Nagoya Talents' Network - タレコラ

Dr.片山晴子 RSS Feed

金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2016/11/18

ドイツで見届けたアメリカ大統領選(1)…ブレグジット・アゲイン?!お通夜のような画面で始まった朝

先週の記事の執筆時はまだ結果が出ていなかったアメリカ大統領選ですが、ご存じの通り不動産王で共和党候補のドナルド・トランプ氏が民主党候補のヒラリー・クリントン候補を破り、第45代アメリカ大統領に選出されました。ドイツの人々の多くはヒラリー・クリントン氏の勝利を何の疑いもなく信じていたようで、朝起きてテレビのスイッチを入れた瞬間に思わず目をこすったりメガネを探しに走った人は一人や二人ではなかったと思われます。(→「女ラスプーチン」騒動の後日談…韓国スキャンダルの報道姿勢にみるドイツマスコミの本音と教訓

ちなみにアメリカとドイツの時差は、最も早い東海岸で6時間、最も遅い西海岸で9時間です。つまり、アメリカで11月8日の火曜日の朝に投票開始で夕方開票開始だとすると、だいたい早い州から結果が出始めるのがドイツ時間だと夜中の二時とか三時とかです。そこまで情熱的にアメリカの大統領選に関心がある訳でもないのと、何と言っても翌日の11日9日にはフランスに移動しなければならなかったため、私は夜中の選挙特番を見るつもりも興味もサラサラないまま早々と布団に入って爆睡しておりました。そして、まだ起床予定時間には早すぎたものの、たまたま5時半過ぎに目が覚めたので、「どーなったか、ちょこっとだけ結果を見るかな?」などと思い立ちテレビをつけたのが運の尽き、このような画面に出くわしてすっかり眠気が吹っ飛んでしまったのでした↓。

(公営第二テレビZDFの深夜選挙特別番組「Die Nacht der Entscheidung(判定の下る夜)」の早朝5時40分頃の画面より)

この画面の右上には、赤の共和党トランプ候補の獲得選挙人数が229、青の民主党ヒラリー候補が209とあります。見ての通り、この時点でも既に勝負は決したも同然でした。それまでの大手メディアの論調や各種世論調査とは正反対というこの結果に、多くの人々は青のバーと赤のバーの長さの比率は逆の間違いではないかと目をひん剥いたりテレビ画面を雑巾で拭いたりしていたことでしょう(笑)。しかし、私はどちらかというと、別の所に目が行っていました。上画面において、ソファーに座る司会者やゲストなどの登場人物の服装が妙に黒っぽく、まるで喪服のようだったことです。

手前のミニサイズのアメリカの旗が大写しになった瞬間、思わず”食いだおれ人形”を連想してしまった私はやはり関西人でしょうか、それともまだ寝ぼけていただけでしょうか(笑)。それはともかく、その後方に座る一般観覧者も誰かが死んだのかと錯覚するほど雰囲気が暗く、何だか目もうつろです(上写真)。まあ、トランプショックというよりは、夜通しの番組にずっと付き合っているせいで単に睡魔が襲っているだけかもしれませんが。しかし、まさに先週の原稿でも言及した、あのブレグジットの国民投票の際のZDFの中継の再現かと思うほど瓜二つのような”お通夜”同然の画面に、私の第一印象は「ブレグジット・アゲインでしたか、やっぱり!」というものでした。言い換えるなら、「予想通りであったこと自体が予想外」という方が正確でしょうか。

大勢もほぼ分かったことですし、ここで二度寝したとしてもパリ行きの電車には全然余裕で間に合います。しかし、ここで目が覚めてしまったからには、他局の扱いもチョッピリ気になってきました。ということで、ここから3時間余り、私はリモコン片手に数十局はあろうかというチャンネルを片っ端からザッピングすることになるのでした。

例えば、こちらはSAT1というドイツの民放局です。本来なら朝5時30分から開始予定の早朝の情報番組「Frühstücksfersehen」(直訳すると”朝食テレビ”)を4時55分開始に繰上げ、色鮮やかなセットとカジュアルな衣装で、番組のトーンもZDFのお通夜とは対照的な朗らかさで、視聴者の目も気分も楽しませてくれました↓。

(右上写真で、赤と青の風船にそれぞれ囲まれた両候補の人型にくり抜いたパネルが、左のトランプ候補は顔を上げて拍手する瞬間の写真、右のヒラリー候補が少しうつむき加減の写真になっているのは、放送局なりの選挙予想の表れなのか、それともヒラリー優位だった場合の別バージョンも用意されていたのか、どうでもいいけれども気になってしまう)

イギリスのスカイニュースは、落胆のクリントン陣営から生中継↓。リポーターも表情が硬いです。

その点、ロシア・トゥディはかなり明るい感じです↓。やはりロシアは、トランプ歓迎なのでしょうか?プーチン大統領の笑い転げる姿までもが目に浮かんでくるようです。

フランスの国際放送TV5MONDEは、ニュースをいつも真っ白けのスタジオから中継することで知られますが、今回もアメリカ大統領選だからといって普段のスタイルを崩さないあたり、さすがフランスです。しかもこの特番、番組名が「NUIT ELECTIONS AMERICAINE」(直訳すると「アメリカの選挙の夜」)というのが、フランソワ・トリュフォー監督の不朽の名画「アメリカの夜」(La Nuit Américaine、1973年)を彷彿とさせ、これまたさすがフランスのエスプリです(笑)。しかし、ゲストは服装も論調もやや暗い感じがするのは、同国も相次ぐテロ事件や国民戦線のマリーヌ・ルペン代表にみられるような右傾化やポピュリズムの台頭に悩まされていることと関係があるのかもしれません↓。

