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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2014/07/04

祝・W杯サッカー準々決勝進出!ドイツ代表は「勝って強くなる炎のチーム」

W杯ブラジル大会のグループリーグ期間中、ちょうどドイツがポルトガルとの初戦を4-0の大差で制し、二戦目のガーナ戦を目前に控えた頃だったでしょうか。日本へのワンポイント帰国のため、私はタクシーサービスを利用しました。行先に空港を指示し、どっかりとスーツケースを積んで乗車した私は、運転手さんがいかにもサッカーの観戦歴が長そうなドイツ人男性(←注:ここがポイント!ドイツのタクシー業界の運転手はほぼ中東人で占められており、このようにドイツ人の運転手に出会うこと自体が極めて稀)であることに気づき、面白そうなのでちょっとサッカーネタを振ってみようと思い立ちました。せっかくサッカー王国ドイツにいるのですし、私自身は野球にフィギュスケート位しか見ることのないサッカー音痴なので、こういう時こそ少しサッカーのお勉強も良いかな、と思ったのでした。

私 「先日のポルトガル戦、ドイツの圧勝でしたね~!これなら、今大会のドイツチームは期待できますか?」

しかし、驚くべきことに、私がそうたずねた瞬間、運転手さんの表情がサ~ッと曇ったのです!

運転手(以下、運) 「あの初戦の大勝は、よくない兆候だ」

え~っ、そうなのぉ~?と叫びたい気持ちをグッと抑え、私はその理由を冷静に(?)聞いてみました。

私 「そうなんですか?てっきりドイツチームは好発進だとばかり思っておりましたが」
運 「ドイツ代表チームというのはね、お客さん、トゥルニアー・マンシャフト(Turniermannschaft)なんだよ」

トゥルニアー・マンシャフト(Turniermannschaft)?耳慣れない単語が出てきました。トゥルニアー(Turnier)とはドイツ語で「トーナメント」の意味、マンシャフト(Mannschaft)は(最近では日本でも知られるようになったかもしれませんが)「チーム」という意味です。これが逆順であれば、マンシャフツ・トゥルニアー(Mannschaftsturnier)という単語になり、「団体競技のトーナメント」というドイツでも頻出の単語となります。マンシャフツ・トゥルニアーとは、個人のカテゴリーがなくあくまでもチームを参加単位として勝者をトーナメントで決する競技のことで、日本で例えるなら春のセンバツや夏の甲子園の高校野球大会がまさにマンシャフツ・トゥルニアーの典型です。しかし、その逆のトゥルニアー・マンシャフトとは何ぞや?

運 「トゥルニアー・マンシャフトというのはね、勝ち進むことで強くなるチームという意味なんだよ。ドイツ代表チームというのは過去の歴史に照らし合わせてみても、最初はモタつきつつも辛勝しながら次第に良くなってくる典型的なトーナメント型のチームなんだよね。リーグ戦の初戦から圧勝するなんてガラじゃないだけに、逆に俺たちはあの初戦のボロ勝ちで心配になってしまったんだ」

まるでジョン・カビラか川平慈英の話でも聞いているような(笑)、かなり”サッカー愛”の強そうなこの運チャンのウンチクに、コアなドイツ人サッカーファンはそんな風に考えているのかと感心しました。同時に、あくまでも私の脳内だけかもわかりませんが、そこにはドイツサッカーと日本の高校野球との奇妙な共通項まで浮かび上がってきたのでありました。

トゥルニアー・マンシャフトという単語は知らなくとも、この単語が指す概念は、実は高校野球の世界ではよく知られています。私がこの単語から真っ先に連想したのは、高校球界屈指の名門校でもある古豪・福井商(福井)でした。北陸の雄として長年の実績を誇る福井商は、それはもう絵にかいたような「強いから勝つのではなく、勝って強くなるチーム」の代表格であります。地方大会では最初はお約束のようにモタモタするのにもかかわらず、薄氷の勝利や神がかり的な逆転劇などを経て、少しずつ歯車がかみ合うように強くなっていき、そして晴れて甲子園に出場できたあかつきには、その試合運びはドラマチックな事この上なく、勝っても負けてもとても印象的な試合を展開する…それが福井商の伝統でもあります。同校野球部のモットーに「炎のチーム」というのが元々あるのと、1984年の夏の甲子園で大いに話題となった同校主将による選手宣誓の「若人の夢を炎と燃やし」という超有名フレーズが、時空を超えた今になって何の因果か、ドイツサッカーのナショナルチームのことをそのまま物語っているように聞こえてきて仕方がありません(笑)。そういえばドイツ代表のユニフォームは炎をイメージさせる色使いに見えなくもありませんが、これは単なる偶然でしょうか?(偶然に決まってますわな…というよりドイツ人は福井商など知るはずもない…笑)

