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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2015/04/03

欧州勢旋風となった2015年世界フィギュアスケート選手権を検証する

先週の原稿が掲載された頃といえば、第87回選抜高等学校野球大会(阪神甲子園球場)と世界フィギュアスケート選手権(上海)だけでなく、プロ野球公式戦開幕、ハリルJAPAN初陣となるキリンチャレンジカップサッカー2015「日本vs.チュニジア」、さらには錦織圭選手の活躍が期待されるテニスのマイアミオープンまでもが重なるという、スポーツの競演とも言うべき濃密な週末でした。先週のコラムはさんざん悩んだ末に高校野球応援の定番曲「ジンギスカン」についてまとめましたが、この曲を得意とする神村学園(鹿児島)こそ初戦で神宮大会の覇者かつ今大会の優勝候補の筆頭でもあった仙台育英(宮城)に敗退したものの、同じくこの曲をチャンステーマとして使用している敦賀気比(福井)はこの原稿の作成時点ではまだベスト4に残っています。東北勢初の全国制覇の期待がかかっていた仙台育英が「ジンギスカンに勝ってジンギスカンに負けた」というのも何やら不思議な因縁ですが(笑)、こうなった以上は敦賀気比には何がなんでも、この曲の「ジンギスカン効果」とも言うべき神通力で、北陸路に春夏通じて初となる優勝旗を持ち帰っていただきたいものです。きっと、「ドイツ版秋元康」の作曲者や「農学博士」の作詞者はもちろん、故人となったカリスマダンサーにハゲ頭の二人も草葉の陰から(?)、「ジンギスカン」を使用する高校野球チームをきっと熱く応援していることでしょう(笑)。(→神村学園から敦賀気比まで…高校野球定番応援曲「ジンギスカン」は移民大国ドイツの縮図!

さて、今週のコラムは、先週閉幕した世界フィギュアスケート選手権についての以前の当サイトのコラムを検証してみたいと思います。今大会の一番のサプライズといえば、全部で4つあるカテゴリーの優勝者のうちペアを除く3つを、先々月ストックホルムのエリクソン・グローブ・アリーナで開催された欧州フィギュアスケート選手権のチャンピオンが占めたことではないかと思います。その3つとは、男子シングルのハビエル・フェルナンデス(スペイン)、女子シングルのエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)、そして何と言ってもこちらの二人、アイスダンスのガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組(フランス)でした↓。

(2015年1月29日の欧州フィギュアスケート選手権のフリーダンスより)

この二人に関しては、以前の当サイトのコラムにて、何とその優勝を予言しておりました?!その部分を抜粋し再掲しましょう:(引用部分は青字)

エリック・ボンパール杯観戦記(3)…移民国家フランスのロールモデル?シャフィック・ベセギエが体現する世界
アイスダンスの優勝カップル、ガブリエラ・パパダキス(Gabriella Papadakis)/ギヨーム・シゼロン(Guillaume Cizeron)組です。(中略)昨年シニアに上がったばかりで、欧州選手権15位、世界選手権13位、ソチ五輪出場ならずというこの2人が、まだ数か月しか経たぬ今シーズンいきなりグランプリ大会2連勝を果たし、この調子だと世界チャンピオンも一気に視野に入ってきたかという急成長ぶりに、フランスの方々が待ってましたとばかりに熱く応援するのも理解できます。

原稿掲載から3か月余りしか経たぬ今大会、何と言ってもショートダンス4位からの大逆転で掴んだ世界チャンプの座は、19歳と20歳というまだ若い二人にとっては快挙です。モーツァルトのピアノ協奏曲23番第2楽章(アダージョ)に乗せた二人の高い芸術性を誇るフリーダンスは既に最高傑作の呼び声も高いだけに、このようなプログラムを含むアイスダンス競技の地上波中継が日本ではなかなか実現せず、男女シングル偏重であることをとても残念に思います。

(2015年1月29日、欧州選手権アイスダンス表彰式にて、優勝のフランス国旗が掲揚中にポールから外れてしまうというハプニングあり、パパダキス/シゼロンもいささか困惑の表情。今回の世界選手権ではフランス国旗掲揚は今度こそうまくいったのだろうか?)

