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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2017/10/20

見てきたつもりのU-18野球W杯(6)…早生まれの高卒プロ・社会人・大学生を選出すべし

18才以下の野球世界一決定戦であるWBSC U-18野球ワールドカップ(以下、U-18 W杯)は、文字通り18才以下が参加する大会である。今年の大会に関しては、出場資格は「そのチームの国籍を有する1999~2001年生まれの者」という実にシンプルなものである。つまり、選手がプロ野球選手だろうが大学生だろうが、この条件さえ満たせば出場可能であって、実は「高校野球の世界大会」ではない。ここで、素朴な疑問が生じる。この大会の日本代表は例年、高校生のみで構成されている。本来なら早生まれの大学一年生や高卒プロ・社会人選手にも出場資格があるのに、実際に選出されることはない。

では、他国代表はどうだろう?ということで、今年のU-18 W杯の全出場選手(12ヵ国239名)について、学年別に人数を集計した。ただし、当然ながら海外は教育制度が日本とは異なるため、大学生として数えた者が実際に大学に通っているとは限らないし、高校生が高校に行っているとも限らない。例えば、北米では飛び級が珍しくないし、欧州では小学校でも情け容赦ない落第が当たり前だったりするし、早生まれの子供を年齢が上の子供たちと一緒に幼稚園や小学校に入学させるかどうかは、子供の発育に応じて親が判断することが許される(→ドイツ教育事情…ドイツ版「早生まれ」”Kannkind”から容赦なき落第まで)。むしろ、日本のように生まれた年月日で区切って学業成績や病気欠席もほとんど問わずワンブロックで進級させるベルトコンベヤー方式の方が、先進国の中では珍しいかもしれない。とは言え、便宜上、今回のコラムで言うところの「学年」は当該国の基準ではなく日本の基準を海外選手にも適用し、以下に学年別にその人数を紹介していきたい:

<日本で言う大学1年生> (1999年1月1日から1999年4月1日生まれ)
1位タイ(7名)…台湾、オランダ
3位タイ(5名)…カナダ、キューバ、南アフリカ
6位タイ(4名)…韓国、ニカラグア
8位タイ(2名)…オーストラリア、イタリア
10位(1名)…メキシコ
最下位(0名)…日本、アメリカ

<日本で言う高校3年生> (1999年4月2日から2000年4月1日生まれ)
1位(18名)…日本
2位タイ(15名)…韓国、アメリカ
4位タイ(12名)…オーストラリア、カナダ、メキシコ
7位タイ(11名)…ニカラグア、南アフリカ
9位(9名)…キューバ
最下位(7名)…台湾、イタリア、オランダ

<日本で言う高校2年生> (2000年4月2日から2001年4月1日生まれ)
1位(8名)…イタリア
2位タイ(6名)…台湾、オーストラリア、メキシコ
5位タイ(5名)…アメリカ、オランダ
7位(4名)…ニカラグア
8位タイ(3名)…カナダ、キューバ、南アフリカ
11位(2名)…日本
最下位(1名)…韓国

<日本で言う高校1年生> (2001年4月2日から2002年4月1日生まれ)
1位タイ(3名)…イタリア、キューバ
3位タイ(1名)…ニカラグア、メキシコ、オランダ
最下位(0名)…韓国、台湾、オーストラリア、カナダ、日本、アメリカ、南アフリカ

まず、今大会における「早生まれの大学生」の出場選手の多さには純粋に驚いた。同じアジア勢である台湾(7名)や韓国(4名)をはじめ、大会全体で見ても全239選手のうち42名(17.6%)にも上る、一大勢力である。この年代の選手を一人も送り出していないのは、今大会ではアメリカと日本だけである。もっとも、断トツの強さを誇るアメリカならこのゾーンがいなくても十分に戦えるだろう。しかし、そこまでの強さと呼べるかどうか微妙な我らが日本の場合、「早生まれのプロ野球新人選手」や「早生まれの大学一年生」を選出していないのは損失ではないかと思えてくる。それもこれもおそらく、選考過程の主導権を握っているのが日本高等学校野球連盟(以下、日本高野連)であることと、雪解け傾向にはあるものの長年のプロ・アマ間の断絶という歴史的経緯が尾を引いているのだろう。

また、高3が断トツに多いのは直近の春夏の甲子園大会の出場選手を中心に選考する日本では一種の必然だとして、低学年たる高2がビリから2番目という2名のみ、高1に至ってはゼロというのはどうだろうか。思えば2年前の2015年、日本開催だったU-18 W杯に清宮幸太郎選手(早稲田実)は侍ジャパン唯一人の高1として出場していた。ちなみに2015年大会に高1相当の選手は全体で7名出場しているが、そのうち今大会にもニ大会連続で出場を果たしたのは日本の清宮選手とオーストラリアのジェス・ウィリアムズ選手(Jess Williams…スーパーラウンド日本戦では一番ショート)の二人だけである。その他の国(韓国、アメリカ、キューバ)における高1選手5名が2年後に落選していることは、下剋上の度合いの差だろうか?

