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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2013/11/29

男子シングル元欧州チャンピオンの里帰り…ノルベルト・シュラム氏に見るフィギュアスケート選手の引退後の人生

フィギュアスケートのグランプリシリーズ、エリックボンパール杯は今年の11月15日から17日の3日間、パリのベルシー体育館にて開催されました。もはや毎年恒例となった感のある私のエリックボンパール杯観戦ですが(→番外編(1)…無良崇人くん、エリック・ボンパール杯優勝おめでとう!フィギュア日本男子、超激戦区の時代へ)、この大会に参加した日本人選手は今回は男子シングルの羽生結弦さんただ一人だったにもかかわらず、明らかに昨年を上回る数の日本人女性が会場に詰め掛けていたのには驚きました。前の方の列はほとんど日本人女性、それも若い方からご年配の方までさまざまな年代が男子シングル選手たち(主に羽生選手)のためにわざわざ花やクマのプーさんのぬいぐるみをリンクに投げ入れて、声を枯らして応援していました。それが、女子シングルが始まろうかという頃になると、ウソのように跡形なく居なくなっていたのには苦笑してしまいました。思い起こせば、かつてスイスのベルンで行われたフィギュアスケートの欧州選手権の際にも、日本から来た女性たちは女子シングルになった途端に「ホテルに帰ります」などと言って消えていましたが、”日本のオンナの露骨さ”というか、かつての韓流ブームのおばちゃんに近いものがあるのかもしれません。

私は海外のフィギュアスケート大会しか観戦したことがありませんが、女子トイレはいつも大行列になっているにもかかわらず、男子トイレはいつもガラガラです。甲子園での野球観戦の際はまさにこの真逆であることからも、フィギュアスケートが基本的には「オンナの観るスポーツ」であることを、トイレに行くたびに実感させられます。日本ではフィギュアスケートのグランプリシリーズは全大会をかならずどこかの放送局が放送してくれるのに対し、ドイツでは最近なかなかフィギュアスケート中継にお目にかかれないのもまた、サッカーが国技ともいうべきドイツでは仕方ないのかもしれません。見方を変えれば、日本におけるフィギュアスケートの過熱ぶりやそこに集まってくるジャパンマネーの威力(→番外編(2)…フィギュアスケートのリンク壁面広告にみるジャパン・パワーの圧巻)などは世界から見ればきっと異例かつ異様なのでしょうし、他国のスケーターにとっては垂涎の的でもあるのかもしれません。特に、引退後のスケーターの人生を考えた場合、自国におけるフィギュアスケート人気の有無は将来設計を大きく左右する重大ファクターと言ってもよいのではないでしょうか。

どうしてこのようなことを書く気になったかというと、エリックボンパール杯観戦も含めたパリ滞在を終えてドイツに戻る11月18日の朝、ホテルでちょうど荷支度をしていたら、このような映像が突然テレビから流れてきたからです。


パリのホテルにてドイツ語チャンネルとして唯一映っていたZDF(公営ドイツ第二テレビ)で、朝の番組にゲストとして登場した、元西ドイツの男子シングル選手で伝説的なスーパースター、ノルベルト・シュラム(Norbert Schramm)さんです↓。

Wikipedia日本語版 - ノルベルト・シュラム
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%A0



このコラムでもご紹介したことがあるかと思いますが、このZDFの情報番組「Volle Kanne」はゲストと司会者が一緒に朝食を食べながらトークが進んでいきます(→ドイツのテレビが明かした正真正銘の「食べても太らない方法」…運動編、→ドイツのテレビが明かした正真正銘の「食べても太らない方法」…断食編)。ニュールンベルグ出身のノルベルト・シュラムは、6歳でスケートを始めてからすぐに頭角を現し、3度の西ドイツ覇者(1979年、1981年、1984年)、ヨーロッパ選手権2連覇(1982年、1983年)、サラエボ五輪9位(1984年)などの華々しい戦績を残し、その派手な衣装や独特の現代的な選曲、斬新な振付や個性的なスピンで独自の世界を築いた選手です。かつての映像をYouTubeで改めて見直すと、アレクセイ・ヤグーディン(Alexei Yagudin、2002年ソルトレーク五輪男子シングル優勝)に随分スケーティングが似ているように思います(本稿末尾にリンクを紹介)。その力強いジャンプとは裏腹に、決定的に規定が苦手だったという記述からは、日本でいう伊藤みどりさんとの共通点も見えてきます。それでいて、アマチュアで活躍中もこのような感じで当時のバラエティ番組にブイブイと出演していたようで、その映像には驚きました↓。



ノルベルト・シュラム(上写真右)にとって赤い衣装は代名詞とも言えるものですが、この衣装は1982/1983年シーズンのフリースケーティング用のものであることから、この映像当時の彼は約22~23歳ということになります。若いだけあってなかなかのイケメンさんですが、なかなかコミカルな一面を存分に披露しています。何と彼は、このカッコでそのままこの歌謡ショーに出て、彼を題材にした歌を披露する歌手(上写真左)の横で、その自慢のクネクネ踊り(笑)を披露しているのです。このVTRを見た瞬間、もし今の日本で羽生結弦君がこれをやったら日本列島がひっくり返るのではなかろうかと、テレビ画面の前で言葉を失い唖然としてしまった私でありました。