次に、ペアと男子シングルはどうなったでしょうか?ここで、以前の記事による分析を引用しつつ、実際の結果と比較してみましょう↓。

フィギュアスケート四大陸選手権は2022年冬季五輪招致「BEIJING vs. ALMATY」の前哨戦だった?!
世界レベルでのペアの現状は、今年の四大陸選手権でも断トツのスコアで優勝したMeagan DUHAMEL(メガン・デュアメル)/Eric RADFORD(エリック・ラドフォード)組(カナダ)が頭半分ほど突出しており、Ksenia STOLBOVA(クセニア・ストルボワ)/Fedor KLIMOV(フョードル・クリモフ)組(ロシア)が二番手、さらにベテランのYuko KAVAGUTI(川口悠子)/Alexander SMIRNOV(アレクサンドル・スミルノフ)組(ロシア)や中国の若手PENG Cheng(彭程)/ZHANG Hao(張昊)にSUI Wenjing(隋文静)/HAN Cong(韓聰)が猛烈かつ熾烈な3位争いを展開しているという構図です。
(中略)
最終的に優勝したデュアメル/ラドフォード組よりも、3位に入ったPANG Qing(庞清)/TONG Jian(佟健)の方が、フリー演技における芸術性を表す演技構成点(プログラム・コンポーネンツ・スコア)が高かったのです。PANG/TONGの二人はショートでもフリーでもかなりミスがあったので、この高評価には密かに手応えを掴んだことでしょう。なお、PANG/TONG(総合3位)は同じ中国のPENG/ZHANG(同2位)、SUI/HAN(同4位)と比べても、その演技構成点は常に最高評価を得ています。


まずペア競技の方ですが、結局はデュアメル/ラドフォード(カナダ)が金、大食いソックリさん(?)としてもおなじみのSUI/HAN(中国)が銀(→日常の中の大食い的風景(2)…中国フィギュアスケート界の新星に大食い選手の面影!)、一度は引退したものの先月の四大陸選手権で急遽復帰した35歳のベテランPANG/TONG組(中国)が銅、PENG/ZHANG(中国)が4位、我らが日本が期待する川口/スミルノフ(ロシア)が5位という、おおむね順当な結果となりました。電撃復帰帰のベテランである中国のPANG/TONGが全参加者の中で最も高い演技構成点を獲得したことも、コラムで予想した通りとなりましたが、惜しくも金メダル獲得には至りませんでした。今大会唯一かつ最大の波乱といえば、コラムで二番手に挙げたストルボワ/クリモフ組の不参加でありますが、これについては先のストックホルムでの欧州選手権におけるコチラの大失敗を引きずっているのではないかとも囁かれています↓。


(2015年2月1日、欧州選手権にて。何でもないところでコケる男性のクリモフと、それを見て表情の固まる女性のストルボワ。この大失敗が響き得点が伸びず、キス&クライでは一同お通夜状態。この後に登場しスロー4回転サルコウを含むベストの演技を披露した川口/スミルノフ組に逆転され、優勝をさらわれた)


(欧州選手権の表彰式はロシアペアの表彰台独占となった。真ん中の川口/スミルノフと右側の3位のエフゲニア・タラソワ/ヴラジミール・モロゾフが晴れ晴れと花束を振って声援に応えているのとは対照的に、2位のストルボワ/クリモフは完全に別世界、雰囲気も見るからに険悪であった)

そして男子シングルですが、2022年冬季五輪招致の行方を占うものになるだろうデニス・テン選手(カザフスタン)の活躍について、コラムではこのように述べました↓:

(四大陸選手権におけるデニス・テンの)優勝スコアの289.46といえば、それまでの自己ベストを一気に23点ほど更新した大躍進であり、欧州選手権優勝のハビエル・フェルナンデス(スペイン)のパーソナルベストスコア(275.93)をも軽く抜き去り、パトリック・チャン選手(295.27)や羽生結弦選手(293.25)のベストスコアも射程圏内に入ってきました。デニス・テン選手はこの快挙により、来月の上海での世界選手権で羽生選手を脅かす優勝候補の一角に名乗りを挙げました。思えばソチ五輪でのテン選手の銅メダル獲得もカザフスタンのフィギュアスケート史上初の快挙でしたが、これでもし上海でも世界一に輝くことになろうものなら、オフシーズンには2022年冬季五輪のアルマトゥイ招致活動の顔が彼になることもまた間違いなく、招致そのものにも影響を与えるでしょう。

パトリック・チャン選手(カナダ)は今季いっぱい休養のため不在であることは分かっていたので、優勝争いが羽生vs.フェルナンデスvsテンの三つ巴となるであろうことも、私に限らず世界中の多くの人々が予想たことでしょう。唯一残念だったのは、今シーズンの羽生選手がスポ根マンガでもあり得ないような「一難去ってまた一難」を地で行くコンディションに苦しみ続け、この大会でも真の実力を発揮できる状況に無かったことでした。結果はご存じの通り、ハビエル・フェルナンデス選手がスペイン史上初となるフィギュアスケート金メダリストとなった訳ですが、今大会のトップスリーのスコアを見ても、1位のフェルナンデス選手が273.90、2位の羽生選手が271.08、3位のテン選手が267.72というように、優勝者ですらパーソナルベストスコアでなかったというあたり、2018年平昌冬季五輪をにらんだ今後に大いに含みを残したように思います。そして、五輪招致のBEIJING(中国) vs ALMATY(カザフスタン).についても、今大会に関してはひとまず痛み分けという線に落ち着きそうです。

(2015年1月30日、欧州選手権より、男子シングル・ハビエル・フェルナンデスのフリー演技の得点発表後にコーチが退席する瞬間。選手・コーチともにイマイチ表情が冴えず、出来に満足していなかったことが伺える)


(ハビエル・フェルナンデス選手が欧州選手権の金メダルを右手で掲げている映像。ちなみに、ドイツでは結婚指輪は右手薬指にする人が多数派。スペインはどうなのか知らないが、このアップの抜き方に何らかの意図を感じてしまう)

今大会、残念ながら来季の3枠を確保できなかった日本の男子シングルでしたが、女子はやってくれました。ロシア勢の表彰台独占も危惧された中、宮原知子選手が割って入る銀メダル獲得は快挙です!そして、本郷理華選手と村上佳菜子選手もそれぞれ6位と7位に入り、まさに日本勢の面目躍如です。

しかし、女子シングルについてドイツのネットニュースをサーフィンしていた私は、コチラの記事の写真を見た瞬間、凍りついてしまいました↓。これは、以前も当サイトで取り上げたことのあるドイツ最大の通信社であるdpa(ドイツ通信社)の記事を、ドイツテレコム傘下のインターネットポータルサイトであるT-Onlineがネットニュースとして配信したものです。

T-Online (2015年3月28日):Eiskunstlauf - Russin Tuktamyschewa Eiskunstlauf-Weltmeisterin(「フィギュアスケート - ロシアのトゥクタミシェワが世界女王に」)
http://www.t-online.de/sport/wintersport/id_73448682/eiskunstlauf-russin-tuktamyschewa-eiskunstlauf-weltmeisterin.html


Elisaweta Tuktamyschewa (M), die zweitplatzierte Satoko Miyahara und die Dritte, Elena Radionowa. Foto: Tatyana Zenkovich. (Quelle: dpa)

