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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2015/11/20

世にも奇妙なフランス・ボルドー体験(1)…テロの影響で中止となったエリック・ボンパール杯に行ってきました

多くの方々が薄々感づいていらしたのではないかと思いますが、先週まで何週かに渡って掲載してきた記事の中に「世にも奇妙な…」というフレーズが頻繁に登場したのには意味がありました(→世にも奇妙?!日本脳神経外科学会総会開催中の北海道で接した「奇跡のリリーバー」盛田幸妃氏の訃報、→「世にも奇妙」に絡み合う因縁?!…2015年ドラフトで指名された3人の甲子園優勝投手の素顔と魅力、→「世にも奇妙」なウチナー祭り?!2015年ドラフトを賑わした沖縄関係選手の意外な共通点)。人生とは奇妙な偶然や縁に満ちている…ということを感じるエピソードがその頃やたらと多かったことも背景にありますが、それよりも何よりも、私自身が学生時代から多大な思い入れをもって見守ってきた番組でもあり、この原稿が掲載される翌日である11月21日(土)と11月28日(土)の2週に渡って久々のオンエアが予定されている、今年で25周年を迎えるフジテレビの不滅の超人気番組『世にも奇妙な物語』を私なりに応援しようということでした↓。

フジテレビ番組・イベント最新情報(2015年10月21日):”日本を代表する映画監督&豪華キャストがタッグ!放送を熱望されてきた傑作が復活!『世にも奇妙な物語』”
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2015/i/151021-i191.html
<11月21日(土)>
土曜プレミアム『世にも奇妙な物語 25周年記念!秋の2週連続SP~傑作復活編~』
「イマキヨさん」(演出:高丸雅隆)(投票1位・初回放送2006年3月28日)
「昨日公園」(演出:植田泰史)(投票4位・初回放送2006年10月2日)
「ズンドコベロンチョ」(演出:後藤庸介)(投票7位・初回放送1991年4月18日)
「思い出を売る男」(演出:岩田和行)(投票26位・初回放送1994年10月1日)
「ハイ・ヌーン」(演出:都築淳一)(投票27位・初回放送1992年6月11日)

<11月28日(土)>
土曜プレミアム『世にも奇妙な物語 25周年記念!秋の2週連続SP~映画監督編~』
監督:山崎貴(代表作:「永遠の0」他)主演:阿部サダヲ
監督:本広克行(代表作:「踊る大捜査線」他)主演:妻夫木聡
監督:佐藤嗣麻子(代表作:「アンフェア」他)主演:竹内結子
監督:中田秀夫(代表作:「リング」他)主演:中谷美紀
監督:清水崇(代表作:「呪怨」他)主演:調整中


明日オンエア予定の5作品はいずれも超有名作です。中でも特に楽しみなのは、5番目の「ハイヌーン」です。これはまさに『元祖!大食い王決定戦』(テレビ東京)に登場する大食い選手の人生そのものと言っても過言ではない内容で、初回放送時の主演は玉置浩二さんでした。大食い行為そのものの淡々とサムライ然とした静けさ、最初は必ず得られる周囲からの感嘆と称賛が、どのタイミングで周囲と齟齬ひいては白眼視の方向に舵が切り替わるのか…という、「大食いの宿命的な本質」を、極めて短い時間の中で抜群の秀逸さをもって表現した意欲作でした。初回放送の完成度があまりに高いだけに、今回のリメイクがどうなるのか、大いに楽しみです。

このように書いたものの、残念ながらワタクシ、番組のリアルタイム視聴が出来ません(涙)。それよりも、先週もまたフィクションを凌駕する「世にも奇妙」な現実に遭遇してしまい、今週からの掲載を考えていた「私が選ぶ『世にも奇妙な物語』傑作選(仮)」というシリーズが完全にフッ飛んでしまったのでした。というのも、11月13日にフランス・パリで発生した同時多発テロの際、私はこのテロの影響で大会2日目に中止になってしまったフィギュアスケート・グランプリ大会「エリック・ボンパール杯」を観戦するために、フランスのボルドーに滞在中だったのです↓。

(大会中止決定のスケートリンク入口で落ち込む岩手放送のオラ君に対する右端の黒ずくめの守衛さんの視線が優しい)

ドイツからパリのシャルル・ド・ゴール空港を経由してボルドー入りした際のフライトでは、隣の座席がオーストリアのペアでドイツ語会話が炸裂、さらに私の後ろはロシアの選手ほぼ全員&そのコーチというチーム・ロシア様御一行というありさまでした。あまりに周囲がスケート関係者ばかりなので、私はだんだん自分自身がまるでロシアの振付師にでもなったような、カフカの「変身」ばりの奇妙な錯覚に陥ってしまいそうでした。

(ドイツ出国当時のフランクフルト空港の様子。ルフトハンザの大規模ストライキのせいで空港はどエライ大混乱、ほとんどのフライトがキャンセル!こちらは幸いエール・フランスのフライトだったため事無きを得た。「さすが、おフランス!ストライキばっかりのドイツとは、ちゃうわ~!」と、”フランス万歳”だった人がこの時点では他にも多かったはず)

