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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2016/09/02

リオ五輪特集(3)…ドイツ・カヌー界の悲劇!コーチ事故死の報道が物語るブラジルの医療事情

先週のコラムでも述べたように、リオデジャネイロ五輪から帰国したドイツ選手団を出迎えたドイツ大統領ヨアヒム・ガウク氏のフランクフルト市役所でのスピーチは、ドイツ国民を感動の渦に包みこみました。そのスピーチの中で、ガウク大統領が「特定の個人の名前を挙げることはしたくないが、今回の五輪を語る上でこの2人だけはどうしても外すことができない」として敢えて言及した一人目が、先週紹介した体操のアンドレアス・トバ(Andreas Toba)選手でした(→リオ五輪特集(2)…その名も「ヒーロー・デ・ジャネイロ」!ドイツを感動の渦に包んだアンディは「リオの花」?)。では、二人目は誰でしょう?

その二人目の名前を挙げる前、ガウク大統領は会場の聴衆にこう問いかけました:

「これから、一緒に黙とうを捧げましょう」

これでもうピンときますね?そうです、二人目の人物は亡くなったのです。8月15日の深夜(ドイツ時間)、ドイツの五輪放送番組「オリンピア・ライブ」の番組中、女性キャスターの口から、その残念な訃報は報じられました↓:

 左上の写真が白黒になっています。亡くなったのは、カヌー・スラロームのドイツナショナルチームのアシスタントコーチであったステファン・ヘンツェ(Stefan Henze)氏(享年35才)です。それまでの明るい話題から打って変わり、司会のカトリン・ミュラー・ホーエンシュタイン(Katrin Müller-Hohenstein)は眉間にしわを寄せつつ落胆しきった表情で、発表されたばかりのドイツのカヌー・スラローム・チームのツイッターをこう読み上げます:

「私たちは底知れぬ悲しみにくれている。ステファン、ゆっくり休んでください。あなたは私たちの心の中に居続ける」

ヘンツェ氏はこの3日前の8月12日(金)のリオ時間早朝、別のコーチと一緒にタクシーに乗っていて交通事故に遭い、その日のうちに救急搬送され緊急手術を受けました。訃報の2日前にはドイツオリンピックスポーツ連盟(DOSB)のチームドクターのベルンド・ヴォルファルス医師の記者会見か放送されましたが、その救命の見通しが非常に厳しいということは、話を聞かなくてもこの画面だけで一目瞭然でした↓:

この不安そうな表情が全てを物語っています(上写真)。そして、8月15日にヘンツェ氏の死亡が報道されたのを境に、ドイツのオリンピック報道はそれまでの能天気な明るさやバカ騒ぎがピタッと鳴りを潜めます。国際オリンピック委員会(IOC)の主導で、リオデジャネイロの五輪会場に掲揚中の全てのドイツ国旗が半旗となり、以降のドイツは「喪中」と「弔い合戦」の中間とも形容したくなる微妙な雰囲気に包まれて後半戦に突入することになります。そして、これは結果論かもしれませんが、明らかにここをターニングポイントとして、大会前半の極度の不振がウソかと思うほどの後半戦の怒涛のメダルラッシュへと移行していったようにも見えました。中でも、前半のカヌー・スラロームでは惨敗したものの、後半のカヌー・スプリントがドイツお得意の「馬力本願」(笑)の馬術をも上回る7枚のメダル(金4・銀2・銅1)を獲得したのは、決してこの一件と無縁とはいえないでしょう。(大会前半の惨敗についてはコチラの記事の中ほどのカヌーの項を参照:→リオデジャネイロ五輪特集(1)…毎度ながらのスロースターター?ドイツのメダル皮算用