この写真には、日本人としては敏感に反応してしまいます。あまりにも酷すぎやしませんか?クレジットには「トゥクタミシェワ(真ん中)、2位の宮原知子、3位のエレーナ・ラジオノワ。撮影:タチアナ・ツェンコビッチ。出典:dpa」とありますが、2位の宮原さんの首から上をカットするとは、縁起でもありません。なお、別のサイトには、オリジナルとおぼしき写真がありました↓。

Wormser Zeitung Rhein Main Presse (2015年3月28日):Weitere Wintersportarten- Russin Tuktamyschewa Eiskunstlauf-Weltmeisterin(「その他のウィンタースポーツ - ロシアのトゥクタミシェワが世界女王に」)
http://www.wormser-zeitung.de/sport/national-und-international/wintersport/weitere/russin-tuktamyschewa-eiskunstlauf-weltmeisterin_15143151.htm


この2枚を見比べても、わざわざ宮原さんの首から上をカットする必要がどこにあったのか、理解に苦しみます。どうしてもロシアの二人に着目させたいのであれば、スマホ写真のように縦長に切ればよかったのかと思うのですが…。ひょっとしたら記事を作成したドイツメディア関係者は、下のような光景を心の底で望んでいたのかもしれません↓。


(2015年1月31日、欧州フィギュア選手権の女子シングルもまた表彰台はロシアの独占となり、表彰後にメダリスト3名がリンクサイドでカメラマンや観客に向かってポーズをとっているところ)

振り返ってみるに、今年の世界フィギュアスケート選手権は、表彰式に君が代が一度も流れなかった大会となりました。とは言っても、2007年からの8大会で日本選手の優勝が皆無だったのは過去に3度しかない(2009年、2012年、2013年)というのも凄いことです(末尾データ参考)。何よりも、日本初のメダルとなる1979年銅の渡部絵美さん以降で16度目、それも2006年以降は10大会連続で表彰台入りという偉業を達成日本の女子シングルは、かつてのアメリカや旧東ドイツにも劣らぬ強豪としての地位を確立したと言っても良いでしょう。ドイツのメディアではさんざんな扱われ方をされた宮原知子選手も、今大会の銀メダリストとしてこの輝かしい系譜に連なったことで、今後の世界からの注目度が大いに変わってくることでしょう(願わくばより好意的な方向に!)。しかも、男女ともにジュニア世代には有望者が多いようなので、来季以降の日本国内における勢力図の変化ひいては2018年平昌五輪の代表選考についても、今後ますます目が離せなくなりそうです。


<参考データ:世界フィギュアスケート選手権で表彰台に乗った日本選手一覧>
(赤字:女子シングル、青字:男子シングル、緑字:ペア)

1977年(東京)       佐野稔(銅)
1979年(ウィーン)     渡部絵美(銅)
1989年(パリ)       伊藤みどり(金)
1990年(ハリファックス) 伊藤みどり(銀)
1994年(千葉・幕張)    佐藤有香(金)
2002年(長野)        村主章枝(銅)本田武史(銅)
2003年(ワシントンDC)  村主章枝(銅)本田武史(銅)
2004年(ドルトムント)    荒川静香(金)
2006年(カルガリー)    村主章枝(銀)
2007年(東京)        安藤美姫(金)、浅田真央(銀)髙橋大輔(銀)
2008年(エーテボリ)    浅田真央(金)
2009年(ロサンゼルス)   安藤美姫(銅)
                (番外…川口悠子/アレクサンドル・スミルノフ 銅
2010年(トリノ)       浅田真央(金)髙橋大輔(金)
                (番外…川口悠子/アレクサンドル・スミルノフ 銅
2011年(モスクワ)     安藤美姫(金)小塚崇彦(銀)
2012年(ニース)      鈴木明子(銅)髙橋大輔(銀)、羽生結弦(銅)高橋成美/マーヴィン・トラン(銅)
2013年(ロンドン)     浅田真央(銅)
2014年(さいたま)     浅田真央(金)羽生結弦(金)、町田樹(金)
2015年(上海)       宮原知子(銀)羽生結弦(銀)
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