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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2014/01/31

祝「センバツ確定」そして「ヤンキース入団」!大食いロケ後に訪問した駒大苫小牧とマー君の思い出

本年3月21日より開催予定の第86回選抜高校野球大会の代表校が先日発表され、北海道の駒大苫小牧高校が9年ぶり3回目となるセンバツ出場を決めました。9年前といえば思い出されるのは、2005年のセンバツでマー君こと田中将大投手が背番号10の2年生投手として甲子園デビューを果たしたことです。そのマー君も、その後の夏の胴上げ投手、翌春のまさかのセンバツ出場辞退、夏のハンカチ王子との激闘の末の準優勝を経て、今やすっかり球界を代表する若き大投手です。2007年に東北楽天ゴールデンイーグルスに入団してからの活躍はご存じの通りで、昨年の驚異の連勝記録達成、悲願の日本シリーズ制覇、そしてつい先日発表されたポスティングシステムを利用してのニューヨークヤンキース入団など、まさに駒大苫小牧高校野球部にとってはこの上ない朗報の連続とも言えるでしょう。両者の今年の活躍が今からとても楽しみです。

そんな駒大苫小牧高校とマー君とくれば、実は私にとっては大食いロケと切っても切れない深い結びつきがある…などと言えば、皆様は驚かれるかもしれません。2006年秋に北海道で行われた『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)のロケ終了後、スタッフおよび選手一同がそのまま空路で羽田に戻るのを見送りつつ、別行動の私は陸路ひたすら札幌へ移動、そしてその翌日には念願の駒大苫小牧高校の正門前に立っていたのでありました↓。

 

晴天に恵まれた駒大苫小牧訪問で、門の奥の「準優勝 ご声援ありがとうございました」という垂れ幕が、ハンカチフィーバーに湧いた早稲田実業との激闘の余韻を北の大地にさりげなく持ち帰ったかのようでした。



この門をくぐり、野球部のグラウンドに案内してもらったところ、チームはちょうど二手に分かれて紅白戦をやっているとのことで、マー君たちのいる方のグラウンドに見学に連れていっていただきました。そこでプレーしていたのは既に引退した3年生が中心で、その中にはマー君も含めてアメリカ遠征から帰国してきたばかりのメンバーが、すっかりリラックスした状態でプレーにいそしんでいました。

 


空振りしたバッターの言い訳: 「いや~、時差ボケかな~?西海岸はまだ夜中なんだよねー!」

ナイスボールを投げた投手に対し、バッターボックスから称賛の声も: 「おっ、○○!今の、90マイルは出てたゼ~ぃ!」

そんなチームメイトの会話に、横でキャッチボールしていたマー君が大爆笑しています。

 


夏の甲子園での惜敗や準優勝はすっかり思い出と化したのか、現在進行形のギャグ炸裂はとにかく絶妙で、あたかも関西の掛け合い漫才を聞いているようでした。中でも、特に興味深かったのは、とある特定の単語がやたらと頻繁に3年生部員(マー君含む)の口から飛び出していたことでした。

「わや!」
「ワヤやがな!」
「ワヤしよる」

誰かが少しでもショボいプレーなどしようものなら、そして、そこまでひどくないと思われるプレーであっても、事あるごとに四方八方から「わや!」という声が容赦なく飛んできます。「わや」とは「めちゃくちゃ」「ダメ」といった意味合いの俗語で、主に大阪や名古屋の近辺でよく使われ、うちの親もよく使っていたため、これはてっきり大阪弁か名古屋弁だと私は子供の頃から信じて育ちました。それだけに、「どうしてこの北の大地で関西弁がはびこるのか?」と頭がすっかり混乱してしまった私でしたが、後々調べてみたら何のことはない、同じ単語が北海道弁にもあることが分かりました。意味もほぼ同じらしく、おそらく西日本ないし中部地方から入植してきた移住者が道内に持ち込んだ単語ではないかと推測されています。

この「わや」のエピソードは、マー君の高校生活を語る上での大きなポイントの一つかもしれません。自らの郷里である兵庫県伊丹市を後にして、単身北海道へと野球留学をした弱冠15歳の少年マー君は、現地に初めて足を踏み入れるまでは様々な不安や心細さを山ほど抱えていたとしても何の不思議もありません。それが、この「わや」のような関西弁と北海道弁の奇妙な一致を初めて耳にした際、大いに感動したのではないか。あるいは、少なくとも抱えていた不安を氷解させる役割をこの単語が多少なりとも果たしたのではないか。ついついそんな想像をしてしまいます。

