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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2015/11/13

「世にも奇妙」なウチナー祭り?!2015年ドラフトを賑わした沖縄関係選手の意外な共通点

今回は、「世にも奇妙な2015ドラフト」シリーズの第2弾です。先週までは、今年のドラフトの特徴として甲子園の高校野球の全国大会における優勝戦経験者、つまり「甲子園ファイナリスト」が11名という破格の多さだったことを取り上げました(→2015年ドラフト会議のキーワードは甲子園「メダリスト」の大躍進?!、→「世にも奇妙」に絡み合う因縁?!…2015年ドラフトで指名された3人の甲子園優勝投手の素顔と魅力)。そして今週は、今回のドラフト指名選手に占めるウチナンチュ(沖縄人)こと沖縄県関係者の指名の多さについてです。まずは、以下の沖縄タイムスの記事をご一読ください(引用部分は青字):

沖縄タイムス(2015年10月23日):【多和田投手の動画あり】ドラフト 沖縄から最多7人
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=138294
プロ野球の新人選択会議(ドラフト会議)は22日、東京都内のホテルで開かれた。沖縄県関係では最速152キロ右腕の多和田真三郎投手(中部商高-富士大)が西武、190センチ左腕の上原健太投手(あげな中-広陵高-明大)が日本ハムにそれぞれ1位指名された。県関係選手の複数の1位指名は初めて。全体では、過去最多の計7人が指名された。

「県関係選手の複数の1位指名は初」「全体では過去最多の7人が指名」という文言に、沖縄タイムスひいては沖縄県民の皆々様の歓喜と興奮が伝わってくるようです。しかし、沖縄とさほど縁が深くない人間から見れば、「本当にそんなにたくさんいるのか?」と疑問に思うことでしょう。ということで、その7名の選手とプロフィールを以下に列記します↓(赤:大卒、ピンク:高卒、緑:社会人)。

【日本ハム1位】上原 健太(うえはら・けんた)投手 (190cm85kg/左投左打/A型)
  うるま市出身。天願小→あげな中→広陵(広島)→明治大(東京)
【西武1位】多和田 真三郎(たわた・しんさぶろう)投手 (182cm82kg/右投右打/B型)
  中城村出身。津覇小→中城中→中部商→富士大(岩手)
【オリックス3位】大城滉二(おおしろ・こうじ)内野手 (175cm71kg/右投右打/B型)
  豊見城市出身。長嶺小→長嶺中→興南高→立教大(東京)
【西武8位】國場 翼(こくば・つばさ)投手 (181cm81kg/右投左打/O型)
  具志川市出身。天願小→?→具志川高→第一工業大(鹿児島)
【巨人3位】與那原 大剛(よなはら・ひろたか)投手 (190cm89kg/右投右打/A型)
  北谷町出身。北玉小→桑江中→普天間高
【ヤクルト4位】日隈 ジュリアス(ひぐま・じゅりあす)投手 (184cm77kg/左投左打/B型)
  北谷町出身。西生野小(大阪)→浜川小→桑江中→高知中央(高知)
【広島6位】仲尾次オスカル(なかおし・おすかる)投手 (178cm78kg/左投左打/O型)
ブラジル・サンパウロ市出身(両親が沖縄出身)。カントリーキッズ高(ブラジル)→白鷗大(栃木)→ホンダ(埼玉)

確かに7名います。ただし、最後の仲尾次オスカル投手は沖縄生まれではなくブラジル・サンパウロ市に生まれ育った日系ブラジル人二世で、両親が沖縄から渡伯したということで「ウチナー(沖縄)枠」に入っているようです。それでも、実際に沖縄で生まれ育った指名選手は大学生4名と高校生2名の合わせて6名にも上り(高校から県外に出た者が2名、大学生4人は全員が県外の大学へ進学)、そのうち2名が同時に1位指名を受けたのは沖縄史上初の快挙だというのだから、今年のウチナンチュのパワーは大したものです!

ところで、この7名の選手の出身地や出身小中学校をじっくり眺めていたら、不思議な共通点が見えてきました。それは、2010年秋の『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)の沖縄ロケの際、春夏連覇したばかりの興南高校へいきなりアポなし突撃訪問した私を連日歓待して下さった、同校野球部の真栄田聡部長との会話の中で出てきたテーマでもありました。ちなみに、真栄田部長は1980年夏の第62回選手権に興南のキャッチャーとして出場され、元・大洋の竹下浩二さん(現在は横浜のリストランテ瀬振オーナー)とバッテリーを組み、あの荒木大輔さんの早実に3回戦で敗退した元甲子園球児でもあります。

