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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2014/11/28

エリック・ボンパール杯観戦記(1)…ボルドー散策で町田選手が道に迷ったのはこの教会?!

フィギュアスケートのグランプリシリーズ・フランス大会ことエリック・ボンパール杯は、例年であれば花の都パリで行われるところを、毎年恒例の会場であるベルシーアリーナが改修工事中のため、今年はフランス南東部のスペインにほど近いボルドーで行われました(→グランプリシリーズ・フランス大会発祥の地!ボルドー開催のエリック・ボンパール杯に行ってきます!)。ボルドーと言えば誰もが「ワイン」と条件反射のように思い浮かべることでしょうが、さすがはボルドー、期待を裏切りません!空港の手荷物受取場に到着した私たちを真っ先に歓待してくれたのは、全ての手荷物レーンに配置されているという、超特大のワインボトルでした↓。


これを見て私の脳裏に真っ先に浮かんだのは、高松空港のレーンを流れてくる讃岐うどんや、岡山空港で桃に乗ってドンブラコと流れてくる桃太郎でした。ご当地ゆかりの巨大なオブジェは日本の地方空港では決して珍しくありませんが、欧州では味気も素っ気もない空港が圧倒的多数を占める中、このボルドー空港にはフランスならではの気の利いたエスプリを感じたのでした。

さて、空港から市内へどうやって出ようかと思案していたら、目の前にこれまた超長いバスが止まっていました。これが、空港から市内中心部へ向かう1番系統のバスです。ここでも驚かされたのは、ボルドーの交通機関は乗車時に切符に刻印してから1時間以内であれば1ユーロ50セント(今のレートなら210円程度)の運賃でどこまででも行けるということです(バス・電車共通で何度でも乗り換え自由)。私が宿泊したホテルは大会会場のすぐ近くで、空港からバスで40分程度の距離だったので、移動はこの1.5?ポッキリで済んでしまいました。市内からこれほど離れた空港の移動交通費がこれほど安く上がる空港は、世界でも珍しい方ではないかと思います。それでいて、このバスは10分に一本という頻度で走っており、車内はいつもガラ空きです。荷物を多く抱える観光客としては助かりましたが、きっと大赤字なのではなかろうかと、他人事ながら心配してしまうのでした。

さて、アイスリンクのすぐ近くのホテルにチェックインした私は、会場の場所確認も兼ねて早速散歩に出ました。そこで気付いたのは、このメリアデックという地区は「地方版霞が関?」とも呼ぶべき官公庁街だということでした。ボルドーはフランス南西部にあるジロンド県の県庁所在地なのですが、この地区にはジロンド県庁を始めとして、警察署、法務局、図書館、さらには(ジロンド県を含む5つの県から成る)アキテーヌ地域圏の地方議会など、お堅い施設がひしめき合っています。そして、そんな地区のド真ん中に、今大会の会場となるボルドー・メリアデック・アイスリンクはありました。


敷地内には中継車もしっかりスタンバイ↓。来るべき競技会に備えて準備は万端のようです。


さて、この大会、日本からの出場選手は男子シングルの町田樹選手と女子シングルの今井遥選手の2名のみです。選手の宿泊先は、私のホテルからも目と鼻の先であるメルキュールホテルだったようです。そういえば、先日のショートプログラム終了後の報道で、「町田樹選手がボルドー散策で迷子に?」という内容を見かけました。

日刊スポーツ(2014年11月22日):町田「ボルドーの街を散策しすぎた」
http://www.nikkansports.com/sports/news/f-sp-tp0-20141122-1399360.html
この記事によれば、町田選手はショートプログラムの行われる11月21日の午前中、必勝祈願のために教会に向かい、道に迷って「想定の2倍以上歩いた」のだそうです。時差ボケもさることながら、この想定外のハプニングによって、ショートプログラムでは「スタミナ切れ」となり実力を発揮できなかったというお話です。

ここで個人的推測ですが、その教会とは、選手の宿泊するメルキュールホテルに比較的近いコチラの教会ではないでしょうか↓。ボルドー市内には教会はたくさんありますが、市内中心部の有名どころの教会は観光客でごった返しているのみならず、選手の宿泊先から徒歩で往来するには離れすぎています。その点、この教会は選手宿泊先ホテルからも至近で、付近の環境も抜群に静かです。町田選手のこの日の公式練習は13:00からとなっていたので、午前中に気分転換を兼ねた散策をするには、まさにコチラの教会は最適と言っても良いでしょう。


(サン・ブルーノ教会。17世紀前半建立のカトリック教会)

