Nagoya Talents' Network - タレコラ

Dr.片山晴子 RSS Feed

金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2012/11/23

大食い本選マカオ回想録(3)…「空気質量指数」って何?大食いロケと大気汚染との関係

本年9月30日に無事オンエアされたらしいものの、私がいまだに見ることができていない『元祖!大食い王決定戦inマカオ』(TV東京)ですが(笑)、そのロケの撮影期間中、背後に隠れて番組前面に出てこなかった裏テーマがありました。というより、それが裏テーマであったことに撮影終了まで気づかなかった、というのが正確なところかもしれません。その裏テーマ、「大気汚染」が今週のテーマです。

当番組の選手及びロケ隊一同がマカオに到着したのは8月28日未明で、寝る間もそこそこに当日朝からロケ開始となったのは、前回記事にも一部述べた通りです(→大食い本選マカオ回想録(2)…華麗なるニアミス!国家金牌運動員と大食い軍団atギャラクシー・マカオ)。そして、この日の朝、ホテルで身支度しつつも、いつものように朝の情報番組を観ていたところに突然出てきてビックリしたのが、このような画面だったのでした。

 

何じゃコリャ?と一瞬思ったこの画面、「マカオ(澳門)天気報告」と題して「8月28日の予測」とやらが載っています。それも、いわゆる日本で見るような天気予報とは違い、ここで予測されているのは「空気質量指数」です。しかも、「路辺」「高密度住宅区」「一般性」の三区分に分かれています。それぞれの「空気質量指数」とやらは「路辺」で最も高く、「高密度住宅区」ではそれよりはやや低く、最も低いのは「一般性(?)」となっているものの、全ての数値に対して「不良」のコメントが容赦なく付いております。昨今では北京の光化学スモッグ等の大気汚染報道もよく知られていますが、中国全土における大気汚染という深刻な問題の存在を考えれば、これはマカオの大気汚染を示す指標であり、このような数値が当地では連日、日本の毎朝の天気予報のような感覚で当たり前のように報道されていることが伺えるとともに、カルチャーショックを誘います。

さて、翌日の8月29日もまた、朝のニュースにはこのような画面が登場しました。

今度は香港の放送局のニュースからとってみました。香港はマカオの北東70kmの位置に存在し、間には海しかないので、その「空気汚染指数展望」もまた、マカオにいる者にとっては十分に参考にできるはずです。ここでの表示は「一般観測站」と「路辺監測站」の2区分のみであり、その汚染の強さに応じた色分けがなされています。マカオと同様、相変わらず「路辺」が最も汚染が強く、一般の観測所ではそれより低いようです。(なお、「監測」とは”監視”と”測定”を合わせた用語と思われ、「站」は日本語でいう”ステーション”の意味。「路辺」の測定場所は、おそらく道路沿いで自動車等の排気ガスの影響が大きいと推定される)

では、この頃の大食いロケのスケジュールを合わせて振り返ってみましょう。8月28日は当番組海外ロケ恒例の「胃の休息日」、つまり大食い選手に大食い競技による精神的・体力的負担がかからないよう配慮された日でありました。この日は、「マカオタワーでスカイウォーク体験」や「シティ・オブ・ドリームスでドラゴンショー鑑賞」等、観光やアトラクションを楽しむ光景の撮影に費やされました。さらに翌日の8月29日、お昼頃には準々決勝「ジャンボ小龍包45分勝負」、夜の20時半頃には準決勝「あんかけチャーハン45分勝負」と、大食い競技が2試合行われました。そして、ここが重要なのですが、この2日間のマカオの天候は「晴れ」だったのでした。