(春夏連覇を果たす前の試合となった2010年8月20日準決勝vs報徳学園。6回表開始前のグラウンド整備中に三塁ベンチに集結して我喜屋優監督の話に聞き入る興南の選手の様子。中央の背番号6が当時2年生ながら春夏連覇の主力選手でもあり、今回オリックス3位指名を受けた大城滉二遊撃手。写真右端の白い半袖シャツ姿の男性が上述の真栄田聡部長)

確か、かつての夏春連覇当時の池田高校(徳島、1982年夏&1983年春優勝)と2010年春夏連覇の興南との比較について話が盛り上がっていた真っ最中だったと記憶していますが、そこで部長が突然、何かに閃(ひらめ)いたかのように嬌声をあげたのでした↓:

「言われてみれば、最近ウチ(興南)でレギュラーを獲る子って、なぜか那覇の子が全然いないんだよ!」

部長いわく、良い選手はだいたい那覇から離れた郊外ないし郡部から来るとのことです。例えば、春夏連覇の時のエース島袋洋奨投手(現・ソフトバンク)は宜野湾市出身で、今話題の普天間基地と目と鼻の先の宜野湾市立嘉数中学の出身。先述の大城選手は那覇に隣接するベッドタウンである豊見城市出身で、興南高校との距離こそ7キロ弱程度ですが、出身の長嶺小及び長嶺中学校(下写真の赤マーク)を地図で確認する限り、かなり自然豊かな感じのようです↓。

(興南高校は左の地図の上方、ゆいレールの古町駅前にある)

この時の真栄田部長とのディスカッションの結論は、沖縄きっての大都会である那覇育ちの子と、近郊の郡部から入部してくる子とでは、育った自然環境に起因するであろう子供の頃の遊び方の違いなどからか、足腰の強さや運動神経に差があり、それが歴代の部内のレギュラー争いに反映されるのではないか…という線に落ち着きました。(もっとも、かく言う部長自身は那覇都心部のご出身。ただし、当時のチームメイトは確かに石垣やら今帰仁やら地方色豊かで、先述の竹下浩二さんのような大阪・兵庫からの野球留学生も2人メンバー入りしていた)

以上の話を念頭に置いた上で、今年のドラフト指名の「ウチナンチュ」の出身地および出身小中学校をもう一回復習してみましょう(既に紹介済みの大城滉二選手とブラジル出身の仲尾次オスカルはここでは除く)。ここでも、驚くほどに那覇出身者が皆無であることに真っ先に目が行ってしまいます。

【日本ハム1位】上原 健太: うるま市/天願小→あげな中→広陵(広島)→明治大(東京)
【西武1位】多和田 真三郎: 中城村/津覇小→中城中→中部商→富士大(岩手)
【西武8位】國場 翼 具志川市/天願小→あげな中→具志川高→第一工業大(鹿児島)
【巨人3位】與那原 大剛: 北谷町/北玉小→桑江中→普天間高
【ヤクルト4位】日隈 ジュリアス:  北谷町/浜川小→桑江中→高知中央(高知)

いったい、どうなっているのでしょう?同郷や小中学校の同級生どうしの組み合わせの多さはまるで神経衰弱のようで、頭が混乱してきます(笑)。桑江中が2人、天願小→あげな中も2人!後者の2人の場合、上原健太さん(日ハム1位)は少年野球時代はずっとエースだった國場翼さん(西武8位)の陰で主に外野手起用、広陵でも甲子園メンバーには入ったものの控えで登板機会なし、ようやくエースナンバーを背負うことになったのは大学に入ってから…という遅咲きぶりで、他方の國場さんは「高校時代は無名も…」などと書かれてしまうのだから、人生は何が起きるかわかりません。

ここで、彼らの出身小中学校がどの程度の田舎なのか、真栄田部長の説と合致するのか田舎、俄然興味が湧いてきた私は地図で確認し始めした。すると、今回のドラフトの特徴としてもう一つ、重大なポイントが浮かび上がってくるではありませんか!それは、すぐ近隣が米軍施設だらけであるという共通点でした。以下に提示する地図のうち、灰色にに塗りつぶされた米軍施設がどのように広がっているかに注目して見ていただきたいと思います。

<上原健太&國場翼選手の場合>
青:うるま市立天願小学校(青:うるま市みどり町1-8-1)
赤:うるま市立あげな中学校(赤:うるま市字安慶名40)

小学校は海兵隊施設キャンプコートニーと隣接、中学はキャンプ・マクトリアスのすぐ近隣、さらに周囲にはあちこちに灰色のゾーン(陸軍施設など)が広がっています。

<與那原大剛&日隈ジュリアス選手の場合>
赤:北谷町立桑江中学校(中頭郡北谷町美浜1丁目4番地7)

