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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2014/05/16

世界卓球2014の実況中継が無視したドイツ卓球男子イケメン軍団

先月、都内で地下鉄を乗り継いだ際、このような看板が目に入りました↓。4月28日から5月5日までの8日間にわたり熱戦が繰り広げられた、「JA全農2014年世界卓球団体選手権東京大会」こと第52回世界卓球選手権団体戦(国立代々木体育館、東京体育館)、略して「世界卓球2014」の宣伝です。放映したのは、あの大食い番組の制作局として当コラムでもおなじみのテレビ東京です。今年が開局50周年となる同局のこと、きっと世界卓球の魅力を存分にお茶の間に伝えてくれるものと大いに期待されました。


しかし、実際の放映を見た途端、大いなる失望の渦に飲み込まれていくのでした。日本開催だから仕方ないのかもしれませんが、まず気になったのは、とにかく日本の登場する試合しか放映されなかったことでした。男子決勝「中国対ドイツ」など、正真正銘の世界一決定戦だったにもかかわらず放送スケジュールがなく、あったのは決勝進出を果たした女子だけでした。

テレビ東京ホームページ:世界卓球2014試合結果
http://www.tv-tokyo.co.jp/takkyu_14/result/
(だいたい、このテレビ東京の試合結果のページに日本の登場しない試合結果が一切載っていないところからして嘆かわしい)
(ちなみに有料放送JSPORTS1では決勝トーナメント全試合がこの6月に再放送される予定…末尾の参考サイトを参照)

さらに耳障りだったのが、試合での実況者および解説者でした。実況者が日本選手の側に立った説明しかしないのは織り込み済みとしても、特に解説者のコメントが酷過ぎで、「ナイスボォール!」「ドンマイ、ドンマイ!」「ここから切り替えて!」といった、応援席のステージママかスポーツバーの酔っ払いかと耳を疑うようなものばかりです。卓球という競技に対する理解を深めるきっかけになるような内容は皆無、ただ感情的かつ国粋的なだけの掛け声に、これのどこが一体オモテナシの国なのかと嫌気がさし、以降すっかり見る気をなくしました。そして、そのあたりは日刊ゲンダイも同感だったようで、つい先日こちらの記事が掲載されていました↓。

日刊ゲンダイ(2014年5月11日):世界卓球でも目立った「絶叫解説」がはびこる裏事情(青字は記事の要約)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/150082
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/150082/2
・世界卓球をテレビ東京は連日ゴールデンで放送、特に女子準決勝は夜23時台まで完全生中継。
・さほど人気競技とも思えないのに客席が満席だったことには裏があった(タダ券配布、一定年齢以下無料など)。
・アイドルをダシにした観客動員などの「本末転倒」な手をとらないだけ、テレビ東京はまだマシ。
・石川佳純や松平健太(マツケン)をスターに仕立てて卓球を人気コンテンツにしたいという意図がありそう。
・感情的な「熱狂応援」は、実は解説者がテレビ局から「盛り上げろ」との指示でやらされているケースもある。
・こういう解説がかえって視聴者をシラケさせることにテレビは気付くべき。


この記事はおそらく、先だってのソチオリンピックで日本のテレビ中継にみられた「まるで応援団のような解説」の事例を念頭に置いて書かれたものだったのでしょう。そして、今回の日本滞在中に私が世界卓球の放送に完全にドン引きしてしまったのも、単にソチ五輪を日本で観ておらず「免疫が無かった」という事なのでしょう。かつての日本が経済成長や好景気でブイブイいわせていた頃のスポーツ中継を思い起こす限り、もっと対戦相手や他国のプロフィール紹介などに時間を割いていたように思うだけに(社会現象にもなった「コマネチ」が良い例か)、ここまで「ニッポン頑張れ」一辺倒の実況はむしろ国の閉塞感や余裕の無さの裏返しのようにも感じられます。それにしても、夜の23時台までもつれ込んだ女子準決勝の対香港戦は確かに大熱戦でしたが、私はむしろ、夜中まで居残ったあの観客たちが結局どのようにして家路に着くのか、彼らの帰りの足ばかりが気になって試合に集中できませんでした(笑)。

そんなに卓球の人気を上げるためにスターを作り出したいのなら、いっそのことこちらの方々をフィーチャーした方がよいのではないでしょうか?ということで、今週はドイツ卓球界のイケメン軍団(?)をご紹介しましょう↓。

上は2012年のロンドン五輪で見事銅メダルを獲得してメダリストインタビューに臨むドイツ卓球男子団体です。真ん中の首からメダルをかけている3人が選手で、そのうち2人が今回の世界卓球にも出場して今大会のドイツの銀メダル獲得に貢献しました。(左端のアナウンサーの右隣が後述するティモ・ボル、そのさらに隣がディミトリー・オフチャロフ)

