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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2012/12/07

番外編(1)…無良崇人くん、エリック・ボンパール杯優勝おめでとう!フィギュア日本男子、超激戦区の時代へ

この原稿が掲載される頃は、2014年冬季オリンピックの開催予定地であるロシアのソチにおいて、フィギュアスケートのグランプリファイナルがちょうど始まったばかりの頃ではないかと思います。ということで、今週は通常の大食いコラムをお休みして、先日パリで観戦してきたフィギュアスケートのグランプリシリーズの一つ、フランス大会「エリック・ボンパール杯」(Trophée Eric Bompard)について回想してみたいと述べたいと思います。

この大会には、当初参加予定だった女子シングルの安藤美姫さんが参加を取りやめたこともあり、”日本人”がたった二人という、日本人観客としてはちょっとさみしい大会でありました。アレクサンドル・スミルノフとペアを組む川口悠子さんは、日本人ですがロシア国籍を獲得、ロシア代表として出場しています。国名欄に日の丸がついている選手となると、男子シングルの無良崇人さん(中京大学)一人です。日本フィギュアスケート界の選手層の厚さを考えると、これも巡り合わせということでしょうか。

そんな少数派の日本人スケーターが、この大会では何と2人とも優勝しました。同じ日本人としてうれしかったのはもちろんですが、それ以上に驚きが大きかったのは、今回がグランプリシリーズ初制覇となった無良崇人さんと私は、以前お話ししたことがあるからです。

ちょうど今から遡ること一年前、2011年12月4日に私はドルトムント(ドイツ)で開催されたNRW杯(Nordrhein Westfalen Trophy)を観戦しておりました。そこで、夕方から始まるフリースケーティングの本番に備え、廊下でiPhone(?)をいじりながらストレッチ中だったのが、無良選手その人でした。あまりにもローカルな大会で周囲にほとんど人もおらず、思わず「無良さん?」と反射的に声をかけてしまったのですが、「はい、そうです!」と、教師に当てられた生徒のような口調で返事されたものだから、こちらが驚きました。かくして、一線で活躍するスケーターと井戸端会議のように廊下でフランクに語り合うなどという、予想だにしなかった貴重な経験に恵まれたのでありました。ただ、この日が日曜日で電車の本数が極端に少ないため、終電に間に合わなくなるという理由で、彼の実際の演技を見ることは残念ながらできませんでした。そして、本人に「是非とも表彰台に!」と直接ハッパをかけて会場を去ったのですが、彼がこの大会で4位に終わり表彰台には届かなかったことを帰宅後に知りました。

さて、あれから一年が経ち、再び無良さんと遭遇となりました。前回は「直接お話ししながら演技見れず」で、今回は「直接お話しできずも演技は見れる」と、ちょうど正反対のシチュエーションです(笑)。ショートプログラムで彼は、ナポレオンか闘牛士かと思わせるような西洋風衣装で登場、その横には元フィギュアスケーターで現在は彼のコーチを務める実父の無良隆志さんの姿が見えます。

 

↑ちょうど父が息子からミネラルウォーターを受け取る瞬間です(ボトルのデザインから、水の銘柄はVittelであることがわかります)。視線は別でも目指す方向は同じ…父と子の信頼感がよく出ているひとコマです。よく見るとこの写真、無良パパのすぐ右隣に佐藤有香さん(アメリカのジェレミー・アボットのコーチ)、そして写真右端には日本でもすっかりお馴染みのニコライ・モロゾフ氏(フランスのフローラン・アモディオのコーチ)の姿も見えます。

こちらは、演技が終わりキスアンドクライで得点を待つ無良親子です。ショートプログラムを終えてアボット選手に次いで2位の好位置につけました。それにしても、無良父子は顔の感じがよく似ているのと、2人並ぶと互いの雰囲気がよく調和しており、独特のケミストリーを醸し出しているのが本当に素敵です。

そして、翌日のフリー。今度の衣装は、西洋騎士風から一転して、和のテイストで攻めてきました。私の周囲の観客からは「ミツバチか?」(l’abeille?)の声がチラホラ挙がるも、曲名が「Shogun」ですので、武士か隠密がテーマしょうか。まあ、ミツバチでないことだけは間違いないでしょう(笑)。