さて、このドイツ・カヌー界ひいてはドイツ全土を深い悲しみに陥れたこの悲劇的な交通事故は、具体的にどのようなものだったのでしょうか?事故の内容に関しては早い段階から内外各国メディアの報道合戦が始まっていましたが、途中から話がどんどんヘンツェ氏の安否や病状から逸脱していき、いつの間にかリオデジャネイロ独特の医療事情やブラジル全体の医療制度に焦点が移っていったのは、脳外科医たる私にとっても目の離せない展開となりました。そのあたりを説明するため、まずはヘンツェ氏が遭遇した交通事故について、複数の記事(末尾参考サイトA、B、C、D、E、F、G)の情報を基に時系列で再構築してみました↓(以下、報道内容は青字、強調は筆者。筆者注釈や個人的見解は赤字として報道内容と区別してある):

<事故のあらまし>
【前提条件】
・今回のリオデジャネイロ五輪に、ステファン・ヘンツェ氏は女子カヤックシングルのメラニー・ファイファー(Melanie Pfeifer、下写真)の指導者として、スポーツ科学者のクリスチャン・ケーディング(Christian Käding)氏とともに帯同、選手村に滞在していた
(→後にこの2人が交通事故に遭遇)なお、ヘンツェ氏とケーディング氏はともに中部ドイツのザクセン・アンハルト州ハレ市(←作曲家G・F・ヘンデルの出生地として有名)の出身。

 (左:ステファン・ヘンツェ氏、右:クリスチャン・ケーディング氏。写真は末尾参考サイトCからの引用で、その元ネタはFacebookとのこと)

【2016年8月11日(木)リオ五輪・大会6日目】
・大会4日目から3日間の予定で行われていたカヌー・スラロームは、この日の女子カヤックシングルで全日程を終了。メダルを確実視されていた選手の予想外の惨敗もあり、ドイツは痛恨のメダル無しに終わる。ヘンツェコーチの教え子であるメラニー・ファイファー選手(下写真)は7位入賞を果たした。

 (参考サイトCから引用。とてもたくましいお方なので、最初、女性に見えなかった…スミマセンm(_ _)m)
・翌日帰国予定だったヘンツェ氏とケーディング氏は、まずは他のカヌー関係者とともにドイツハウスでの送別会に参加。
(選手村に戻る前の寄り道も兼ねてか?メダル無しに終わった反省会をさらに徹底するためか?それとも単に最後のリオの夜を満喫したかったため?→)ヘンツェ氏とケーディング氏は深夜にドイツハウスを出て、二人で市内のバー”Resenha”(resenhaとはリポートの意味)でさらに飲み直した。そして、早朝4時40分頃に店を出た(下写真のA地点)。

 (図は参考サイトBより引用で、引用元の中部ドイツ新聞がグーグル地図をもとに作成したもの)

【2016年8月12日早朝から事故まで】
・4時40分に店を出る(上写真A地点)。タクシーに乗って選手村に戻ろうとしたヘンツェ氏とケーディング氏の両名は、4時50分頃に”Avenida das Américas”(アメリカ街道)という片側三車線の幹線道路(上写真のB地点)で街灯に正面激突
(コンクリート壁に激突という報道もあり:下写真参照)

 (事故現場付近のグーグルストリートビュー。参考サイトCより引用)
・タクシーでは、ケーディング氏は助手席でシートベルト着用、ヘンツェ氏は後部座席で横になりシートベルトはしていなかったという(←泥酔して気分が悪かったのだろうか?)。ケーディング氏は事故直前までスマホのWhat’s Appをいじっていて、事故の瞬間を見ていないという。ヘンツェ氏はシートベルトをしていなかったこともあり、窓から高速度で放り出される形で頭を強く打ち、意識不明となる。

