Nagoya Talents' Network - タレコラ

Dr.片山晴子 RSS Feed

金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2016/02/19

フィギュアスケート欧州選手権観戦記(1)…ブラチスラバ到着からオンドレイ・ネペラ競技場に辿り着くまで


フィギュアスケートの欧州選手権といえば、以前のコラムでも何度か取り上げたことがあります。2013年のクロアチア・ザグレブでの大会は今や泣く子も黙るハビエル・フェルナンデス選手(スペイン)にとっての欧州初制覇でしたし(→クロアチアの中の日本(1)…「欧州選手権inザグレブ」新ヨーロッパチャンピオンは羽生結弦選手のチームメイト)、2015年のスウェーデン・ストックホルムの大会についてはその後の世界選手権との絡みで写真のみ紹介しました(→欧州勢旋風となった2015年世界フィギュアスケート選手権を検証する)。そして今年も性懲りもなく、私はスロバキアの首都ブラチスラバで開催された欧州フィギュアスケート選手権に足を運んだのでした。

スロバキアといえば、元はチェコスロバキアと呼ばれた国からチェコとスロバキアに分かれたことを皆様も当然ご存じのことでしょう。しかし、その首都であるブラチスラバがほとんどオーストリア国境とも呼べるような国の端っこに位置していることは、あたかも日本の首都が根室か稚内にあると言われるがごとき衝撃がありました。そのアクセスも、ウィーン市内中心部から電車で1時間足らず、ウィーン空港からも直行バスでやはり一時間程度という抜群の良さを誇るということも、少なくとも私はそれまで知りませんでしたし、今回の欧州選手権がなければ一生知らずに終わったのではないかと思います。言うなれば「京都」に対する「小京都」ならぬ、「ウィーン」に対する「小ウィーン」というのが、ブラチスラバを形容するのにピッタリかもしれません。

何よりも、ウィーン空港からブラチスラバまで直線距離にして60キロ弱という、東京都心部と成田空港よりもやや近い程度なのにかかわらず、バスの運賃が雲泥の差だったのは特筆に値します。東京~成田空港間の空港リムジンバスは1時間程度の乗車で2900円ほどかかりますが、ブラチスラバ市内~ウィーン空港間は同じく1時間程度の乗車でも運賃は何と4ユーロ(500円ちょい)という破格の安値!まさに桁違いの安さでありながら、何と無料のコーヒーと新聞まで出てきました!果たしてこれで採算がとれているのだろうかとか、何か裏があるのではなかろうかと、乗っているこちらの方が不安になってしまう内容です。

なお、ウィーンからブラチスラバまでの鉄道料金は片道10.10ユーロ(≒1310円程度)と、こちらもさほど高くありません。その上、もしウィーンから4日以内でブラチスラバを往復する旅行の予定がある場合は、ブラチスラバ・チケットというのがあり、これはウィーンからの往復が16ユーロ(≒2080円程度)となるのみならず、ブラチスラバ入りした当日の市内公共交通機関(トラム・バス)が無料となるチケットで、オーストリア鉄道(OBB)の各駅で買うことができます。

さて、到着してみたブラチスラバは、さすがは欧州選手権モード全開でした。街中のあちこちにポスターや看板が掲示されており、女子シングルのニコル・ライチョワ(Nicole Rajičová:左下写真)かアイスダンスのフェデリカ・テスタ&ルカシュ・チョレイ(Federica Testa/Lukáš Csölley:右下写真)の2パターンがありました↓

 

しかし、ホテルに荷物を放り込んで早速会場である”オンドレイ・ネペラ・アイスアリーナ”に行こうとしたまでは良かったのですが、どこをどう行けば良いのか皆目見当もつきません。言葉も分からず、バスやトラムの時刻表に載った地名や表示を見ても土地勘もゼロなのでイメージが全く湧かず、何よりも、どこの街にもあるような鉄道やバスの路線図が見当たりません。それ以前に、どこで電車の切符を買えばよいのかもわかりません。

と思って駅前でキョロキョロしていたら、下のような黄色い機械があることに気付きました↓。


これがトラム・バス共通の乗車券の自動販売機で、ブラチスラバ市内のあらゆるトラム駅やバス停のすぐ横に設置されているものです。もっとも、機械はあっても故障していることも多いので、不安であれば近くのキオスクやタバコ屋の有人カウンターで買う方が確実かつ安心でしょう。ブラチスラバの公共交通機関は市内からの距離に応じて分類される区域と乗車時間に応じて乗車券の価格が決まっており、例えば市内中心部15分券なら0.70ユーロ(≒約90円)、同30分券は0.90ユーロ(≒約120円)、市内&近郊60分券は1.20ユーロ(≒約160円)…といった具合で元々かなり安く、さらに子供ならそれぞれ半額になります。