これと関連して気付いたことがもう一つあります。それは、球場の駒大苫小牧ファンの一般客の中には意外と転勤族が多いということでした。北海道には首都圏・中部圏・関西圏に限らす沖縄などからも転勤してくるケースがあるようで、駒大苫小牧ファンは必ずしも「北海道生まれの北海道育ち」とは限らないようです。正確には、「冷静に野球を観察しつつ、純粋に駒大苫小牧を愛する人たち」といったところでしょうか。その彼らからは、このような指摘もありました。

「駒大苫小牧の大躍進は、田中と山口という二人の関西人によるところが大きい」

この発言は、私にとっては大いに意外であり、衝撃的でもありました。というのも、駒大苫小牧の2004年の甲子園初優勝は、ベンチ入りメンバーが全員北海道の中学校を卒業していたため、「道産子だけのチームで成し遂げた全国制覇」と当時のメディアで大いに持ち上げられていたものだったからです。その背後には、野球留学批判の世論やそれをあおるマスコミの論調が根強くありました。

しかし、2004年の夏の駒大苫小牧には、甲子園のベンチ入りメンバーにこそ「道産子」しかいませんでしたが、アルプススタンドには関西からの野球留学生が2名いたのです。この入学してまだ4か月程しか経っていない一年生坊主こそ、マー君こと田中将大君と山口就継君でありました。関西からの野球留学生はこの2人しかいなかったにもかかわらず、その存在はそれまでのチームの有り方を大きく変えるきっかけとなったと、ファンの方々が説明してくれました。

「関西の子は、一年生であっても主張がある。上級生相手でもひるまずに堂々と意見を言う。それでいて、なぜか角が立たないというのは多分、あの2人の性格の良さもあるが、関西弁という方言の強みも一因だと思う」
「そんな一年生の田中と山口の姿を見て、当時の三年生の意識が少しずつ変わっていった」

全国の都道府県からの入植者が明治以降支え合って今の形に築き上げられたのが北海道であるなら、現代の北海道の高校野球界においてもその開拓者精神は健在ということでしょうか。九州人の元監督がそんな開拓者の子孫である道産子に全国他都府県から集まって来た選手を束ねてそれぞれの長所を相互作用させつつ生かしあう…それが2000年代の駒大苫小牧の黄金時代の真髄だったとすれば、同校初の全国制覇のキャプテンでもあった現監督が田中マー君も含めたOBたちの築きあげたその真髄をどのように受け継いでチームに注いできたのか、今年の選抜大会ではそのあたりを意識しつつ大いに楽しみたいところです。

余談ですが、もう一つ思い出話を。関東の某強豪高校の野球部監督が自身の監督生活で初となる大阪からの野球留学生を受け入れることになった…という話の中で出てきた、思わず聞き返さずにいられなかったエピソードです。

監督 「今度、大阪から2人採ることになりました」
私  「関西からは初めてですね!それも、いきなり2人ですか?」
監督 「1人だけだと、孤立して話し相手がいなくなったら可哀そうだから、2人にした」
私  「それなら、2人と言わず、3人とか4人にしたらどうですか?」
監督 「それはまずい。関西の人間が3人以上いると、チーム全体が関西カラーに染まりきってしまう」
私  「…(絶句)…」

部員数90人超という規模の野球部に関西人が仮に3人入ろうものなら、それはもう部全体がハイジャックされるかのような警戒の仕方でした(笑)。三人寄れば文殊の知恵と申しますが、関西人が三人寄ればそれこそ「わや」ということでしょうか?もっとも、関西人でよくみられるバイタリティーやキャラクターの強さは、野球をやる上では大きな武器でもあり、日本全国の野球留学の一大推進力であるという側面は確かにあるように思います。かくなる上は、伊丹・昆陽から苫小牧、さらに仙台を経て、海を越えてニューヨークに羽ばたこうとしている我らが日本のヒーロー田中将大君にも、その原点となる関西人魂を活躍の原動力として、アメリカでもますます活躍し続けてほしいと願っています。


(地元ファンが熱く見守る至近距離に田中将大投手本人のキャッチボール姿。周囲に人垣もマスコミも何もないのどかな野球環境は、ドラフトまでかなり間があったこの時期ならではのもので、今はなかなかこうはいかないだろうし、本人にとってもファンにとっても希少な体験であったはず)


<参考サイト>
日本語俗語辞書 - 「わや」
http://zokugo-dict.com/44wa/waya.htm
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