合、選抜大会でのBMIは8位(23.774)(ちなみに身長中央値は175cmで5位タイ)、夏の選手権大会では10位(23.914)(身長175.5cmで5位タイ)でした。ついでに準決勝敗退だった2015年選抜ではBMI 8位(24.029)(身長173cmで17位タイ)、2回戦敗退となった2016年選抜ではBMI 9位(24.280)(身長174.5cmで8位タイ)、優勝を果たした昨年の選抜ではBMI 5位(24.521)(身長175cmで5位タイ)、3回戦で仙台育英を相手にまさかのサヨナラ敗退が記憶に新しい昨年の選手権ではBMI 3位(24.647)(175.5cmで身長7位タイ)、といった具合です。それが今大会では一転、BMIランキング14位(実際の数値も右肩上がりだったのが24.087まで後戻り)というのですから、何度も元データを照会し、目をこすっては花粉症の目薬を点したりしましたが(笑)、どうやら間違いないようです。これは大阪桐蔭、意図的に体を絞ったか、何か食トレや筋トレなどに関して練習方針を大きく変えたのではないか?そう思わせる衝撃のデータでした。

そして、その目薬を点した目にさらなる衝撃を与えたのが、コチラの身長中央ランキングでした↓。これまた、これ以上ないほど明瞭かつ極端な現実を余すことなく映し出しています:

<身長中央値ランキング>
1位(178.5)   大阪桐蔭(大阪)←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←優勝
2位(175.5)   日本航空石川(石川)、創成館(長崎)←←←←←←←←←←←ともにベスト8
4位(175)    智弁和歌山(和歌山)←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←準優勝
      慶応(神奈川)、東邦(愛知)、近江(滋賀)、智弁学園(奈良)、明徳義塾(高知)
10位(174.5)  花巻東(岩手)、星稜(石川)←←←←←←←←←←←←←←←ともにベスト8
      聖光学院(福島)、国学院栃木(栃木)
14位(174)   三重(三重)←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←ベスト4
       日大三(東京)、東筑(福岡)
17位(173.5)  東海大相模(神奈川)←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←ベスト4
18位(173)   明秀日立(茨城)静岡(静岡)、瀬戸内(広島)
(---全体の中央値:173---)
21位(172.5)  日大山形(山形)、中央学院(千葉)、松山聖陵(愛媛)、延岡学園(宮崎)、膳所(滋賀)
26位(172)   彦根東(滋賀)
27位(171.5)  駒大苫小牧(北海道)、乙訓(京都)、おかやま山陽(岡山)、下関国際(山口)、英明(香川)、伊万里(佐賀)
33位(171)   由利工(秋田)
34位(170.5)  富山商(富山)、富島(宮崎)
36位(170)  高知(高知)

以上を見ていただければ、一目瞭然ですね。全体の中央値より上と下で、それこそ別世界かというほどに勝ち星の付き方が異なっています。ご覧の通り、ベスト8以上は全て上位陣から出ています。勝ち星の分布を見ると、ランキング上位17校だけで30勝も挙げています。その反面、18位以下の19校はたった5勝しかしておらず、それも初戦敗退校が15校にも上ります。何よりも、優勝した大阪桐蔭は身長ランキングがダントツのトップで、2位に丸3センチもの大差をつけているところに、今回の大会における大阪桐蔭の突出ぶりが表れているのです。

これらのBMIランキングと身長ランキングは、高校野球が内包する真実を浮かび上がらせているように私には思えます。これらを順に見れば、私がかねてから逆効果だと警鐘を鳴らしてきた「選手を白米で太らせてパワーアップ」といった昨今の高校野球における歪んだ食トレブームに何の根拠もないことがより一層明らかになったのではないでしょうか。U-18杯の記事でも検証しましたが、高校野球に限らず、野球というスポーツにおいては「身長」の方が「BMI」よりも貢献度が大きいのです。実際、北米を中心とした英語の学術雑誌には、そういう結論の論文がいくらでも見つかります(今回は紹介しませんが、興味ある方は英語で検索してみて下さい)。(→見てきたつもりのU-18野球W杯(2)…世界の背中が遠ざかる!BMI野球のイタチごっこの限界

考えてみれば、至極当たり前のことです。身長が高いと、必然的に手足も長くなる可能性が高いです。すると、内外野の守備においてグラブのリーチが広がり、ピッチャーは腕がしなることで球持ちが良く打たれにくくなり、バッターもリーチとともにミートポイントが広がる、といった野球選手にとってのプラスとなる特質が次々と備わることになります。

他方で、肥満体にすることのメリットはあまり現実化しているようには見えません。見た目の迫力があって相手がひるむという精神的な優位性が一時的には獲得できるかもしれませんが、実際はパワーはついたとしても、足の速さや俊敏性といった犠牲になる要素が必ず存在し、その要素の方が実は野球にとって重要だったりします。先日、少年野球の指導者数人と話す機会がありましたが、彼らにこのテーマを持ちかけたところ、異口同音に返ってきた返答は、身体をあまりムキムキのマッチョにしてしまうと、肩の周囲の筋肉が固くなってスローイングが悪くなる(肩が弱くなる)、股関節周囲の筋肉も固くなってベースランニングに支障が出る(直線ではなくカーブを回る足が遅くなる)…というものでした。今年の選抜を見た印象として、外野手のスローイングが年々悪くなっていることと、バントが成功しないチームほど早く敗退するという傾向が目につきましたが、原因は上記ランキングの中で全て語りつくされているようにも思えます。

甲子園出場の度にBMIランキングでは下位の常連であり続ける広陵(広島)などは、元々ウェイトトレーニングをしないそうで、それでも中村奨成選手(現・広島)のようなスター選手を育て上げるのだから大したものです。今大会の準決勝で優勝校・大阪桐蔭に延長12回で僅差の敗退となった三重(三重)に至っては、最近ウェイトトレーニングを辞めて、体幹トレーニングやノックバットを使用したトレーニングにシフトした、とも報じられました。BMIランキング23位の三重といえば、準々決勝でBMI 3位の星稜(石川)を壮絶な打撃戦の末に下したのが印象的でしたが、大会全体を振り返ると、最も強く印象に残ったのはむしろその初戦でした。身長ランキングでは共に14位タイながら、この10数年に渡り「高炭水化物の食トレ」というトレンドを名実ともに牽引して全国のチームに多大なる影響を与えてきたBMIランキング2位の日大三(東京)を、相手のお株を奪う集中打で8-0で撃破したこの三重の初戦こそ、今大会、ひいては高校野球界の未来を予言する歴史的序章だったのかもしれません。少子化に揺れる高校野球に、夏の第100回大会を前に多少なりとも明るい方向性が三重て、じゃなかった、見えてきたように思える今日この頃です(笑)。

(3月31日、三重vs乙訓の試合終了直後。一塁アルプスと三塁アルプスから出てきた応援団を交互に見比べて、真っ先に気付いたのが、三重高校の選手の父兄のデカさ!BMI14位と27位の差は、ゲームを見なかったとしても試合直後の球場外をウロウロすることで図らずも見えてくることがある…という良い実例。外野席が有料になれば、こういう球場内外を出入りしながらの情報収集にその都度コストが掛かることになる。甲子園での楽しみがこうしてまた一つ失われるのかと思うと、残念でならない)


<参考サイト>
A) 毎日新聞(2018年1月24日):外野席有料化 開場前の来場者増で対策
https://mainichi.jp/koshien/articles/20180125/k00/00m/050/076000c

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