Nagoya Talents' Network - タレコラ

Dr.片山晴子 RSS Feed

金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2016/10/28

リオ五輪特集(11)…日本と比較すると分かる!メダルゼロのドイツ競泳界の敗因「構造上の理由」の正体

こちらの映像はきっと日本でも大きく報じられたことでしょう。今年のリオデジャネイロ五輪の女子競泳陣の金メダル第一号で、女子200m平泳ぎで晴れて金メダルを獲得した金藤理絵選手の表彰式の模様です↓。


銀メダルには、ドーピング騒動で揺れるロシアからの参加で会場をブーイングで満たしたユリア・エフィモワ選手。銅メダル選手の所属する中国といえば、この少し前にドーピングで失格者を出したばかり…。今になって見直すと、なかなか意味深な構図となっています。その中央で微笑むのは、これらの強敵を破って優勝を飾った27才という遅咲きの日本人スイマーです。このレースについては、色々な角度からの熱い視線が世界から向けられていたことは間違いないでしょう。しかし、少なくともドイツの中継を見る限り、彼らの関心は私たち日本人とは全く別のところにあったようでした。まずは、日本国歌の演奏直後となったこのシーンに被せて流れた1996年アトランタ五輪銅メダリストのクリスティアン・ケラー氏(Christian Keller:以下CKと表示)と1988年ソウル五輪で6種目で金メダルのクリスティン・オットー氏(Kristin Otto:以下KOと表示)の両解説者の会話を以下に訳しますので、ご一読下さい(以下、インタビューは青字)。

KO 「リエ・カネトーが日本競泳陣にとって6枚目となるメダル、それも金メダルを獲得です。現時点(大会6日目)で既にメダル6枚ってのもさることながら、日本競泳陣は常に誰かが決勝に進んでいるのが凄いのですが、クリスティアン、日本のこの強さは一体どこからくると思いますか?」
CK 「日本では水泳というのは非常に地位の高いスポーツだということがある。ドイツの我々にも知られている北島康介を思い出すとよい。かつての五輪王者かつ世界チャンピオンで世界記録保持者だった彼は、広告収入や連盟からの補助金などを得るミリオネアでもある。ドイツから見ると羨ましい限りだが、日本ではインフラが大いに整っていて、エリート養成コースやトレーニングセンターといった中央集権型の選抜システム(Zentralisierung)が機能している。補助金など資金面もドイツよりはるかに恵まれている。そういうのが積み重なって、400m個人メドレー金の萩野公介選手のように、具体的な成果の差となって現れる。例えば、今映っている金藤選手の実父は水泳コーチで、リンクサイドに帯同している。これがドイツだと、27名の選手団に対してコーチがたった3人しかいないというのだから、ドイツ代表監督のヘニング・ランバーツ氏が嘆くのも無理はない。日本はドイツよりも選手団の人数は少ないのに成果が上回っているのは、そういうこと」
KO 「日本では五輪王者になるとミリオネアになれる!ドイツもこうい金銭面での成功をモチベーションにできるようにすべきだと、ドイツ代表監督は主張している。これは、ドイツの強化を考える上での正解でしょうか?」
CK 「これは、解くべきパズルの数多くのピースの中の一つではあると思う。ドイツ水泳連盟からの強化費用はとにかく低すぎる。例えば、ドイツでは全スポーツ競技に対する振興予算が年間3億5000万ユーロ(約400億円)なのに対し、イギリスだと水泳競技単独で年間2000万ポンド(約26億円)ももらえるらしい。インフラとか選抜システムとか言う以前に、まずはその辺を整えないと…」
KO 「確かに、男子競泳での五輪金メダルが1988年までさかのぼるという現状では、ドイツも確かにミリオン単位のお金を準備しないといけないわね」


この会話を聞いて、「日本の水泳選手の金メダリストが全員ミリオネアって訳ではないのでは?」と思ったのは私だけではないでしょう。連日のように報道されている東京五輪の競技会場建設費をめぐるゴタゴタもあり、「日本だって、そんなに予算が潤沢でインフラが凄いのか?」とも思ってしまいます。ただ、私の場合、ドイツでの学校生活の経験があるため、以下の文言には思いっきり納得でした↓:

”日本に大きく劣るドイツの水泳関連インフラ”

私がドイツの小学校に転校した際、たくさんのカルチャーショックに遭遇しました。しかし、何よりも一番驚いたことといえば、「学校にプールがなかったこと」に尽きます。学校の敷地内のどこを探しても、校庭はあってもプールがなかった…この体験談を日本で他人に話すたびに毎回大変驚かれるところを見ると、このことは多分日本では全く報じられていないのでしょう。

