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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2012/11/02

ドイツで観戦するロンドン・オリンピック2012 (12)…マレーシアのスーパースターと大食いの怪物クンの共通点

今年のロンドンオリンピックでは、様々な競技において、チャンピオンの陰に僅差の敗者ありといったドラマが展開されました。私の場合、その中でも特に印象に強く残っているのは、ドイツの報道でその論評を目にすることがやたらと多かった、こちらの黄色いユニフォームでガッツポーズする人物、卓球男子シングル銀メダルのリー・チョンウェイ(Lee Chong Wei 李宗偉)選手(マレーシア)です↓。

この選手、日本ではどの程度取り上げられたのかは知りませんが、とにかくドイツでは”超”がつくほど頻出で、逆にどうしてこの選手がそこまで取り上げられるのか、興味が湧いたものです。多分、バトミントン一筋で29歳にして億万長者、そして紛れもなくマレーシアの国民的英雄であるというサクセスストーリーや、「普段は中指に巨大なダイヤモンドの指輪」「ロレックスの高級時計の蒐集家としても有名」といったややステレオタイプな成金系エピソードが興味を引いたことなどが挙げられるでしょう。

特にアジア諸国の場合、ドイツとは比べ物にならないくらいアツい”バトミントン熱”や、選手の受ける破格の待遇などが元々有名であり、下記のヴェルト・コンパクト紙に掲載された記事にその辺の事情がよくまとまって書かれているので、本文をざっと和訳してみました。

Welt Kompakt (2012年8月1日) -Das Millionenspiel -Beim Badminton geht es um die größte Siegprämie Olympias

「億千万を懸けたゲーム~バトミントンの報奨金は五輪競技最高額~」
・テニスにおけるエチケットというものは、バトミントンの世界には受け継がれていないとみえる。バトミントンの試合では、選手は相手がミスするたびに堂々と、相手を挑発するかのように大喜びをする。アジア人のことを内気で引っ込み思案だと思っている人がいるとしたら、それはバトミントンを見たことがない人である。
・バトミントンの世界はアジア勢の独壇場。過去の76枚の五輪メダルのうち、実に69枚をアジアの選手がかっさらっていった。これまでのバトミントン史上最高の選手といえば林丹(Lin Dan、中国)選手であり、ソーシャルネットワークに1600万人ものファンがいるなど、国内の人気は絶大である。
・林丹に匹敵するスーパースターといえば、ヨーロッパではサッカー界にしかいないだろう。アジアの選手は、ホテルから試合会場までのたった500メートルをフェラーリで移動したりするのだ…などと、ドイツのミヒャエル・フックス選手は証言する。マレーシアのスターである29歳のリー・チョンウェイ(Lee Chong Wei)もまた似たような存在で、彼といえばロレックスのコレクションで有名である。 なお、ここ数年のバトミントン界はすっかり林丹とリー・チョンウェイの二強時代だが、リー・チョンウェイはここのところずっと2位に甘んじている。北京五輪でも銀メダルだったが、このメダル獲得自体がマレーシアにとっては12年振りの快挙であり、次(ロンドン)にもしリー・チョンウェイが金メダルを獲得したあかつきには、国からは50万ユーロ(約5000万円)の報奨金、さらに金鉱山の所有者からほぼ同額相当の金の延べ棒を進呈される予定となっている。
・ドイツ勢がこの競技で初の五輪メダルを獲得するチャンスは(欧州選手権2位の女性選手が一番近い位置にいるかもしれないが)、はっきり言って極めて低い。「うちらに足りないものなど何もない…億単位のカネを除いては」と、フックス選手は言う。いずれにせよ、「今日の準々決勝では何も失うものはない。私たちは単なるゲストにすぎない」のだそうだ…ここでいうゲストとは、アジアの祭典に招かれたお客さん、という意味である。

結局リー・チョンウェイはロンドンでも銀メダルに終わり、報奨金の5000万円も同額相当の金塊ももらうことは出来ませんでした。しかし、私の興味はそこにはなく、以上の記事を読んで真っ先に思い浮かんだのが、何故かこちらの大食い選手だったのでした。↓

