Nagoya Talents' Network - タレコラ

Dr.片山晴子 RSS Feed

金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2015/11/06

「世にも奇妙」に絡み合う因縁?!…2015年ドラフトで指名された3人の甲子園優勝投手の素顔と魅力

先月22日に開催された今年のプロ野球のドラフトは、甲子園経験者の比率こそ例年通りだったものの、甲子園大会で優勝ないし準優勝を果たした「甲子園ファイナリスト」の指名の多さが際立った…というのが先週の内容でした(→2015年ドラフト会議のキーワードは甲子園「メダリスト」の大躍進?!)。これぞまさに文字通りの、「過去に瑠偉(オコエ?)を見ない」ドラフトだったと言うべきではないでしょうか?!(←いずれ東スポの見出しに使われる予感)

冗談はさておき、ここでは今年指名された11名の「甲子園ファイナリスト」の中からさらに絞り、3名の「甲子園優勝投手」の甲子園での勇姿を紹介したいと思います。参考までに、「甲子園ファイナリスト」が半数以下の5名だった昨年のドラフトでも、「甲子園優勝投手」の指名は3名でした。「甲子園優勝投手」の称号は、プロ野球を目指す選手にとっては古今を問わず不動のオールマイティーカードなのかもしれません。

それではまず、記憶にも新しいこちらの甲子園優勝投手からスタートです↓。

【中日ドラゴンズ1位】 小笠原慎之介(東海大相模) (180cm 83kg/左投左打)

(2015年8月20日決勝vs仙台育英9回表、三塁ベンチ前で監督と抱き合う小笠原選手)

投手なのにヘルメット姿…?そうです、これは今年の夏の決勝の対仙台育英戦、6-6の同点で迎えた9回表に小笠原選手自らが放って優勝をグイッと引き寄せたスリーランホームランの際、ベース一周ののちベンチに戻ってきて監督と抱き合ったという、新聞・テレビなど各種メディアにも頻出した有名な瞬間のショットです。もっとも、その写真や映像は東海大相模の門馬敬治監督の顔をとらえたアングルからのものばかりであって、上写真のように小笠原選手の長く苦しいトンネルを抜けた直後のような、そして背負い続けてきた重荷が取れてホッとしたような表情がわかる三塁側特別自由席からのショットは皆無でした。



私が座っていた三塁側ベンチ後方の中段あたりというのは、この一連のシーンにとってまさに特等席でした。小笠原選手が放った打球を見たその瞬間から、東海大相模の門馬敬治監督はずっとバンザイのポーズのまま同選手を見守っていました(上写真左上→右上)。いや、それよりも、定位置からのノックもままならないという辛苦を長年味わってきた、あの門馬監督の腕がここまで挙上されたまま何分間も保持されていたことの方が、小笠原君のホームラン以上に医学的奇跡だったかもしれません。そして、待ち構える監督をじらすかのように先に次打者席の選手とハイタッチを済ませて戻ってきた小笠原選手との、「いつまでも抱きしめていたかった」というあの有名な抱擁シーンへとつながるわけです(上写真左下→右下)。


その後のU-18ベースボール・ワールドカップでは、壮行試合にこそ先発したものの(上写真)、本大会ではあまり活躍の場がなく、さらに9月下旬の和歌山国体では左肘炎のため登板回避となっていた小笠原選手でしたが、これからは舞台をプロの世界に移し、中学(藤沢市立善行中)および野球チーム(湘南ボーイズ)の先輩でもある高橋周平選手(東海大甲府出身)も在籍し、同じ藤沢出身の偉大な左投手である山本晶広さんが引退したばかりの中日ドラゴンズのマウンドを長く守っていってほしいと思います。