スタートのポーズかななかなか決まっています(左上)。サブちゃんが出てきそうな尺八の音色から始まって、和太鼓や三味線など種々の和楽器を駆使して展開される独特の音楽に乗せて、四回転ジャンプや連続ジャンプにトリプルアクセルが次々とバンバン決まっていきます。途中で小さなミスが出たものの、全体としてはとてもいい流れです。さらには、父の見守る前でたくましく刻む、後半のステップ・シークエンス(右上)。これは高得点が出そうだと、会場のボルテージも最高潮に達します。

そして、最後は弓を引くようなポーズで演技終了!お父さんも大拍手する素晴らしい演技でした。ドイツの放送局のアナウンサーも、「彼がこれまでの競技人生で見せた全てのフリー演技の中でも最高の出来」とコメントしておりました。

得点を待つ間の父子の笑顔にはリラックスと安堵感が漂い、その横のリンクサイドに立つ佐藤有香コーチと氷上の最終滑走者のアボット選手の緊張した表情と対照的です。

得点が発表された瞬間です(左)。フリー単独の得点も総合得点も、いずれも彼の競技人生におけるパーソナルベストであり、彼はパパから受け取ったミネラルウォーターを吹き出さんばかりに喜びを溢れさせています。ちなみに、ミネラルウォーターの銘柄は2日連続でVittelであります。ひょっとして、前日の出来栄えが非常に良かったことから、あえて同じ銘柄の水を飲むことで縁起をかついだのではないかと、私は勝手に想像していました。高校野球の世界だと、縁起かつぎでソックスを変えないとかヒゲを剃らないといった話は頻出ですが、フィギュア界にもそういうのがあるのかもしれないと、この無良親子を見て初めて気になったのでした(単にVittelの大ファンというだけだったりして…笑)。

表彰式では、シルバー地に水色の青い「1」 の入った最も高い台の上に、無良崇人選手が胸を張って立つ姿がありました。ちなみに、「3」の台はどうも重さが足りないらしく、選手が乗ろうとすると台自体が滑ってコケそうになってしまうようで、3位選手は全員苦労していました。中でも、男子シングル3位のフローラン・アモディオ選手が台からあやうく落ちそうになった光景は、とてもコミカルで観客一同大ウケしていました(写真左上)。アモディオ選手のキャラクターがよく表れており、チャップリンにも通じるエンターテイナーとしての高い資質を感じさせるワンシーンでもありました。ちなみに、国旗掲揚は布の旗ではなく、電光掲示板上の表示として掲揚される仕組になっています。

なお、ドイツで帰宅後に、改めて予約録画してあった映像を観たのですが、そこで展開されるドイツの放送局のアナウンサーと解説者の会話がまるで漫才でありました(笑):

「(日本男子の激戦区ぶりを)想像してみて下さい。ハニュー!コヅカ!オダ!タカハシ!マヒーダ!ムラ…!」
「ありえない」
「そう、ありえないほど豪華だね!」

「(この演技で)タカヒト・ムラは本物のショーグンになった。そして、(その彼を出迎える)彼の父親は…タカハシ・ムラです!」
「違うよ!タカハシじゃなくて、タ・カ・シ!」

もう、タカハシだのタカシだの、ドイツ人には何が何だか訳が分からなくなっております(笑)。しかも、小塚崇彦選手はタカヒコ、無良崇人選手はタカヒトと、これまた紛らわしく、新たな混乱が発生するのは時間の問題です。そして極めつけは、町田樹選手(関西大学)の苗字Machidaがドイツ語圏では「マヒーダ」と読まれてしまうことです。私などは逆に、これが町田選手のことであると気づくのにやや時間がかかり、最初はスペイン人選手かと思いました。以前のコラムで説明した「ツェンタカータ」の一件をつい思い出してしまいます(→緊急寄稿(6)…「ツェンカータ」に思う国際報道の難しさ)。今年の中国杯で優勝、スケートアメリカで3位と、二大会連続の表彰台によりグランプリシリーズ出場を決めている今年好調な町田樹さんですが、今頃ドイツのスポーツ中継で「マヒーダ」を連発されているのではないかと、ちょっと心配です。

さて、無良選手の男子シングルのみならず、川口悠子・スミルノフ組のペアも優勝し、たった2人しかいない日本人が2人とも表彰台の頂点を飾るという、日本人の面目躍如となった今年のエリック・ボンパール杯ですが、実はもう一つ気になったことがありました。これについては、次回に続きます。


<参考サイト>
NRW Trophy for Figure Skating 2011 SENIOR Men Result

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