さらに正確に言うなら、私がいた頃のドイツの小学校には、プール以前に水泳の授業そのものがありませんでした。夏の一時期に数度、生徒を連れて市営プールなどの外部施設に行くという「課外授業」ならありましたが、それは成績評定の対象とはなっておらず、体育のカリキュラムの中に水泳がそもそも入っていないのです。また、これも日本では考えられないことでしょうが、ドイツの学校にはそもそも「学校単位の部活動」というものがありません。子どもが水泳や体操に音楽などを習おうと思った場合、門を叩くのはあくまでも地域コミュニティの中にあるスイミングクラブや体操クラブに音楽教室などであり、これらは全て私的活動として学校生活とは完全に切り離されているのです。ドイツの学校が午前中に終わるのもそのためであり、「学校は勉強するためにしかない場所」と位置付けられています。これは、アマチュアスポーツに占める学校スポーツの比重が大きい日本では考えられないことではないでしょうか。日本で珍しくない「スポーツ推薦」や「一芸入試」についてドイツの人に説明すると、みんな判で押したように「まるでアメリカみたいだね!」と言うことからも、日本のスポーツ振興は世界的に見ればアメリカに近いようです。

ここで気になるのが、ドイツと日本におけるプールの数の差です。まずは、日本プール安全振興協会という非特定営利活動法人のインターネットサイトから、トップページの冒頭段落を丸ごと見てみましょう(参考サイトA):

「現在、国内には約4万ヶ所ものプールが設置され、教育やスポーツやレジャー、リクリエーションに活用されています。学校教育における水泳指導や、スイミングスクール等も普及し、ほとんどの人々が水泳を経験したり、泳げるようになっています。また、日本は水泳競技レベルが世界的に高い水準に位置しています。さらに、プール施設の規模や、その施工技術、衛生管理基準を達成するためのろ過、浄化システム等、いずれも先進的で、高い技術により支えられています

この文章によれば、日本国内のプールの数は約4万ヶ所だそうです。この短く簡潔な文章の中には、日本の水泳界の三大特徴とも呼ぶべき「すそ野の広さ」「世界レベルのトップスイマー」「プールの維持管理技術の高さ」というキーワードが見事に散りばめられています。他方で、ドイツのプール数を調べたところ、2012年の時点で何と7040カ所だそうです。ドイツの人口は約8000万人なので、対人口比に換算するとドイツのプールの数は日本に比べて実に4分の1という衝撃の結果となります(人口1万人あたりのプール数が日本は3.33カ所、ドイツは0.88カ所)。この大差は、やはり学校にプールがないことに大きく起因しているのではないかと考えます。

また、水泳に関して小学校当時の私が受けたカルチャーショックには、重要な要素がもう一つあります。私は日本の小学校の水泳の授業で「何メートルおよぐことができる」ということを示す「赤線何本」だったか「黒線何本」だったか忘れましたが、何本かの「線」を獲得した状態でドイツに転校しました。つまり、当時の私は確かに、何百メートルかを泳ぐことができたのです。それが、その年の夏にドイツの学校の課外授業でプールに連れられたら、いきなり「泳げない子」の分類に入れられました。なぜかと言うと、ドイツでいう「泳げる」の定義は、「直線で何メートル泳げるか?」ということは全く問われず、「プールに何分間浮かんでいられるか?」だけだったからです。

当時の私は、日本の小学校時代にクロールや平泳ぎに背泳ぎまでは教わりましたが、犬かきという”五輪種目に入っていない泳法”は教わっていませんでした(犬かきは自由形に入るのかもしれませんが、実際の自由形レースで犬かきの選手は見たことがありません)。まして、「ただ水に浮かんでいるだけ」などと漠然とした表現で言われても、具体的に何をしたらよいのか見当もつかず途方に暮れていました。となると、「プールに30分浮かんでいる」ためには30分間泳ぎ続けなければならないことになり、当時のスタミナではとてもではありませんが無理でした。かといって、試しに水面で何もせずにプカ~リと浮かぶかどうか試してみたら、たちまちブクブクと沈んでしまいました。今ならともかく、子供の頃の私は体脂肪率が低く、推進力のある動きをしなければ身体が全然浮いてくれなかったのです。