しかし、停留所に張り出された案内をさらに見ると、他にも7日券(7 dni)とか30日券(30 dni)とかもあるようなのです↓。

 

今回ブラチスラバにちょうど1週間滞在する以上、可能なら7日券(=10.40ユーロ≒1350円程度)が入手できれば理想的です。しかし、券売機で売っているのは24時間券までであり、それよりも長期間のチケットは買えません。そこで、以前クロアチアのザグレブに滞在した時に「乗車券は停留所近くのキオスクで買う」というのがデフォルトだったことを思い出し、ブラチスラバ中央駅前の全てのキオスクで7日券を求めて片っ端から聞いてみましたが、見事に全滅でした。

しかし、捨てる神あれば拾う神ありです(笑)。このタイミングで救世主のように登場したのが、昨年11月のパリの同時多発テロであえなく中止になってしまったフランス・ボルドーのエリック・ボンパール杯の際に初めて知り合ったフィギュアファンのドイツ人夫婦でした。彼らの顔に見覚えがあった私は藁にもすがる思いですかさず彼らに声を掛けました:

私 「私のこと覚えてます?」
ドイツ人夫婦 「あー、覚えているとも!ボルドーではお互い大変だったよね~!」
私 「ところで早速ですが、オンドレイ・ネペラ・アリーナにはどうやって行けばよいのでしょうか?」
ド 「とりあえずこっち方向のバスは全て市内のでっかいバスターミナルに行くから、そこでさらにバスを乗り換えれば、アイスアリーナの目の前に着くはず」

バスターミナル!これがまさに今回の市内移動のキーワードとなりました。鉄道駅よりもバス・トラムの方が市内交通の中心であり、ブラチスラバに来たらまずこのバスターミナルを目指すべし、ということを教えてくれたこのドイツ人の一言がなければ、今回の旅は一体どうなっていたことでしょうか(笑)?!たった2度しか話したことがない相手ではありましたが、やはり一人でも多くの知り合いを持つということがこういう時にいかに威力を発揮するのか、今回はその絶妙なタイムリーさも相まって大いに助かったのでありました。

そして、そのバスターミナルに到着です↓。

 
アウトブソバ・スタニッツァ…ここを押さえておけばブラチスラバ観光はバッチリです!ちなみに、前述のウィーン空港までのバスも始発はここです。この建物の中に広い待合室があり、ここから市内バスのみならず国内各地あるいはチェコなどの近隣諸国の主要都市までの遠距離バス網も充実しています。その待合室に入ってすぐ左手のキオスク(下写真)に、私のお目当ての7日券は売っていたのでありました↓。


かくして、私は無事に7日券(正確には168時間券)をゲットすることができました。なお、『地球の歩き方』には「ブラチスラバの公共交通機関では大きなスーツケースなどの手荷物を持ち込むには手荷物券が別途必要」との記載がありますが、肝心のその手荷物券の買い方が書かれていません。この点について上写真のキオスクの人に聞いたところ、大きなスーツケースなどの手荷物には「子供用15分券」(35セント)が代用され、(15分券でありながら)時刻刻印から3時間有効になるという、『地球の歩き方』にも書いていない超重要情報が得られました。さらに窓口に貼ってあった料金表をくまなく見たところ、24回券6.60ユーロ(≒860円程度、1回あたり27.5セント≒36円程度と、通常の一回乗車券70セントよりも大幅に安い)なんてのもあったようで、このバスターミナルのキオスクなればこそ、券売機で買うよりもさらに切符の種類の選択肢は大幅に広がるようです。


(トラムやバスに乗ったら、真っ先に車内のこのような機械に切符を通して下さい。日時が打刻され、初めて切符が有効になります。打刻漏れは検札の際に罰金徴収の対象になります。ちなみに検札は今回の1週間の滞在中に一度だけありました)

さて、今度はこのバスターミナルからアイスアリーナへ移動です。しかし、何番のバスに乗ったらよいのか分からない上に、掲示されたバスの路線図の中に”オンドレイ・ネペラ・アイスアリーナ”のオの字もネの字も見つかりません!どうしたものかと思案に明け暮れていたところ、今度は見知らぬスロバキア人のオッチャンが声をかけてきました。オンドレイ・ネペラ・アイスアリーナに行きたいと伝えると、オッチャンは早速周りのスロバキア人たちにスロバキア語で聞きまくってくれた末に、「205番のバスに乗って、ジムニー・スタジオン(Zimny Stadion)という停留所で降りなさい」と教えてくれました。停留所名に「オンドレイ」も「ネペラ」もなく「ジムニー・スタジオン」としか書かれていないのは、地元民相手ならともかく、スケート目当てのいちげんさんに対する配慮はないのかと暴れたくなってしまいます(笑)。