9月30日オンエアの『元祖!大食い王決定戦inマカオ』で優勝した、”ていねい木下”あるいは”怪物クン”のニックネームで呼ばれた木下智弘選手です。彼とリー・チョンウェイ、なんとなく似た雰囲気がありませんか?169cm55kgで31歳の木下さんと、170cm60kgで29歳のリー・チョンウェイ、年齢と身長は近いようです。ガッツポーズ姿は、多少似てます。もっとも、髪型も体格も筋肉のつき方も異なり、顔のラインも丸いvs長いという意味では、全く似ていないと言われそうです。それでもこの両者、何となく共通する「東南アジア」っぽさが感じられるのと、何といっても試合で着るウェアが似ているのです!↓

 

いかがでしょうか。木下君が『元祖!大食い王決定戦』において、本番の試合の時のみゼッケンの下に着用していた「大食いウェア」は、バトミントンのウェアにも似た、袖のない白いベストでした(写真右上)。最初は、なぜ彼が体育館に登場するような格好で毎試合の大食い競技に臨むのかが分かりませんでした。実はこのウェア、以前の大会では熱中症症状で早々と敗退した苦い経験を持ち、暑さに対する苦手意識を持つ彼が、”この大会で勝利する”ただそれだけのためにこだわりをもって調べ上げ、通販で調達したという、何万円もする米軍仕様の吸水・熱発散型素材による「熱中症防止ベスト」です(詳細については後日別稿予定)。

さらに木下君の場合、大食いとは全く関係のない「車の改造」という、彼自身がドップリと耽溺できる趣味の世界があります。彼の所有するフェアレディーZの写真を見せてもらいましたが、まるで往年の映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」(Michael J. Fox主演)に出てくるデロリアンのようで、もはや原型を留めていないような(笑)改造ぶりでした。他にも、微細なるパーツにまで強いこだわりを示してはネット等で発注したエピソードなど、一見おとなしそうで口下手に見える彼ですが、この話題になるとそれこそ(箸ではなく)口が止まりません!彼は、クルマ本体は勿論、家のガレージにも大金をつぎ込んでいると見えて、スタンリー・キューブリック作品かと思うような幻想的なSF空間に仕上げられた浮世離れしたその車庫の写真を、大食い選手やスタッフに見せては周囲の驚きを誘っていました。

これらの木下君のエピソードから、先ほどのドイツの新聞記事に乗ったアジアのバトミントン界における「フェラーリ」のエピソードや、リー・チョンウェイの「競技と無関係の趣味としてのロレックスコレクション」の話が勝手に連想されてしまい、今回のロケ期間中、私の脳内は必然的に「木下君とは大食い界のリー・チョンウェイ」という理論で占められてしまったのでありました(笑)。といっても、リー・チョンウェイがそもそも日本であまり知られていなさそうなので、誰にも理解してもらえそうにないのが寂しいところです(涙)。

木下君の今大会での圧巻の勝利スタイル、その徹底した懲り症ぶり、そして目的のためには金銭に糸目をつけない所…これらの中に、実に「アジア的」「バトミントン的」「リー・チョンウェイ的」なものを見出すことができるというのが、本日の結論であります。もっとも、本家のリー・チョンウェイが未だに獲ることのできていない”一等賞”(注※)を木下君が獲れたことは実に立派で、努力の賜物とも言えるでしょう。ただ、 リー・チョンウェイに懸けられた金メダルの報奨金と比べると、木下君が受け取った優勝賞金は50分の一、金のドンブリが金の延べ棒に変わることもまずない(笑)…という、億千万のゲームにはほど遠い大食い番組の台所事情が、そのまま番組のオチということでもあるのでしょう。

 

(左上:五輪金メダルの林丹選手。林丹といえば、実は今回の大食いロケにも関係するエピソードがあるのだが、これについては後日別稿予定。右上:リー・チョンウェイの応援団がマレーシア国旗を掲げて熱く応援しているところ)

(注※)「未だに獲れていない一等賞」について:
Wikipedia - リー・チョンウェイ
上記サイト内に、
「あらゆる大会において類稀な成績を残し続けていながら、いまだオリンピック、世界選手権、アジア大会での優勝がない。」
との記載あり。オリンピック2大会連続銀メダルの華々しい戦績から考えると、やや意外である。

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