なお、1984年のサラエボ五輪を最後にアマチュアを引退したシュラムさんは、その独自かつ独特の表現力を武器にプロに転向して渡米します。まだ東西冷戦の真っただ中にあった当時、プロの選手権にしろ様々なアイスショーにしろ、スケート界のエンターテインメントの中心は何だかんだ言ってもやはりアメリカという時代で、そこでさらにプロフィギュア選手権優勝などの戦績を積んでいきます。その後、大学で学ぶために1988年に西ドイツに帰国、そして東西ドイツ統一、さらに大学卒業後はヨーロッパを中心にアイスショーの企画や振付指導等にあたるようになり、その活躍の場をテレビや舞台にも広げていきます。



そして、ここからが凄いのですが、2002年から再渡米して拠点をニューヨークに置き、今は何とプロの写真家として活躍しているのだそうです。

Foto Norbert Schrammホームページ(英語)
http://www.foto-schramm.com/index.php

シュラムさんの手がける写真の題材はスケートやアイスショーに限定されず、サッカーや新体操などの他種スポーツから舞台・舞踊まで、幅広くショービジネスをカバーしており、作品はいずれも動的な迫力のあるものばかりです。元フィギュアスケート選手にはいろいろな人がいるかと思いますが、ここまで幅広い方面に功績を残す多芸多才な人も珍しいのではないかと思います。

今回のシュラムさんの来独は、11月23日から来年2月23日までドイツ14都市で開催されるアイスショー「PLATINUM Holiday on Ice」にスケーター兼司会者として参加するためとのことです。

http://www.norbert-schramm.de/holiday-on-ice-tourneedaten-mit-norbert-schramm%20.html

そんなシュラムさんの出演シーンをパリのテレビで漫然と眺めていた私が思わず目をひん剥いたのが、こちらの場面でした。これまでのスケートや歌謡ショーでのいかなる表情とも異なる、全く新しい素顔をふと垣間見せたように思われ、ハッとさせられました↓。


Volle Kanneはあらゆる政治・経済・社会問題から芸能の話題まで幅広いテーマを扱う番組で、専門分野ごとにゲスト解説者が登場してそれぞれのテーマをシロートにも分かりやすく説明してくれます。上の写真で左に映る男性は、欧州経済危機に関する話題のために招かれた経済エキスパートのディルク・ミュラー氏(Dirk Müller)です。この写真では写っていない司会者と、左のミュラー氏との間では、シュラム氏の目の前で一問一答が交わされていくのですが、シュラム氏のこの真剣な眼差しはそれまでの笑いありオチャラケありの資料映像とかなりのギャップがあります。スタジオのカメラクルーもきっと、この迫力ある鋭い眼光に圧倒されたからこそ、生放送中にこのようなアングルをあえてお茶の間に届けたのではないかと感じさせます。華やかなフィギュアスケートや写真の世界もまた、結局は経済の成り行きに無関心ではいられない世界であろうこと、そして、才能溢れるアスリートの人生もまた、われわれ凡人(笑)の人生にも増して、あらゆる勉強をたゆみなく貪欲に続けなければ生きていけない、意外に厳しい世界のようであるということが察せられます。

日本では知名度が高いとは決して言えないノルベルト・シュラムさんですが、今の日本で活躍する現役スケーターにとっても、現役引退後の人生を考える上で参考にも励みにもなる心強い存在なのではないかと思っています。


<ノルベルト・シュラムのYouTube参考動画>

1982年ヨーロッパ選手権フリー(フランス・リヨン)
http://www.youtube.com/watch?v=OWpIE4qUUp8
(テクノポップやインベーダーゲームが流行していた当時の空気をよく反映。どんなに歪んだ軸のジャンプでも着地するところと、ヤグディンステップの原型と思しきステップが既にみられることに驚く)

1982年世界選手権フリー(デンマーク・コペンハーゲン)
http://www.youtube.com/watch?v=yk57Bi1RwXs

1983年ヨーロッパ選手権フリー(ドイツ・ドルトムント)
http://www.youtube.com/watch?v=E5E5xKbZ7eU
(↑英語。オリジナルテープが伸びている様子)
http://www.youtube.com/watch?v=xu3hKkAj8i0
(↑ドイツ語。実況がダブルアクセルのことをトリプルアクセルという間違いあり)

1983年世界選手権フリー(フィンランド・ヘルシンキ)
http://www.youtube.com/watch?v=OGLB0GoTpnI

1984年ヨーロッパ選手権フリー(ハンガリー・ブダペスト)
http://www.youtube.com/watch?v=y-RvzxWDcHU

1985年World Challenge of Champions (フランス・パリ…よく見たらベルシー!)
http://www.youtube.com/watch?v=FuwbPo3kXlk
(↑プロ転向後。これまたよく見たら、目張りが入っている!ドーランもかな?)
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