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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2013/07/12

フィギュアスケーターの人生設計を考える(2)…「笑顔炸裂!南里☆康晴」の昔と今、そして未来

私の手元には、本年5月31日号のフライデー(講談社、5月17日発売)があります。この号が発売された当時、私は日本にいなかったのですが、周囲が気を利かせて買ってくれていました。といっても、私のお目当ては製薬関連の別記事だったのですが、偶然にもこのフライデーのトップ記事が「安藤美姫 『どん底から救ってくれたカレ』と母親公認♡♡同棲中」でした。そこには、出産直後であったであろう安藤美姫さんの傍らに、彼女の「新しいカレ氏」としてのプロフィギュアスケーター・南里康晴さんが登場、ツーショット写真も何枚も出てきます。南里さんといえば、私にとってもちょっとした思い出のあるスケーターなので、このフライデーには大変驚きつつも、思わず4年8か月前のその日のことを思い出さずにはいられませんでした。

今年の1月にザグレブ(クロアチア)で欧州フィギュアスケート選手権を観戦するなど、フィギュアスケート観戦は今や野球観戦に次ぐわが趣味としてここ数年の間にすっかり定着した感があります。しかし、私がそもそも人生初となるフィギュアスケート観戦に足を運んだのは、2008年11月のスケート・カナダでした。ちょうどその頃にカナダの首都オタワに出張があったという全くの偶然がキッカケでしたが、開催場所がお世辞にも交通至便とは言えないおそろしく辺鄙な場所にあると知ってさらに尻込みしたものの、「一度で良いから生のフィギュアスケートをこの目で見たい!」とのアツ~い思いから一念発起、道端に雪の積もるスコシアバンク・プレイス前に到着したときは、実に感動しました。普段はアイスホッケー(NHL)のオタワ・セネターズの本拠地として使用されており、アイスホッケー選手の写真があちこちにぶら下がっているスケートリンクにて開催された2008/2009年シーズンのグランプリシリーズ・カナダ大会は、当時はスポンサーの名を冠して「ホームセンス・スケートカナダ」と呼ばれていましたが、この大会に日本からは村主章枝さんやペア・ロシア代表の川口悠子さんに交じり、今回話題の南里康晴さんも出場していました。

このスケートカナダでまず最初に驚いたのが、観戦費用の破格の安さでした。日本での”常識”から言ってフィギュアスケートの入場券はきっとベラ高いのだろうと覚悟していた私は、震える手にクレジットカードを握りしめて(笑)スコシアバンク・プレイスの窓口に向いましたが、当日券はあるのだろうかと心配したのも全くの杞憂であり、かなり前の方の席でも1日あたり3000円前後(最終日は4500円程度/日)で買えるという、そのあまりの安さに思いっきり拍子抜けしたものでした。そして、私が初日に買った指定席はコチラ↓、ズバリ、南里康晴さんを応援する横断幕のすぐ後方だったのでした。



「笑顔炸裂!南里☆康晴」の文字が懐かしいです。当時、福岡の明太子メーカー「ふくや」に所属し「明太王子」と呼ばれていた南里さんの転戦先には、毎度のようにこの横断幕が掛けられていることはテレビ中継等で知っていましたが、まさか自分がこの真後ろに座る日が現実に訪れようとは、それまでの自分の人生からは到底想像もつかなかっただけに、何だか不思議でした。これなら横断幕の持ち主に会えるかと期待したものの、どこか別の席で観戦されていたのか、直接お会いすることはできませんでした。その代わりというのも変ですが、この席の周辺で私はやたらと周囲のカナダ人に「この横断幕に書いてある日本語はどういう意味か」と聞かれまくり、そのたびに「笑顔=SMILE、炸裂=EXPLOSION」とワンポイント日本語会話レッスンの講師と化すのでした(笑)。そして、実際に南里さんがにこやかに氷上に登場すると、周囲からは「オー!スマイル・エクスプロージョン!」と、みなさん妙に納得したような表情で声援を送ってくださったのも、これまた印象的でありました。

