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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2013/01/18

9年遅れの訃報 (1)…香港のアベニュー・オブ・スターズ(星光大道)での衝撃

先週はマカオでのワンちゃんとの涙の再会(?)について述べましたが(→大食いロケ地再探訪(3)…涙の再会!コロアン島のワンちゃんからエッグタルトまで)、人生には新しい出会いもあれば悲しい別れもあります。個人的な話で恐縮ですが、私のもとには新年早々から、親交のあった人物の急死の報が日本から立て続いており、それも自分と年齢の近い人ばかりで、多大な衝撃を受けております。あらためて、人の命には限りがあるということ、「その日」を予見することは困難ということ、そして、誰もがいつまでも若いのではなく、自分に残された時間もまた意外に短いのかもしれないということを、亡き彼らからの命懸けのメッセージとして深く胸に留めています。

しかし、思い返せば昨年の12月に訪問した香港でも、私はある種の”訃報”に接しておりました。それも、実に9年遅れで届いた訃報…というのが今回のお話です。

その日の私は、香港の一大観光スポットである「アベニュー・オブ・スターズ(星光大道:Avenue of Stars)」を歩いていました。ここは、ハリウッドの「ウォーク・オブ・フェーム(Walk of Fame)」の香港版と言えば分かりやすいでしょうか。ちなみに、ハリウッドのウォーク・オブ・フェームといえば、映画・テレビ・音楽・ラジオ・演劇の五つの分野においてエンターテインメント界に貢献した人物ないしキャラクターを、ピンク色の星型プレートにその名を記して舗道にズラリと埋め込んで顕彰している有名な観光名所であり、マイケル・ジャクソン(2009)やエリザベス・テーラー(2011)、最近ではドナ・サマー(2012)の訃報の際、彼らの星型プレートとその周りに供えられたたくさんの花やカードの映像を思い出します。1958年にハリウッドの商工会により導入されたというウォーク・オブ・フェーム、今や既に2400以上の星が認定されており、その中には一人で何個もの星を獲得するマルチタレントもいれば、人間でない「ミッキーマウス」「くまのプーさん」「ゴジラ」などもいたりします。

そんなハリウッドに対抗したのか、2004年4月に香港の九龍半島のウォーターフロント、ビクトリア・ハーバーを望む尖沙咀(Tsim Sha Tsui)プロメナードに堂々とオープンしたのが、こちらのアベニュー・オブ・スターズです。私が訪れた日は、このようにかなりの人でにぎわっておりました↓。

 

右端に写る香港出身の世界的アクションスター、ブルース・リー(李小龍 Bruce Lee)の銅像が、ビクトリア・ハーバーや背景の高層ビル群とよく調和しています。そのブルースに対し、われらが岩手のスター(?)こと、IBC岩手放送のオラ君も、例によって例の如くその小さい体と短い手足で果敢に勝負を挑んでおりました(笑)↓。

ブルースと戦うオラ君を横目に、ふと足元に視線を落とせば、このようなプレートがズラリと並んでいます↓。

 

こちらは、ブルース・リーに次いで「香港発の世界的スター」としての地位を確立していると言ってもよい、そして最近何かとその発言が話題になっている、あのジャッキー・チェン(Jackie Chan:成龍)のプレートです。その星型プレートの横には、ジャッキー本人の手形があるのが分かります。この「手形」というのは、アメリカのウォーク・オブ・フェームにはない特徴です。それにしてもジャッキー・チェンの凄いところは、彼の星型プレートがハリウッドのウォーク・オブ・フェームにもあるということです。アメリカでも香港でもダブル殿堂入りを果たしている俳優の発言内容が、ズバリ、アメリカ批判だというのだから、その胆の据わりようは筋金入りです。

さて、遅ればせながら本題です。皆さんはこちらのプレートに書かれた「梅艶芳」「Anita Mui」「Mui Yim Fong」という名前をご存知でしょうか。

 

アニタ・ムイこと梅艶芳は1963年生まれの香港の実力派シンガー兼女優で、香港での歌手デビューは1982年ですが、ちょうど80年代中~後半に日本のヒット曲のカバーを数多く歌った関係で、日本でもその頃ちょくちょくメディアで取り上げられていました。私が彼女を知ったのは1985年、ちょうどレコードからCDへ切り替わろうかという時期に、確か六本木のWAVEで彼女のCDを偶然見かけて購入して以来、それはもうすっかりハマってしまったのでした。(当時のヒット曲”SHOW ME”でも知られる)森川由加里さんにちょっと似ているようにも思えるボーイッシュな可愛らしさと、宝塚の男役トップのような肩パッド入りパンツスーツ姿の近寄りがたいオーラ、そして日本にはちょっといないタイプのド迫力でパンチの効いた歌唱法が、その独特の輝きを作り上げている…そんなカッコいい姉御風の女性でした。その後も私は、多分90年代初め頃まで、目に触れたアルバムはマメに購入するという大ファンであり続けました。