つまり、私の小学校時代のドイツにおける水泳教育とは、そもそもが学校カリキュラムに入っていないのみならず、「競泳」よりも「ライフセービング」の方が重視されていたのであろうことに、今になって気づかされたのでした。別の言い方をすれば、オリンピックのメダル数よりも、各個人がタイタニックから無事に生還することに主眼が置かれていたということでしょうか(笑)。

さて、冒頭の映像の2日後となる大会第8日目、競泳はリオ五輪における全種目を終了し、ドイツのメダルゼロが確定しました。タイミングとしては、射撃のクリスティアン・ライツ選手の金メダル(→オ五輪特集(6)…期待ゼロの射撃で金3つ!国境を越えて射撃界をけん引するクリスティアン・ライツ選手の試み)や喧噪の中での陸上円盤投げのハーティング選手の金メダル(→リオ五輪特集(7)…円盤投げ金メダリストが大炎上!長期化するハーティング騒動と「銀メダル競売」の美談の裏側)、さらには女子テニスシングルのアンジェリク・ケルバーの銀メダルといった具合に、ちょうどドイツのメダルラッシュと重なっており、ロンドン大会に続くメダルゼロという今回のドイツ競泳陣の成績に各方面から厳しい声が相次いだ頃でもありました。

ドイツ代表監督のヘニング・ランバーツ氏があらためてプールサイドに登場です(下写真左)。ここでまず、「アメリカの強さの秘訣」についてのアメリカ代表コーチであるデービッド・マーシュ氏のインタビューが流れました(下写真右)。(参考動画Iより)

デービッド・マーシュ氏の語るアメリカの強さの秘訣とは、「ハイスクールから大学まで、若い才能を発掘して育て上げる巨大な育成システムが出来上がっており、これが重要な基礎構造となっている。それに、何よりも、選抜される選手は学生の頃からずっと他のトップ選手と一緒に切磋琢磨してきており、今の五輪でもみられるようなチーム精神がアマチュア時代から根付いている」ということだそうです。このインタビュー内容を聞く限り、これは日本にも当てはまるように思われました。しかも、日本ではハイスクールどころか小学生の習い事ナンバーワンがスイミングだったりと、学校教育も巻き込んでさらに早くから中央集権的な英才教育が行われているという意味ではアメリカ以上かもしれません。ここで、上写真左のピンクのシャツを着たクリスティン・オットー氏(以下KO)が思わずランバーツ代表監督(以下HL)に噛みつきました↓。

KO 「アメリカでできるこのような選抜システムが、どうしてドイツではできないのでしょうか?」
HL 「ドイツでも、やろうと思えばできるでしょう。そのためには、まず”私たちはこのシステムを本当に望んでいるのかどうか(Wollen wir das wirklich)?”と、先に国民に問わないといけない。”ドイツは国を挙げたトップアスリート養成を本当に望んでいるのか(Wollen wir Hochleistungssport in Deutschland)?”という質問の答えがイエスなのであれば、勇気を出して改革を為さねばならない。答えがノーなのであれば、決勝進出者がいただけでも御の字と考え、他国の活躍に拍手を送るだけで満足すべきである」
KO 「改革というのは当然、投資やおカネという意味ですよね。役員の話によれば、8万ユーロ(920万円)の補助金増額が既にあったとのことですが、投資先が間違っていたのですか?」
HL 「増額の話は事実だが、その金額では全然足りなかった。もしこれ以上の増額がないのであれば、一人当たりの取り分が増えるようにするために、強化選手の数を減らすしかない。でも、それだと先程のアメリカ代表コーチのマーシュ氏の話とは真っ向から食い違うことになる」
CK 「あなたは五輪金メダリストに100万ユーロ(1億1500万円程度)贈呈すべきだという持論があるそうですね。サッカーでは”おカネがゴールを生み出す訳ではない(Geld schießt keine Tore)”という言い回しがありますが、おカネは若い才能を水泳に惹きつけるという形で五輪の金メダルを生み出すでしょうか?」
HL 「いやいや、おカネだってゴールを生み出しますって(Geld schießt irgendwo Tore)!バイエルン・ミュンヘンがボルシア・ドルトムントと並んで世界のトップに君臨しているのは、おカネが全く絡んでいないはずないでしょ?もちろん、全てカネの問題だと言うつもりもないが、予算が大きい方が有利なことは多い。例えば、海外から優秀なコーチを招こうとしても、ン千万円クラスの収入のある彼らから見たら、ドイツの薄給じゃ来る気がしないのも仕方ない」