【東京ヤクルトスワローズ3位】 高橋奎二(龍谷大平安) (178cm 71kg/左投左打)
エースナンバーを背負って臨んだ今年の夏の京都府大会では四回戦敗退となり4季連続の甲子園出場を逃したため、ご存じない方も多いかもしれませんが、龍谷大平安の高橋奎二投手といえば押しも押されもせぬセンバツ優勝投手。2014年春の選抜大会で新二年生の背番号10のサウスポー、高橋奎二投手は5試合中4試合に登板。2回戦の甲子園初登板を皮切りに準々決勝で好リリーフ、準決勝(下写真)では高校生活初となる完投での勝利、決勝は堂々の先発も2回1/3しか投げませんでしたが1失点、チームは6-2で見事優勝を果たしたのでした。

(2014年4月1日準決勝vs佐野日大9回表、最後の打者を相手に力投中)

当時176cm62kgと公表されていた細身の体から高く右足を上げる独特のダイナミックな投球フォームで、メジャーリーガーになぞらえて「平安のライアン」ないし「古都のライアン」といったニックネームが定着しました。こちらは、参考サイト末尾の動画1「みんなの甲子園」の中のワンシーンです↓。

この「みんなの甲子園」(毎日放送)は優勝翌年の2015年春の選抜大会で龍谷大平安の初戦敗退の翌朝に放送されたものですが、この中に平安の原田英彦監督が高橋投手をしきりに「赤ちゃん」というニックネームで呼ぶシーンが登場します。「考え方が幼い」「顔もかわいい」という理由らしいですが、かくも珍妙なニックネームがつくこと自体、きっと人間的な魅力に溢れる面白いキャラクターなればこそでしょう。プロ入り後のインタビューでも素朴な天然っぷりが炸裂することを今から楽しみにしています(笑)。

蛇足ついでに、ライアンとはメジャーリーグの大投手、ノーラン・ライアン(Nolan Ryan)のことですが(下写真左)、高橋君を指名したヤクルトにはすでに、和製ノーラン・ライアンと呼ばれるエース級の先輩格がいます。2013年のルーキーイヤーにいきなり最多勝&新人王、今年は2年連続で開幕投手を務めるまでに成長し、この記事が掲載される頃ちょうど開幕予定の国際大会「WBSC世界野球プレミア12」にも登場するであろう小川泰弘投手(愛知・成章-創価大-ヤクルト)、通称「ライアン小川」です(下写真右)↓。高橋君とは異なり二人とも右投手であり、足の上げ方は確かに似てはいますが、和製ライアンの方が本家よりも高く派手に見えます。

(左:ノーランライアン、参考サイト動画2)より。右:大学時代のライアン小川、参考サイト動画3)より)

小川泰弘投手といえば、高校時代は愛知・成章高校のエースとして2008年春の第80回選抜大会のそれも開幕試合に登場、大規模改修工事を終えたばかりの「リニューアル甲子園球場」での記念すべき初の勝利を挙げたことでも知られています。奇しくも二回戦で敗れた相手は、龍谷大平安に校名変更される直前だった平安高校で、高橋君との因縁はここにも連なっているようです。ただし、高校時代の小川投手の投球フォームは今とはまるで別人で、今の足を高く上げるフォームになったのは創価大学の3年時にノーラン・ライアンの著書と出会ったことがきっかけだそうです。

それにしてもヤクルトは、ひょっとして「ライアン」のコレクションでもするつもりなのでしょうか(笑)?高橋奎二君はサウスポーなので、近い将来に右のライアンから左のライアンへの継投、題して「ライアン・リレー」なんてのがあったりしたら素敵です!もっとも、私個人は「足を高く上げる京都の投手」といえば真っ先に思い出すのはノーラン・ライアンよりもむしろこちらの投手なのですが…↓。

