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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2014/09/05

甲子園に立て続く超常現象?!時空を超える因縁に思う

今年は夏の甲子園のみならず、その後の明石トーカロ球場でも大波乱がみられたようです。硬式野球である甲子園大会と同じ日本高等学校野球連盟が主催する第59回全国高校軟式野球選手権大会において、準決勝の中京(岐阜)vs崇徳(広島)が足掛け4日の延長50回で決着するという壮絶な事態となりました。高校の軟式野球をよく知らない人でも、この報道は目にした方が多いと思いますが、この死闘を制した中京(岐阜)は息つく暇もろくに与えられないまま、引き続き行われた決勝戦も制し、何と優勝してしまいました。軟式野球は点数が入りにくいとか、ボールが軽く反発力が高いため硬式よりは肩肘への負担が少ないなどと色々言われてはいるものの、いくら何でも延長50回を戦った直後のチームにダブルヘッダーの試合をさせること自体、休養日も導入されるようになった甲子園の硬式野球と比べて試合日程上の配慮に雲泥の差を感じます(そもそも、もっと早く大会を始めるべきであったし、そこから逆算すると、台風があろうがなかろうが、土曜開催に拘泥せずに甲子園大会をもっと早く開幕すべきであったという結論に行きつく)。選手の体調に配慮することも十分に「教育の一環」だと私は思います。「新学期が始まるから」という大人の事情を優先させた典型として、今回の事例は今後しっかりと議論されるべきテーマだと考えます(これに関する私見については長くなりそうなので別の機会にまとめたいと思います)。

それにしても、中2日という休養タップリのチームが、6連戦(うち最後の2つがダブルヘッダー)のチームに敗れるとは、甲子園ではまず考えられない話であり、硬式と軟式では投手以上に野手の疲労度にも違いがあるのではないかと思わせます。ただし、準決勝で敗退したチームがそのまま帰らずに、引き続き決勝戦に居残って自分たちが敗れた相手をスタンドで応援する光景などは、ダブルヘッダーのない甲子園大会ではそもそもあり得ない心温まるエピソードであり、軟式野球大会の世界にも硬式にはない独特の良さがあるのだろうということがよく分かります。どんな過酷な日程の中でも、彼らのこの体験が人生における大きな財産となったことは、まず間違いないでしょう。

ところで、熱烈な甲子園の(硬式)高校野球ファンの中には、この延長戦の報道を耳にした瞬間に別のことを思い浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか。話がかなり飛躍して恐縮ですが、私の場合それは、甲子園不滅の名勝負の一つとされる1933年(昭和8年)の「中京vs明石」でした。当時は高校野球ではなく「全国中等学校優勝野球大会」の時代であり、正確には「中京商業vs明石中学」です。1-0という最少スコアで中京商が延長25回サヨナラ勝ちしたこの試合は、今後絶対に破られることのない甲子園の硬式高校野球の延長戦記録であり、スコアボードの横に手書きのスコアを継ぎ足している当時の白黒写真やラジオ中継の音声は、朝日新聞および朝日放送から出ているDVDボックスにも収録されています(参考サイトに購入先リンクあり)。

かつてこの延長戦を戦った1933年版の「中京」とは、フィギュスケートの浅田真央選手の母校としても知られる、1912年開校で学校法人梅村学園が経営する中京大中京(愛知)のことで、創立時から1967年までの校名は中京商でした。他方で、今回の延長戦を制した2014年版の岐阜の「中京」は、学校法人安達学園が1962年に開校し、1967年から2001年までの校名が「中京商」だったことでも知られています。両校は別の学校でありながら、全くの無関係ということでもないのが紛らわしいところです。というのも、前者の創始者・梅村清光の次男が、後者の創始者・安達寿雄だからです(ちなみに今年の甲子園準優勝の三重は愛知の中京大中京と同じ梅村学園の高校で、姉妹校の関係にある)。それ以外にも、今回の延長戦では、対戦相手こそ「明石」ではなかったものの、使用球場が「明石」でした。「延長戦とくれば中京-明石」と脳が勝手に反応してしまうオールドファンには、まさにヨダレものです(笑)。

