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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2017/09/15

見てきたつもりのU-18野球W杯(1)…いきなりのロストバゲージ報道で思い出したスケートカナダ観戦

花咲徳栄(埼玉)の夏の甲子園初制覇は8月23日のことだった。そして、その前の8月22日から千葉県内で合宿をスタートしていた今年の春夏の甲子園大会から選び抜かれた高校生たちが、甲子園決勝を戦った花咲徳栄と広陵(広島)の2人の合流を待って、20名から成る日本高校球界の精鋭集団として同年代の世界大会である第28回WBSC U-18ワールドカップ(9月1日~9月10日、カナダ・オンタリオ州サンダーベイ)に参加すべく、羽田空港から飛び立って行ったのは8月28日夕刻のことだった。

などと、書くのは簡単である。しかし、夏の甲子園の余韻も冷めやらぬ中、「日本代表、いきなりのトラブル」というニュースが飛び込んできた。どうやら、ロストバゲージに遭ってしまったらしいのである。(以下、リンク先からの引用は青字および赤字で表示。強調は筆者)

週刊ベースボールOnline (2017年8月29日):【侍ジャパンU-18戦記(01)】国際大会いきなりの“洗礼”
http://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=097-20170830-15&from=related_info_column
侍ジャパンU-18日本代表は現地時間8月28日夜、カナダ・サンダーベイに到着した。羽田から経由地・トロントへ。そこからの飛行機はプロペラ双発機の小型機(通路を挟んで座席2列ずつ)だった。
到着ロビーで荷物を待ったのだが、なかなか出てこない。ベルトコンベアが動いてから15分後、ついに“悲劇”の時がきた。日本代表チームの選手、関係者の一部のスーツケースと同行していた報道陣10数名の荷物は結局、届かなかったのだ。
空港関係者の証言によれば、小型機に大量の荷物が乗り切らなかったらしい。
(中略)ちなみに筆者の荷物も届かず、約20時間かけたフライトであったが、着替えはなく、明日も同じ服で現地での練習初日取材を迎えることとなる。侍ジャパン同様、慌ててはいけない。目の前の仕事を粛々とこなすだけだ。


ただでさえ、足掛け20時間のフライトで身も心も疲労困憊だというのに、しかも開幕日を9月1日に控えながら、バットやボールなどの練習道具の一切合切が届かないうえに、4季連続甲子園出場の秀岳館(熊本)コンピとして名高い田浦文丸&川端健斗の両投手のスーツケースも出てこなかったという。羽田空港からトロントまではジャンボジェットだったため問題なかったが、乗り換えたサンダーベイ行きの機材が片側2席ずつしかない小型のプロペラ機で、荷物が大量過ぎて入りきらなかったという。

ここでまず、日本代表御一行様の旅程を公開情報から推定することにしよう。週刊ベースボールの別の記事内の「(航空会社は)カナダ国内で最大規模を誇り、大会の公式スポンサー」「(サンダーベイへの)到着は1時間遅れの24時30分。東京から約20時間の長旅」という2つの記載が手がかりとなり、導き出されたのは以下の旅程である。(いずれも8月28日発、発着時刻はいずれも現地時間)。

フライト1) エアーカナダACA6便
   17:40発 羽田空港(HND)→16:45着 トロント・ピアーソン国際空港(YYZ)
   予定飛行時間:11時間45分
   使用機材 Boeing 777-300ER (座席数400または450)

フライト2) ジャズエアーJZA8545便(8月28日)
   21:20発 トロント・ピアーソン国際空港(YYZ)→23:23着 サンダーベイ国際空港(YQT)
   予定飛行時間:2時間3分
   使用機材:Bombardier DH8D (Q400) (座席数74

おそらく、これで間違いないはずである。上記のうち、ロスバゲ原因となった小型プロペラ双発機はフライト2)のQ400という機材である。ここで、末尾参考サイトAに同機の写真があるので見てみよう↓。

参考サイトAの就航一覧を見ると、このQ400という機材はカナダ国内では主にトロントを起点とする多数の近距離路線に導入され、一日の便数も多い。つまり、ジャンボジェットの路線が大動脈だとすれば、こちらは小動脈として間を細かくつなぐことで、カナダという広大で人口密度の低い国土を効率よくカバーするという重要な役割を担っているのである。

以上をふまえ、写真をよく見て想像していただきたい。この小さな機体に、日本代表選手20名の他、大会役員・スタッフが他国チームの2~3倍に相当する22名(参考サイトB)、その上に報道陣10数名という、大名行列のような御一行が押し寄せてきたのだ。ただでさえ野球道具はかさばるし、これで荷物が入りきるはずがないことは子供が見ても分かる。報道陣といっても色々あるが、活字メディアならまだしも、カメラ機材を持つテレビクルーだった場合はさらに荷物が桁違いに大きくなることは、長年『元祖大食い王決定戦』(TV東京)のロケに帯同してきた私にはそれはもう、見てきたかのように想像できる(笑)。

そもそも、昨年のリオ五輪や今年のドイツでの世界卓球でもさんざん指摘されていたが、「日本という国は、選手の規模に比べて国際試合に帯同する役員や報道陣の数が突出して多い」というのは、海外報道におけるお約束のネタである(→世界卓球の社会学(2)…卓球版ジャパン・パワー!メディアの温度差を憂うドイツ代表監督の恨み節を数字で検証)。今回の日本の報道を見ると「これだから海外は…」という論調が目立つが、どの国にもその国なりの国土の特徴や事情というものがある。せめて、選手の引率役となる最小限のスタッフ以外の連盟役員や報道陣などは別の日ないし別のルートで現地入りしてくれれば…という、エアカナダの心の叫びが聞こえてくるようだ。

