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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2011/11/04

ドイツ流「GO!GO!省エネ」(2)…「プラスチック容器のゴミは洗う?洗わない?」

先週は、食べた後の食器を手洗いする際のドイツ独特の習慣である「すすぎ水」(Spülwasser )と、日本人の感覚ではとても理解しにくい節水信仰についてご紹介しました(ドイツ流「GO!GO!省エネ」はひたすら節水(1)…「すすぎ水」の衝撃体験)。子供の頃にドイツで生活していたとはいえ、成人して随分経ってから再渡独した私からみると、この「すすぎ水」はそれまでに日本で培われた価値観を大きくゆるがす衝撃体験でしたが、今週ご紹介するのは、同じく衝撃体験となったゴミ出しの話です。

皆さんは、牛乳パックやヨーグルトなどの容器包装をゴミとして捨てる際、中を水で洗うでしょうか。日本の場合は衛生上の観点から、通常は中を軽く水洗いし、時にはちゃんと中を乾かしたり分解して干したりしたものを出すのが普通かと思います。ちなみに、神戸市指定の容器包装プラスチック専用のポリ袋には、「中身を使い切り、汚れの付いたものは軽くふき取るか洗って出してください」という一文が印刷されています。

しかし、ドイツに来た早々、ふたたびカルチャーギャップに直面します。ある日、ドイツの同僚夫妻の家にお呼ばれした私は、食品のプラスティック容器が空になったので、ゴミ箱に入れる前に軽く水ですすごうかと思い水道の蛇口をひねった瞬間、ここでも大声を上げられてしまったのでした。ちなみに、この同僚の妻は、小学校の教諭です。

同僚: 「あー、ダメダメダメダメ!パックは洗わず、そのままゲルベザック(Gelbe Sack:容器包装リサイクル専用の黄色い袋)に入れること!」
(ゲルベザックについては、ドイツのごみ区分に関して書いた過去の記事があります:「人はなぜ大食いするのか?」…ドイツ・環境問題編
カタ: 「えーーーっ、だって、洗わないと汚いでしょうが!」
同僚: 「どうせゴミとして出すんだから、どうして洗う必要があるんだい?(断定口調)」
同僚妻:「それよりも、全家庭がゴミ容器をすすぐことによって、それだけ余分に水が必要になるでしょ?ドイツ人はエコロジーの意識が高いから、そんなことはしないのよ。(小学生に説明するような口調)」
カタ: 「(私ら日本人は小学生以下かぃ…と思い、ついつい反撃)でも、ゴミを洗わずにゴミ箱に置いておくと、雑菌が湧いたり悪臭がしてイヤじゃないの?」
同僚: 「すぐ干からびるから大丈夫。それに、ドイツのゴミ箱はだいたい戸棚の内側に取り付けられているから、匂いが気になったことはない」
同僚妻:「それに、回収したゴミを洗うのは清掃業者がまとめてやることなの。だから、私たちまで水洗いをやると、二重洗いになってしまって水のムダでしょ?だから、私たちが容器ゴミを水ですすいじゃダメなの!このテーマは、ドイツではどこの小学校でも扱うテーマの一つなのよ」

ゴミを洗わずにそのままゴミ箱に放り込むのが正解とは、急にめまいがしてきました。ドイツといえば、日本では「エコ先進国」「環境大国」などと日本でも紹介されてきた国です。しかし、このドイツ流エコにおいて、まさか『節水』が占めるファクターがここまで大きいとは、私はまったく心の準備ができていませんでした。そもそも日本は降水量が世界平均の2倍あり、周囲を海に囲まれ山河が多く、「水と安全はタダ」とまで言われた国です。しかも、高温多湿という気候ゆえに、特に夏場など、ちょっとでも放っておけば生ゴミはたちどころに悪臭を放ち、虫やカビが湧きまくり、屋外に出したゴミ袋には速攻でカラスがたかります。この気候の違いは重要で、ゴミもペットボトル容器も水洗いがウェルカムとなるのも、日本では『節水』よりも『衛生』という概念の方が大きな意味を持っていることに起因する、至極妥当な理屈なのです。

その点、ドイツは年間降水量が日本の約半分弱、しかも水源を他国に持つ河川(日本にはこういう河川は無い)がいくつも存在する(安全保障上のリスクとなる可能性)など、水資源の制約があります。しかも、気温が低く湿気が乏しい気候のため、夏場も室内は涼しく(今年は冷夏で、8月についに耐え切れずに暖房を入れた日もありました!)、冬はベランダが冷凍庫代わりになるような状況で、元々ゴミに雑菌など生えにくいというのも、日本との大いなる相違点です。以上のようなドイツの条件を考慮すれば、日本人から見れば不衛生極まりないとしか言いようが無い「すすぎ水」(Spülwasser )という習慣も、「ソース二度付け厳禁」ならぬ「ゴミの二重洗い厳禁」なる論理が小学校で金科玉条の如く教えられているという現実も、国民には納得されるものでしょう。所変われば常識も変わると言いますが、今回の話は「国が変われば事情も変わり、導かれる真理もまた変わってくる」という良い一例ではないかと考えています。

 

(愛知県内某所にて本稿にピッタリの箇所を発見し撮影。ペットボトルは「キャップを外し、中身を洗ってから捨てること」、カン・ビンは「虫が発生するので必ず、中身を洗ってください」と注意書きされている)

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