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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2015/08/14

欧州はまるでジャパンウィーク?!…「最後のカミカゼ」から「ヒロシマ」「ナガサキ」そして「センダイ」まで

この記事が掲載されるのは、ちょうど70年の節目を迎える終戦記念日の前日である8月14日です。日本では、首相談話が閣議決定されて全世界に発信されるタイミングに相当するでしょうか。その内容次第で周辺諸国との関係がどのようなものになるのか、ドイツに限らずヨーロッパ諸国は多大な関心をもって注目しているようです。最近、所用でフランス、ベルギー、オランダを移動していた私は、あまりにどの国でも日本の話題がメディア等に登場することに驚いていました。

といっても、時期が時期だけに、いつもの「マンガ」「アニメ」「日本食」という訳にはいきませんでした。ということで今回は、先月末から今までの間の欧州行脚で私が遭遇した「欧州における日本の話題」を時系列で紹介しつつ、明日迎えることになるであろう終戦記念日に備え、戦後70年の日本の歩みと今の姿を別の視点から眺めてみたいと思います。

まず、7月末のフランスで初っ端から面食らったのがコチラです↓。

これは、以前のコラムで登場したル・ポワンというフランスの雑誌の7月30日号です(→フランスにて腰を抜かす(2)…雑誌ル・ポワンが指摘する「魚は必ずしも体に良くない」の衝撃的理由)。移動の道中にフランスのキオスクで見つけた際に結構面白い記事が多かったことに味を占めて、今回はろくに中身も見ずに即買いし、移動の電車内でゆっくりページをめくったところ、いきなり神風特攻隊ネタの「ル・デルニエ・カミカゼ」(最後のカミカゼ)というタイトルが目に飛び込んできたのでした。右端の男性は現在88歳で九州在住、海外メディア登場は今回が初めてだそうです。18歳時に神風特攻隊の一員となり、仲間が次々と命を落としていく中で結局出撃命令を受けることなく終戦、その後は海上自衛隊で勤め上げたそうです。この記事で何よりも驚いたのが、この男性が70歳の時に自らブログを開設し、神風特攻隊における経験を記述するようになるまで、家族も勤め先の人たちも彼が「元・カミカゼ」だったことを知らなかったというくだりです。実の娘でさえ、父親のブログを読むまでその事実を知らず、知ってからは父親を見る目が尊敬に変わったとあります。

なお、記事は以下のリンク先からも見ることができますが、例によって例のごとく全文購読は有料となっています。なお、写真左の「母様 今 何も言ふ」で切れている日本語の文は、鹿児島県南九州市知覧町の知覧特攻平和会館に展示されている神風特攻隊員の遺書の一部とのことです。

Le Point 第2238号- “Le dernier kamikaze”
http://www.lepoint.fr/culture/le-dernier-kamikaze-02-08-2015-1954114_3.php

知覧特攻平和会館公式ホームページ
http://www.chiran-tokkou.jp/

次に移動したベルギーのブリュッセルでは、テレビを付けたらいきなりこのような画面が出迎えてくれました↓。


ご存じ、世界のミフネさんのアップです(笑)。フランス語字幕のついた日本映画で、タイトルを見ると”Les Sept Samouraïs”、つまり「7人の侍」だと分かります。

さらに8月に入ってから、いきなり飛び込んできたのがコチラのニュースです↓。


これもきっと日本の皆さんの方が良くご存じと思われる、2020年の東京五輪の公式エンブレムとベルギーのテアトル・リエージュのロゴが酷似しているという盗用疑惑です。ベルギーの現地報道が「徹底的に法廷で争う」という内容に終始していましたが、彼らの立場では至極当然と言えましょう。あまりにも酷似しすぎていることは誰の目にも明らかですが、日本サイドの言い分などは一切紹介されませんでした。


返す刀で新国立競技場の迷走を紹介することも忘れず、ザハ案の白紙撤回と更地になった都心の一等地の行く末とも絡めて報じられました。

さらに今度はオランダへ移動です。この頃はちょうどロシア・カザンで世界水泳(FINA世界水泳選手権大会)が始まったばかりの頃でした。

岩手放送のオラ君が渡部香生子選手と一緒に登場、次の瞬間には日本選手団に混じって応援しています。ちなみにこの試合は200メートル個人メドレーの準決勝で、放送局はオランダのNOSの中のNPO1でした。NOSとはNederlandse Omroep Stichting(オランダ放送協会)、NPOとはNederlands publiek omroepbestel(オランダ公共放送)の訳なので、これは言わば日本でいうNHK第一のようなチャンネルです。当然のことながら、実況も解説も選手インタビューも全部オランダ語だったので最初はキツかったのですが、オランダ語は結構ドイツ語に似ているので、何日かしたら段々耳が慣れてきました。