この教会、道が複雑で迷いやすいのが難点で、実は私も帰り道に少し迷って帰路に思わぬ時間を要してしまいました。それもこれも、この地区が官公庁街で高層オフィスが多く見晴らしが悪いこと、小売店やレストランなどの目印となる建造物が少ないこと、道が途中で行き止まりになったりと不規則なこと、通行人に道を聞こうにも人通りが少なすぎることなどが原因と思われました。もっとも、道が分かりにくいこと自体はボルドー市内全域に言えることであり、京都のように道が碁盤の目になっていたり、神戸のように「山を見れば北と思え」という街と比べて、散歩のハードルはかなり高い気がします。

ちなみに、すぐ横に墓地があるこの教会の敷地からは、見事な紅葉ならぬ黄葉が隣の公園にまで拡がっています。そして、教会周囲の壁には、この黄葉と色を合わせたのでないかはと見紛うばかりの黄金色の文字がビッチリと刻印されていました↓。


「AUX MORTS DE LA GUERRE」「LA VILLE DE BORDEAUX」「1914…1918」「1939・1945」とくれば、何の話かわかります。その大理石の壁面に所狭しと黄色で刻印されているのは全て、第一次世界大戦ならびに第二次大戦で尊い命を奪われたボルドー市民たちの名前なのです。そして、手前には三色旗と同じ色のリボンをあしらった花が供えられています。

ここでハタと思い出すのは、町田樹選手が広島出身だということです。生まれこそ神奈川とのことですが、小学校4年以降は広島で育ち、今も実家は広島にあり、ソチ五輪後は広島市長を表敬訪問、サンフレッチェ広島の試合では「町田樹シート」なるものまで登場するという、広島とは切っても切れない人物なのです。

広島とくれば1945年8月6日を忘れることはできないでしょう。8月6日の平和記念式典の日には、毎年ドイツはもちろんのこと、全世界で広島のニュースが流れます。「広島」という名そのものが既に、世界にとっては「平和へのたゆまざる希求」のシンボルです。ひとたび戦争が起きれば、失うものが最も大きいのは私たちのような一般市民であることは、日本だろうがフランスだろうがアメリカだろうが中国だろうが変わりはありません。だからこそ、過去の戦争被害を長く記憶にとどめて同じ過ちを繰り返さないために、全世界であらゆる行事や催し物が脈々と受け継がれて今に至っているのでしょう。

町田樹選手には是非とも、広島出身者だからこそ表現できる「平和への希求と祈り」をテーマとする演技をいつか披露してほしいと願わずにはいられません。これが実現すれば、彼のライフワークとも言える一世一代のプログラムになることは間違いないでしょう。そのためにも、百年前の大戦すら昨日のことのようなスタンスで徹底して向き合い続けるヨーロッパの人々の姿は、大いにヒントとなるはずです。ただし、問題は選曲でしょうか?何と言っても今年一番の話題となった、広島出身の佐村河内氏が故郷を思って作曲したはずの交響曲「HIROSHIMA」が実は他人の作品だったという、あの「佐村河内事件」の記憶が新しすぎます(笑)。思えばサムラゴーチ事件は、ソチ五輪代表で町田選手の高校の先輩でもある高橋大輔さんが同氏の曲をショートプログラムに選曲しなければ発覚しなかったかもしれない事件であり、フィギュアスケートの影響力の大きさを図らずもあぶりだした事件でもありました。

なお、今年のグランプリファイナルが開催されるバルセロナ(スペイン)もまた、スペイン内戦やフランコ独裁政権の影響を受けた歴史があり、きっと収獲が色々あるはずです。散策するも良し、迷子になるのもまた良し、よりビッグな選手になって帰ってきてもらいたいところです。


(ショートプログラムの試合前の六分間練習直前、両腕を広げて深呼吸する町田樹選手。こういう彼独特の”お作法”が、今大会は見ていて楽しかった。なお、右横の黒いコート姿が大西コーチ。左にはデニス・テン選手、その後ろにリチャード・ドーンブッシュ選手、町田選手の背後を歩くのは中国杯で羽生結弦選手と激突したヤン・ハン選手)


<参考サイト>
朝日新聞(広島版)(2014年7月29日)
http://www.asahi.com/articles/ASG7X46JJG7XPITB00L.html
(広島市長を訪問する町田樹選手の記事。広島に通年使用可能なリンクがないとのことで支援を要請)

Wikipediaフランス語版 - サン・ブルーノ教会
http://fr.wikipedia.org/wiki/%C3%89glise_Saint_Bruno_de_Bordeaux
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