【事故以降の経過からその死まで】
・事故に遭ったヘンツェ氏、ケーディング氏、そしてタクシー運転手のアルトゥール・ジ・アルメイダ・カンポス(Artur de Almeida Campos)氏(26才)の3名は、最寄りの救急病院でリオ五輪大会の提携医療機関の一つでもあるLourenço Jorge(ロウレンソ・ジョルジ)市立病院に搬送された(←この病院は事故地点である上写真のB地点のすぐ目の前のショッピングセンターの横にある)
・ケーディング氏とカンポス運転手は切傷とかすり傷のみで、すぐに帰宅が許された。なお、運転手は呼気アルコールテストも受けたが、陰性。奇跡的に軽症のケーディング氏は、打撲の痛みよりも精神的ショックが大きい様子。
・ヘンツェ氏は頭部CTにて緊急手術が必要と判断されたが、この病院には脳神経外科が無い(!)ため、さらに21キロ離れたMiguel Couto(ミゲール・コウト)国立病院に転送された。(←この2件目の病院は、彼らが飲んでいたバーのある上写真A地点よりもさらに東に真っ直ぐ進んだ先の通り沿いにある)
・DOSBのチームドクターのヴォルファルス氏は、「受傷から搬送、転送、さらに手術までの段取りは極めて迅速で、ドイツ国内の救命救急の現場とそう変わりはない」と、地元の医療体制を擁護する発言。(←しかし、後にドイツの新聞・雑誌など各媒体が独自取材を重ねた結果、リオデジャネイロひいてはブラジルの医療体制の構造上の不備を指摘する記事が続出)
・転送先で同日午前10時頃(←受傷から5時間以上経過)、ヘンツェ氏の左脳の著明な腫脹に対し、頭蓋骨を外して脳の腫脹を逃がす手術が行われた。(←左急性硬膜下血腫とそれに伴う脳浮腫ないし脳挫傷に対する左減圧開頭血腫除去術と推定)
・8月13日(土)、警察の取り調べのために帰国日程を1日遅らせていたケーディング氏が、カヌー・スラロームの総監督と一緒にドイツへ出国。入れ替わるように同日夕方、ヘンツェ氏の両親と兄弟がドイツからリオに到着。
・8月15日(月)、シュテファン・ヘンツェ氏死亡確認、享年35歳。その死を受けて早速、心臓と肝臓と両側の腎臓がそれぞれ臓器移植された。家族はリオ到着後、臓器移植について同意をしたという。一人のドイツ人の死が、ブラジルの4人の命を救った。


以上が、複数の記事から再構築した事故の前後の流れです。この記事で私が真っ先に反応したのは、基幹となる救急病院に脳外科が無いというくだりでした。

その理由については、シュピーゲル誌には詳しく、しかも相当辛辣に書いてあります(参考サイトE、F)。記事によると、まだこの事故が起こる数日前の時点で、リオデジャネイロ医師会会長がシュピーゲル誌の取材に対して既にこのようなことを述べていました:

「ロウレンソ・ジョルジ市立病院にはかつて脳外科と血管外科と胸部外科があった。しかし、これらは4年前に閉鎖された

ええっっ?何でよりによって脳外科を閉鎖しちゃうかな~?リオには、三次救急って概念は無いの?それこそ日本では、頭部外傷と見れば(たとえ意識障害が無くても、ほんのかすり傷でも)何でもかんでも脳外科に丸投げだぞ~ッ?!などと誌面に向かって勝手に吠えていたら、何のことはない、全ては市の財政難による経営効率化のとばっちりなのだそうです。確かに日本の病院でも、救命救急と関係の深い外傷外科ほど赤字を垂れ流す傾向はあり、脳外科などその際たるもので、眼科や皮膚科などとの利益率と比較されては経営陣に怒られてばかりの存在だったことを思い出すと、リオのことを悪く言えません。しかし、このリオの医師会長の話が本当だとすると、リオ五輪がもし4年以上前の開催だったならばヘンツェ氏は最初の搬送先ですぐに脳の手術を受けられた可能性が大です!だからと言って救命可能だったかどうかは分かりようがありませんが、少なくとも受傷から5時間もの間、救急車で西へ東へとたらい回しされることはなかったでしょう。こんなことがあって良いのかと文句を言いつつシュピーゲル誌の記事をさらに読み進めていくと、ある匿名の医師がこうもぶちまけていました:

「(ヘンツェ氏が転送され手術を受けた)ミゲール・コウト国立病院は、すでに他院でCTを施行済みで手術適応が確実と分かった患者しか受け入れない。ヘンツェ氏が今回受けた仕打ち(=転送)は、この地区で不幸にも事故や頭部外傷に遭ってきた全てのリオ市民の宿命そのものである」