(参考サイトCによるQ400の画像。内部は片側2席ずつの全19列から成る。早稲田実・清宮幸太郎君は窓側、それとも通路側?広陵・中村奨成君はドリンクは何を頼んだのかしら?小枝監督は最前列のプライオリティーシートじゃないと収まらないかも!などと連想しながら見ていただきたいところ)

ここで話は一気に飛ぶのだが、この高校野球発の「ロスバゲ騒動」から湧いてきた「エアカナダのプロペラ機」という思わぬキーワードにより、ある懐かしい思い出がよみがえってきた。それは、我が人生初のフィギュアスケート観戦となったスケート・カナダ(2008年10月31日~11月2日)である。

この大会が開催されたオタワ市といえば、今回のW杯野球のサンダーベイと同じオンタリオ州にあり、カナダの首都でもある。当時の私はフィギュアスケートなど、テレビでチラッと見る程度でさほど詳しくもなかったのだが、たまたまドイツからオタワへの出張と日程が一部重なったため、話のネタにと軽い気持ちで足を運んでみた。そこで、まだロシア国籍を取る前の川口悠子さんといきなり言葉を交わしたのを皮切りに(→欧州勢旋風となった2015年世界フィギュアスケート選手権を検証する)、南里康晴さんとも談笑させていただき(→フィギュアスケーターの人生設計を考える(2)…「笑顔炸裂!南里☆康晴」の昔と今、そして未来)、他国の選手に至っては向こうから声をかけてくれたりという、日本では考えられないほどの選手と観客との距離の近さに、一気に開眼してしまったのである。

(上写真左:この大会がグランプリシリーズ初優勝となったロシアペア、川口悠子/アレクサンドル・スミルノフ組。同右:南里康晴さんの応援の横断幕)

そこへさらに決定打となったのが、オタワからドイツへ戻る際の嬉しいハプニングだった。フライトは全てエアカナダで、往路はフランクフルトからオタワまでのジャンボジェットの直行便だったが、帰路はモントリオールで乗り継ぐルートとなっていたのだが、オタワからモントリオールへは40分程度の短いフライトで、使用機材は先の日本代表が乗ったQ400よりもさらに小型のプロペラ機、しかも座席数はQ400のピッタリ半分に相当するたったの37席であった。Q400が小動脈だとすると、こちらはもはや毛細血管のレベルだろうか?

(Bombardier Dash 8-100の画像。同じく参考サイトCから引用)

たった9列しかないこの飛行機は間違いなく、我が人生で乗った最小サイズの飛行機である。ところが、そんな狭い機内の後方の自分の座席でホッと一息ついたと思った直後、いきなり隣に座ってきたのが、スケートカナダに出場して同じく帰路につくセルゲイ・ヴォロノフ選手(ロシア)だっだのだ。慌てて周囲を見渡すと、他にも会場で見かけたスケート連盟役員やジャッジの顔がチラホラ…。まあ、40分のフライトがそれはもう短かったこと(笑)!こちらにせめて片言でもロシア語の能力があったなら、多少のおしゃべりもできたかもしれないが、語学力というやつはいざ必要となった時に限って不足している、というのが世の常である。モントリオール空港でモスクワ便へ乗り換えて行った彼らの後ろ姿を見ながら、外国語というのは一つでも多く習得するに越したことはない、そのためには常日頃からの心がけいかに大切かと骨身に染みたのだった。

(スケートカナダの6分間練習におけるヴォロノフ選手。演技をご覧になりたい方は末尾参考動画参照)

今回のロスバゲ報道に「片側2席の小型プロペラ機」という単語が無かったら、こちらは2017年の今にもなって、とっくに記憶の底に沈んでいた9年も前のフィギュアスケート観戦のハプニング、それも清宮&中村からいきなりセルゲイ・ヴォロノフに”飛んで”しまうことなど決してなかったはずである(笑)。なお、2008年のスケートカナダで観た選手の多くが既に引退しているにもかかわらず、今年の10月でついに三十路を迎えるセルゲイ・ヴォロノフ選手は今も現役かつロシア男子としてはまだまだ先頭集団で踏ん張っているというのは、「袖触れ合う」だけの縁だったとはいえ、実に嬉しい限りである。

来たる2018年平昌五輪(韓国)におけるロシアの男子シングル出場枠は2であり、今のロシア男子に突出かつ安定した実力者がいないことと、ヴォロノフ選手のこれまでの実績と実力を考えれば、「三十路にして初の五輪出場」は決して非現実的な話ではない。野球の話から妙な方向に”着地”するようで恐縮だが、思いがけずカナダでの素敵な記憶が呼び起こされてしまった以上、オリンピック出場のかかるフィギュアスケートの2017-2018シーズンにおいてはロシア男子シングルの動向にも注目せねば…との思いを新たにした次第である。


<参考サイト>
A) Flight Aware - de Havilland Dash 8-400 (C-FSRY)
https://fr.flightaware.com/photos/view/2857935-779b789488c5a2969d1af7ccdfb08b70f951c93a/aircrafttype/DH8D/sort/date/page/1

B) WBSC公式ホームページ - U-18 World Cup 2017 Roster - Japan
http://www.wbsc.org/tournaments/2017-u18-baseball-world-cup/rosters/team/1327/

C) Air Canada - Our Fleet
https://www.aircanada.com/ca/en/aco/home/fly/onboard/fleet.html#/!aircraft@dh4k
(エアカナダが採用している全機材の説明や画像が充実)

<末尾参考動画>
YouTube - Sergei VORONOV SP 2008. skate canada
https://www.youtube.com/watch?v=INAOheG4s5g
(当時21才。この大会では6位となった。この人物が数日後いきなり隣に座ってきたらどれほどビックリするか、想像しながら見ていただきたい)

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