かつて日本の野球では「カネでペナントを買うことは許されない」とのたまった選手がいましたが、ドイツのサッカーには「おカネがゴールを放つ訳ではない」という格言があるとは今回初めて知りました。「地獄の沙汰も金次第」なんて言い回しもありますが、ドイツのおカネのチカラで競泳の五輪金メダリストを生み出すことは可能なのでしょうか?「国を挙げたトップアスリート養成を本当に望んでいるのか?」というランバーツ監督の問いは、以前の当コラムで取り上げたドイツ大統領ヨアヒム・ガウク氏の「私は、どんな手段を使ってでもメダルを獲る、というような国の大統領ではありたくない。ドイツにはかつてそんな国だった時代があった」という五輪直後の談話にも通じるものがあります(→リオ五輪特集(2)…その名も「ヒーロー・デ・ジャネイロ」!ドイツを感動の渦に包んだアンディは「リオの花」?)。水泳がそこまでして国家レベルで強化されるべきと考えるのであれば、いきなり学校にプールを造るのは雪国ドイツでは「負のレガシー」として国民の理解が得られないでしょうが、せめて体育の授業で水泳を必修にするだけでも随分と才能発掘が容易になるのではないかと想像します。

しかし、ドイツの人たちの話を聞いていると、彼らにはそういう発想は馴染まないようです。誰に聞いても、「学校は勉強をするところであって、五輪選手を発掘するところではない」「水泳をしたくない子が水泳をしない自由があることも大切」で話が終わってしまいます(笑)。そういう意味では、学校の授業で柔道や水泳を誰もが一度は習う日本や、学校の授業でアーチェリーの才能ある選手を早期にスカウティングしているという以前のコラムにも出た韓国(→リオ五輪特集(5)…ドイツ・アーチェリー界の菅原初代が銀!韓国が強豪である理由についても語る)の話なども、「すそ野拡大&エリート養成」という意味において、中国やアメリカの国策スポーツと本質的にはそう変わらないのかもしれません。これを逆手に取って、次の東京五輪で日本がメダルランキング1位をどうしても獲りたいと本気で思うのであれば、今後は学校の体育授業の必修科目に五輪種目だけをズラリと並べ、芽が出そうな子供を片っ端からそれぞれの競技のアスリートコースに乗せるという極めて”旧東ドイツ”的な方法がおそらく最も確実かと思います。

最後に、ランバーツ代表監督がZDF解説のクリスティアン・ケラー氏と一緒にスタジオ出演となった際のディスカッションを紹介します。今回の敗因として「構造上の問題」を連発した代表監督に対し、アナウンサーのスヴェン・フォッス氏(Sven Voss:以下SV)が「毎度のように”構造上の問題”って言われますが、一体何なんですかそれって?」と反論した際の、クリスティアン・ケラー氏(CK)とヘニング・ランバーツ監督(HL)の返答がとても印象深いものでした。先週のコラムで紹介した”涙・涙・涙”という動画(→リオ五輪特集(10)…泣いてばかり?メダルゼロのドイツ競泳陣が繰り出す言い訳フレーズの数々)が再度流れた後、二人は強い落胆の色を隠すこともなく、このような愚痴を吐露するのでした↓。(参考動画II)


SV 「ドイツが抱えているのは構造上の問題と毎度のように言われますが、具体的には何を指すのですか?練習拠点を増やすべきとか、集約化すべきとか、コーチをマンツーマンに増やせとかいうことですか?」
CK 「本質はそこにはない。問題は、ジュニア領域の選手のドロップアウト率が高いことにある。イギリスの振興予算の多さはさっき言ったけど、そのおカネはイギリスの場合はアスリートに直接支払われる。これがドイツだと、選手はドイツ軍とか連邦警察に所属する形でそこから間接的にしか支払われない。となると、移動費用が個人負担だったり、資格試験や大学入試の準備があったりする若手選手の場合、おカネが続かなくなって競技を断念せざるを得ない」
SV 「ちなみに、あなたは自分の子供を水泳選手にしたいですか?」
CK 「絶対にイヤ。だって、コストパフォーマンスが合わないから」
SV 「アスリートにはおカネによるモティベーションが大事という話もよく聞かれます。現状で問題なのは、おカネの額なのでしょうか、それとも配分が悪いのでしょうか?」
HL 「両方かもしれないが、金額が少なすぎるのも事実。例えば、ある水泳選手に”1週間あたり30時間をプールでの練習にあてよ”と言ったとする。そのアスリートが学生だとすると、その上に学校の授業時間がさらに週に35時間加わる。そして、試合が運悪く土日にあったりすると、週に100時間前後がこの選手の私生活から奪われることになる。もし、このような努力に対して何のインセンティブもないということになれば、一体自分は何のためにこんな生活をしているのかと、選手が自問自答するようになる。こうして、有望な選手が競技生活から脱落していくのである。これがおカネのチカラで少しでも防げるのであれば良いのだが…」