日本でも、大病院を受診するためにはかかりつけ医などからの紹介状がないと割増料金を徴取されたり受診自体を断られるシステムはありますが、さすがに瀕死の重傷であることが誰の目にも明らかな患者を乗せた救急車からの要請を「ヨソの病院で画像診断を先に済ませてくれないと受け入れないもんね!」などと断る救急病院があったとしたら、おそらく全国民からの怒涛のクレームや裁判での連戦連敗で、存在そのものが成り立たない以上に、そもそも救急医療を担う資格すら無いとのそしりを免れないことでしょう。一旦他院で受け入れ、CTを取り、再び救急車に乗せ直して搬送の段取りを整える間に、どれだけ貴重な時間が失われるか、考えただけでもゾッとします。

しかし、今回のようなケースは、リオでは決して例外ではないようです。ブラジルでは公的病院の医療費が無料である反面、民間医療機関の費用が高すぎることがその理由です。日本の外務省のホームページ(参考サイトH)にも、

「公立病院の医療費は外国人も無料ですが,待ち時間が長く,設備や衛生面で満足な医療を受けるのは困難ですので,在留邦人は設備やサービスの整った民間医療機関を利用するのが一般的です。公立および私立の総合病院には,24時間オープンの救急外来があります。産科・小児科・眼科は独立した病院になっていることが多いです。」
「保険のない外国人はどこの私立病院や医師にもかかれますが,医療費は高額となります。」


との記載があります。お金がなくてもかかれるリオの公的病院は、どこも五輪開催前の段階で既に患者で溢れかえっていたのです。シュピーゲル誌の記事によれば、「大会会場近くの病院はどこも患者の受け入れ態勢が整っていない。理由は経費節減で、別の救急病院などは酸素設備も不十分なため中等症以下の患者は食堂に寝かせていたりする」「元々リオの病院は、医薬品や手術機器の不足、診断用機器の故障、(アウトソーシング先の清掃会社の給与未払いに伴う)トイレの不衛生といった、どうしようもない問題を何重にも抱えている。こんな状況でさらにオリンピックだなんて、現場はどうなるのか?」など、先程の日本外務省の記載とも合致する、オリンピックなど開催している場合ではないような問題だらけの現実があるようです。そして、記事内でやたら目につく、証言の前に枕詞のようについて回る「匿名を条件に答えてくれた」という文言からは、現地医師や医療ジャーナリストが政府や関係機関からの報復や嫌がらせを恐れつつも、祈るような気持ちで海外のマスコミ相手に実情を切々と暴露しまくっている様子が目に浮かびます。

ちなみに、このような医療事情となってしまった背景としては、リオデジャネイロ州の財政が破産寸前であることと、先の経済危機でブラジル国民の経済力そのものが低下てしまったことが関係しているそうです。つまり、1件目の病院に脳外科がなく2件目の病院に脳外科があったというのは、市立病院と国立病院、つまり市と国との財力の差を見ているのでしょう。となると、これは日本にとっても決して他人事ではなく、少子高齢化と過疎化と大都市集中の陰で置き去りにされる地方自治体の未来図そのものかもしません。また、ブラジル国内には私立病院が多数あるというのに、受診のための私的保険が高額すぎて、中流階級とされるブラジル人ですらかかることができないそうですが、日本でも国民皆保険が崩壊してしまったら早晩同じことが起きるでしょう。加えて、無料の国民健康保険でかかることのできる公的な病院にばかり患者が殺到していることの副次効果として、私立病院の医師は症例数を稼ぐことができなくなっており、経験が不足します。このため、施設の不備や構造上の欠陥がどれほど山積している公的病院であっても、私立病院の経験不足の医者にかかるよりはまだマシということになり、それがさらに医療現場の負荷の不均衡を増幅させているというのです(参考サイトE)。

