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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2016/12/23

フィギュアスケート・フランス杯観戦記(3)…全日本フィギュア開幕!フランス杯での浅田真央選手を振り返る

この記事が掲載される12月23日の天皇誕生日といえば、全日本フィギュアスケート選手権(12月22日~25日、大阪府門真市・東和薬品RACTABドーム…旧・なみはやドーム)がちょうど開幕したばかりで、夕方からは全国民が固唾をのんで注目するであろう男子ショートプログラムが始まるというタイミングです。今年で第85回を数える長い歴史を誇るこの大会の出場者のうち、私が先月フランスのパリで直接観戦したグランプリシリーズ・フランス大会(トロフィー・ド・フランス、以下フランス杯)にも出場したのは、男子シングルの無良崇人選手(洋菓子のヒロタ)、女子シングルの浅田真央選手(中京大学)、永井優香選手(駒場学園高校)、樋口新葉選手(日本橋女学館)の計4名です。フランス杯でシニアグランプリシリーズ初参戦ながらいきなり表彰台(3位)の快挙となった樋口選手、同じフランス杯で逆に極度の不振でそれぞれ9位と10位に終わった浅田選手と永井選手、そしてショート・フリーともに失敗が響き5位に終わった無良選手…あれから1ヶ月余りを経て心機一転、彼らの全日本フィギュアにおける戦いぶりも目が離せないところです。

(左:樋口新葉選手、右:永井優香選手。フランス杯女子シングル・ショートプログラムの第2グループ選手紹介時)

さて、先週までの2週に渡り当コラムで紹介して来たフランス杯ですが(→フィギュアスケートGPフランス大会観戦記(1)…グランプリ・ファイナル出場選手を一挙紹介!男女シングル編、→フィギュアスケート・フランス杯観戦記(2)…グランプリ・ファイナルでも活躍した選手を紹介!ペア・アイスダンス編)、いささか残念なことが3つありました。まず1番目は、コチラです↓。

左上写真は、ちょうど3年前の2013年11月16日に同じアイスアリーナで行われた同大会の様子、右上写真は今年の11月12日の同大会の様子です。左の方がシックで落ち着きがあって良かったように見えませんか?

理由として、3年前当時は「パレ・オムニスポール・ド・パリ・ベルシー」(ベルシー体育館)と呼ばれていた同アリーナが丸2年以上かけた改修工事を終え、命名権の関係で今年から「アコール・ホテル・アリーナ」へと改称、それに伴いあのトレードマークだった赤い座席が全てダークグレーに変わったこと、そして何よりも、それまで冠スポンサーだったエリック・ボンパール社が降板したことがあります。高級カシミア会社のイメージからか、「エリック・ボンパール杯」だった時代の同大会はリンクのフェンスを濃紺、広告看板をライトブルーに白字で統一するという色の規制をかけており、これが赤い座席と白い氷とよくマッチしてそのままフランス国旗を想起させる絶妙さがありました(左上)。以前のコラムでも紹介しましたが、あの赤い看板で有名な「アコム」ですら問答無用で青くさせられていたのですから、大したこだわりです(→番外編(2)…フィギュアスケートのリンク壁面広告にみるジャパン・パワーの圧巻)!この色規制は、改修工事期間中にフランス南西部のボルドーで開催されていたエリック・ボンパール杯でも同様でした。(→世にも奇妙なフランス・ボルドー体験(1)…テロの影響で中止となったエリック・ボンパール杯に行ってきました、→グランプリシリーズ・フランス大会発祥の地!ボルドー開催のエリック・ボンパール杯に行ってきます!、→エリック・ボンパール杯観戦記(2)…演技そっちのけで視線釘づけ?ジャッジのお仕事が面白すぎる!エリック・ボンパール杯(4)…ボルドーだからこそ図らずも見えてしまった選手の舞台裏の姿が面白すぎる!今度はチェコ版・菅原初代を発見!フィギュアスケート界は大食いソックリさんの宝庫?