(手荷物受取のホールには巨大なボルドーワインのオブジェが…。ここには写っていないが、背後のガラス壁の向こうからは日本のテレビ局のカメラクルーがカメラを回していた)

そして、いよいよエリック・ボンパール杯の開幕当日の朝。いつもの習慣で朝のニュース番組「テレマタン」(France2)を付けると、フランスでは新車を買う人間が高齢化している…といった話題(下写真)。ふーん、若い人に経済力がなくて消費が盛り上がらない…という話なのであれば、日本と似ているのかな?などと思ったり…、

さらには医療従事者(医師・歯科医師・看護師)のストライキがあるという報道もあり(下写真)、「あらま!ストライキするのはドイツだけじゃなかったのネ!」とテレビの前でズッコケつつ、過日の”フランス万歳”は何だったのかと思ってみたりと、基本的にはのどかな朝でした。

なお、この日はご存じの通りの「13日の金曜日」…キリスト処刑の曜日とされる通称「ブラック・フライデー」(魔の金曜日)でもありました。日本ではあまり「13日の金曜日」とか数字の「13」に対して過剰に反応することはさほどはありませんが、つい先日搭乗したエール・フランス機でも座席には4列目や9列目は普通に存在すれども13列目が無く、多少のイヤ~な予感がしないこともありませんでした。そんな負の予感を打ち消したいのはフランス全土共通だったのか、この日はフランスでは「親切の日」(jour de la gentillesse)でもあったそうで、「親切な(gentil)」の語源からご丁寧に解説してくれたり(下写真)、バレンタインデーの義理チョコよろしく女性キャスターが男性メインキャスターにプレゼントを贈るような演出もみられました。


よりによってそんな13日の金曜日に開幕するエリック・ボンパール杯に多少の縁起の悪さを感じない訳ではなかった私も、まさか同日夜のパリにおける戦慄の大惨劇がフランス全土を恐怖に陥れることになろうとは、朝の時点ではみじんも想像していませんでした。たまたま朝のテレマタンで「ブラック・フライデー」などという話題を耳にしていなければ、この日が縁起でもない日であることすら、私はきっと忘れていたことでしょう。

そして、スケート会場に到着です。入場料は8ユーロ(≒1000円ちょっと)という、日本ではまずありえないような破格の安さです。しかも、全席自由であり、入場時点で客席はガラガラだったので、昨年に引き続き最前列カブリつきの凄い席をゲットできてしまったのでした。(→グランプリシリーズ・フランス大会発祥の地!ボルドー開催のエリック・ボンパール杯に行ってきます!、→エリック・ボンパール杯観戦記(1)…ボルドー散策で町田選手が道に迷ったのはこの教会?!、→エリック・ボンパール杯観戦記(2)…演技そっちのけで視線釘づけ?ジャッジのお仕事が面白すぎる!、→エリック・ボンパール杯観戦記(3)…移民国家フランスのロールモデル?シャフィック・ベセギエが体現する世界

最初の競技である女子シングルの1番滑走、アメリカのアンジェラ・ワン選手です。ご覧の通り、座席がガラガラです。

名前はアンジェラだというのに、顔の雰囲気が何となくギャル曽根に似て見えるのは私だけでしょうか?(笑)

(13日の18時半頃、アイスダンス終了直後のタイミングで会場入りする男子シングル・村上大介選手。日本人女性に声を掛けられて、思わず顔を向けてニコリとほほ笑んだ瞬間)

(リンクサイドではテレビ朝日のクルーが頑張ってお仕事中です。ただし、彼らはアイスダンスとペアの時には機材ごと影も形もなく消えてしまうのが、日本における真の意味でのフィギュアスケート振興という観点からは甚だ残念です)

(迫力ある演技を披露する男子シングル・宇野昌磨選手。このショートプログラムで首位発進)

(リンクサイドで日本人観客から花束をもらう宇野昌磨選手)

そして、最後はペアだったのですが、下の写真でも分かるように、最前列カブリつき軍団のかなりの方々が既にお帰りになられています↓。


持参してきたお土産や花束をその前の男子シングルまでに全て渡し終わったのか、はたまた近所のビストロで舌鼓を打っていたのか、それとも翌日のフリーに備えて体力と気力を温存したのか…。少なくとも、この日の晩のテロとそれに引き続く翌日のフリー中止を彼女たちがもし前もって知っていたなら、きっと最後のペア競技がこのように淋しい客席になることはなかったでしょう。

かくして、女子、アイスダンス、男子、ペアの順に全選手のショートプログラム(ショートダンス)をタップリじっくり堪能して22時過ぎにホテルに戻ってきた私は、一も二もなく速攻でテレビを付けました。フランス入り当日から連日フランス国営テレビTF1で番宣しまくっていたサッカー親善試合「フランスvsドイツ」を、ドイツから来た身としては見ない訳にはいかないからです(笑)↓。