さて、この大会、驚くべきことがもう一つありました。それは、スケーターと一般客の垣根がほとんど存在しないに等しかったことです。ちょっとドリンクを…と廊下に出れば、さっきまで演技していたスケーターがその辺をウロウロ歩いていたり、運が良いと後のオリンピックチャンピオンやら世界チャンピオンの方から話しかけてきたりするのです!別の廊下では、次の競技に登場するペアがいきなりその辺の客席でリフトの練習を始めたりしますが、それを一般客はキャーキャー言うでもなく、駆け寄って握手するでもなく、さも日常の光景であるかの如く見守っているという、これまた日本では考えられないような不思議な世界が展開されていました。

そんな中で、私は南里さんと廊下で鉢合わせたのでした。ちょうど男子シングルを観戦し終えた私は、次の競技まで間があると思い廊下に出たところ、向こうからコロコロ(スケート靴が入った小型スーツケース)を引いて歩いてきた若い日本人男性が目に留まりました。それが、何と南里康晴さん本人であることに気付いた私は、心の中で呟いたつもりが、思わず「あ、南里さん?」と声を発してしまいました。すると、その青年は、私の前でピタリと立ち止まり、「はいっ!そうですが…」と大きな声で返事をしてきたのです。まるで、以前私がコラムで取り上げた、ドイツ・ドルトムントで無良崇人選手に声をかけた際のエピソードとソックリですが(→番外編(1)…無良崇人くん、エリック・ボンパール杯優勝おめでとう!フィギュア日本男子、超激戦区の時代へ)、時系列でいうならこの南里さんのエピソードの方が先です。つまり、南里康晴さんというのは私にとっては、直接お話しをさせていただいた記念すべき初めてのフィギュアスケーターなのです。(翌日、今度は川口悠子さんとも直接お話しさせていただきました。それにしても、無良さんといい南里さんといい、名前を呼ばれると教師に当てられた生徒のように無条件に「ハイッ!」と直立不動で返答してしまうのは、フィギュアスケーターだからとか海外で聞く日本語の安心感というよりもむしろ、小学校から条件づけられた日本人の習性と呼ぶべきものなでしょうか?)

カナダで実際に会った南里康晴さんという人物もまた、この大会で縁あってお話しさせていただいた他のスケーターと同様、他人との垣根のとても低い、とても親しみやすく話しやすい人物でした。先ほど挙げたフライデーには、プロ転向した南里さんがアイスショーの傍ら「オフの日には居酒屋でアルバイトをしている」という記述が出てきますし、インターネットでは安藤さんとの「格差」に言及する報道も目にしますが、逆に私はこの「南里さんの居酒屋バイト」というくだりに妙にナットクするものがありました。というのも、フィギュアスケート観戦も初めてならフィギュアスケーターと口をきくのも初めてだった4年8か月前の”初物尽くし状態”の私に、「ドイツから来たんですか~!ドイツは行く予定ないな~!でもボク、コレ(2008年スケートカナダ)が終わったら、来週はザグレブに行くんですよ~!ザグレブ、来ますぅ~?(笑)」などと、まるで旧知の人間をおちょくるかのように滑らかに、時には冗談も畳みかける南里さんは、「演技直後でお疲れになっているスケーターを足止めしてしまったのではないか」と申し訳なく思っていた私の緊張をほぐしてくれたという意味でも、とても心優しく思いやりの深い人物であろうことを、このとき強く印象づけられたからです。あれからかなりの歳月が経過しましたが、彼のあの時のキャラが不変であれば、きっと今でも居酒屋では素晴らしい接客をされることでしょうし、人を癒す力はピカイチだと思うので、そんな彼が今回の騒動で居酒屋バイトそのものを継続しにくくなるのであれば、それもまたもったいない気がします。