さらに仕上げは、今回の”岐阜中京”のエースが松井という苗字だったことです。「岐阜で松井」と来れば、これまたオールドファンは条件反射的に「松井栄造」(県岐阜商-早稲田大-藤倉電線)ではないでしょうか。県岐阜商(岐阜)で1933年春、1935年春及び1936年夏の3度にわたり甲子園優勝を果たした左腕投手で、戦前の県岐阜商の黄金時代の中心人物でしたが、太平洋戦争のさなかの1943年に24歳の若さで戦死しました。そういえば、「中京-明石」の延長25回を投げ切った明石中のエース中田武雄も、同じ年に戦死しています。戦時色の濃かった軍国主義時代の甲子園の選手たちがその命で払うことになった多大な犠牲は、最近の日本の政治の動向を見る限り過ぎた出来事とも他人事とも思えなくなってきており、苦い歴史を繰り返さない努力を忘れないようにしたいところです。

それにしても、甲子園の硬式高校野球と明石球場の軟式高校野球は全く別の大会ですが、複雑に絡み合った不思議な因縁を勝手に感じてしまうのは、来年で100周年を迎えるという甲子園大会の長い歴史と伝統の賜物でしょうか。そういえば今年の甲子園には、センバツと夏の選手権に共通するある種の「超常現象」とも言うべき、実に不思議な出来事がありました。

超常現象その1) 「決勝戦の顔ぶれが大会初日から球場周囲に張り出されていた!」

毎年、甲子園の時期には春夏を問わず、過去数年分の甲子園大会の歴史を新聞の切り抜きで再現した看板が甲子園球場の周囲の壁面に張り出されます。その展示パネルの前には、記念撮影する人や記事を読み込むファンがいつも群がっています。私も大会期間中は、他のファンと一緒に往年の新聞記事を興味深く読ませていただいています。

それが、今年の春の選抜大会の際、私はあることに気付きました。往年の新聞記事を紹介しただけのはずのこのパネルの中に、まるで今年のセンバツ決勝戦を予見するかのような暗示的かつ決定的な写真があったのです↓。

これは、沖縄尚学が2度目の優勝を果たした2008年の選抜大会のコーナーです。左側の新聞記事はその大会の開会式の模様です。この写真部分をよく見ていただくと、ビックリです。何と、今年の選抜の閉会式の光景が、ソックリそのまま6年前の新聞紙面を飾っていたのですから!


該当する写真を拡大してみました。ここには、第80回センバツで入場行進を果たす平安(京都)と履正社(大阪)が並んで写っています。今であれば皆様ご存じの通り、この2校は今年のセンバツの優勝校と準優勝校です。しかし、この展示が始まった大会開始当初、そのことは誰も知る由がありませんでした。それにしてもこの写真、校名が「平安」から「龍谷大平安」へ変わったことと、行進が逆方向(閉会式では反時計回り)であることを除けば、これが今年のセンバツ閉会式における優勝旗と準優勝旗を持った両チームの場内一周と言われれば、一瞬信じてしまいそうなほどで、偶然とはつくづく恐ろしいものです(笑)。こんなに凄い写真でありながら、当時誰もこの写真の持つ意味に気付いておらず、こんな奇遇なこともあるのかと大変強く印象に残ったものでした。

しかし、この奇跡が何と、夏にも引き継がれようとは、誰が想像したでしょうか?今年の夏の選手権では、今度はこちらの看板が私の目を釘づけにすることになりました↓。


2008年の第90回記念大会で優勝した大阪桐蔭(上写真左)には、エースの福島由登(青山学院-現・トヨタ)やショート浅村栄斗(現・西武ライオンズ)がいました。そして今年の夏、優勝した大阪桐蔭のエース福島孝輔の苗字も、奇遇にも同じ「福島」でした(血縁関係は無いとのこと)。そして、2009年の第91回大会で優勝した中京大中京(上写真右)も、日本文理(新潟)との冷や汗タラタラの激戦を制し、優勝エースの堂林翔太(現・広島カープ)が前代未聞の「優勝インタビューで号泣謝罪」をするという、不思議なチームでした。ここで思い出していただきたいのが、先ほどご紹介したように、中京大中京と三重はともに学校法人梅村学園経営で姉妹校の関係にあるということです。「大阪桐蔭vs梅村学園系列」を暗示しているといったら、ちょっとこじつけでしょうか(笑)?それでも、大会前の戦力分析で三重は優勝してもおかしくないゾーンにいるということを把握していた私にとって、この看板が大会の行く末をおぼろげに予感させたのも事実であり(戦力分析についてはこちらを参照:→出場49代表のBMIランキングの変遷から占う今年の甲子園の優勝旗の行方)、「平安vs履正社」の写真に引き継ぐ、「ベルンの奇跡」ならぬささやかな「甲子園の奇跡」に思えたのでした。(ベルンの奇跡についてはこちらを参照:→2014年ドイツW杯優勝直後の「ガウチョダンス」は1954年の「旧国歌斉唱事件」の再現か?

