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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2012/04/20

「ベトナムと言えば?」(2)…「ポール・ハードキャッスル!」「なななな・ナインティーン!」

皆さんは、ベトナムと聞いて何を(誰を)思い浮かべますか?私の答えとして先週御紹介したのは、ドイツの副首相でした。そして、二週目の今週取りあげるのは、ズバリこの人、そしてこの曲です(上がオリジナル・バージョン、下がエクステンデッド・バージョン)。

YouTube – Paul Hardcastle – 19 (Official Video :曲長3分37秒)

YouTube – Paul Hardcastle – 19 (Extended Version:曲長5分12秒)

ポール・ハードキャッスルの”19”(ナインティーン)です。1985年2月17日に発売され、英国を皮切りに世界各国で1位を獲得した、1985年の大ヒット曲です(全米最高15位)。ある程度以上の年代の方には、”なななな・ナインティーン!”(上のビデオの0:26あたり他)や”ビェトナーム、ささ・サイゴーン!”(同3:11あたり他)といったフレーズが何年経っても耳に残り、たまらない懐かしさを誘うことでしょう。昨年の『元祖!大食い王決定戦in ベトナム』(TV東京)のロケ地がまさにそのサイゴン(現在名ホーチミン市)だったので、ロケ期間中ずっと私の脳内ではこの”ささささ・サイゴーン!”というフレーズがエンドレスで鳴り続けて困ったものでした(笑)。

この「19」なる曲は、ベトナム戦争を題材にした強烈な反戦歌でもあります。全編を通して流れる男声ナレーションは米ABCテレビのニュース及びドキュメンタリー番組からのサンプリングで、声の主はアナウンサーのPeter Thomas(おん年87歳でご存命!)です。曲名の「19」とは、曲内に登場する「第二次世界大戦の時のアメリカ兵の平均年齢は26歳、ベトナム戦争の時は19歳」(上のビデオ内0:11~0:18)という部分が基になっているようです(この部分の内容は史実とは異なるという指摘もあるようですが)。この曲には、医学を学ぶ立場として個人的な思い出もあります。今では広く世界中に知られているPTSD(Post-traumatic Stress Disorder)という単語と疾患概念が、この曲の中で(上のビデオの2:00頃から10数秒間にわたり)説明されていることです。少なくとも当時の日本では、PTSDなる単語も概念もほとんど知られておらず、ポール・ハードキャッスルのお蔭で精神科の授業で恥をかかずに済んだという医学部生は、私だけではなかったはずです(笑)。

なお、この曲は、世界各国の言語でカバー版が発表されたことでも知られています。ちなみに我らが日本の場合、日本テレビのアナウンサーである小林完吾さんによるバージョンが一世を風靡しました。このナレーションは本家をそのまま和訳したもので、”なななな・ナインティーン”というところを”ジュジュジュジュ・じゅうきゅう、じゅうきゅう、ジュジュ・じゅうきゅう”などというパロディ性と、小林さんのド真面目な口調とのミスマッチが大いにウケました。当時、学校で休み時間中に同級生一同、マネしながら大爆笑していたことを思い出します。↓

YouTube – 19 - 小林完吾バージョン(Extended Japanese Mix:曲長5分14秒)

さらに下のビデオは、Werner Vaigel 氏によるドイツ語バージョンです。このバージョンは日本ではあまり知られていないかもしれません。ナレーション担当のWerner Vaigel氏(故人)はドイツの国営放送の大御所アナウンサーで、途中に何度も登場する”Tagesschau”の画面など、超懐かしいお宝ビデオです。ちょっと画質はイマイチなのですが、あわせてごご紹介します↓

YouTube – 19 - Werner Vaigel ドイツ語バージョン(曲長6分15秒)

ちなみに、この曲には他にYves Mourousi 氏によるフランス語バージョン、Jesus Pozo氏によるスペイン語バージョンもあります。

蛇足ですが、先ほどの「PTSDという単語は当時ほとんど知られていなかった」という話は、上の日本語バージョンやドイツ語バージョンの訳詞からも伺い知ることができます。該当する説明部分は、小林完吾さんバージョンのビデオでは2:27から、ドイツ語バージョンのビデオでは3:50から始まりますが、現在「PTSD」の正式名称として採用されている日本語の「心的外傷後ストレス障害」もドイツ語の「Posttraumatische Belastungsstörung」も、これらのビデオには登場しないのです。両国バージョンともに、この語を避けて強引に訳文をつなげているところに、苦心の跡が見えます。PTSDなる疾患概念はアメリカでは早くも1980年に記載されたのに対し、日本では1995年1月の阪神淡路大震災以降にようやく注目されるに至ったという経緯も関係あり、1985年の時点ではまだ訳語が無かったということなのでしょうが、ドイツにも当時この訳語が無かったというのは、やや意外でした。

さて、1985年の旧バージョン発売からちょうど25周年となる2010年4月19日、ポール・ハードキャッスルはこの曲の新バージョンをリリースしました。

YouTube – Paul Hardcastle – 25th Anniversary Edition
「19: Boys To War」

「19: the Vision」 (スローバージョン)

この25周年バージョン、是非見ていただくことを強くお勧めします。旧バージョンはベトナム戦争を題材にしていますが、今回の新バージョンはベトナム戦争とアフガン戦争の映像をオーバーラップさせるという手法をとりながら、「歴史は繰り返す」「戦争中だけでなく戦争が終わった後も兵士の闘いは続く」「我らはいまだに少年を戦地に送っている」というメッセージを織り込み、その強いメッセージは見るものの魂をさらに揺さぶるものになっています。旋律や歌詞といった元々の曲の骨格部分は変えず、新たなサンプリング音源やコーラスを追加し、映像マテリアルもベトナム戦争関係の追加のみならずアフガン戦争関係も多数盛り込み、辣腕音楽プロデューサーとしてのポール・ハードキャッスルの健在ぶりを十分に感じさせる意欲作となっています。

なお、「歴史は繰り返す」「戦争中だけでなく戦争が終わった後も闘いは続く」「我らはいまだに少年を戦地に送っている」というメッセージ、なんだかアメリカの話にとどまらないように思えて仕方がないのは、私だけでしょうか。阪神淡路大震災や東日本大震災のみならず、幾多の震災に繰り返し見舞わてきた日本、今回の原発事故による今後何十年も何百年にも及ぶであろう人類への多大な厄難…。そして、三番目のメッセージから連想されるのは、私の場合、なぜか聖光学院での光景になってしまうのです(3・11に寄せて(4)…聖光学院(福島)の祈り)。ポール・ハードキャッスルは、25周年バージョンのビデオを編集しながら号泣したといいます。ビデオの扱う題材こそ異なるものの、その心を、3・11を経験した日本の人々はかなりの部分で共有できるのではないかと、そんな気がしています。

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