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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2017/09/01

<号外>関東勢と大阪桐蔭しか優勝できない?!夏の甲子園をじわじわ襲う「寡占」の正体

まずは、下の写真をよ~くご覧ください↓。

甲子園球場の一塁側入場門向かいに掲示されている、夏の甲子園大会こと全国高等学校野球選手権大会の歴史を紹介したパネル4枚を左上から右下へ順に並べてみました(上写真)。この場所は普段のプロ野球開催期間中は阪神タイガースの選手や監督のパネルがズラリと並ぶコーナーなのですが、高校野球の大会期間中は全て甲子園大会関連の内容に貼り替えられます。1枚で2年分、5枚で10年分となる直近10年の大会結果や当時の新聞記事を掲載したパネルのうち、上写真は最新の4枚(過去8年分)に相当します。これを見て、何か気づかれることはありませんか?そうです、優勝校の顔ぶれにみられる法則性です。ということで、まずは球場に貼り出されていた過去10年分の優勝校名を以下に書き出してみましょう。

2007年(第89回大会) 佐賀北(佐賀)
2008年(第90回大会) 大阪桐蔭(大阪)
2009年(第91回大会) 中京大中京(愛知)
2010年(第92回大会) 興南(沖縄)
2011年(第93回大会) 日大三(西東京)
2012年(第94回大会) 大阪桐蔭(大阪)
2013年(第95回大会) 前橋育英(群馬)
2014年(第96回大会) 大阪桐蔭(大阪)
2015年(第97回大会) 東海大相模(神奈川)
2016年(第98回大会) 作新学院(栃木)

そして今夏の第99回大会が花咲徳栄(埼玉)…ここまでくればもうお分かりですね。2010年の興南(沖縄)の春夏連覇を最後に、今年まで7大会連続で、夏の甲子園では見事なまでに関東勢(上では赤太字)と大阪勢(同・青太字)しか優勝していないのです!これはかなり衝撃的な現実でありながら、あまり誰も指摘していないのが不思議です。私自身、上写真の一連のパネルを漫然と眺めていて初めて気づいたので、このことが世間的にあまり認知されていないとしても無理はありません。

ちなみに、大阪「勢」とざっくり表現してしまいましたが、内訳は大阪桐蔭ただ一校であることにも、微妙なものを感じます。さらに遡っていくと、上記リストより前の2006年夏の第88回大会優勝はハンカチ王子フィーバーの早稲田実(西東京)、その間に駒大苫小牧(南北海道)の2連覇(2004年・2005年)を挟んだ2003年優勝が常総学院(茨城)、さらに2002年優勝の明徳義塾(高知)を挟んで2001年優勝が日大三(西東京)といった具合に、夏の覇者にはどうしたことか、東京圏のチームがこれでもかと続きます。

それにしても、「関東+大阪桐蔭ばかりが優勝」とは、何か深刻な「寡占」の時代が高校野球に到来したという意味なのか、それとも単なる偶然なのか…?大いに気になったので、少し対象を広げて「関東勢+近畿勢」による夏の大会の優勝を数えてみました。すると、以下のような興味深い数字が出てきます。

<甲子園優勝校に占める「関東勢+近畿勢」の比率>
戦前(1915~1940年):40%
戦後復興期(1946~1966):42.9%
過去50年(1967~2017):72.5%

こうして見ると、1967年(昭和42年)夏の習志野(千葉)の優勝の頃を境に数字が一気に跳ね上がり、高止まりして現在に至っており、1967年あたりが日本の高校球界にとっての大きなターニングポイントであることが明らかです。中でも、「関東+近畿」による優勝旗の独占傾向が特に顕著な時期が2つあり、”1998~2001年”の4大会と、現在も含む”2011~2017年”の7大会で、いずれも関東・近畿優勝率はズバリ100%です。

反対に、「関東+近畿」の優勝率が最も低かったのは、”2002~2010年”の9大会における33%という数字です。この頃といえば、「駒大苫小牧2連覇」「佐賀北がばい旋風」「興南春夏連覇」が強烈な記憶として残り、準優勝校を含めても決勝戦におけるフレッシュな顔ぶれが特に目立っていた時代でした。昔の「西高東低」「雪国が不利」とされた時代がウソのように、どの地区が優勝してもおかしくないと本気で思えるような、高校野球の歴史の中でも全国的な平準化と実力拮抗が実現できていたこの8年間を、「高校野球版・多様性の時代」と命名してもよいかもしれません。言うなれば、これも一種の「日本版・フィールファルト」でしょうか(笑)?(当コラムの頻用単語である「フィールファルト」の本来の意味についてはこちらの記事を参照:→日本版フィールファルト時代到来?!黒人系ハーフ選手が牽引する現代日本の高校野球、→ポルトガルEURO初優勝!データから浮上した欧州サッカーの強さのキーワードは「フィールファルト」だった!

