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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2013/12/13

炭酸水を飲むドイツ文化の背景…「ゲロルシュタイナー」の日本進出を心から応援!

最近はヨーロッパの炭酸水をコンビニなどで見かけることも珍しくなくなりました。日本ではエビアンやヴィッテル、ペリエなどフランスのブランド水が優勢のようですが、最近はドイツのお水も遅ればせながら参戦し、随分と健闘しているようです。今年の秋、日本の新幹線のホームで自販機の中にゲロルシュタイナーを発見した瞬間、それはもう昔の同級生にバッタリ再会したような喜びで飛び上がった私は、思わず写真まで撮ってしまいました↓(笑)。



ゲロルシュタイナーといえば、ドイツで最も代表的なスパークリングウォーターです。日本のドリンクの中に交じって、150円という価格で、さも昔からそこに居たかのような表情でふんぞり返る我らがゲロルシュタイナー、もちろん即買いです↓。



最近はイオンなど一部の大手スーパーマーケットでキャンペーンを張ることも増えたゲロルシュタイナーですが、まさか駅のホームでキンキンに冷えたボトルを手にできるとは…。その場でフタを開けて、イキのいい「シュッ!」という心地よい音とともにゴクゴク…残暑が続いていた当時の日本の気候にもピッタリで、のどの渇きも一発で解消です。

それにしても、これまで日本であまり流行ってこなかった炭酸水が、なぜ今年あたりから売り場で妙に目につくようになったのでしょうか?今年は特に猛暑日が多かったことも関係あるかもしれません。また、「南アルプス天然水」の炭酸バージョンである「南アルプス炭酸水」が発売されるなど、国産の炭酸水も好調のようで、少し前には下記の記事も登場、炭酸水の効能を「血行促進」「冷え防止」「食欲増進」「便秘解消」として、日本の炭酸水ブームについて解説しています。

J-Castニュース(2013年10月26日):「炭酸水」ブーム、女性に急拡大 食欲増進、ダイエットにも効果がある
http://www.j-cast.com/2013/10/26187214.html?p=all

ドイツに関して言うなら、「水といえば炭酸水」と昔から相場が決まっており、男も女も関係ありません。水のみならずジュースも炭酸割りが好まれ、アルコールならビールということからもわかるように、基本的に炭酸好きの国民性が背後にありそうです。日本の「おひや」やフランスの「キャラフ」などとは異なり、ドイツのレストランでは無料の水の提供が一切ないので、基本的には有料のドリンクを料理と別に注文することになります。従って、選び方次第ではビールよりも水の方が値段が高いといったことが普通に起きるのは有名な話です(逆に、それだけビールが安いということでもあり、これはビールに酒税がかからないことによる)。

そんなドイツ人のランチの光景を見ていると、彼らは昼からでもビールやワインを飲むケースがザラで、特に白人は遺伝的体質として皆さん酒にはべらぼうに強いです(笑)。そんな彼らがノンアルコール限定で飲み物を選ぶとすると(ノンアルコールビール以外で)、何といっても一番人気は圧倒的に「アプフェルショーレ Apfelschorle」です。アプフェルショーレとはリンゴジュースの炭酸割りのことであり、市販品もありますがそれだと甘すぎるため、自分で100%リンゴジュースと炭酸水からお手製アプフェルショーレを作ることが一般的です。この「アプフェルショーレ作り」もまた、炭酸水がどの家庭にも大量に備蓄されている一因かと思います。美味しい炭酸割りジュースを作るためには、炭酸がかなり強くないとうまくいきません。ドイツの炭酸水が軒並み炭酸が強めであることは、この「何かと割って飲むことを好む文化」とも関係しているのかもしれませんし、それもまたロルシュタイナーが特に人気を誇る理由の一つだと思います。

ちなみに、ちょっとした豆知識ですが、ドイツのレストランでアプフェルショーレがメニューに載っていなくても、注文すれば必ず提供されます。アプフェルショーレのない店はドイツ全土に存在しないと断言して過言ではありません。なお、メニューにない場合は、その価格はリンゴジュース(「アプフェルザフト」Apfelsaft)と同じとなるので、不安にならずに堂々と「アプフェルショーレ、ビッテ!」(アプフェルショーレ下さい)と注文してみて下さい。「おっ、おぬし、いちげんさんではないな!」と思われること請け合いで(笑)、しかも店ごとに微妙に違う味が楽しめます。



ドイツのミネラルウオーターは、とにかく種類が多いです!毎日飲み比べをしても飽きないほどたくさんある中、とりあえずスーパーで代表的な5種類のミネラルウオーターを買ってみました。上の写真の現物は全て炭酸水ですが、ラインアップとしては炭酸でないバージョンもちゃんと揃っています。左の2本は日本でも販売されているゲロルシュタイナーとロスバッハーで、さらには日本未登場であろうと思われるハッシア、ゼルタース、レーンの3つを加え、以下に成分表を書き出してみました。(比較対照のためにフランスのボルビックとエビアン、クロアチアのヤナも記載)


(単位は全てmg/L。クロアチアのヤナについてはこちらの記事も参照:→クロアチア土産の中に見出す日本(2)…MIKADOにSAPOROって?!キティちゃんボトルの水も登場!

