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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2013/09/27

ディープ・パープルも真っ青?日本を覆う「スモッグ・オン・ザ・ウォーター」

今年ももうすぐ『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)の男女混合戦の放送がやってきます。未だに、「片山センセイはもう番組に出ないの?」と言っていただくことが大変多いのですが、、私はもうこの番組に呼ばれることはないと思います。というのも、私は2012年に健康を崩したのと、テレビ業界独特ともいえる”出演者を恐ろしくコキ使う”という番組スタイルに、自分の身が耐えられないだろうと考えたためです。

その一因となったのが、コレでした↓。


これは、『元祖!大食い王決定戦』の優勝経験も誇る某選手が住んでいることでも知られる山口県の某市で医師として勤務した際の写真です。「あの大食い王の最寄り駅はココか~!」と感激をもって降り立った某駅を滞在先からパチリと撮ったものの、よく見ると山と山との間の海面の上に、何だか妙な黒煙がこんもり山盛りに沈殿するかのように広がっており、その中にコンビナートの煙突が多数見えます。そして、この数時間後に、私はノドと気管支を痛めて一気に体調不良のどん底へ…。それこそ、どちらが医者でどっちが患者が分からない事態に陥ってしまいました。タバコも吸わない私ですが、この勤務以降は執拗な咳と痰に苦しめられ、2週間ほど仕事になりませんでした。

ちなみにこの「黒煙の中での勤務」は、私がドイツから日本に一時帰国した直後の仕事であり、私は本当はこのときその大食い選手に連絡して久々の再会をと考えていたのでした。しかし、一気に襲った体調不良のため仕事だけ何とか気力でこなすのが精いっぱいで、その選手へは連絡せずにそれこそ逃げるように自宅に戻ったのでした。

ずっと日本にいた頃はこのようなことがほとんどなかったことを考えると、これもまたドイツと日本を往復する生活の副産物なのかもしれません。山がちで汚染ガスが滞留しやすいという地形的問題もあるのかもしれませんが、特にここ数年の日本の空気は地方都市ですら質が良いとは言えないようで、渡独からもうすぐ8年というこの体がまるでリトマス試験紙のように正直に反応するようになってしまったことに、私自身が一番戸惑っております。きっと、昔はもっと体が大気汚染に慣れていたということなのでしょう。そういえば、最後の参加となった『元祖!大食い王決定戦』のロケの際も、私はこのような写真を車窓から撮っておりました。


これは、京都からスタートして千葉のマザー牧場へと東進すべく、アクアラインを走行中のロケバスから東京湾を撮ったものです。ここでも先ほどの写真同様に、ミルフィーユのような層を成す黒灰色の煙がその上の雲や空の色とは明らかな境界線を持つかのように、横一線に沈殿しつつ海面を漂っています。これぞ本物の「スモーク・オン・ザ・ウォーター」と、イアン・ギランやリッチー・ブラックモアといったディープ・パーフルの面々にお見せしたくなります(笑)。いや、むしろ「スモッグ・オン・ザ・ウォーター」と言った方が正確でしょうか。


この「スモッグ・オン・ザ・ウォーター」ですが、その成因は上の写真にあるような工場やゴミ焼却炉等の煙突を持つ施設であろうことは、冒頭の写真とも同様です。これらの煙突が排出する煙の比重が空気よりも重いということから、重金属やアスベストなど多くの有害物質を含んでいる可能性をうかがわせます。そして、そんな「重たい黒煙」が、相撲取りが花道を引き揚げていくかのように、河川や海の水面を堂々と通り道にしているということなのでしょう。

この大気汚染には、「狭い平地に人が密集して住んでいる」という日本という国の有り方がおそらく最も寄与しているのではないかと推察します。百万都市の数を比較してみると、日本は12なのに対し、アメリカは9、ドイツは4、フランスは何と1のみというように(フランスのみ2009年資料)、それぞれの面積や人口規模を考慮してもなお、日本の密集ぶりは欧米と比較すれば突出しているように思えます。以前のコラムでも、大都市に人口が集中する日本とは異なり、ドイツは「国民の6割が人口5万人以下の小さい町に住んでいる」というデータを末尾で呈示したことがあります(→ドイツで観戦するロンドン・オリンピック2012 (6)…氏より育ち?生育環境やお国柄がカギを握るメダリスト養成の秘訣)。こういうところにも、「スモッグ・オン・ザ・ウォーター」を日常生活に深く浸透せしめる構造があるのでしょう。


上の写真は、ある晴れた日に神戸三宮から大阪湾を撮影したもので、手前が六甲アイランドに向かう橋で、その後方に広がる大阪市内の高層ビル群がスモッグに霞んでいます。その背後の生駒山系は、さらによく目を凝らさないと見えません。この中で人が普通に生活していることに愕然としました。USJもさることながら、少年野球の甲子園に相当する舞洲ベースボールスタジアムなどもまた、大阪ベイエリアの「スモッグ・オン・ザ・ウォーター」のど真ん中に位置しております。ちなみに中国も空気は汚い日が多いことは知られていますが、あちらではフツーの天気予報に交じって連日「空気質量指数」を発表しており、程度に応じて室内退避などの勧告がなされているのに対し、日本ではこの程度のスモッグでは何のアラートもなされることはありません(→大食い本選マカオ回想録(3)…「空気質量指数」って何?大食いロケと大気汚染との関係、→大食い本選マカオ回想録(4)…浮遊粒子状物質「PM10」とその人体への影響)。

かつての日本の歴史の中にいくつも登場する、一般市民が多数泣かされ、そのほとんどが泣き寝入りさせられた公害病の数々に、このオリンピック関連公共工事の本格化を控える21世紀の日本においても新たなラインアップが加わることのないよう、私たちにできることはないのかと自問自答せずにはいられない今日この頃です。

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