超常現象その2) 「帰国して最初に駆けつけた甲子園の試合の勝者が決勝進出」

これは全く個人的な話になりますが、ここ数年私は甲子園の開幕に帰国が間に合わないケースが立て続いております。しかも、欧州から日本への移動は”一日が短くなる移動”であるため、時差ボケが激烈となりがちです。甲子園の第1試合や第2試合といえば、ドイツでは真夜中に相当します。必然的に、帰国から数日は「目覚めれば第3試合」という、過去何十年にも渡って朝から晩までセッセと甲子園観戦の皆勤賞を続けてきた自分としてははなはだ情けない状況が続くことになるのです。かくして、今年の選抜での私の初登場は大会第5日第3試合「龍谷大平安(京都)vs大島(鹿児島)」となりました(→大島高校センバツ初出場記念!即興カラオケにオススメの曲「安陵愛唱歌」)。大会が進んでも時差ボケがなかなか良くならず、第3試合でないと球場観戦できなかったトホホな私は、この大会でクジの都合上その登場が第3試合ばかりとなった龍谷大平安の試合ばかりに当たってしまい、いつの間にか”平安の追っかけ”のような状態に置かれたのですが、その平安があれよあれよという間に最後は優勝してしまい、大いに驚かされました。

(外野席から見届けた龍谷大平安のセンバツ1回戦勝利)

そして、今年の夏も私は帰国が遅れたのですが、肝心の甲子園の方も台風11号の影響で勝手に遅れてくれたため、相も変らぬ時差ボケではありましたが、予想していたよりも大幅に早い大会第3日第4試合が私の初登場となりました。この試合こそ、9回裏の土壇場で同点に追いつき延長11回サヨナラ四球という劇的な幕切れとなった「三重vs広陵(広島)」でありました。

(延長に入る直前、まだ空が青く明るい甲子園)


(サヨナラ試合終了の時点で、空はすっかり暗く、スコアボードの白い文字が妙に輝いて見える)

今大会は予選の段階からこのようなシーソーゲームや奇跡の大逆転も多いとは聞いていましたが、まさかこの時の三重が決勝戦に進出するとは、この時点で誰が想像したでしょうか?そして来年以降、決勝戦を暗示するサインが球場近辺や私個人の周囲に超常現象のように出現するのでしょうか?今からすでに楽しみです。


<参考サイト>
中京大学-大学案内-歴史
http://www.chukyo-u.ac.jp/information/about/a4.html
(梅村学園の歴史が表にまとめられている。中京大中京および中京大学、三重および閉学となった三重中京大学についても記載あり)

学校法人安達学園-安達学園の成り立ちと歩み
http://www.adachi-gakuen.ac.jp/about/history/index.html
(岐阜の中京高校や中京学院大学ほかについて詳しい年表あり)

Research journal of physical education Chukyo University 35(2), 1-2, 1994-03-18(梅村清弘「父、梅村清明を偲ぶ」)(PDF版)
http://ci.nii.ac.jp/els/110004637453.pdf?id=ART0007352302&type=pdf&lang=en&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1409659428&cp=
(なお、梅村清明といえば、三重高校および岐阜の中京高校の両校の校歌の作詞者でもある)


ブログ報知-蛭間豊章記者のBaseball Inside(2013年7月20日):甲子園を沸かせたもう一人の松井がいた
http://weblog.hochi.co.jp/hiruma/2013/07/post-360c.html
(県岐阜商の松井栄造に関する記事)

朝日新聞SHOP-夏の甲子園 不滅の名勝負1915-2002
http://shop.asahi.com/eventplus/7.1/024501_2/
(DVD10枚組ボックス。税込価格38800円と高価だが、甲子園の歴史がよくまとまっており、日本の近現代史を学ぶ意味でも非常に興味深く面白い内容)
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