なお、ヘンツェ氏の事故にまつわる報道で、日本人たる私たちに馴染みが薄いのは、いきなり臓器移植の話が出てくる点ではないでしょうか。救急医療は破綻寸前でも、移植医療は進んでいるという話なのでしょうか?少し調べてみると、ブラジルの医療の姿が一気に見えてきました。コチラのサイトの3ページ(参考サイトI )を読むと、「意外が器用で好奇心旺盛」なブラジル人による「新興国のため慣習やしがらみの少ない」ブラジルの先端医学は、「研究が弱く、臨床が強い」のが特徴とあります。中でも特筆すべきは移植医学における先進性であり、「心臓移植と肝臓移植はどちらも世界で2例目」という話には改めてビックリしました。

しかし、言われてみると、思い当たるフシはあるものです。小説・ドラマのタイトルにも含まれ聞き覚えのある方も多いであろう「バチスタ手術」です。拡張型心筋症などの重症心不全に対する心筋縫縮術として世界的に有名なこの手術を世界で初めてを行ったことでその名がついたランダス・バチスタ(Randas Batista)さんが1947年生まれのブラジル人外科医だということまでは、ご存じの方はあまり多くないのではないかと思います。

また、ブラジル人医師の手先が器用な理由についても、参考サイトI にこのような興味深い説明がありました。「医師免許取得以前から医療行為に従事でき、医療費が無料の大学病院に大量に来る患者さんで臨床訓練ができる」という、さきほどのシュピーゲル誌ではブラジル医療の後進性として否定的に語られていた部分をそのまま逆手に取ったような、それでいて先進国では「バレたら確実に手が後ろに回る」ような法制度上も道義的にもスレスレの実地研修がブラジルでは可能であるというのが、その秘訣だそうです。(日本でもかつては研修医のみならず医学生までもが「現場の一兵卒」としてコキ使われるブラジルのような時代があったが、今は臨床研修制度やスーパーローテートの定着により、ブラジルとは逆の方向を進んでおり、両国の医療の比較は今後も注目に値するでしょう)

しかし、その一方で、「移植医療は金次第」というスキャンダルもあったようです。参考サイトJには、2008年の7月に「リオ連邦大病院肝臓移植部門の医師五人が、金を受け取って患者の順番操作などを行っていたとして起訴され、同部門元主任で、州臓器移植センター元コーディネーターのJ・R・フィーリョ医師が逮捕された」とあります。なお、記事の出た2008年の時点で、「リオ州で肝臓移植を待つ患者は千七十七人、全国では六千人」、さらに「今回の不正の背景には、以前は登録順であった手術が症状によるランキング順となったこともある」とも書かれています。ドイツのカヌーのコーチの心臓と肝臓、そして両側の腎臓は、裏金次第ではなく正規の手続きを経て、優先されてしかるべき病状の患者に移植されたと信じたいです。そして、「医療制度はダメでも医師の腕は抜群に良いブラジル」において、移植の日を待ち臨んで苦しい日々を過ごしてきたに違いない重篤な患者さん4名に、ドイツのカヌーで鍛え上げたその臓器が健康で幸せな人生を末永くもたらしてくれることを願うばかりです。

最後に、ヘンツェ氏の実績を紹介して終わりにします。種目はカヌー・スラローム(カナディアン・ペア)で、マルクス・ベッカー(Marcus Becker)と組んで1998年世界ジュニア選手権優勝、1999年欧州ジュニア選手権優勝、2003年世界選手権優勝、2004年アテネ五輪銀メダル…と、実に華々しい限りです↓。そして、2013年以降はカヌー・スラロームのドイツ代表チームのコーチに就任して現在に至っていました。

上の写真は2004年夏のアテネ五輪で銀メダルを獲得した時のものです(上から順に参考サイトDおよびCから引用。いずれも左がマルクス・ベッカー氏、右が今回亡くなったステファン・ヘンツェ氏)。この時はまさか、この12年後にこのような悲劇が待ち構えていようとは、誰も想像すらできなかったことでしょう。あらためて、そのドイツ・カヌー界への偉大な功績はもちろんのこと、ブラジルひいては世界の移植医療の発展にまで貢献した崇高な生き方に敬意を表するとともに、謹んで故人の冥福を心より祈りたいと思います。そして、一人でも多くの日本の皆様に、シュテファン・ヘンツェという人物の名前と生き様を知っていただきたいと願って止みません。