その上、もう一つ問題がありました。当然のことながら、205番のバス乗り場は2つあるのです。スタジアムがどの方角か分からない以上、どちらがスタジアムに行く乗り場なのかも分かりようがありません。そんなマゴマゴする私を見るに見かねたのか、先述のスロバキア人のオッチャン、何とスタジアムまで一緒について来てくれました。それも、アリーナ入口のド真ん前まで私を案内してくれたのでした!そして、私を無事に送り届けた後、颯爽と帰っていったのです。まるで、以前の当コラムでも取り上げた、同時多発テロのパリにたまたま休暇に来ていて近隣病院の診療を手伝った後で忽然と姿を消したとされる、あのブルターニュの医者さんたちを思わせる話です(→パリの同時多発テロの際に話題となった「ホワイトプラン」って何?、→美談の舞台だったパリの大病院HEGPに激震!現職の循環器科医がモラハラを苦に自殺という衝撃)。

自分の用事もあったであろうに、何の見返りも求めずに私をアイスアリーナまでわざわざ案内してくれたこのオッチャンの好意は心底ありがたかったのですが、1つだけ困ったことがあります。それは、私が日本人と分かった瞬間から、いきなりバスの中で人目もはばからず合掌のポーズをとって「ヒロシマ!ナガサキ!ヒロシマ!ナガサキ!」と延々と連呼していたことでした。日本人たる私としては、どうリアクションを取ったら良いのか分からず、固まってしまいました。しかし、逆にスロバキア人の側から考えてみれば、日本と言えばトヨタでもソニーでもなくヒロシマ・ナガサキで、それ以外はあまり知られていないのかもしれませんし、そのヒロシマ・ナガサキで何が起きたのかも詳しく知る機会はないのでしょう。まあ、ハラキリ・カミカゼ・ニンジャと連呼されるよりは良しとすべきなのかもしれません(→世界最頻出テロ用語は日本語?!「KAMIKAZE」大合唱の仏メディア、「NINJA」大流行のテロリストのアカウント名)。

そんなこんなで晴れて到着のジムニー・スタジオン。「ジムニー(ZIMNY)」とは「冬の」という意味ですので、直訳するなら「冬季競技場」でしょうか↓。
 


バス停を降りるとすぐ目の前に、ガラス張りの幾何学的フォルムが特徴的な立派なスタジアムがドドーンと聳え立っております。1階部分にプレイガイドがあり、大会の全日程用の通し券もここで買えました(125ユーロ≒16250円程度。この通し券がある場合のみ選手の練習の見学も可能)。なお、このオンドレイ・ネペラ・アリーナへはトラムの4番で行く方法もあります。上の写真で右手のガラス張りの建物がアイスアリーナですが、この写真のカメラの向きと同じ北の方角にひたすら10分ほど直進すると、大通りとの交差点のすぐ左手にオドボヤロフ(Odbojarov)駅があります↓。


余談ですが、ブラチスラバ市内は視覚障害者用のレーンが横断歩道のど真ん中を突っ切っているのが印象的で、これは日本も見習った方が良いのではないかと思われました(上写真)。

さて、前述した通り、全日程の通し券があれば、大会前であっても選手の練習の見学が可能です。ということで早速、公式練習の様子を見るためにスタジアムの中に入ってみることにしました↓。


ちょうど、女子シングルの最後の組が練習していました。一部のカメラにはカバーが掛けられ、客席はまばら、ジャッジ席も記者席も空席です。しかし、よく見ると、テクニカルコントローラーの席には人がいます↓。


手前のモニターには、ジャンプの種類やスピンの種類などのエレメンツを入力する画面がカラフルに映し出されています。その横の紙のコーヒーカップが、これがまだ予行であることを物語っているかのようにのどかです。さらにその前方を見ると、着席しているジャッジがいないにもかかわらず、ジャッジ席のモニターには氷上の選手の映像が出ています。まさにこれから音楽をかけて選手の公式練習が始まるところで、おそらく本番に備えた各種機械のテストも同時進行で行われていたのでしょう。

 
女子シングルの公式練習最終組の最後の登場は、フランスのマエ・ベレニス・メイテ選手でした(上写真左)。同じ組には同じフランスのロリーヌ・ルカバリエ選手もいたことから、練習組の組み合わせは到着便の日程に応じて決められているように見受けられ、実際の本番での滑走順と全く無関係でした。なお、ショートプログラムの本番前日にもかかわらず、この日のマエ・ベレニス・メイテ選手はジャンプ全般が不調でした。特に、2番目のジャンプであるトリプルフリップが鬼門となっており、音楽をかけての演技でも派手に転倒していました(上右写真)。さて、本番はどうなったでしょう?大会の様子については、来週に稿を改めます。

バックナンバー>>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491