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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2011/12/16

アドベントカレンダーと大食いの共通点

先週は、クリスマスの4週間前の日曜日からクリスマスイブまでの期間、24個ある小窓を一日一回開けていくという、ドイツのアドベント・カレンダー(Adventskalender)について御紹介しました。しかも最近では、気合の入った自家製のカレンダーを親子ともに用意して贈りあうケースが増えているようです。今年も冬がやってきましたが、特にドイツのチビッ子にとっては、一日一回アドベント・カレンダーを開けるその瞬間こそ、冬ならではの至福のイベントと言えるかもしれません。

その記憶は、子供の頃をドイツで過ごした私にもあります。うちの親の場合、チョコレート会社の既製品のアドベント・カレンダーを毎年買ってきてくれていました。チョコレート会社製作のカレンダーのため、中身がチョコレートであることは最初から分かっているのですが、それでも「今日はどんな形のチョコが入っているのかな~?」「わぉ、今日はお星様だー!」など、ワクワク感もサプライズ感もそれなりにあり、胸をときめかせてクリスマスまでの日々を過ごしたことを思い出します。

何年か経ったある年、子供だったワタクシは、カレンダーの中身が毎年チョコだったことに若干の飽きがきていたのでしょうか、自作のアドペント・カレンダーを作ることを思い立ちました。11月下旬頃から、紙や折り紙にハサミや糊、色鉛筆や絵の具など、家中の文具を総動員してマイ・カレンダー製作に邁進していました。小窓を24個ランダムに配置し、表面には絵を描き、小窓の中にはアメなどの菓子を埋め込んでいく作業自体がかなり楽しく、完成した頃には、早く12月にならないものかとジリジリしていたものでした。

それが、12月に入ってから数日経った時点で、予想もしなかった落胆と失望に直面します。自分で製作したカレンダーということは、中身を全て知っているということなのです。小窓を開けるたびのワクワクやサプライズはいずこへやら、「ああ今日はコレだった」「明日は確かアレだったかな」という記憶の確認作業のような日々が続き、すっかり興味を失ってしまいました。アドベント・カレンダーというものは、自分が作っては意味がないのだということを、子供だった私はこの時初めて身をもって知ったのです。

あれから年月が経ち、日本で生活するようになってからの私は、すっかりアドベント・カレンダーのことも忘れて成人しました。それが、ドイツに再び住むようになり、先日の出張の電車内でアドベント・カレンダーにまつわる記事(“Macht auf die Tür” mobil - Das Magazin der Deutschen Bahn 12.2011から)を偶然目にしてから、唐突に脳裏にふと甦ってきたのが、大食い番組に携わってきた日々の思い出と、大食いとアドベント・カレンダーの思わぬ共通点でした。

長らく放送延期が続いている『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)ですが、前身たる『TVチャオピオン』時代からも含めて、その大食い競技の最大の特徴かつ妙味は、”何を食べるか選手が事前に知らされていない”という点に尽きるように思います。三日間で五試合あるいは一週間に七試合などといったスケジュールの中、出てくる食材について、選手は「決勝戦はラーメン」という以外に何も知らされていない状態でロケが進行していました。この点が、「ホットドック選手権」や「お好み焼き選手権」といった、”食材事前告知型”とも言える大食い競技との最大の相違点かと思います。

食材を告げる瞬間を迎える前、選手たちはロケバスの中でスタンバイしつつ、次の食材についてあれこれ雑談がはずみます。「次は何だろうね~?」「肉系が続いたから次は魚介系かな?」「三試合目はだいたいゴハンものなんだよねー、今までのパターンでいくと」など、推理から妄想までたくましくしている光景は、今思えばまさにアドベント・カレンダーの前に座るドイツのチビっ子そのものでした。

一方、選手たちがロケバスで盛り上がっている頃、食材を用意するお店や番組スタッフは、慌ただしく準備に追われています。食材の下ごしらえや調理器具の準備、加熱や配膳のタイミングなどについて、真剣にディスカッションやシミュレーションを繰り返します。本番ロケの何ヶ月も前からの出演交渉や下見(ロケハン)の段階での準備なども含めれば、一つの食材あたりに費やされる時間や手間は膨大です。その姿こそまさに、わが子のために手間隙かけて愛情をこめてアドベント・カレンダーを準備するいまどきのドイツのお父さんお母さんの姿に重なると、これまた今のこの時期のドイツにいるせいか、思えてならないのです。

そう考えると、大食いのコンセプトとアドベント・カレンダーのコンセプトの共通点が見えてきます。一人暮らしで自炊の大食い選手なら、自分で作ったアドベント・カレンダーを毎日開けるような日常の中で、子供の頃に私が感じたような失望感も時には味わっているかもしれませんし、外食がちの選手であれば既製品のアドベント・カレンダーを開ける感じなのかもしれません。家族と暮らしているケースだと、手作りのアドベント・カレンダーを贈りあうイメージでしょうか。もっとも、家族や他人が多大な時間をかけて愛情や心遣いも込めたものを、「これではお腹一杯にならない!」「おかわり下さい!」となってしまうと、幸せは逃げていくでしょう。アドベント・カレンダーと大食い競技は、その背景にある思いやりや善意、愛情や友情といった要素で結びついているように思うのと同時に、これらの要素を忘れた時にその終わりが来るのかもしれないと、12月のドイツが教えてくれているのかもしれません。

(2010年2月16日、ハワイにて。大食い競技用のハンバーガーの準備中の光景)

 (食材提供店の人々の尽力と厚情が、ハンバーグの1枚1枚に詰まっている。このことを忘れては番組は成り立たない)

 

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