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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2017/03/03

日本初公開?!「ドイツ風スキヤキ」の仰天レシピ

あなたはすき焼き派ですか?それともしゃぶしゃぶ派?そのように聞かれたら、皆様それぞれに持論やこだわりがあるのではないかと思います。中には、”鍋奉行”として幾多の宴会を仕切ってきた豊富な経験から、延々とウンチクを語り始めたら止まらない方も、日本ではお目にかかることが珍しくなさそうです。

しかし、ドイツではどうでしょうか?スキヤキといってもまるで知名度がなく、せいぜい音楽ファンの間で「全米1位となった歌のタイトル」という程度の認識があるかどうかという状況です(『スキヤキ』とは坂本九さんの『上を向いて歩こう』の英語圏でのタイトルで、ビルボード誌の全米チャート1963年6月15日より3週連続1位を獲得)。そういえば以前、我が家主催のパーティーでちゃんこ鍋をふるまったことがあるのですが、「オー、私たちはいま、スモウ・レスラーの食べ物を味わっているのデスネ~!」「こうしてお肉にありつけるというのは、私ってヨコヅナってことかしら~?」などと、ドイツのお客様方が日本では考えられない程のハイテンションな盛り上がりを見せたことを思い返します。

どうしてこのような話をしているのかと言うと、当コラムでも頻出のドイツの朝の情報番組「Volle Kanne」(ZDF)で、2月初めにこのようなお料理を紹介していたからです↓:

「今日はアジア特集、それも日本の伝統料理を取り上げます。その名も、スキヤキです!」

そのような前置きからスタートした番組専属コックのアーミン・ロスマイヤー氏、番組内でお料理を実演してくれます。しかし、よく見ると、手元にあるのは中華鍋!うーん、さすがにすき焼き鍋はドイツには無かったか…、それでも、パエリア用の鍋やグリル用キャセロールとかならドイツにもあるのに…などと、冒頭からツッコミの余地がありありです。この調子だと、一体どんな料理が作られるのやら…不安が広がります。そして、実際のところ、紹介されたのは「日本のすき焼き」とは似ても似つかない、まさに「ドイツ版スキヤキ」と呼ぶしかない鍋料理だったのでした。

これは日本人としても黙っていられない!と当初はキリキリしていた私ですが(笑)、意外と作ってみたら美味しいということだってあるかもしれません。ということで、以下にその華麗なレシピを番組映像からのスクリーンショットとともに解説し、日本の皆さまの審判を仰ぎたいと思います。(以下、レシピ及び画像は全て末尾参考サイトからの引用。なお、赤字は最初にオンエアを見た際の筆者のツッコミ)

<ドイツ風スキヤキ 4人前>(1人当たり463kcal、脂質16g、タンパク質61g、炭水化物19g)
~材料~

ランプステーキかたまり 640g (Rumpsteak am Stück)(A:上写真左上)
B) にんじん 140 g (Karotten)
   たまねぎ 120 g (Zwiebeln)
   ネギ 120 g (Lauch)
   マッシュルーム 120 g (Champignons)(B:上写真右上)
C) もやし3 EL (Mungobohnen-Keimlinge)
   タケノコ水煮 80 g (Bambusstäbchen Konserve)
   生姜 大さじ1杯 (frischer Ingwer)
   チューブわさび 小さじ1杯 (Wasabipaste)
   春雨 60 g (Glasnudeln)(C:上写真左下)
D) ほうれん草 60 g (Blattspinat)
E) ブイヨン600 ml (Rinderbrühe)
   濃口しょうゆ 大さじ1杯 (dunkle Sojasauce)
   照り焼きソース 大さじ2杯 (Teriyaki Sauce)(D・E:上写真右下)
その他) ピーナッツオイル 大さじ1.5杯 (Erdnussöl)
      塩・コショウ 適宜
      卵 (お好みに応じて)