それが、3シーズンぶりにパリに戻ってきたら色規制は撤廃、色とりどりの広告がちりばめられたフェンスは他の大会と変わりばえもせず、おフランスならではの独自性もシックさもエスプリも、何もかも消えてしまいました(涙)。来年以降、あのフランスらしさを取り戻してくれそうな企業がスポンサーについて以前のようなスタイルに戻してくれることを祈るばかりです。

(エリック・ボンパール社、市内観光バスの車体広告からは撤退せず!凱旋門前のパリらしい雰囲気に今も一役買っています)

2番目に残念だったのは、コチラの選手の不振でした↓。

皆さまもご存じの通り、浅田真央選手です。3年振りのパリ開催となったこの大会には、目を疑うばかりの大勢の日本からの観客の姿がありました。それも、欧州開催の他の大会では日本人観客はほぼ女性に偏っているところを、この大会では男性も多く年代も幅広かったのは、やはりフィギュアスケート界きっての国民的人気を誇る浅田真央選手ならではの「真央ちゃん効果」でしょうか?そういえば、彼女のシニアグランプリシリーズ初制覇が他ならぬこのフランス大会のこのベルシー・アリーナであり、2005年の衝撃シニアデビューとそれに引き続くグランプリファイナル制覇から早いものでもう11年になります。ひょっとして、その頃からのコアなファンが「パリで見る彼女の勇姿はこれが最後になるかも」という一抹の危機感を抱き、万障を繰り合わせた末に集結したのかもしれません。

ちなみに、私が浅田真央選手の演技をこの目で見るのは、実は今回が全く初めてでした。これまで8年ほど、アメリカ・カナダ・中国・フランスと、幾多のグランプリ大会やその他の大会を現地観戦してきた私ですが、不思議と浅田選手とは縁がありませんでした。ですから、浅田選手が女子シングル・ショートプログラムの第一グループとしてリンクに登場(左下写真の左から3番目)、選手紹介の後に6分間練習が始まると、その姿に少なからぬショックを覚えることになりました↓。

第1グループで浅田選手と一緒に6分間練習したのは、グレーシー・ゴールド(アメリカ)、エフゲニア・メドヴェージェワ(ロシア)、ガブリエル・デールマン(カナダ)、アリョーナ・レオノワ(ロシア)、そしてパク・ソヨン(朴小宴/박소연、韓国)という顔ぶれです。彼女たちは確かに各国を代表するトップクラスの選手ですが、それにしても彼女たちに混じった浅田選手、スケーティングがあまりにも遅い!「えぇっ、真央ちゃんってこんなにスピード無かったの?」と、それまでを見たことが無いだけに愕然としてしまいました。真央ちゃんのアップばかり追いかけるテレビ画面では分かりにくいかもしれませんが、現地で直接見ていれば、他の選手とのスピード差は気付きやすいものです。そして何よりも、真央選手、体が重そうで動きにキレがありません(左下写真)。体調もすぐれなかったのかもしれません。そんな真央選手を見守る佐藤信夫コーチも、表情に不安の色が見えます(右下写真)↓。

そのとき、私の隣に座るスコットランドから来たというスケート観戦歴ン十年という見知らぬおばあちゃんが、いきなりこちらに話しかけてきました:

おばあちゃん 「マオは昔はもっとスピードがあったのに。昔はできたことが、今の彼女にはできなくなっちゃったのかしら?」

昔できたことができなくなった…そう言われることが浅田真央選手は一番嫌いなのではないか?だからこそ、良い時も悪い時も、これまで頑固一徹なまでにトリプルアクセルにこだわってきたのでは?そして、ソチ五輪後のブランクをモノともせずに果敢に現役復帰してきたのではなかったのか?かねがね勝手にそう推察してきた私は、思わずムキになってこう反論してしまったのでした。

私 「日本の報道によると、彼女は左膝を痛めているそうですよ」
おばあちゃん 「あら、そうなの?知らなかったワ」

ちょっと語気が強かったかな?年配の方に対して失礼だったかな?そう反省しつつ、2日間に渡り浅田選手の演技を見届けました。そして、その演技を見終えた私はさらに考え込むことになります。