それが、国家試験・就職・研修医生活と続く人生の中、外界のニュースに全く触れることのできない超多忙な時期へと突入した私は、必然的にアニタ・ムイの動向も追うことはできなくなりました。そして、いつの間にか彼女のことは忘却の彼方へ、CDは自宅でホコリを被ったまま、年月だけがいたずらに過ぎていきました。

それが、二十年以上の時を経て、機会あって念願の香港訪問が実現、そしてアベニュー・オブ・スターズ(星光大道)で超久しぶりとなる彼女の名前を目にしたのです。普通なら舞い上がるでしょぅし、若かりし頃の記憶も芋づる式に鮮やかに甦ってこようかという所です。ところが、プレートの前に立つ私の喜びを瞬時に吹っ飛ばし、真っ青にさせたのは、こちらでした↓。(オラ君ではありません、念のため)

 

該当部分を拡大してみました↑。ジャッキー・チェンのプレートには押してあった手形が、そして、よほど大昔のスターでない限りだいたいは押してある手形が、アニタ・ムイのプレートにはありません。金属製の星形マークが中央に埋め込まれているだけです。「手形がない!」と気づいた瞬間、思いっきりイヤ~な予感がして速攻で調べてみたら、何のことはない、やはり彼女は亡くなっていました。2003年12月30日、子宮頸癌であることを公表してからわずか3ヶ月での急死、享年40歳という若さだったそうです。2003年後半といえば、私の家族にまさかの癌再発が判明し家中てんやわんやとなった時期と重なり、日本のニュースすらまともに見る余裕がなく、ましてまだ若い香港のスターのあまりにも早い急逝など、想像すらできませんでした。

奇しくも彼女の死は、アベニュー・オブ・スターズがオープンする4ヶ月前でもあり、「殿堂入りは決まれども手形が間に合わず」だったようです。アベニュー・オブ・スターズは香港において2003年10月2日を皮切りに何度か”手形取りセレモニー”を行ってきたのですが、よっぽど病状が重かったのか、そこにアニタが登場することは叶いませんでした。なお、同様の理由で、レスリー・チャン(Cheung Kwok Wing張国栄:2003年4月1日自殺)の手形もここにはありません。香港のエンターテインメント界の二大巨星とも言える2人が揃って2003年に亡くなったというのはそれはそれで驚きの事実なのですが、それよりも、(あまりよく知らなかった)レスリー・チャンの当時の自殺報道は多少認識していたにもかかわらず、あんなに大ファンだったアニタ・ムイの死を自分が今の今まで知らなかったという情けない事実の方が、私に与えた衝撃はメガトン級に大きかったのです。

なお、ちょっと話が脱線しますが、後からじっくり調べたところ、「手形がない」イコール「訃報?」という連想は、どうやら大いなる誤解だったようです。

香港のアベニュー・オブ・スターズの公式ホームページを見ると、ここには2013年1月現在、1番の黎民偉(Lai Man Wai)から117番の謝霆鋒(Nicolas Tse Ting Fung)まで、117名が「星」を認定されているのですが、1番の黎民偉が1893年生まれで1953年死去ということからも分かるように、番号が早い方々はほとんど故人というより歴史上の人物という感じで、19番までのプレートのうち手形があるのは1名のみ、というのは不思議でも不吉でもありません。そもそも、戦後生まれが登場するのが45番以降であり、ここからは物故者の比率がグッと下がります。有名なところではブルース・リーが53番、レスリー・チャンは65番、アニタ・ムイは69番です。83番までに限定すると、「存命イコール手形あり」「手形がないのは故人」は概して正しいのですが、例外も相当数あります。例えば、存命なのに手形が入っていないケースはこの中に7名ほど(百歳前後の高齢者、あるいは高齢ではないものの多忙等の理由で手形が後手に回っているケース)、逆に既に亡くなっているのに手形がある方が4名ほど確認することができます(いずれも80~90代の高齢者で、手形を取った4-6年後に死亡)。中には、「もう少し体調が上向いてから取りましょうか?」と余裕を見せている間に手形を取り損ねたケースも多々あったのではないかと想像します。こうして改めてみていると、手形の話にとどまらず、何事も後回しにするのは良くないという教訓がジワジワと説得力を持って迫ってきます。

さて、訃報に接したら、亡くなった方を偲ぶのは残された者にとっては基本中の基本です。ということで、来週はその9年遅れの訃報の主、アニタ・ムイについて、少し記憶を辿ってみたいと思います。

<参考サイト>
Avenue of Stars 星光大道 Floor Plaque Sequence (英文:殿堂入り人物の一覧と略歴あり)

The Hollywood Walk of Fame – Jackie Chan (英語:ジャッキー・チェンの略歴やプレートの埋め込まれた位置などの情報あり。Search欄から他のスターの検索も可能)

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