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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2012/06/22

日独ODA対決!(2)…ベトナム・ホーチミン市地下鉄2号線

先週ご紹介したベトナム・ホーチミン市地下鉄1号線は、ホーチミン市中心部のBen Thanh(ベンタイン)とSuoi Tien(スオイティエン)を結ぶ約20キロの路線で、総工費が約10億アメリカドル、日本のODAで工事が現在進行中です。その出資条件はJICAの ホームページによれば、2007年契約分の借款契約額/金利(本体部分・コンサルタント部分)208億円/0.4%・0.4%と、2012年契約分の 443億円/0.2%・0.01%という2件あり、償還期間はいずれも40年(据置期間10年)とのことでした。

対して、メイン出資がド イツとされている地下鉄2号線はどうでしょうか。こちらは全体としてはAn SuongバスターミナルからThu Thiemまでの約19キロの路線で、総事業費は14億アメリカドルと、前述の1号線とほぼ同規模のプロジェクトのようです。先週は「Ben ThanhからTham Luongまでを結ぶ11.3キロの路線」とご紹介しましたが、これは全体のうち現時点で公示されている一部の区間だそうです。この事業に対する融資は、 アジア開発銀行(ADB)・ドイツ復興銀行(KfW)・欧州投資銀行(EIB)を通じてそれぞれ行われます。

さて、この融資の利率はどうでしょうか。下記ページによると、ドイツが発展途上国に対して融資するODAの条件は、償還期間40年で利率0.75%とあります。

Bundesministerium für wirtschaftliche Zusammenarbeit und Entwicklung – Finanzielle Zusammenarbeit - (ドイツ語)

日 本のODAの融資条件である0.4%や0.2%といった数字と比べると、一見その利率はベトナムにとってオイシくないように見えます。ただ、ここ1~2年 の間に(対アメリカドル・対ベトナムドンともに)急激に進行している円高は、円借款額の大きいベトナムにとっては後々の返済時に重荷となるリスクが含まれ ます。今はベトナムに対するODA貸付国ランキングのトップは断然日本で、その額もドイツのひとケタ上を行くものなのですが、今後のユーロ等の通貨レート の成り行き次第で、ドイツ・フランスの急上昇も有り得るかもしれません。

 

(出典:OECD)

か つて、日本といえば長らくODA拠出世界第1位の国とされてきましたが、いつの間にかその順位は変わっているようです。1991年から10年連続1位を 誇ってきた日本ですが、2001年から2005年まではアメリカに次いで2位、2006年にはついにイギリスに抜かれ3位、2007年以降はドイツ・フラ ンスにも抜かれ5位が定位置となり、今に至っています。これには、1997年頃を潮目とする日本の長期不況の影響が色濃いかと思われます。他方、2005 年以降のトレンドを牽引するのは、ドイツ・フランスをはじめとする欧州勢の躍進です。これはおそらく同年頃から2008年(リーマンショック直前)まで続 いた通貨ユーロのレート上昇ないし空前のユーロ高も影響していたと思われますが、その後のユーロ安トレンドとなってからも、ドイツは2009年以降も手を 緩めず拠出額を増やし、今やイギリスも抜いて堂々のODA拠出世界2位です。リーマンショックに欧州経済危機と立て続くこのグローバル経済危機のさなか、 2011年にOECD34ヶ国合計のODA拠出額が前年比で2.7%減少したにもかかわらず、ドイツの経済の好調さを伺わせるものとなっています。

そ れでは、どうしてドイツはODAにここまで力を入れるのでしょうか。それはドイツに限らない話のようで、背景には2000年に取り決められた先進国間の ルールがあります。”UN Millenium Target”(国連ミレニアム開発目標)と題されたその内容は「OECD開発援助委員会(DAC)加盟国はODA支出を2015年までに対国内総生産 (GDP)比0.7%まで増やすこと」というもので、この取り決めに参加しているDAC加盟国は23ヶ国あり、その中には我らが日本やアメリカ、カナダ、 オーストラリアはもちろん、ドイツを含むEU加盟15ヶ国も入っています。ちなみに、DAC加盟国中で2010年から2011年にかけて対GDP比を上昇 させたのは、ドイツ・スウェーデン・オーストラリア・イタリア・スイス・ニュージーランドの6ヶ国だけで、他国は現状維持ないし減少しています。中でもス ペインとギリシャは激減しており、昨今のユーロ危機の影響を思わせます。下のグラフを見ると、2011年時点でこの0.7%という目標を達成している国は まだ5カ国に過ぎず、世界の掲げる目標値と現実との間にはまだ大きなギャップがあると言わざるを得ません。

 

Swiss Agency for Development and Cooperation (SDC)より引用

以 上、ベトナム・ホーチミン市における大食いロケの道中、道端でふと目に入った”日の丸入りのODA看板”から、ずいぶんと話が膨らんでしまいました。ベト ナムに貸し付けられた世界各国からのODAにより、ホーチミン市の地下鉄工事が着実に進行していけば、市内にはいずれ以下の図のような交通網が完成するこ とになり、現状のように道路狭しと過密に渋滞する”通勤ホンダ”(●→「ベトナムといえば?」(4)…「ホンダ!」ダイナミックなバイク通勤の国)ならぬ 通勤バイクの群れと、それに伴う大気汚染の解消が大いに期待されます。日独両国は他にもハノイの地下鉄プロジェクトの受注予定もあり、アジア内での両国の 存在感は今後も競い合いながらますます向上していくのではないかと、期待がふくらみます。そして、このペースでインフラ拡充と経済発展を続けるベトナムの 未来にも、ますます注目したいところです。

 

Asian Development Bank “Socialist Republic of Viet Nam: Preparing the Ho Chi Minh City Metro Rail System Project”から引用Asian Development Bank “Socialist Republic of Viet Nam: Preparing the Ho Chi Minh City Metro Rail System Project”から引用。水色が1号線、赤色が2号線。

<その他の参考サイト>
Deutsche Botschaft Hanoi – Deutscher Aussenminister besucht Vietnam
(在ハノイドイツ大使館 – ドイツ外務大臣がベトナム訪問 - 2011年6月掲載)

DAC各国ODA拠出額 - 2011年版速報値 – 2010年との比較(ドイツ語PDF)

GTAI (Germany Trade and Invest) – Internationale Märkte - 2012年5月14日

Deutsche Welle – Weniger Geld für Entwicklungshilfe - 2012年4月6日

Vietnam latest news – Tanh Nien Daily - 2011年9月9日

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