京都商業あらため京都学園高校の敷地内にある、同校の最も偉大なOBの一人である沢村栄治さんの銅像です。そうです、あの「沢村賞」のサワムラです。実際に沢村投手の投球を見たことのあるうちの父に言わせれば、この銅像の足の上がり方は「全然足らん、こんなもんやなかった」とのことですが、高橋奎二君には「古都のライアン」「左のライアン」よりはむしろ、「平安版・左の沢村栄治」の称号を果敢に狙っていただきたいです。そのためには、まずはしっかり身体を築き上げて欲しいところです。そして、今はまだ「小笠原世代」と呼ばれるのか「オコエ世代」と呼ばれるのか今一つ確定しきれていない同世代選手たちとの切磋琢磨を経て、将来的に母校に銅像が立つような偉大なサウスポーに成長していただきたいと心から応援しています。

(昨年の選抜大会では平安の勝利後の校歌斉唱並びに校旗掲揚のたびに、スコアボードにはいつも高橋君のアップがデカデカと映し出され、そのたびに少し照れたような表情を見せていたのが、まるで昨日のことのようです)


【北海道日本ハム4位】 平沼翔太(敦賀気比) (179cm 78kg/右投左打)
最後にご紹介するのが、今年のセンバツ優勝投手の平沼翔太選手です。二年生の夏から三期連続で甲子園に出場、二年の夏はベスト4(優勝した大阪桐蔭に準決勝で敗退)、今年の春は2大会連続となった準決勝での大阪桐蔭との雪辱対決を制し堂々の優勝、春夏連覇のかかった今夏は惜しくも二回戦敗退となりましたが、3度の甲子園で12試合に登板し10勝2敗(うち完封3)、99イニング1406球を投げ抜いたという、この世代の中では圧巻の戦績を誇る「平成の鉄腕」です。そして、U-18 W杯日本代表の選からは漏れたものの、秋の和歌山国体では先述の東海大相模と初戦で対戦、ここでは何と四番・ショートとして先発、野手としての能力も披露しました。

かくして迎えた先月のドラフト会議。平沼翔太選手は投手ではなく内野手として日本ハムから4位指名を受けました。日本ハムといえばご存じの通り、多くの野球評論家や関係者に「早くどちらか一本に絞りなさい!」と口々にドヤされながらも頑として”二刀流”で踏ん張り続けている大谷翔平選手(花巻東-日本ハム)の球団で、一昨年のドラフトでも大学野球では稀少な「二刀流」だった岡大海選手(倉敷商-明治大)を指名しています。となると、先述の高橋奎二君を指名したヤクルトの「ライアン・コレクション」ではありませんが、日本ハムもひょっとしてここにきて「二刀流コレクション」でも始めたのではないかと、勝手に想像が膨らみます。

ここで見ていただきたいのが、上の写真です。2015年3月31日、春のセンバツの準決勝、宿敵との雪辱戦となった対大阪桐蔭戦の試合開始前のグラウンド整備中のひとコマです。中央で金属バットをかついでいる背番号1が平沼投手です。その視線の先には、敦賀気比の準々決勝の試合のダイジェストがスコアボードにデカデカと映し出されているところです。よく見ると、他のチームメイトも素振り等の手を止め、そのVTRに見入っているのがわかります。その中でも、中央の背番号1、他の選手と比べて仕草というか物腰が妙にオッサンぽく見えませんか?

参考のために、マウンドで振りかぶる平沼投手(左下)と、バッターボックスで一本足打法中の平沼選手(右下)の姿も紹介します↓。(いずれも3月31日の対大阪桐蔭戦の試合中のもの)

投手としての平沼選手も、お尻をユサユサと揺らしつつテイクバック、「ライアン」という程ではありませんが膝を高く胸元まで振り上げ、最後はグラブごと飛んでくるのではないかとばかりに投げ込んできます。こんなこと言ったら本人に怒られそうですが、彼の2年生の時から見ていますが、初めてみた時の方が投打ともに今よりももっとオッサンくさく、オールドファンが泣いて喜びそうな選手(笑)…という印象でした。こういう雰囲気は、戦前の剛腕投手だったり、昭和の時代の野武士のような大打者に通じるものがあるようで、あえて例えるなら「投げれば稲尾(和久)、打てば川上(哲治)」とでも申しましょうか(笑)?ちょっとほめ過ぎかもしれませんが、目標は高い方が良いはずです。

