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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2012/04/13

ベトナム回想記(1)…「ベトナムと言えば?」「フィリップ・レスラー!」

『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)は2012年4月8日(日)、ついに復活したようです。この回は、一年以上前にベトナムにてロケを行っていたものの、直後に発生した東日本大震災の影響で放映が延期されていた収録分です。まだオンエアを見れていないので、番組に対する感想はまた後日、録画を見てからあらためて述べることにしまして、今週からはしばらく、ベトナムに関する思い出を振り返ってみたいと思います。

皆さんは、ベトナムといえばまず何を思い出しますか?私の場合、「ベトナム」と聞いて真っ先に思い浮かぶのはこの人です。

何だか、とっちゃん坊やのような人物が出てまいりました。この人はドイツの医師で政治家でもあり、現在はドイツで政権与党として連立を組む自由民主党(FDP)の党首のPhilipp Rösler という、れっきとしたドイツ人です。昨年の大食いロケがあった頃は保健大臣(日本でいう厚生労働大臣)だったレスラー氏ですが、現在は若干39歳にしてメルケル内閣の副首相・兼・経済技術大臣(強いて言えば経済産業大臣と総務大臣を兼務するようなもの)でもあるという、すんごいエリート君です。私が渡独した頃のレスラー氏はまだここまで出世していませんでしたが、初めてテレビで見たときは、「この人、超ドイツ風の名前なのに何でこのルックスなの?」「見るからにアジア人なのに、何でドイツ語がこんなにペラペラなの?」と、狐につままれた不思議な気分になったものでした。それもそのはず、実はこの人、生後まもなくドイツに養子に来たベトナム戦災孤児なのです。

Wikipedia - フィリップ・レスラー

「ベトナムの南部メコンデルタ地方のカンフン市バシエン省(現ソックチャン省)に生まれる。戦争孤児。9ヶ月の時養子縁組のため西ドイツ(当時)に渡り、二女を持つドイツ人のレスラー夫妻の養子となった 」(上記Wikipediaより引用)

この人のプロフィールを見て驚かされることは、色々あります。ベトナム移民出身で国務大臣になること自体がドイツ初ならば、与党の党首になるのも初めてという、何から何まで初もの尽くしの経歴で、それも行く先々で最年少記録を更新という、それはもうエリート中のエリートと言える経歴です。

しかし、それよりももっと驚かされるのは、この人が政党(FDP:自由民主党)に入党して政治活動のキャリアをスタートしたのが、高校を卒業した年だということです。医学部で学びながら政治活動も続け、医師となり研修を続けながらもその政治のキャリアを中断せずにキャリアを積んでこれること自体、日本の医師ならまず考えられません。そもそも、六年制大学である医学部の学生というだけでも、臨床実習があったり就活がなかったりと、四年制大学の友人等とスケジュールが合わなくなりがちで、次第に他人と疎遠になって医学部内で固まる他になくなり、人間関係が大幅に狭まる傾向にあります。さらに研修医となったら今度は激務に忙殺され、人とお茶を飲む約束ひとつ取りつけられないほどに私生活を拘束され、ここで決定的に友人を失うとも言われます。まして、選挙に行くヒマさえないのに、仕事以外の政治活動だなんてとんでもありません。つまりレスラー氏の経歴は、日独間の医師の労働環境の違いを濃厚に感じさせるという点でも、大いに興味深いのであります。

さて、ベトナムロケにおいて、現地でお世話になったベトナム人コーディネーターの方に聞いてみました。

私 「フィリップ・レスラーって知ってます?」
コーディネーター 「よく知ってますねー!こちらでは彼のことはよく報道されてますよ!我々ベトナム人にとって、彼はまさに国民的ヒーローのような存在なんです」

ベトナム系ドイツ人でありながら与党党首にまでなったレスラー氏のさらなる活躍には、ベトナム国民の寄せる期待も高いようです。この調子でレスラー氏が移民系初のドイツ首相にでもなろうものなら、大変なフィーバーが起きそうです。ただ、その可能性があるのかどうかを周囲のドイツ人に聞いてみると、「今は自由民主党(FDP)自体が人気ないから、厳しいんじゃない?」という返答が圧倒的に多かったです。最近のドイツにおけるFDPの人気低下が著しい背景には、昨年3月11日の福島第一原子力発電所の事故も相当大きく影響しており、レスラー氏の前途には問題山積ということのようです。

そんなレスラー氏ですが、今後の展開次第では、ドイツ国政の中心に躍り出てくることもあるかもしれません。その時が実現したならば、きっと彼は別の意味でも日本の注目を集めることでしょう。「移民大国のデモクラシー」とはどういうことなのか、果たして日本ではそれは受容されるのだろうか、といったことを考えるよい機会となるのではないかと今から想像しています。

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