かくして、おぼろげながら言葉が何となく理解できるようになった頃、今度は同じNOSでもNPO1ではなくNPO2の方で、このような告知画面が満を持して登場です↓。


そうか、もうすぐヒロシマの日なのか…!と気付くのに時間はかかりませんでした。これは、広島に原爆が落ちた日である8月6日の木曜日、19時30分よりオランダNOS NPO2が放送する予定の番組”NOS 70 jaar bevrijding : Herdenking Hiroshima”(オランダ放送協会 解放70周年:広島平和祈念式典)の告知です。

私はこの番組のオンエアよりも前にドイツに戻らねばならなかったので、番組を見ることが出来ず残念に思っていました。しかし、さすがはインターネットの時代です。自宅に戻ってネット検索したら、下記リンク先から中央の動画再生をクリックすることで全編無料で視聴することができました:

NPO公式ホームページ(2015年8月4日):”Herdenking Hiroshima op NPO 2”(NPO2が送る広島記念式典)
http://www.npo.nl/artikelen/herdenking-hiroshima-op-npo-2

約20秒のオランダ語の広告の後に、約25分の番組が流れてきます。リポート部分は全てオランダ語ながら、広島市長や安倍首相の演説やアーカイブ映像などの日本語部分はオランダ語字幕なので、日本語のまま聞くことができます。日本語部分を拾い聞きするだけでも価値があります。是非多くの日本の方に見ていただきたい動画です。

さて、ドイツの自宅に戻って迎えた8月6日の前後も、これまた完璧にジャパンウィークでした。前日の8月5日には、何と1985年に旧西ドイツ時代のZDFが制作した広島原爆の被爆者証言を集めた渾身のドキュメンタリー「Hiroshima, Nagasaki - Atombombenopfer sagen aus (ヒロシマ・ナガサキの原爆被害者は証言する)」の放送がありました(末尾参考サイト参照:1985年にドイツの放送局がこのような番組を作っていたこと自体にビックリ!)。そして、当日になればまさにこちらの想像通り、ドイツのみならずフランスの放送局までもが朝から晩まで「ヒロシマ」の大合唱となりました。


上は、ドイツのニュース専門チャンネルN24です。左上には安倍首相の姿もチラリと映っていますが、右のようにアメリカのキャロライン・ケネディー大使の映像もしっかり紹介されています。

そしてこちらがフランスのニュース専門チャンネルFrance24です↓。

ドイツはどちらかというと解釈を挟まずに事実関係を淡々と報じるのに対し、フランスの方はこのような解説者まで登場、眼をひん剥き唾も飛ばしながら(笑)原爆投下にまつわる諸事情をあれこれ力説してくれます。「さすがはフランス、日本に対する関心の深さがドイツとはケタ違い!」と、私はそれだけで十分ありがたく感じてしまうのでした。

それに比べたら、「ナガサキ」の方は8月9日が今年は日曜日だったので、あまり扱いがありませんでした。色々とチャンネルをザッピングしてみても、見つかったのは日本の隣国である韓国の国際放送アリラン・テレビ(Arirang TV)くらいでした↓。


と思ったら、やっとドイツZDFもニュースで取り上げてくれましたが、よく見たら映像がNHKの国際放送(NHK World)からのパクリでした↓。



「ヒロシマ」といえば、以前のコラムで2013年にパリの映画館で再上映されたフランス映画「ヒロシマ・モナムール」(1959年公開、アラン・レネ監督作品)のことを取り上げたことがありました(→フランス映画HIROSHIMA MON AMOUR」の再公開、そして8月6日のイタリア報道が問いかけるもの)。人類が核兵器たる原子力爆弾によって被害を受けた初めてのケースとして、「ヒロシマ」の名は世界に轟いているのに対し、3日後の「ナガサキ」の扱いはいささか低いのではないかとプリプリしていたら、全くその心配はありませんでした。9日の夜になったらいきなりこのような画面がドイツ公営放送ARDのニュース専門チャンネル(Tagesschau24)に流れてきました。


アレレ、これ、村山サンじゃないの?今年の長崎の記念式典に来てたのかしら?と思った瞬間、ナレーションで「村山総理大臣(Ministerpräsident Murayama)が…」と言うのが聞こえました。えーっ、村山さん、私が日本を留守にしている間に首相に返り咲いたの?それとも、これって放送事故?と頭が混乱しそうでしたが、よく見たら村山さんが若い!