2年前の日本開催のU-18W杯において、日本代表はファーストラウンドvsアメリカ戦で好投し勝ち投手になった佐藤世那投手(1997年6月2日生まれ、仙台育英→オリックスバファローズ)が甲子園の決勝vsアメリカ戦でも先発したが、結局は1-2で惜敗の準優勝に終わった。

ご存じだろうか?実はこの2015年のU-18W杯、2013年夏の甲子園優勝投手で埼玉西武ライオンズのルーキーだった高橋光成選手にも出場資格があったことを。前橋育英(群馬)の全国制覇時は二年生エースだった彼は1997年2月3日生まれで、佐藤世那投手よりも誕生日がたった4カ月早いだけという、大会当時は文句なしの18才だった。そして、この大会はプロ選手でも参加可能である。現に、先ほど挙げた大学1年相当の他国選手たちの多くはプロ選手である。

2年前、日本初優勝の最大のチャンスだった日本開催のU-18W杯決勝を甲子園球場で観戦しながら、「(高橋)光成君がこの試合で投げてくれていたら…」と、私は毎回のようにブツブツと”たられば話”をつぶやいていた(笑)。今年だって、早生まれの大学生を数人ばかり動員していれば、決勝にだって行けたかもしれない。

しかし、現状ではこの手のU-18国際大会への参加は、どちらかというと甲子園大会終了後の高校生(特に引退する三年生)に対するご褒美(修学旅行?)という性質も帯びている。その上、大学生は全日本大学野球連盟、社会人は日本野球連盟(JABA)、プロ野球選手は日本野球機構(NPB)といった具合に、それぞれ管轄が分かれている。これだけ担当セクションがバラついていては、日本高野連だけの力ではどうすることもできない。1学年上の早生まれ世代を取り込む横断的ならぬ縦断的な選考を可能にするためには、どうしても連盟同士の横の連携を強化するか、あるいは連盟自体の再編が必要となってくる。

さて、今度は発想を転換し、プロ野球における今年のルーキーの中から早生まれ選手を探してみた。今年プロ入りした高卒新人選手は育成も含めて全44名。そのうち、1999年1月~3月に生まれた早生まれの選手は10名(22.7%)と、予想以上に多い。そのうち、仮に昨年までの甲子園を沸かせた甲子園組だけに絞ってみると、1年夏の甲子園で衝撃デビューの左腕・大江竜聖投手(おおえ・りゅうせい、東東京・二松学舎大付→巨人6位、1999年1月15日生、下写真)、「古都のドカベン」の異名をとる石原彪捕手(いしはら・つよし、京都・京都翔英→楽天8位、1999年3月8日生)、「みちのくのイチロー」と呼ばれてきた三森大貴内野手(みもり・まさき、青森・青森山田→ソフトバンク4位、1999年2月21日生)、「柳田2世」の期待を背負う田城飛翔外野手(たしろ・つばさ、青森・八戸学院光星→ソフトバンク育成3位、1999年3月19日生)と、錚々たるメンバーが並んでいるのみならず、守備位置も投手・捕手・内野・外野と程よく分散している!

(2015年3月25日、選抜大会初戦vs松山東で力投する新二年生の二松学舎大付・大江竜聖投手)

振り返れば今年のU-18W杯、最も困難を極めたのは捕手起用だった。夏の甲子園大会の個人通算本塁打記録を32年ぶりに更新してスターダムにのし上がった中村奨成捕手(広陵)が、甲子園大会の連戦に伴う疲労と怪我に見舞われ、大会途中からはマスクをかぶることもなくなったのは、選考サイドにとっては大誤算だったに違いない。もう一人の古賀悠斗捕手(福岡大大濠→大学進学予定)も浅い捕手歴をものともせず健闘していたとはいえ、先ほどの早生まれの高卒プロ選手の顔ぶれを知ってしまうと複雑である。何せ、楽天新人の石原彪捕手といえば、昨夏の甲子園で京都翔英の四番キャプテンとして打棒炸裂したのみならず、中学時代はれっきとしたU-15日本代表メンバーで、あの藤平尚真投手(神奈川・横浜→楽天1位:1998年9月21日生まれ)とバッテリーを組んでいたという、侍ジャパンの正捕手としてこれ以上は望めない経歴の持ち主であった。2年前の高橋光成投手のケースと同様、観戦しながら「石原君が招集されていたら、アメリカに勝って優勝できたのでは?」という思いがず~っと尾を引いた大会となった。

