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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2013/04/12

「早生まれはどこへ行った?プロジェクト」第一弾…ジャニーズ事務所所属タレント編

先週までは、競技者に占めるいわゆる「早生まれ」の選手比率のデータを通して、スポーツ育成の日独比較を試みてきました。「早生まれの巣窟」とも呼ぶべき日本のフィギュアスケート男子シングルと、「遅生まれ偏重」「早生まれ受難」の日本の高校野球やサッカーとでは、誕生月別選手数データが実に好対照であること(→異例の高さ!”早生まれ率”が示唆するフィギュアスケート選手の資質)、そして学校制度における学年とスポーツ育成制度における所属カテゴリーが全く連動しないドイツにおいても(→ドイツ教育事情…ドイツ版「早生まれ」”Kannkind”から容赦なき落第まで)、サッカー界にはその育成のかなり早い段階から「早生まれ受難」の傾向が日本同様に存在するらしいこと(→学校制度と完璧に切り離されたドイツのスポーツ育成制度)などを取り上げました。

ドイツにおける「遅生まれ優遇」「早生まれ冷遇」という現象については、下記のシュピーゲル紙の記事に、その程度や、それがドイツに限らず世界各国にみられること、そして、そうなる理由についての考察が述べられていますので、下記に箇条書きにして要約します。

Spiegel Online (2008年6月29日):「次世代キッカー:どうしてドイツサッカー連盟は秋生まれの子を差別するのか?」"Nachwuchskicker : Warum der DVB Herbstkind diskriminiert"

<本文抜粋>
・サッカー選手の場合、子供の頃からのキャリア(地元地区選抜への代表入り)は大きな意味を持つ
・しかし、アウグスブルグ大学のラメス氏の調査によると、12歳から18歳ではそのような選抜選手は誕生日が年度の前半にあることが圧倒的に多い。(筆者注:ドイツサッカーにおける育成リーグの年度の切り替わりは1996年までは6月30日、1997年以降は1月1日)
・ラメス氏いわく「これはチーム組織の誤りであると同時に育成システムそのものの誤りでもある。選手の遺伝学的な資質の高低が、誕生月と連動して分布しているはずがないし、まして才能の高い者が年の前半生まれに集中することもありえない」
・調査対象全体では1月生まれが全体の12%以上なのに対し、12月生まれは全体の5%。地区によってはもっと極端なところもあり、Mecklenburg-VorpommernのU-13とU-14の某チームでは年の前半生まれが全体の9割であった。
・より競争開始年齢が早くなればなるほど、誕生日の早い者の方が体格やパワーもその分だけ先に発達しているため、後々有利。そうなるのは仕方ない面もあるものの、「すべての人に公平なチャンスがあるわけでないのが欠点」
・この傾向は他国でもみられる:スペイン、イタリア、ポルトガル、フランスでも、いわゆる早生まれはトップクラスの練習機会へのアクセスが明らかに少ないというデータあり。成長が止まった時点で身についているテクニックが後の(競技人生の)成功の決定的要素であるため、(この初期でのアクセスの偏りは)後々に大きく損失となって響いてくる。


いかがでしょうか。以上の記述は、日本の野球やサッカーについて語った記事と言われたらそのまま信じてしまいそうなほど、世界各国共通のスポーツ育成制度の宿命といっても良いでしょう。小さい子供であればあるほど、1年の生まれの差は計り知れない大きなものがあり、その体格や発達面から学年内競争を有利に運べば、出場機会の増多や将来を嘱望されている実感は、後々のキャリアの差ともなって本人に跳ね返ってくることでしょう。特に、「成長が止まった時点でのテクニックの差が後々の競技人生を決定づける」という指摘は重要で、プロ野球のスカウトなどの世界での頻出単語でもある「伸びしろ」にはタイムリミットがあるという厳然たる事実を改めて認識させられます。

ただ、このシュピーゲル紙の記事には一つ、重要なポイントが抜けているように思います。それは、世界各国でサッカー界から冷遇されているとされる「早生まれ」の人々が、それでは一体どこへ行ったのか…という追跡です。別に彼らはこの世からいなくなった訳ではないのですから、単純に別の分野に流れていると考えるべきです。

日本においては、男子の間でトップクラスの人気を誇る野球とサッカーにおいて、なかなか「早生まれ」の人々は不利な状況に置かれていることは、これまでのコラムでも述べた通りです。往年の名曲に「花はどこへ行った?」(Where have all the flowers gone?)なんてのがありましたが、こちらは言うなれば「早生まれはどこへ行った?プロジェクト」でしょうか。その「早生まれ」の流れつく先を最近一つ発見しましたので、コチラにさっそく提示したいと思います↓。

 