やってます、やってます!試合はちょうど後半が始まったばかりというタイミングでした。世界王者のドイツがフランスに0-1でリードを許しています。それだけなら別に驚きもしませんが、この試合を少し見ている間に、何だか妙な感覚に襲われ始めました。ドイツ選手の動きが変なのです。サッカーにまるで詳しくない私が見ても明らかなほど、ドイツ選手はみんなやる気がなさそうでした。真っ先に脳裏に浮かんだのは「無気力試合」という単語でした。となると、最近の日本の野球界の賭博騒動も頭をよぎります。もっとも、まさか親善試合で八百長はありえないだろうとは考えましたが…。テレビ画面から伝わるドイツ選手はまさに文字通り、「心ここにあらず」の状態にあり、「世にも奇妙な物語」のストーリーに出てきそうな不思議な感覚のテレビ観戦となりました。

しかし、翌日の報道を見て納得しました。ドイツ選手は試合当日の昼間、パリの宿泊先ホテルで爆弾騒ぎに巻き込まれていたのだそうです(この時はテニスの全仏オープンで有名なローランギャロスのセンターコートに全員避難するも、結局爆弾は見つからず選手もホテルに戻った)。そんな前置きがあったためか、実際に試合が始まって前半16分以降から3度にわたって爆発音が場外から響き渡ったことで、すっかり縮み上がってしまったそうです。そして、これが結果的には、130人前後の人命をあっという間に奪った凄惨なテロの幕開けでもあったのです。

あとでレーヴ監督のインタビューも聞きましたが、前半と後半の間のハーフタイムにドイツ選手はみんな、充電が切れるギリギリまで携帯電話にかじりついて、球場に来ていた家族の安否などの情報収集に明け暮れていたとのことです。これでは試合に集中しろという方が無理でしょう。そして、試合後にホテルに戻ることができず、サッカー場のロッカールームで何十人もの人とともに一夜を明かし、翌朝もホテルを経由せず直接空港から特別機でフランクフルトに戻ったというのも、報道通りであったとすれば大変な身体的及び心的苦痛を伴ったに違いありません。聞けば聞くほど、まさにサッカーどころではなかったようですが、そもそも昼間のホテルの爆弾騒ぎの時点でどうして試合を中止しようと大会主催者は考えなかったのかと、結果論かもしれませんが考えてしまいます。

このドイツ代表の顛末を見れば、ボルドーのフィギュアスケート大会も無傷ではいられないのではないかと私個人は危惧していましたが、悪い予感ほどドンピシャと当たってしまうものです。午前の時点では各選手の滑走順も発表され、選手たちの早朝練習も行われたことから、フランスのスケート連盟はギリギリまで開催の方向で粘ったのが明らかですが、結局は非常事態宣言発令中の国家と自治体からの命令には逆らえず、エリック・ボンパール杯は中止を余儀なくされたのでした。

(中止決定の張り紙の前でガックリと肩を落とすオラ君)

このフランスのテロの余波はその後、ベルギーを経てドイツにも広がっています。11月17日(火)に開催予定のベルギーvsスペインは早々と中止決定がなされていましたが、同日ドイツ・ハノーバーで予定されていたドイツvsオランダは当初開催予定だったものの、直前に急遽中止となりました(下写真)。爆破予告があったということですが、アンゲラ・メルケル首相が既に競技場入りしていた中での中止決定でしたので、よほど切羽詰まった事情があったのでしょう。


今回のエリック・ボンパール杯の中止は、私たちを待ち受ける未来の象徴的ひとコマだったのかもしれません。今後はスポーツ界はもちろん、戦時下のような息苦しさがひたひたと我々一般市民の生活に忍び寄ってきて、心の平穏や自由を奪っていくであろうと考えざるを得ない世界情勢が現に存在します。そして、これは構造的にテロに弱い日本にとっても決して対岸の火事ではないと、あらためて気持ちを引き締めているところです。


<参考サイト>
T-online(2015年11月14日):DFB-Spieler sprechen von einem "Albtraum" (ドイツ代表選手が「悪夢」について語る)
http://www.t-online.de/sport/fussball/em/id_76127854/nach-terroraschlaegen-dfb-spieler-sprechen-von-albtraum.html

Fokus-online(2015年11月13日):Bombendrohung im DFB-Teamhotel  Nationalmannschaft flüchtet in Pariser Tennisstadion(ドイツ代表、宿泊先ホテルに爆弾を仕掛けたとの脅迫を受けてパリのテニスコートに避難)
http://www.focus.de/sport/fussball/em-2016/in-paris-bombendrohung-auf-hotel-der-deutschen-nationalmannschaft_id_5085452.html
(リンク先に、全仏オープンの会場としても有名なローランギャロスのセンターコートにて記念撮影するドイツ代表選手のお茶目な写真あり。この時点では彼らがさほど事態を深刻に受け止めていなかったことが分かる)
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