週100時間の拘束が耐えられなくてドロップアウト…と聞くと、先日の東大卒女性の電通社員の過労死自殺事件を連想してしまいます。もっとも、日本では残業時間を過少申告させられる慣習が横行しているため、実際の残業時間は月100時間どころではなかったはずで、週当たりに換算した拘束時間も100時間などでは到底済まなかったでしょう。日本であれば大人の非正規雇用やブラックな職場環境も当たり前なら、子供の部活動や塾に習い事での自由時間の喪失も当たり前、学校の先生ですら部の顧問などしていようものなら試合で土日が吹っ飛び家庭が危機に瀕するケースなど珍しくもありません。しかし、ドイツは基本的におサボリ(笑)で、家族の団欒やプライベートの充実が何よりも優先する国民性です。競泳の元五輪メダリストが自分の子供に水泳をさせたくないと即答するくらいだから、よっぽどのことなのでしょう。

なお、おカネが直接ではなく、ドイツ軍や警察を経由して間接的に払われる…という話は、ドイツのスポーツ界全体に占める警察所属やドイツ軍所属の選手の多さでも説明できるかもしれません。当サイトのコラムでも再三再四出てきた射撃ラピッドファイアピストル金のクリスティアン・ライツ選手、円盤投げ金のクリストフ・ハーティング選手、アーチェリー銀のリーザ・ウンルー選手、さらには恋人との死別でも話題になったカヌー・スラロームのシデリス・タシアディス選手は警察所属です。射撃50mライフル3姿勢で金のバーバラ・エングレーダー選手、同じく射撃25mピストル銀のモニカ・カルシュ選手、さらにボクシングのライトウェルター級銅のアルテム・ハルチュニアン選手や体操のマルセル・グエン選手に円盤投げのロバート・ハーティング選手などは、ドイツ軍に所属する数多い選手たちの一員です。ちなみに、フィギュアスケートのペアで新しいパートナーと組んで平昌五輪の金メダルを虎視眈々と狙っているドイツ軍所属のアリオナ・サフチェンコ選手について、何故引退したくてもできないのかを以前のコラムで取り上げたことがあり、アマチュア選手のおカネの問題を別の角度から浮かび上がらせていました(→欧州選手権inブラチスラバ(4)…出場停止処分解除でついに大舞台へ!ドイツの新生ペア「サフチェンコ/マッソ組」の挑戦が始まる)。

なお、今回のリオ五輪の水泳代表に関してはドイツ軍所属や警察所属はあくまでも少数派であり、圧倒的に多いのは「学生」でした。これは、学業との両立が競泳継続のための最大のネックとなっているとするクリスティアン・ケラー氏のインタビューと合致し、ヘニング・ランバーツ代表監督のいう「間接的な補助金」すらマトモに受け取れていない選手が少なくないのではないかと想像させます。ということで、リオ五輪での出場選手の所属先については、来週あらためてデータを提示しつつ考察してみたいと思います。


<参考サイト>
A) 特定非営利活動法人 日本プール安全振興協会 トップページ
http://poolsafety.jp/web/

B) SWIM.de (2012年11月20日):Wie viele Schwimmbäder gibt es in Deutschland?(ドイツにはスイミングプールがいくつあるの?)
http://swim.de/magazin/pool/wie-viele-schwimmbaeder-gibt-es-deutschland-20275


<参考動画>
I) ZDF Olympia Live(2016年8月14日):Lambertz: Mehr Geld, mehr Medaillen(ランバーツ曰く「カネが多ければ多いほどメダルも多くなる」)
http://www.zdf.de/ZDFmediathek/beitrag/video/2811580/Lambertz-Mehr-Geld%252C-mehr-Medaillen?bc=sts;suc;kua2686298&flash=off

II) ZDF Olympia Live(2016年8月14日):Lambertz: "Wir haben Struktur-Probleme"(ランバーツ曰く「私たちには構造上の問題がある」)
http://www.zdf.de/ZDFmediathek/beitrag/video/2811670/Lambertz-Wir-haben-Struktur-Probleme?bc=sts;suc&flash=off

バックナンバー>>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486