ところが、さらにこの翌日、決勝戦当日となる8月30日の朝の地元ニュース番組の画面をご覧ください↓。何かが違うことに、すぐに気づかれるのではないでしょうか。

マカオタワーや高層ビル群を覆う爽やかな青空と白い雲をバックに、それまでとはあまりにも異なる「空気質量指数30-75」という、目を疑うほどの低い数値と、その横のほのぼのとした緑色のニッコリマークに、思わず固まってしまう私でした。いくら大気汚染で有名な国であっても、空気が汚くない日もあるのだということを、この日のニュースで改めて認識したのでありました。これなら決勝戦の「醤油豚骨ラーメン」は、清涼で美味しい空気の下で、最高に美味しく食べられそうです(笑)。

ちなみに、一日にして空気質量指数が大幅に下落した理由は明白でした。実は決勝戦前夜、雨が降ったのです。このことは、前日8月29日の香港のテレビの「空気質量指数展望」の写真の中で実は予告されていたとも言えます。というのも、上の方に降水確率を示す「85%」という数字と「晴れのち雨」と思しきマークが見えているからです。それまではロケ日和の晴天に恵まれていたものの、乾燥した空気中に浮かぶ排気ガスや粉塵に土ぼこりなどが、近隣の道路や工事現場、ひいてははるばる中国本土からも、風に乗って運ばれてきているのでしょうか。したがって、晴天であればあるほど、まるで霞を被ったような光景になっていくという、奇妙な現象がそこにはありました。それが降雨によりその手の粒子状物質が一気に地面に叩き落され、翌朝の雨上がりのマカオに、ようやく透き通った新鮮な空気がもたらされたのでした。

左上の写真は「胃の休息日」に市内のペンニャ教会から一望したマカオ中心部、右上の写真はマカオタワーでのスカイフォーク中にお得意のパントマイムを披露する当番組司会の中村有志さんです。それにしても、これらの写真を改めて眺めてみると、背景の空気の汚さが際立っています。中村さんの背後の景色がほとんどマトモに見えていません!マカオ市民にとって、毎朝「空気質量指数」をチェックするのは、日課であって当然だと実感したのでした。

なお、下記の在中国日本大使館のホームページには、北京の大気汚染に関連して中国の大気汚染指数(中国でいうところの「空気質量指数」と同一か?)の解説があり、同様の米国の環境基準との対比で説明しているのでとても分かりやすいです。

在中国日本大使館 -北京市内の大気汚染について- 2012年10月

このページによると、大気汚染指数(空気質量指数と同一か)が50-100では「特に敏感な者は、長時間又は激しい屋外活動の減少を検討」と、よっぽどのケースに対して屋外活動の制限を提案するトーンに過ぎないのに対し、これが101-150になると「心臓・肺疾患患者、高齢者及び子供は、長時間又は激しい屋外活動を減少」と、やや勧告の口調になっています。さらに151以上になると、今度は「上記の者は、長時間又は激しい屋外活動を中止」「すべての者は、長時間又は激しい屋外活動を減少」と、今度は対象も広げての強い命令口調に変わっていく訳ですが、今回のマカオロケでは、その指数は50から150の間に収まっていたので、ひとまずそこまでの激しい大気汚染には番組としては遭遇せずに済んだことになり、一安心したのでした。

ここで私がこの一件を思い返して今更ながらヒヤヒヤするのは、例えば今回のマカオロケで言うならば、「”大食い”という行為はそもそも”(中国や米国の当局が想定するところの)長時間の激しい屋外活動”に該当するのか否か」、ないし、「当番組参加の大食い選手の中に”特に敏感な”者や”循環器・呼吸器系の弱い”者が本当にいなかったと断言できるのか」という点において、番組制作者サイドがそのような評価を行った形跡もなければ、私にもその手の相談が一切なかったことです。最後の日に雨が降ったのは単なる偶然とは思いますが、これはそういう意味でも本当に恵みの雨だったと心の底から思います。

そのようなことをつい考えてしまうのも、微細粉塵や粒子状物質をはじめとする大気汚染が健康に及ぼす被害について、ヨーロッパでは報道がかなり多く、色々な学説も飛び交い、議論する機会自体がそもそも多いということも、私個人の背景としてあります。その辺については、長くなるので稿を改めたいと思います。

バックナンバー>>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469