もっとも、全国大会で優勝できるか否かは、実力のみならずクジ運などの偶然にも左右されて決まるのが常であり、甲子園の高校野球とて例外ではありません。昨年のサッカーのUEFAユーロ2016(欧州選手権)がいい例で、現役世界王者として臨みながら、強豪ばかりがひしめく「死の山」を引き当てた挙句に決勝に行く前に力を使い果たして準決勝敗退に終わったドイツ代表のようなケースもあれば(→決勝トーナメント進出の立役者!チョコのパッケージで学ぶマリオ・ゴメス選手ら移民系ドイツ代表の子供時代)、グループリーグで一勝もできなかったのに、そんな強豪同士のつぶし合いを横目に決勝トーナメントでは生まれ変わったような快進撃で一気に欧州王者に輝いたポルトガル代表のようなチームもあります(→サッカーEURO 2016出場選手データに見る大会の特徴と2014年W杯との相違点、→ポルトガルEURO初優勝!データから浮上した欧州サッカーの強さのキーワードは「フィールファルト」だった!)。

しかし、最近の高校野球では、上位に行くほど番狂わせは起きにくくなっているのかもしれません。今夏の決勝戦における広陵(広島)のなすすべもないほどの大敗によって、花咲徳栄(埼玉)の優勝は7年連続となる「関東+近畿」による優勝の寡占の系譜の中でも強烈な記憶となりました。では、甲子園で関東や近畿が有利なのはどうしてでしょうか?私見ですが、最も考えられる理由としては、都道府県が比較的密に隣接し交通網も発達しているために練習試合の相手探しや移動に有利であること(高校野球の場合、県予選で対戦しない他府県の同レベルのチームといかに多く練習試合をこなすかが重要!)と、プロは言うに及ばず大学・社会人野球のチームも多いという、練習環境や情報収集面での地の利が大きいことが挙げられますが、もう一つ無視できない世相の変化として、2007年のサブプライムローン問題に引き続くリーマンショックに端を発する不況を前段階として、2011年の東日本大震災以降に野球留学における人の流れが大きく変わったことが一因ではないかと私は疑っています。

余談ですが、最近オンエアされたクイズ番組「Qさま!!」(テレビ朝日)の高校生大会において、決勝進出の3名が在籍する高校が東京(開成)・奈良(県立奈良)・大阪(大阪星光学院)だったのは象徴的でした(最後は大阪が優勝)(参考サイトA、B)。まさか、クイズの世界にも「関東+近畿」ないし「首都圏+一部の大都市」による寡占があるという訳ではないのでしょうが、ちょうどこの記事を執筆していた頃のオンエアだったので、ついつい関連づけて考えこんでしまいました。

ここにきて甲子園の高校野球における傾向として顕在化しつつある「寡占」の足音が、高校生のお勉強の世界にもひたひたと忍び寄っている…という可能性はないのでしょうか?「野球」も「お受験」も、それなりのおカネがかかる世界であることは共通で、少子高齢化や経済トレンドの影響の受け方も似通っているとしても不思議はありません。このあたりについては、是非とも一度、受験指導に長年携わってきた専門家の意見を聞いてみたいところです。


<参考サイト>
A) まとめ(2017年8月28日):Qさまの高校生学力王No.1決定戦2017の優勝者は?決勝は奈良高校vs星光学院vs開成高校に
http://matomame.jp/user/arieru555/3b2ae84e33515c790edd

B) テレビ朝日ホームページ - 「クイズプレゼンバラエティQさま!!に出演したい高校生大募集!!」
http://www.tv-asahi.co.jp/qsama/contents/pop/160803_bosyu/
(「全国の主要都市で予選会を実施。筆記テスト、早押しクイズ、面接などを行い、その総合得点で 出場者を決定!」とあり、高校野球の地区予選のような戦いを勝ち抜くようです。甲子園に相当する本選の収録日は8月3日だったとのこと)

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