<参考サイト>

A) Mitteldeutsche Zeitung(2016年8月14日):Tragödie um Olympia-Trainer Stefan Henze: Seine Familie steht ihm in Rio bei (オリンピック・コーチのステファン・ヘンツェ氏:家族がリオで寄り添う)
http://www.mz-web.de/sport/olympia2016/tragoedie-um-olympia-trainer-stefan-henze--seine-familie-steht-ihm-in-rio-bei-24558538

B) Mitteldeutsche Zeitung(2016年8月15日):Lebensgefahr! Fragen und Antworten zum Unfall-Drama um Stefan Henze (35) (生命の危機!ステファン・ヘンツェ氏の事故に関する一問一答)
http://www.mz-web.de/sport/olympia2016/lebensgefahr--fragen-und-antworten-zum-unfall-drama-um-stefan-henze--35--24554946

C) The Sun(2016年8月13日): FIGHTING FOR LIFE Two German team members hurt in high-speed taxi crash on way back to Rio’s Olympic village (瀕死のたたかい:ドイツチームのメンバー二人がオリンピック村に帰る途中のタクシーで衝突事故)
https://www.thesun.co.uk/news/1603326/two-german-team-members-hurt-in-high-speed-taxi-crash-on-way-back-to-rios-olympic-village/
(事故発生時間が4:50のところが4:05となっていたり、写真の人物名が間違っていたりするが、写真自体は参考になるものが多い)

D) Mail Online(2016年8月15日):German Olympic coach and canoe silver medalist, 35, dies after his taxi was hit in a high-speed head-on collision in Rio
http://www.dailymail.co.uk/news/article-3742133/German-Olympic-coach-dies-taxi-hit-high-speed-head-collision-Rio.html

E) Spiegel Online(2016年8月16日):Debatte nach Stefan Henzes Tod: Woran das brasilianische Gesundheitssystem krankt (ヘンツェ氏の死に関する議論:ブラジルの病んだ医療制度)
http://www.spiegel.de/sport/sonst/stefan-henze-ist-tot-debatte-um-brasiliens-gesundheitssystem-entbrannt-a-1107987.html

F) Spiegel Online(2016年8月13日):Schwerverletzter Coach: Kanutrainer Henze wurde wegen Einsparungen im Krankenhaus weitertransportiert(重症のカヌーコーチ、ヘンツェ氏が病院の経費節減のとばっちりで転院の憂き目に)
http://www.spiegel.de/sport/sonst/kanu-trainer-stefan-henze-gefaehrlicher-weitertransport-a-1107506.html

G) Die Welt(2016年8月17日):Stefan Henze †  Kanutrainer rettet mit seinem Tod vier Menschenleben(カヌーコーチのステファン・ヘンツェ氏、自らの死で4人の人命を救う)
http://www.welt.de/sport/article157712307/Kanutrainer-rettet-mit-seinem-Tod-vier-Menschenleben.html

H) 外務省公式ホームページ:世界の医療事情 - ブラジル
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/cs_ame/brazil.html

I ) 一般財団法人 日本ブラジル中央協会 - ブラジル特報 No. 1625 (2015年3月号)←リンク先はPDFファイルであることに注意(無料配布パンフットのPDF版)
http://nipo-brasil.org/tokuho_pdf/tokuho201503.pdf

J) Medical News Japan - ブラジル:臓器移植は金次第
http://www.medicalnews.jp/index.php?itemid=1076&catid=19
(ニッケイ新聞 2008年8月1日「命を握る手が掴むのは金=リオの肝臓移植医が不正=連邦大病院元主任ら起訴」という記事を全文引用したサイト。ただし、元ネタのニッケイ新聞の記事はリンク切れとなっている)

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