その点、同じフランスの国際放送でもFrance24は、青と赤のアメリカカラーをふんだんに使用した派手な字幕とセットで、ゲストの服装も鮮やかです↓。

これが英語圏の経済チャンネルになると、途端に日本の話題ばかりになったのには驚きました。トランプショックの影響で、いち早く日経平均がガクッと下がり(左下)、逆に円と金が買われている(右下)というお話です↓。なお、このブルームバーグでは、「まるでブレグジット判明直後の朝と同じ雰囲気に(市場が)覆われている」というコメントがしきりに述べられ、私の実感とも一致するものでした。

(左:CNBC、右:ブルームバーグより)

こちらは、中東のカタールの国際放送としておなじみのアルジャジーラです↓。こちらもまた、セットが色とりどりで、司会女性のジャケットは深緑色です。

ウーン、何を言っているのかも分からなければ、何が書いてあるのかも分からないのが残念です。これを全部スラスラと理解できるであろう東京都知事の小池百合子チャンが羨ましくて仕方がありません(笑)。しかし字幕が右から左に流れることや、両候補の獲得した選挙人の数を示す棒グラフもまた右から左に伸びるように表示されていることは、アラビア文字が右から左に書かれることから当然とは分かっていても、こうして実際のニュース映像で見ると新鮮です。

中国の国際放送CCTVの英語版です↓。こちらもまた、アメリカを目一杯意識したセットデザインとなっております。

なお、私が朝まで気づかなかった異例の事態が一つありました。それは、ZDFとは別のもうひとつの公営放送であるARDもまた、独自に選挙特番を前夜から組んでいたことでした。従って、毎週交互に放送を担当するはずの朝の情報番組「Morgenmagazin」は、本来なら今週はZDFの担当回であるはずが、11月9日の水曜日に限っては両局が異なる内容を放送したのでした。そして、その両方の番組にハシゴ出演した人物が一人だけ存在します。それは、奇しくも先週のコラムでその名に触れたばかりという、懐かしのこの人物でした↓。

上の2枚の写真は公営第一放送ARDの早朝6時39分頃の映像、下の2枚(参考動画Aからのスクリーンショット)は第二テレビZDFの同じく7時04分頃の映像です。この人物は、以前のコラムにも登場した駐独アメリカ大使のジョン・B・エマーソン氏です(→駐独アメリカ大使をタジタジにさせたドイツZDFのインタビューの迫力)。3年前に出演したZDFでは見ていて気の毒になるほどコテンパンにやられていたエマーソン氏ですが、クビになることもなく駐独大使のままだったようで安心しました(笑)。以前の出演と比べればインタビューの雰囲気も今回は友好的で、本人の佇まいや笑顔にはテレビ慣れも感じられます。それに、わずか30分にも満たない間に同じベルリン市内とはいえ放送局のスタジオを2局ハシゴとは、かつての大晦日恒例だった日本レコード大賞(TBS)からそのまま紅白歌合戦(NHK)へと流れるマジック顔負けの瞬間移動のような大賞歌手たちとダブって仕方が無かったのは、おそらくドイツでも私だけだったはずです!ドイツ版・KANさん「愛は勝つ」(笑)という感じしょうか(その後、日本レコード大賞は別の日に移動したため、大晦日の大移動そのものが無くなり今に至る)。もっとも、平日早朝のベルリン市内の移動と、大晦日の夜の帝国劇場から渋谷のNHKホールへの大渋滞の中の怒涛の移動とでは、比較にはならないとは思いますが、エマーソン氏も売れっ子になったものです!(ZDFの放送内で、エマーソン氏はこの後も他局の出演が目白押しと紹介されて早めの退席となりましたが、その他局とはアメリカの各局だったようです)

なお、このZDFの選挙特番が組まれたスタジオといえば、朝の情報番組「Morgenmagazin」の一般観覧用スタジオをリモデルしたもので、実はここを岩手放送のオラ君も訪問したことがあります!下写真(参考動画Bからのスクリーンショット)がこの特番の予告映像に登場するスタジオの様子ですが…↓

同じスタジオが放送のない普段はどういう風になっているかというと…↓

こういう感じです!日本にも一般からの応募客がスタジオ観覧する番組がありますが、このZDFの1階はカフェが併設されており、観覧客全員がワンドリンクを提供されています。日本でもこのカフェ観覧というスタイルの番組があると面白いかもしれません。

さて、来週はこの大統領選を別の視点から振り返ります。


<参考動画>
A) ZDF Morgenmagazin(2016年11月9日):Emerson: "Sehr dramatischer Wandel"(エマーソン氏「大変心動かされる転換点である」)
https://www.zdf.de/nachrichten/zdf-morgenmagazin/videos/us-wahl-emerson-100.html
(5分程度のインタビュー)

B) ZDF heute journal (2016年11月8日):Bettina Schausten führt durch Wahlnacht
https://www.zdf.de/nachrichten/heute-journal/schausten-sgs-100.html
(11月8日深夜から翌朝にかけて放送のZDF選挙特別番組の予告編)

バックナンバー>>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491