彼らの郷里、北谷町はもっと衝撃的です。桑江中学の横の米軍施設はその名もそのまんま、キャンプ・桑江。さらに南には隣接する宜野湾市と北中城村とともに3つの自治体の境界線をすっぽり飲み込むように広大な敷地を占めるキャンプ・フォスター、北にはこれまた嘉手納町・沖縄市とともに3つの自治体をまたぐように広がる有名な嘉手納基地があります。このため、桑江中学校のホームページ(末尾参考サイト参照)に掲載された通学区マップは、人の住む所がまるで帯と紐が這っているかのような不思議な形を成すという、凄い事態になっております↓。(真っ白い部分が日本の主権の及ばない地区)

(日隈選手の母校・浜川小学校は水色のベイエリアのビーチやリゾートホテルの多い地区に、與那原選手の母校・北玉小学校はちょうどキャンプ桑江を挟んだ反対側、ひも状に伸びる内陸の緑色の宅地造成地区に存在)

ここでついでに與那原選手の進学した普天間高校も紹介します。先述の桑江中とはキャンプ・フォスターを挟んで反対側となる南側の宜野湾市内、ちょうどキャンプフォスターと普天間飛行場との中間に学校はあります↓。

赤:北谷町立北玉小学校(中頭郡北谷町吉原875)
青:沖縄県立普天間高校(宜野湾市普天間1-24-1)

(宜野湾市という自治体も中央が軒並みグレーに塗りつぶされており、まるで滋賀県のようなことになっています。それにしても、どーやって通うのよコレ!とツッコミを入れたくなります)

<多和田真三郎選手の場合>
赤:中城村立中城中学校(中頭郡中城村字屋宜741-1)
青:中城村立津覇小学校(中頭郡中城村字津覇1174)

これまでのケースのように基地とキャンプの間に挟まれていたり、米軍施設がギリギリ真近に迫っている訳ではなさそうですが、下の目盛りが1kmということを考えれば、騒音公害など色々とあろうことは想像できます。

以上、ドラフト指名の沖縄出身選手の地元についてまとめてみました。調べれば調べるほど、本土ではきちんと教えられることも耳にする機会も滅多にない、沖縄ならではの現実が浮かび上がってくるのでした。こうなると、興南高校野球部の真栄田部長が語っていたところの「レギュラーを獲るのは那覇の子ではなく郡部の子」という話は、単純に「都会vs田舎」という対立軸に収まる話ではなかったのかもしれません。そういえば、真栄田部長自身は「自分が10歳の頃まではドル札を使っていた」ともおっしゃっていました。それを聞いた瞬間、自分がいかに沖縄のことを何も知らずに現地に乗り込んで来たものかと恥じ入ったものでしたが、今回のドラフト指名選手の出身校リサーチはその時の衝撃をはるかに上回る質の情報の連続でした。

沖縄の歩んできた独自の歴史、プロ野球のキャンプとの関係、そして滋賀県における琵琶湖も顔負けのごとく県内を占拠する米軍施設の分布、基地経済の正と負の影響、さらには先の大戦の影響なくしては存在し得なかったであろう、野球の本家本元であるアメリカという国との混血の影響など…。今後、例え野球に関係ないニュース報道であったとしても、ウチナーの話題を見聞きするであろうその度に、私は今回のドラフトにおけるウチナンチュの歴史的大躍進の意味を考え続けていくことになるのでしょう。


<参考サイト>

おきなわ野球大好き:上原 健太 / 明治大学硬式野球部
http://www.yakyu.okinawa/interview/2015/interview_103.html

北谷町立桑江中学校 - 桑江中学校通学区マップ
http://www.kuwae-j.chatan.jp/1/354.html

JORNALニッケイ新聞(2015年10月23日):プロ野球ドラフト会議=仲尾次オスカル、広島へ=ブラジル勢、2年連続指名
http://www.nikkeyshimbun.jp/2015/151023-73colonia.html
仲尾次投手は1991年、聖市生まれ。98年に市内のジガンテ野球クラブに入団し、本格的に野球を始める。04年から聖州イビウナのヤクルトアカデミーに入学。その後5年間みっちりと野球を学んだ。
 08年にカントリーキッズ高校を卒業後、国内外での成績が評価され09年の第53回パウリスタ・スポーツ賞を受賞。同年4月に白鴎大学へ進学する。12年の4年次にはプロ志望届を提出するが、指名漏れとなりホンダへ入社した。
 2013年の第3回WBCではブラジル代表に選出され、日本戦に7回から3番手として登板。1回1/3を2安打3失点(自責3)で敗戦投手となった。
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