これを見ると、ドイツの水の特徴が3つほど見えてきます。まず第一には、何といっても成分がブランドごとにてんでバラバラであるということです。これは採水地の違いによるものですが、カルシウムが高めでナトリウムが低いものもあれば、その逆もあったり、カルシウムとマグネシウムの比にもバラつきがあり、これが味の多様性の秘訣かと妙に納得してしまいました。微妙な苦みや塩気の違いから自分の好みの飲み口を探索するのが何といっても楽しく、水の飲み比べが趣味になりそうです(笑)。

第二の特徴は、ドイツの水がそれはもうカチカチに硬い(笑)ということです。これだけの硬水だと、特にカルキっぽさが気になる人だと、炭酸でないととても飲めたものではありません。しかも、生活用水としての水道水までもが同様のカチカチの硬水なのが悩ましいところで、蛇口をひねれば軟水が出てくる日本との多大なる相違点です。洗面台やトイレなどの水回りに湯沸かし器などはあっという間にカルキが沈着して掃除が大変、洗濯機はドイツ全土の「水の硬度一覧」を見ながら洗剤量を調整して多めに入れないとまるで汚れが落ちない、ブリタのフィルターをかけない水道水で作ったコーヒーにはカルキの粉がボウフラのように表面にビッチリと浮いてくる…といったありさまです。日本のような「ミネラルウオーターですら軟水」という国からは想像もつかないカチカチの水事情の中、採取されるミネラルウオーターも例外ではないというワケです。その代わり、ミネラル不足に悩む必要はあまりなさそうです。水道水ですら硬水ということは、動物も野菜も同じ硬水で育てているということです。こう言っては何ですが、ドイツの野菜は(フランスもですが)しっかりとした味があって実に美味しく(値段は日本の半額以下であるにもかかわらず!)、日本の野菜が仮にドイツに来たとしても果たして競争力があるのかどうなのか、考えさせられます。

なお、ミネラルウオーターにおける理想のカルシウム対マグネシウム比は2:1と言われることが多く、正にドンピシャであるロスバッハーはそれを最大の宣伝文句にしていますが、他の水もおおむね2~3:1程度のものが多いのがドイツの水の特徴です。ここではナトリウムの多さも目につきますが、逆にフランス並にナトリウムレベルの低いレーンシュプルーデル(無炭酸もあり)は、まさにそれを「赤ちゃんのミルク用に最適!」として売り文句にしています。さらにこだわる人の場合は、お茶をいれる時はフランスの水、スポーツの時はドイツの水、という具合に使い分けていたりと、いろいろな選択肢があります。

もう一つ、ドイツのミネラルウオーターの特徴として、硫酸塩が突出して多いということは特筆してよいでしょう。ドイツの土は硫黄成分を多く含むらしく、鶏卵の中の硫黄濃度もまた高いことで知られています。日本では「硫黄臭い水」と来れば「温泉」と相場が決まっていますが、ドイツの場合は温度が低いため「温泉」ではなく「冷泉」となり、飲用専門です。ドイツは歴史的に元々温泉地ならぬ「冷泉地」が多く、かつて世界中の皇帝や王様が「湯治」に来たという逸話の残る温泉郷ならぬ「冷泉郷」はその地名に「バート (Bad)」を冠していることで分かります。これは「浸かる湯治」ではなく「飲む湯治」であり、黄金律のカルシウム・マグネシウム濃度のみならず硫酸イオンも豊富なその水質こそが、帝王の健康の秘訣かつ元気の源でもあったのでしょう。最近の日本のアスリートや芸能人に人気のニンニク注射などは、その成分にニンニクは入っておらず、使用される注射用混合ビタミン剤の基材に含まれる硫黄成分がニンニク臭をもたらすことからその名がありますが、これこそまさに、飲むか注射するかの違いこそあれ、現代によみがえった「欧州貴族のドイツ湯治巡り」そのものという感すらあり、その本質は実は「硫黄元素を求める旅」でもあるのかもしれません。

そういえば、今年の夏にイタリアに行った際のことを思い出します。レストランでの注文の際、ちょっと面白い会話がありました。料理とともに水を注文した際、ウェイターから「炭酸水か?それとも炭酸なしか?」と聞かれて、言うまでもない!という調子で「コン・ガス(炭酸ありで)!」とハッキリ即答した私に、ウェイターのおっちゃんがその大きな目をさらに大きくした西川きよしさんのような顔で、こう聞き返してきたのです。

ウェイター 「キミは一体、ナニ人だ?」
私  「あたしゃ、日本人だ!」
ウェイター 「ボクはこの仕事結構長いけど、日本人の女性で炭酸水を頼んできたのは君が初めてダ!」

日本には炭酸水を単独で飲む習慣がないからね…でもそれも変わるかもしれませんよ…などという話に花が咲きました。イタリアにもサンペレグリーノやサンベネデットといった、世界に自慢できる炭酸水があります。こちらもまたドイツの炭酸水同様、日本の成城石井などのスーパーで見かける機会が多くなってきました。この調子で欧州の炭酸水の日本における人気が続くようであれば、このウェイターさんも日本人の注文に目をまん丸くするようなことはなくなっていくことでしょう。
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