ここで注目されるのが、各大会時に高野連に登録された彼の身体プロフィールです。彼の場合、高2の夏の選手権は178cm77kg、高3の春夏の甲子園はともに178cm75kgとなっていました。この手のデータをどの程度正直に申告するかはともかく、この数字の推移のパターンを見れば、彼が元々身体の成長が早熟で、むしろ体を絞り込んで最終学年に臨んできたであろうことがうかがえます。そして、彼なりのその成長曲線こそが、その独特の「オッサンっぷり」の種明かしではないかという気もします。それにしても、昨年の選抜優勝投手が「赤ちゃん」で今年が「オッサン」というのもまるで「世にも奇妙な物語」に出てきそうな不思議な因縁であり、つくづく日本の高校野球は面白すぎて目が離せません!

今回がパ・リーグの内野手指名だっただけに、小笠原慎之介選手や高橋奎二選手と並ぶ「甲子園優勝投手」のタイトルを引っさげてのプロ入りにもかかわらず、彼がこれで投手廃業となってしまうとしたら、あまりにももったいない気がします。直近では、奇遇にも下の名前が同じ2009年甲子園優勝投手の堂林翔太選手(中京大中京-広島)がプロ入り前からあっさりと野手転向を表明して今の活躍に至っていますし、先述の岡大海選手もプロ入り後は二刀流を封印してしまいました。他方で、あの川上哲治さん(熊本工-巨人)は元々投手としての入団で、当初は二刀流で投打に活躍していました(その川上氏も実は甲子園ファイナリストで、熊本工時代に2度の準優勝あり)。最近のプロ野球は唐突に怪我人が続出して特定ポジションの選手が急に不足するケースが多々あるため、平沼君には「二刀流」の看板をギリギリまで下げないで、いつでもどこでも投手でも野手でもいけるように意識を保ちつつ、その定評のある身体能力の高さをさらに磨き続けてほしいと思います。


<参考サイト>

スポニチAnnex(2015年10月1日):東海大相模2冠!吉田完投&V打 プロへ弾み、週明けにも志望届 紀の国わかやま国体決勝  東海大相模7-5中京大中京 (9月30日  紀三井寺)
http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2015/10/01/kiji/K20151001011237010.html
(今年のドラフト会議でオリックスから5位指名を受けた東海大相模・吉田凌投手が完投&決勝打と、まさに甲子園決勝での小笠原投手を再現したかのような大活躍。入学早々いきなり150キロ台を出し、高1の県予選の横浜戦での好投で大きく注目を集めながら、その後長らく不振に苦しんだ吉田投手の有終の美が、2012年の大阪桐蔭以来となる「甲子園・国体連覇」のマウンド上だった。ちなみに吉田凌投手は兵庫県西脇市出身の「西脇の星」でもあり、地元凱旋となる来年以降のオリックスでの活躍が本当に楽しみ)

動画1) YouTube - 龍谷大平安 高橋奎二投手 ~みんなの甲子園~
https://www.youtube.com/watch?v=oHSX8-bAMzU

動画2) YouTube - ノーラン・ライアン
https://www.youtube.com/watch?v=3-86PV3evMI

動画3) YouTube - 【和製ノーラン・ライアン】 創価大 小川泰弘 【あの成章の小川ですよ】
https://www.youtube.com/watch?v=Xsc_vQLZPcA
(この動画の対九州共立大戦は2011年11月25日の明治神宮大会と思われ、この時点ですでに立派な和製ライアンになっている)

動画4) YouTube - 敦賀気比 平沼翔太投手 ~みんなの甲子園~
https://www.youtube.com/watch?v=IuO3QvB3GRI
(動画1)と同じ番組コーナーの平沼選手版。途中で食事のシーンが出てくるが、食べる姿までオヤジっぽいとはこの動画で初めて知った)
バックナンバー>>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464