ちなみに、2008年のスケートカナダの客席は、今から考えると不思議なほど、極端に日本人ないしアジア系の観客が少なかったように記憶しています。見渡す限り白人だらけ、聞こえてくるのは英語をはじめとするヨーロッパ系言語のみ…というのは、その後に私が顔を出した他のどのフィギュアスケート大会と比べても、異例だったと思い返されます。市街中心部からバスを2本乗り継がないとたどり着けないという、開催会場のあまりの辺鄙さが敬遠されたせいだったのかもしれませんが、逆にそのような大会であったからこそ、南里康晴さんや川口悠子さんと思わぬ「日本語トーク炸裂!」がはずむことになったのかもしれません。つまり、彼らが単純に日本語が恋しかったところに現れたのが、たまたま私だった、ということだったのでしょう。

なお、今年1月にザグレブで欧州選手権を観戦した私は、「ザグレブ、来ますぅ~?」発言の翌週にはクロアチア入りしたという南里さんがここで演技を披露したのかと、感慨をもって試合会場「ドーム・スポルトーヴァ」を見つめたことは言うまでもありません。また、このザグレブ行きのついでに調べて遅ればせながら知ったのは、あの時の南里さんが2008年の「ゴールデン・スピン・オブ・ザグレブ」男子シングルで何と優勝の栄誉に輝いていたということでした!そうと知っていれば、(ドイツからはカナダよりもはるかに近い)ザグレブでの南里さんの演技を是非見てみたかったと、今更ですが地団駄踏んでいます(笑)。

今回の南里康晴さんに関する過熱した報道は、彼という一人の青年の未来にどのような影響を及ぼすのか、とても懸念されます。フライデーに掲載された写真の中には、彼と安藤美姫さんに荒川静香さんを交えたスリーショットがあるのですが、その中で唯一彼だけがマスクを着用していません。さらによく見れば、彼はマスク姿の安藤さんの横にいるショットでも、マスクをしていません。この一連の写真を見る限り、あの4年8か月前の南里さんの「距離感ゼロ」ともいうべき親しみやすいキャラが今もおそらく寸分も変わっていないであろうことを、勝手ながらも私は確信するのです。

「アイスショー出演」と「居酒屋バイト」以外の話が今のところあまり具体性を帯びては聞こえてきていませんが、南里康晴さんにはやはり、引きつった顔での週刊誌への登場よりも、何か別の形での「笑顔炸裂!=SMILE EXPLOSION!」の方がはるかに似合うというのは間違いありません。彼はなんといってもまだ27歳の若さ。私も目の当りにしたその「誰とでもすぐに打ち解けられる」「相手の気持ちを察することに長けている」「周囲を和ませる」といった才能をフルに生かして、後進の指導や振付ひいては審判などのスケート関連での新境地へと飛び出すのも良し、先週紹介したタンヤ・シェフチェンコさんのようにいきなり俳優・歌手デビューしてしまうのも良し(笑)(→フィギュアスケーターの人生設計を考える(1)…タンヤ・シェフチェンコ(ドイツ)の場合)、自分の魅力を存分に生かせる道を歩んで行ってほしいと、私は心より願っています。



(上の写真は、2008年スケートカナダのペア2位となったジェシカ・デュベとブライス・デイヴィソンの二人。医師の方ならこの写真だけでもピンとくるかもしれないが、左端の男性が用いているボールペンは、私が貸した日本の某製薬会社の商品名が入っているおなじみの三色ボールペン!カナダ人スケーターと日本の製薬ボールペン…滅多にお目にかかることのない凄い組み合わせではある(笑)。なお、この二人は2008年世界フィギュア銅メダル、2010年バンクーバー五輪6位、2011年3月に男性のケガが基でペア解消、女性は今年に入って引退表明→コーチの道へ。余談だが、この大会の観客が白人だらけというのは、この写真の背景にもあらわれている)
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