上はフリー演技中の浅田選手のアップライトスピン(左上写真)とビールマンスピン(右上写真)です。アップライトスピンでのレッグポジションもビールマンスピンの方もギリギリ感があり、膝の故障以外にも以前からの持病と報道されてきた腰痛も懸念されます。それに、ビールマンスピンが片手ではなく両手でした。通常のビールマンスピンは右上の写真ように、スケート靴のブレードを両手で持ったまま片足を背後から大きく頭上に上げてスピンします。しかし、それを両手ではなく片手でヒョイと上げて回る「ワンハンド・ビールマンスピン」こそ、これまでは世界でも浅田選手以外ほとんどできない離れ技とされ、「トリプルアクセル」と並ぶ彼女の代名詞でもあったはずでした。残念ながら、長年このベルシー・アリーナを沸かせてきたかつての出来栄えと比べて、この2日間の彼女のコンディションがほど遠かったのは事実でした。

それでも、演技終了後は割れんばかりの拍手、そして、他の選手を軽~く凌駕する圧倒的多数の花束やプレゼントが投げ込まれ、その人気の絶大さは今も健在かつ最強であることもまた確かでした↓。

結局、ショート・フリーともに得点は伸びず、総合得点161.39(ショート、フリー100.10)で9位に終わった浅田選手の6シーズンぶりのフランス杯でした。

(左上写真のキスアンドクライの背面パネルに書かれた「LES MEILLEURS PATINEURS MONDIAUX」とは「世界最高のスケート選手たち」という意味です。現役世界王者のハビエル・フェルナンデス選手にエフゲニア・メドヴェージェワ選手にパパダキス/シゼロン組といい、浅田選手といい、新旧の世界チャンピオンが集結するこの大会に相応しい看板と言えるでしょう。右上はフリー演技の得点発表時のキスアンドクライでの佐藤コーチと浅田選手のツーショット)

ところで、この大会で私が浅田選手以上に目を奪われたシーンがありました。それは、コチラの人物によるコチラの光景です↓。

ピントがうまく合わずにブレていますが、キスアンドクライからの段差を降りる浅田真央選手に対して佐藤信夫コーチが手を差し伸べて支えている決定的瞬間です(上写真)。うーん、さすがは佐藤コーチ、レディを守るジェントルマンはこうでなくっちゃ!大会中ずっと見ていましたが、レディが階段を下りる時に手を貸すなどというジェントルマンぶりを見せたのは、この佐藤コーチとアイスダンスのエレーナ・イリニフ/ルスラン・ジガンシン組(ロシア)のルスラン・ジガンシン君の2人だけでした↓。

(左の青いジャージを着て背を向けているのがルスラン・ジガンシン。彼らのコーチは女性2人で、片やメタボ、もう一人は超メタボ!このため、上写真のように、ルスラン君は毎回女性コーチが階段を降りる度にジェントルマンと化すのでありました!ただし、カップル相手のエレーナ・イリニフさんの方は勝手に一人でスタスタと退場してしまい、手を差し伸べるスキもありませんでしたが…笑。なお、真ん中の黒いスーツに白い袖の女性は先週のコラムで取り上げたマリー・フランス・ドゥブレイユ氏です:→フィギュアスケート・フランス杯観戦記(2)…グランプリ・ファイナルでも活躍した選手を紹介!ペア・アイスダンス編

話が脱線してしまいましたが、浅田真央選手の全日本フィギュア選手権登場はもうすぐです。この全日本の成績次第では彼女の2016/2016シーズンが終わってしまうというのだから、百戦錬磨のベテランの域に入っている26才の浅田選手にとってはここがまさに踏ん張りどころです。フランス杯での苦戦からは1ヶ月以上が経過しました。過去に6度の優勝を含む11度の表彰台に乗った実績を糧に、フランスでの経験が決して無駄ではなかったと思えるような年末の巻き返しを是非とも期待したいところです。

さて、フランス杯で残念だったことの3番目については、年内最後となる来週のコラムに続きます。


<参考サイト>
日本スケート連盟 - 第85回全日本選手権大会
http://www.jsfresults.com/National/2016-2017/fs_j/nationalsenior/index.htm
(エントリー、滑走順、得点結果などが速報されるサイト)

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