~作り方~(所要時間60分)
1) まずA)の牛肉塊(ランプステーキ)を冷凍で半凍結の状態にしてから、カルパッチョのように薄くスライスしておく(下写真)。(←ドイツでは基本的に肉はブロックで量り売りされており、スライスを依頼すると単価が上がる。なお、スライスといってもせいぜいステーキの厚さで、日本のような薄切り肉は販売していない。もっとも、パンの国だけあって、どこの家庭にもパン用スライサーならある。従って、欧州在留邦人がすき焼きやしゃぶしゃぶを用意する際の常として、ブロック肉を買ってきて自宅で冷凍し、手で切るかスライサーで切るのが相場である)
さらにB)のにんじん・たまねぎ・ネギ・マッシュルームも食べやすいサイズに切っておく。

2) 中華鍋に火を入れ、ピーナッツオイルをひく。(←日本での定番である「和牛の牛脂」って訳にいかないのは仕方がないものの、なぜにピーナッツオイル?しかも、中華鍋が出てきた時点で、悪~い予感が…笑)

3) 切っておいたB)(にんじん・たまねぎ・ネギ・マッシュルーム)を鍋に入れて炒める。

(↑ドイツのスーパーはどこでも普通にシイタケを売っているのに、ここではマッシュルーム。おそらく、シイタケは輸入物しかないけれど、マッシュルームなら国産・地場モノが豊富にあるから、という理由と思われる)

4) 炒めた野菜にD)のブイヨン600mlを注ぐ。(←ん?スープ仕立てにするのか?)

 5) さらにD)の濃口しょうゆ(大さじ1杯)→照り焼きソース(大さじ2杯)を順に入れる。(←すごい色になってきた)

 (まさか、「ブイヨン+しょうゆ+照り焼きソース=すき焼きの割り下」という公式?そういえば材料欄に砂糖も日本酒も入っていないとは思ったが、果たして照り焼きソースでその代用になるのやら?)

6) ここにD)のほうれん草を加え、さらにC)のもやし、タケノコ水煮(千切り)、生姜(千切り)も入れる(←どう見ても東南アジア料理にしか見えなくなってきた!)。最後に、チューブのワサビ(下写真のスプーンの先からのぞいている)を割り下のようになった煮汁に溶け込ませる。(←そもそも、すき焼にわさびって?)

7) 最後にC)の春雨を加え、全体を混ぜる。(←ドイツでは糸こんにゃくもくずきりも簡単には手に入らない代わりに、東南アジア料理用の春雨ならどこのスーパーでも売っている)

 8) 塩・コショウで味を調える。(←すき焼きにコショウ?日本では肉に砂糖をまぶすことはあっても、コショウの出番は見たこともないんですが、合うのか?)

 

9) 1)でスライスしておいた薄切り肉を上に敷き詰める。なお、お好みで、肉は溶き卵に漬けてから鍋に入れてもよい。(←その溶き卵の使い方だと、牛肉のピカタになってしまうのでは?まあ、日本以外の国では生卵をそのまま食べるのは衛生上の観点からご法度なので仕方がないかも)

肉は薄くてすぐに火が通るので、鍋上でサッと裏返して出来上がり↓。(←うーん、完全に日本のすき焼きから脱線して、全く別の無国籍料理が誕生!)

 以上です。料理の所要時間が60分となっているのは、ランプステーキ肉を冷凍庫に入れてからスライスする時間も含まれているようです。日本のように元々スライスされた肉を売っている国であれば、所要時間は大幅に短縮されるでしょう。

お料理の方はいかがでしょう?パッと見た第一印象は「南蛮ソバの具材?」でしょうか。どうひいき目に見ても、わが国のすき焼きとは全く別物の「牛肉と野菜の炒め煮」としか思えません。かつて、『世にも奇妙な物語 2009年秋の特別編』(フジテレビ、2009年10月5日オンエア)のひとつで『理想のスキヤキ』というエピソードがありましたが(名作です!)、そのタイトル映像(下写真)と比べても、まるで別物です!この作品で伊藤淳史さんが演じた主人公のように、すき焼きに対して尋常ならざるこだわりがある人なら、今回のブイヨンとしょうゆと照り焼きソースを混ぜてワサビとコショウで仕上げたスープを見ただけで、怒り狂ってテレビを蹴り倒してしまいそうです。