それではクイズです。上の表は、どういう人たちの誕生月別グラフでしょうか?ちなみに、調査対象人数は77人と少なめのスタディなので、バラツキが大きくなり確定的なことは言いづらいということを先に断わっておきます。しかし、「1月生まれ」や「3月生まれ」の人数が2008年夏の甲子園の高校野球において「4月生まれ」の3分の1程度、2008年高校サッカーの場合は3分の1~4分の1にまで落ち込んでいたこと(→異例の高さ!”早生まれ率”が示唆するフィギュアスケート選手の資質)を考えると、上のグラフにおける1月・3月生まれの比率の高さは大いに目を引くものがあります。

さて、それでは正解です:これは2013年4月現在、ジャニーズ事務所に所属しているタレントの誕生月別人数分布グラフです。こちらのホームページに掲載されているデータを解析しております↓。(注:ジャニーズJr.および関西ジャニーズJr.は、このサイトに個人プロフィールの掲載がないこと、現時点で100人を優に超えるとされる全メンバーの正確な把握が外部サイトを以てしても難しいこと、その外部サイトで生年月日の掲載のないメンバーがかなり多いことなどから、データの一貫性と信頼性が失われると判断し、解析対象から外しました)

Johnny's net: ARTISTS 各アーチスト最新活動状況のお知らせ

それでも、このデータは実に興味深い結果を示しています。ジャニーズにはあまり詳しくない私ですが、はるか昔からこの事務所の男性アイドルの方々に対しては、小学生くらいの若い頃にスカウトされたり研究生となったりした上で、未来の大スターを夢見てレッスンを積み重ねてきたという、年齢以上の長い芸歴を誇るエンターテーナー集団という認識を持っています。そんな彼らをスカウトするのは社長のジャニー喜多川さんだったり他の事務所スタッフだったりするのかもしれませんし、彼らが自ら売り込んで応募してくるケースもあるのかもしれませんが、今回の誕生月データを見ていると、(それがジャニー喜多川さんの個人的な好みなのか、それとも事務所の戦略的スカウティングの結果なのかは別として)、男性アイドルたる資質として「小さくかわいらしいこと」をこの事務所は重視しているであろうことが、グラフの裏側から微妙に透けて見えてきます。若い男女から見れば「濡れた子犬のような」、年配女性から見れば「うちの息子にしたいような」などとよく形容されますが、彼らの武器はそれだけではなさそうです。例えば、同じ学年の中からスカウトしてくるのであれば、より若くて体が発達未完了な方が楽器演奏の習得など有利でしょうし、体が小さく軽量であるからこそ可能なアクロバティックなパーフォーマンスなども、「遅生まれ軍団」よりも「早生まれ軍団」の得意とする分野であろうことは、フィギュアスケートにおけるジャンプの有利不利とも共通する、医学的見地からも合理性のある話だと思われます。さらには、メジャースポーツ界による乱獲にも近い人材掘り起しの死角となってきたことも、あながち無関係ではないでしょう。

そういえば、かつてのジャニーズ系タレントといえば、田原俊彦さん(2月生まれ)に代表されるレベルの高いダンスや、光GENJIの「ローラースケート」、少年隊などの「バック転」「バック宙」も思い出されます。オートレーサーに転身した森且行さん(2月生まれ)もまた、国民的人気のSMAPを辞してまでも新しい人生へ、というその不退転の決断を後押しした背景には、早生まれの利もあったのかもしれない…と考えることもできます(脳神経系の柔らかさという観点からも、同学年の4月生まれよりも10か月若い2月生まれであることは、新しい分野に踏み出す上では圧倒的な強みであったはず)。

早生まれ偏重の世界もあれば、早生まれ冷遇の世界もある…これは、結局は「小さい方が有利な世界」と「大きい方が有利な世界」の振り分けに他ならず、そのコンセプトは「適材適所」にあるのだと思われます。ただし、子供の頃の「適材適所」は必ずしも成人してからの本人の資質と連動してくれないという所に、冒頭のシュピーゲル紙の記事も嘆いているようなジレンマがあるのです。ジャニーズ事務所のタレントの中には、早生まれでも最終的には長身になる者もいれば、遅生まれでも小柄な者もいるでしょう。小さい頃は可愛かったのに、長じて「こんなはずじゃなかった」と事務所を去る羽目になった者も相当いたことでしょう。そもそも、人気商売である以上、「小さければよい」「かわいければ良い」という性質のものでもないはずです。ついでに言えば、11月生まれが突出している理由も不明です(単なる偶然の可能性が高いのか、何らかの相性の問題か?)。それでも、「早生まれ」の人材の受け入れ先の有力候補の一つとして、今後の「ジャニーズ事務所」の顔触れや動向は、野球やサッカーとの対比といった意味も含めて、注目に値すると思うに至った私であります。

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