ここで、フランクフルター・アルゲマイネ紙の記事を引用し、その中の写真を引用したいと思います↓。

フランクフルター・アルゲマイネ紙(2014年5月5日):Silber bei Tischtennis-WM “Ein Ovtcharov-Sieg reicht nicht”
(世界卓球で銀、「オフチャロフの勝利では足りなかった」) (青字箇条書きは筆者による本文要約)
http://www.faz.net/aktuell/sport/mehr-sport/tischtennis-wm-deutschland-verliert-finale-gegen-china-12923878.html
・ドイツは1勝3敗で中国に敗れ銀メダル。
・中国という鉄壁に辛うじて小さな穴をあけたのはディミトリー・オフチャロフ(Dimitrij Ovtcharov)のみ。世界チャンピオン(ロンドン五輪金メダリスト)の張継科(Zhang Jike)に勝利→「この試合は人生最高の出来だった」と試合後のオフチャロフ弁。
・33歳の元欧州覇者ティモ・ボル(Timo Boll)と25歳の現欧州覇者オフチャロフが中国の馬龍(Ma Long)に、21歳の新星パトリック・フランツィスカ(Patrick Franziska)が世界ランク1位の許昕(Xu Xin)にそれぞれ敗退。
・ドイツの銀メダルは1969、2004、2010、2012に続いて5回目。中国の金は7年連続19回目。
・決勝の観客数は6000人。


<ティモ・ボルTimo Boll>

(上記リンク先のフランクフルター・アルゲマイネ紙記事から引用)

(ロンドン五輪のメダリストインタビューから)

五輪銅メダル獲得時の柔和な表情と、試合中の緊張感あふれる顔とでは、顔の印象がずいぶん異なりますが、特徴あるおヒゲは変わりありません(笑)。なお、ティモ・ボルは団体での北京五輪銀およびロンドン五輪銅以外にも、欧州選手権個人で6度の優勝、世界卓球選手権通算メダル7つといった輝かしい実績を誇り、「欧州卓球界で最も成功した人物」とも「ドイツ卓球界の英雄」とも言われていますが、最近は故障に悩まされ、世界ランクもオフチャロフに逆転されました(2014年5月現在10位)。

<ディミトリー・オフチャロフ Dimitrij Ovtcharov>


(上記フランクフルター・アルゲマイネ紙から引用。2014年5月現在世界ランク4位、今や堂々たるドイツの若きエース。ティモ・ボルが「天才」とされるのに対し、ディミトリー・オフチャロフはドイツ卓球界随一の「努力の人」と言われている。両親が卓球指導者という家庭環境下の猛特訓のエピソードから、私に限らず日本人なら誰しも思い浮かべるのは「ドイツ版星飛馬」であろう)


(ロンドン五輪時。当時23歳、今と比べると随分若々しい)

ちなみに、ディミトリー・オフチャロフのドイツでの愛称は「ディーマ(Dima)」。以前のコラムでも紹介した通り(→ドイツで観戦するロンドン・オリンピック2012 (7)…五輪は国を映す鏡?移民系ドイツ人選手の活躍)、彼は実はウクライナ人。父親は旧ソ連の国家代表レベルの卓球選手で、今のディミトリーのコーチも務めるミハイル・オフチャロフ氏。1992年に一家でウクライナからドイツへ移住。ロンドン五輪当時、ドイツ代表選手の中にやたらと移民が多かったことが議論を呼んだが、この人もその一人。

もうすぐサッカーのワールドカップ(W杯)がブラジルで開催されますが、ドイツのサッカー界もまた移民が多いことで有名で、ドイツ代表から移民を排除したらW杯では決勝トーナメントにすら進めないだろうと、大会の度にドイツではよく言われます。英仏での反EUや移民制限の動きとは対照的な文脈で、今年のW杯の季節もまたドイツ国内で移民論争が再燃することは間違いなさそうです。

<パトリック・フランツィスカ Patrick Franziska>


(ドイツ期待の若手、2014年5月現在世界ランク29位。ロンドン五輪に出場しておらずフランクフルター・アルゲマイネ紙にも写真がないため、テレビ東京の世界卓球動画サイトからご尊顔を引用。YouTubeアドレスは末尾参考サイトに記載。躍動感溢れるプレースタイルを是非一見していただきたい)

思えば、フィギュァスケートの欧州選手権には、毎年驚くほど大人数の日本人女性が観戦に来ています。日本人が一人も出場しない欧州選手権のアイスリンクの最前列がいつでも熱狂的な日本人女性ファンで埋め尽くされているのも、ひとえに彼女たちのお目当てがズバリ「男子シングル」だからであります(笑)。日本女性の人気を二分していたトマシュ・ヴェルネル(チェコ)とブライアン・ジュベール(フランス)は残念ながら今年引退してしまいましたが、日本女性たちはきっと今後もお手製の横断幕や花束を片手に、新たなお目当て選手を応援すべく世界を飛び回ることでしょう。

その観点に立てば、今回の世界卓球も無理やり日本人選手をスターやアイドルに仕立て上げなくても、いっそのことオフチャロフあたりを軸に”欧州イケメン軍団”をテレビ中継の目玉として前面に押し出していたら、一気に女性人気が出たかもしれません(笑)。それはともかく私の本音としては、もっと卓球という競技自体の魅力や奥深さが視聴者にきちんと伝わるような放送内容をテレビ関係者に強く切望するところです。


<参考サイト>
卓球王国WEB - テレビ情報
http://world-tt.com/ps_info/ps_report.php?bn=4

YouTube - 世界卓球2014 男子決勝トーナメント決勝「中国 VS ドイツ」(テレビ東京卓球チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=XJjUZUdLBEw
(全4試合が視聴可能、他の試合もここで見ることができる)
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