ちなみに、甲子園出場経験のない高卒プロ選手の中にも、154キロ左腕の古谷優人投手(北北海道・江陵→ソフトバンク2位)や、一昨年秋のノーヒットノーラン男である梅野雄吾投手(福岡・九州産業高→ヤクルト3位)など、上位指名でプロ入りした選手がいる。彼らのような早生まれ世代に、侍ジャパンが門戸を開くことが不可能だというのであれば、もったいないことこの上ない。

しかし、ここでハタと気付いた。もし石原彪選手や三森大貴選手のような大学1年生相当のプロ野球選手と今の高3メンバーがチームメイトになった場合、清宮幸太郎選手(早稲田実)は侍ジャパンのキャプテンには決してなれなかっただろう。何だかんだ言っても、そこは年功序列である。しかし、それでは清宮フィーバーに明け暮れるマスコミにとってはオイシくない(笑)。甲子園では最上級生だった高校3年生がいきなり下級生になってしまうのだから、高3以下は委縮するだろうし、チーム内の力学も変わってしまう。となると、連盟が分かれていようがいまいが、派遣する代表選手は高校生だけで良いという話に帰着する。別に国際大会で勝たなくても思い出作りだけで満足というならそれでも構わないが、本気で勝ちたいのであれば、この「早生まれの高卒ブロアマ一年目」の有効活用に各連盟が待ったなしで連携して取り組まない限り、現実は厳しいままであろう。

なお、高校野球や高校サッカーにおける生まれ月別の出場者数のグラフはコチラの記事(→異例の高さ!”早生まれ率”が示唆するフィギュアスケート選手の資質)に、さらにドイツのブンデスリーガのプロサッカー選手に関してはコチラ(→学校制度と完璧に切り離されたドイツのスポーツ育成制度)に、それぞれ棒グラフが掲載されている。これを見ると、2008年時点の高校サッカーも早生まれが相当な不利を強いられているスポーツのようだ。しかし最近の日本サッカーは、野球界にはない人材発掘の新手法を導入して実際に成功を収めているという。具体的には、末尾参考サイトAの該当部分を以下に引用しよう(引用文は青字、強調は筆者):

日本サッカー協会では、1995年にFIFAのルールに則って、ジュニアユースやユースの代表選手をそれまでの学年別から、1月1日を区切りとするものに変えました。クラブや学校では今までどおり学年ごとにチーム編成がされるため、早生まれは体力面で優る同学年のチームメイトにもまれて練習をしています。心身ともに鍛えられているであろう早生まれの実力に着目し、2003年に初めて早生まれだけを集めた選抜試験を実施。ここで選ばれたのが、内田篤人選手です。

日本サッカー界は、ジュニアユースやユースなどの代表選考を学校の学年から切り離し、1月1日で区切る生年毎の選出に切り替えたという。そして、本来なら国際大会等で相対的に年長となるはずが、学校の学年に沿ったチーム編成だとどうしても発掘が手薄になってしまう「早生まれゾーン」を開拓すべく、早生まれだけを集めた選抜試験を行っているというのだ。サッカーがそのような大胆な改革を行っていることすら私は知らなかったが、これは「本来スポーツは学校制度と切り離されているべきである」と考える欧州の発想にも近く、U-18W杯の野球でも日本以外のほとんどの国が採用している世界的手法である。そして、この「早生まれだけを集めた選抜試験」こそ、今の日本野球界に最も足りない発想であり、浮揚のキーワードでもあると考える。少子化と野球人口減少に怯える日本高野連を始めとする野球関係者は、タイブレーク制導入も結構だが、今年のU-18W杯に楽天・石原彪捕手や巨人・大江竜聖投手を何の支障も無く選出できるような抜本的な構造改革こそ、いち早く取り組んでもらいたい。


<参考サイト>
A) 出産準備サイト - 「早生まれ」に有利、不利はある?代表23人中10人も!日本サッカー界には早生まれの逸材が多数
http://baby.mikihouse.co.jp/information/post-1744.html?utm_source=ycd&utm_medium=display&utm_campaign=baby_mikihouse&utm_content=earlybirth_knowledge
(元々はミキハウスの広告記事だが、本文中に「マンチェスター・ユナイテッド(英)の香川真司選手(3月17日)やキャプテンの長谷部誠選手(1月18日)をはじめ、GKの川島永嗣選手(3月20日)、権田修一選手(3月3日)、DFの今野泰幸選手(1月25日)、内田篤人選手(3月27日)、酒井高徳選手(3月14日)、MFの遠藤保仁選手(1月28日)、青山敏弘選手(2月22日)、FWの柿谷曜一郎選手(1月3日)と、代表選手の半数弱が早生まれ」といった衝撃データが並ぶ)

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