そうです、これは「20年前のARDニュース」という番組なのでした。1995年8月9日、村山首相の参列のもとに長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が行われた、という原稿をアナウンサーが読み上げ、画面下には最新ニュースのテロップが流れています。画面が今とは異なる4:3であることも、過去の映像であることを裏付けています。

そして翌日の8月10日、今度は朝っぱらからこちらのニュースです:


そうです、川内原発です。「ヒロシマ」「ナガサキ」が過ぎて日本の話題が一段落するかと思いきや、今度は「センダイ」のオンパレード、日本における原発再稼働のニュースでてんやわんやです。上の写真でも分かる通り、ニュースキャスターの表情が非常に険しく、怒っているようにすら見えてきます。


ほとんどの国民が日本の地理に疎いであろうドイツにて、今回の再稼働の原発がどこに位置するのかはよっぽど重大な情報なのでしょう。ご丁寧に日本地図まで登場です。何だか、東日本大震災のあった翌週のドイツの朝の天気予報が毎回ヨーロッパでもドイツでもなく日本地図で始まっていたあの頃の衝撃を思い出します(→緊急寄稿(4)…ドイツの天気予報に起きた異変)。少なくとも、東京と福島と薩摩川内の三都市しか記されていない日本地図など、こういう時でない限り、まず見る機会はまずないでしょう。


この朝のワイドショーはドイツ公営放送ARDとZDFの回り持ちで、今週はARDの担当でした。そして、今回の川内原発再稼働の報道で最も衝撃的だったのは、ARDがこのニュースの解説に環境保護団体グリーンピースの男性を起用したことです(左上写真)。コメンテーターがグリーンピースの人なら、もう結論は決まっています。案の定、「国民の大多数の反対を押し切ってまで反民主的に原発を再稼働する日本」や「再生エネルギーも増えてはいるものの、原子力にいつまでもしがみつくロビーの存在」といった辛口コメントが立て続いた揚句、「それでも日本にはまだ希望はある…それは反対デモの人たちの存在だ」(右上写真)という結論で締めくくられました。これがARDの正式見解なのかとクラクラくるのと同時に、このような内容は日本では到底放送できないだろうと思いつつも、ゴリゴリの反原発でグリーンピースの出演などザラであるZDFならともかく、よりによって原子力に対して比較的中立ないしやや保守寄りでドイツの脱原発路線に対しても慎重なスタンスだったはずのARDが、日本の原発再稼働に関してはこのような構成で報道したということ自体が、私にはとにかく衝撃でした。

そして、8月14日の首相談話に8月15日の終戦記念日の天皇陛下のお言葉が続くことになるはずですが、果たしてどういう展開になるのでしょうか。ドイツの報道もさることながら、以前も当サイトで引用したことがあるフランスのル・モンド紙の社説は今度はどう反応することになるのでしょうか(→フランスにて腰を抜かす(1)…ル・モンドの社説が凄いことになっている件)。そして何よりも、ここのところ切れ目なく日本の話題が続いている今の欧州のこのジャパンウィークのような状況が果たしていつまで続くのか、そっちの方がもっと気になってしまいます(笑)。

最後に、先日行った近所の書店で発見して、これまた衝動買いしてしまった本を紹介して、今回の原稿を締めくくりたいと思います↓。


その名もズバリ、「NAGASAKI」です。ドイツ人のテレビ局レポーター(元ARDのアメリカ・日本特派員を経て今は北ドイツ放送NDR勤務)が書きおろした新刊だそうで、しかも結構売れているようで、辛うじて最後の一冊をゲットできました。価格は19.90ユーロでした(約2700円)。まだ買ったばかりですが、どうして「HIROSHIMA」や「HIROSHIMA&NAGASAKI」ではなく「NAGASAKI」に絞ったタイトルなのか、興味が湧いてきます。そのあたりをさぐりつつ、戦後70年の日本やアメリカ、そしてドイツの歩みに思いを馳せながら、平和の時代の有難さと脆さについてじっくり勉強したいと思います。


<参考サイト>
ZDF Mediathek - Hiroshima, Nagasaki - Atombombenopfer sagen aus
http://www.zdf.de/ZDF/zdfportal/programdata/cd946bca-3138-33a7-9ff7-c183e90cd233/da329232-b812-4bae-a155-4dad169ead9a?generateCanonicalUrl=true
(8月5日21:05-22:35 ZDF Kulturにて放送)
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