(末尾参考サイト参照。この作品には「ドイツ人じゃあるまいし!」というセリフが出てくるが、まさか今回のドイツ版スキヤキの伏線?笑)

なお、お値段の方はどうでしょうか?折しも、先週のコラムでランプ(牛の尻肉)という単語に言及したところでした(→健康に良くても環境に悪い?!悩ましき「アボカド・パラドックス」)。この「ドイツ版スキヤキ」の材料として今回紹介したドイツのランプステーキ肉の価格は、だいたい1キロあたり2000円程度です(量販スーパーか個別の肉屋か、地方かと都市部かに応じて13~25€などまちまちだが、最多価格帯は17€前後)、農薬・抗生物質・ホルモン剤等を仕様しないBIO肉の場合はその約2~5割増となります。日本の国産牛肉に比べてはるかに安いのは間違いありませんが、お肉を自分でスライスしなくてはならないのは少々面倒です。

とは言っても、ドイツで手に入らない食材や調味料で作り方を教えられても、ドイツの人々にはどうすることもできません。近所のスーパーで容易に手に入るものをだけを用いて、何とか工夫を凝らしつつ、はるか極東の日本の伝統料理らしきものを我が家の食卓に再現してみたい…という発想自体は、一人の日本人として嬉しいやらありがたいやらです!コショウやワサビが入っても良いではありませんか!逆の発想で、日本のすき焼きにレモングラスやパクチーを入れたらどんな味になるのか、これまた実験してみるのも悪くないかもしれません!

ということで、この「ドイツ版スキヤキ」、私もチャレンジしてみました!砂糖や日本酒もなければ出来合いの「割り下」も「すき焼きのタレ」も一切用いず、純粋にZDFのホームページやロスマイヤー氏の語る映像通りのレシピを自宅で再現してみました。違いといえば、タケノコ水煮が手に入らなかったので黄色のパプリカで代用したことと、春雨の代わりに日本のくずきりを仕様したことと、キノコを割愛した位ですが、こんな感じに仕上がりました↓:

百聞は一食に如かず?この「ブイヨン+しょうゆ+照り焼きソース+ワサビ」、実際に作ってみると結構イケます!しかも、このお料理のポイントは生姜だったようです。スペイン産の生姜をほんの一片入れただけですが、これが新鮮なアクセントとなり、しかもワサビとの不思議なハーモニが肉やにんじんの臭みを見事に打ち消し、食後も胃もたれせず、サッパリとした食後感が残るのです。さすがはZDF「Volle Kanne」の専属コックとして長年にわたり第一線で活躍してきたアーミン・ロスマイヤー氏のレシピ、ハズレがありません!先程までの怒涛のツッコミはどこへやら(笑)、おそらくこの「ドイツ版スキヤキ」は日本でもドイツでも、我が家の定番料理としてローテ入り間違いなしです!そして、今後もZDFの同番組からオススメのレシピがあれば、いずれ当サイトでも是非紹介したいと考えています。


<参考サイト>
ZDF Volle Kanne(2017年2月2日):Sukiyaki - Eintopf auf japanische Art
https://www.zdf.de/verbraucher/volle-kanne/einfach-lecker-sukiyaki-100.html
(ビデオ公開期限は2018年2月2日。日本からも視聴可能)

世にも奇妙な物語タイトルリスト - 2009 秋の特別編
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Studio/8295/ep115.htm

世にも奇妙な物語データベース 第435話 理想のスキヤキ
http://yonikimo.com/435.html
(あらすじが掲載されている掲示板)

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