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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2012/03/23

3・11に寄せて(3)…松島湾をめぐる哀愁

昨年12月に見たJR仙台駅の切符売り場の運賃表には、東日本大震災の爪痕がくっきりと残されていました(→3・11に寄せて(2)…JR仙台駅の運賃表にみる東日本大震災の爪痕)。列車代行バス運転、運賃が黒塗りされた駅…それらが指し示す現実は、震災から9ヶ月を経ていることも考え合わせれば、かなり衝撃的です。特に黒塗りの駅の存在は心に引っかかり続けています。ただ、限られた滞在日数の中でこれらの被災地を回るのは限界があり、まして黒塗りの駅(特に立ち入り禁止区域)など現実には訪問不可能です。ここはひとまず、行ける所に行こうということで、飛び乗ったのはJR仙石線でした。この時点での仙石線は松島海岸駅の次の駅である高城町で折り返し運転をしていました。まずはその高城町まで行き、松島海岸駅までの一駅分を歩きながら町を観察することにしました。

高城町には漁船と思われる多数の船が停泊しており、牡蠣の養殖場もあります。震災被害を思わせる壊れた船舶や木片、ゴミなどが積み上げられた箇所もありました。この付近は、建物の被害はあまり目につきませんでした。最も目を引いたのは、個人商店や公共施設などあらゆる建物に貼られた「前身松島」という、何だか力強い筆体のポスターです。

 これが、松島海岸駅が近くなると、唐突にこのような更地が出てきたりします。これもまた、地震ないし津波による爪痕なのだろうか…ただ、隣接する建物に被害が少ないような(?)…などと、通りすがりはあれこれ類推するのでした。

 さらに松島海岸駅付近では、貼り紙で投函口をふさがれた赤い郵便ポストに遭遇しました。なんでも、「東日本大震災の水害により、ポストの一部がさび付き、劣化した」とのことで、当面使用中止なのだそうです。さらに、(2011年)10月18日にようやく営業再開にこぎつけたという牡蠣料理・海鮮料理のお店もありました。やはり、震災の爪痕はここ松島にも色濃く残っていたようです。

 

さらに私は、松島海岸から周遊船に飛び乗りました。松島湾に浮かぶ数々の島を巡りながら塩釜港まで向かう、その名も「島めぐり奥の細道周遊コース」というものでした。これまでにもあった遊覧コースですが、例年とは違うのは、乗船中に途中で船を停泊させ、東日本大震災で犠牲になられた方々の御冥福を祈って御札(水溶性)を海に投げる、という機会が設けられていることです。

添乗員さんの話では、いまだに遺体が発見されない行方不明者の人数がまだ多数、この松島湾に眠っているのだといいます。ほんの心ばかりですが、私も御札を浮かべつつ御冥福をお祈りさせていただきました。また、破損船体の回収が後回しになってガレキが積まれている海岸も遠方に見えましたが、ここにもまだ御遺体が…、と指さす添乗員さんの一言がその後も重く脳内に残響し、以前は楽しんで鑑賞していたはずの風光明媚な日本三景も、青々とした海の色も、何だかとても哀愁を帯びたものに見えてしまうのでした。

(人影や工事車両・重機とおぼしきものが見えることから、この地区が元の姿を取り戻す日は確実に近づいているようにも思われました)

こうして到着した塩釜港(マリンゲート塩釜)ですが、ここは松島海岸より明らかに被害が甚大でした。塩釜付近の被害ついては、以前のコラムにも道路被害や傾いた石碑の写真を掲載しましたが(→3・11に寄せて(1)……宮城で目にした震災の爪痕)、他にも壊滅的被害を受けた無人の店舗がそのままになっていたのは目を引きました。津波被害の理由について、マリンゲート塩釜の職員は「松島湾に浮かぶ島々が津波の防波堤の役割を果たした松島とは異なり、塩釜は津波をさえぎるものがなく、直撃を受けたため」と表現していました。この地区は1960(昭和35)年5月24日のチリ地震津波の襲撃を受けた過去もあり、離島や小島が天然の防波堤となるという話はとても印象に残るものでした。

たった半日の松島・塩釜周遊の旅でしたが、日常を一瞬にして奪われた人たちの現実をあらゆるところで垣間見ることになりました。震災から9ヶ月経過してある程度の原状回復が進んだ時点でこれですから、大震災直後から被災者の方々に降りかかった苦労は想像を絶するものだったことでしょう。そんな中、松島海岸の御土産屋さんに売っていたこのTシャツやブルゾンは、そんな折れそうな気持ちを立て直してくれるものでした↓

 

「おだづなよ津波!!」「東北魂」とプリントされた文字に、先ほどの「前進松島」にも似た力強さを感じます。なお、”おだづなよ”とは”ふざけるなよ”とか”調子に乗るなよ”という意味の仙台弁だそうです。ちなみに、手前に写る岩手放送のマスコットキャラクターのオラ君も、一応は東北人(?)です。後ろの力強いロゴともよく合っているように思います。この写真により、東北の皆様の元気度が少しでもアップすることを、心より願っております。

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