(デパートのW杯サッカー関連グッズのコーナー。ドイツ戦の放映当日は、男女を問わずこのカッコをした人々が街にグッと増え、道路も帰宅ラッシュですごく混雑する)

ユニフォーム部分をアップにしてみました。白地に赤とオレンジのグラデーションが、まさに「炎のチーム」にふさわしいデザインに見えませんか?そう考えると、多くのドイツ人がガックリきたであろうガーナ戦での引き分けも、あのタクシーの運チャンのようなコアなファンにとっては、「これでドイツに本来の調子が戻ってきた」という福音のサインだったのかもしれませんし、つい先日の決勝トーナメント初戦の対アルジェリア戦における延長までもつれての悪戦苦闘にも内心シメシメと思っていたのではないかと想像します。次は強敵のフランスですが、この調子でドイツチームの調子が上げ潮ムードに入ってくることを期待しつつ、是非ともいい試合を見せてほしいと思います。

なお、日本に帰国してきた私ですが、先日関西の某レストランで食事していたら、すごい会話を耳にしてしまいました。私の後ろで「韓流ファン」にも通じるようなパワフルな関西おばちゃん軍団が宴会していたのですが、彼女たちからこのような声が上がっていたのです:

おばちゃん1 「ねえねえ、昨日のW杯のドイツ戦、見たぁ?」
おばちゃん2 「見た見た!ねえっ、ちょっと、ひどくなかった?」
おばちゃん3 「そうそう。今大会のドイツって、近年まれにみるレベルの低さやで、あれは!」
おばちゃん一同 「ホンマやね!」

私は思わず耳をダンボにしてしまいました(笑)。ドイツ代表のレベルが今年は低いですって?関西おばちゃん軍団、そんなにサッカーに詳しいのか?

おばちゃん4 「いやいや、ドイツであんなにイケメンがおらんのって、珍しくない?」
おばちゃん1 「そうやね~。私は辛うじて○番の人がまあまあ好みかなって感じやけど、見ててウットリするのがひとりもいないって、どないなっとんねん(怒)!」
おばちゃん2 「あの中で一番のイケメンとなると、やっぱりレーヴ監督?」
おばちゃん1 「それを言うなら、元イケメン、かな?若いころはきっとめっちゃカッコよかったんやろなー、って思わせる顔してはるわ」
おばちゃん一同 「ハア~っ」(タメイキ)

人の話を盗み聞きしておいて言うのもなんですが、関西おばちゃん軍団はずっと海外男子選手の品評会をしていたのには唖然としてしまいました。しかも、日本が早々と敗退したため、今やそれしか楽しみがないとまで言うではありませんか(笑)!この会話から私が回想したのは、以前フィギュスケートの欧州選手権を観戦した際に、日本から大挙して押し寄せた女性ファンたちが男子シングルのイケメン選手発掘には熱心だったものの、女子シングルは全く眼中になくホテルに戻っていたというエピソードでした(→男子シングル元欧州チャンピオンの里帰り…ノルベルト・シュラム氏に見るフィギュアスケート選手の引退後の人生)。それにしても、4年前のW杯では弱冠20歳の新星として活躍したトーマス・ミュラー選手を「すっかり老けて今やオッサン顔」とバッサリ切り捨てた大阪おばちゃん軍団、スーパープレー続出の守護神マニュエル・ノイアー選手にも、ドイツでは国民的人気のバスティアン・シュヴァインシュタイガー選手にも、皇帝フランツ(ベッケンバウアー)の向こうを張ってポルディー王子(Prinz Poldi)の異名をとる今や大御所のルーカス・ポドルスキー選手にも、W杯最多得点タイ記録に並び「ドイツ版レジェンド」と化したミロスラフ・クローゼ選手にも、彼女たちのハートがシュートの決まったゴールネットのように揺さぶられたりすることがなかったのだとしたら、それはそれでもったいないような気がします。

上の写真は、京都で発見したサッカーショップの入り口です。ドイツ代表のユニフォームが商品として一番目につく場所に配置されており、日本のサッカーファンの間でもドイツ代表は結構人気らしいとわかり、何だかとても嬉しいです。その上にはアルゼンチンのメッシ選手のユニフォームも見えます。私自身、サッカーショップに足を踏み入れること自体、この日が初めての経験でし、長く生きていると人生いろいろなことがあるものだと痛感しました(笑)。私に人生初となるサッカーショップの門をくぐらせた今回のW杯ブラジル大会には、さらにサッカーという競技の面白さを世界に広く知らしめてくれることを期待するとともに、野球にしか縁のなかった私も今後はもう少しサッカーについても勉強してみようと思った今回の日本帰国でした。
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