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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2011/09/09

世界のデジアナ変換(2)…フランスのデジアナ変換

アナログ放送終了に伴うデジタル化対応を視聴者に促す警告文がテレビ画面に繰り返し告知されるのは、どうやら日本における”地デジ狂想曲”の専売特許ではなかったようです。先週は、フランスのホテルで遭遇した「アナログ放送の停止はもうすぐそこまで差し迫っています」(L’arrêt de la diffusion des chaines analogiques est désormais imminent)というテロップについて説明しました。

では、フランスではアナログ停波はいつになるのでしょうか。先週ご紹介したフランスのケーブルテレビ会社、Numericable社のホームページを見ると、こんなQ&Aがあります(原文は仏語、筆者和訳)。

Q: 「アナログ放送はいつ終了するのでしょうか?」

A: 「アナログ放送の停波は2009年から始まっており、地域ごとに進められているところです。2011年11月30日には、フランス全土において地上波アナログ放送が完全に終了し、全面的に地上波デジタル放送に移行することになっています。

当社では、アナログ信号も放送網の一部として暫定的に維持してまいりますので、視聴者の皆様はこれまで通りの受信機のまま、従来どおりの放送を視聴していただけます。

しかしながら、このような形でのアナログ放送サービスは、いずれは終了する運命にあります。当社がアナログ放送を停止する時点でお客様にスムーズなデジタル化移行をしていただくべく、お客様には私たちにデジタル化全般に対して個別相談していただくことをお勧めします」


このQ&Aを見て、日本とフランスにおける決定的な相違に気づかれたでしょうか。日本では、ケーブルテレビ会社が提供するアナログ放送は2015年3月に終了すると明記されているのに対し(→地デジ狂想曲の怪!(4)…泰山鳴動してデジアナ変換)、このフランスのケーブルテレビ会社は、「このような形でのアナログ放送サービスは、いずれは終了する運命にあります(cette offre analogique est vouée à disparaître à terme)」と述べるにとどまり、いつまでにアナログ放送の提供を終わらせるか、具体的な期限を明示していないのです。確かに「地上波」に関しては2011年11月30日にアナログ停波とデジタル放送への完全移行が断行されることは、国のレベルでの決定事項のようです。しかし、ケーブルテレビ会社が提供するアナログ放送のサービスは、おそらく日本と同じ『デジアナ変換』という手法をとって、現時点では期限を切ることなく、「暫定的に」(provisoirement)継続されるということが、この回答からうかがえます。

ケーブルテレビ会社がアナログ放送を終了してしまえば、テレビを受信するために「デジタルテレビの購入とアナログテレビの廃棄」あるいは「チューナーの買い増しとその接続」といった、決して少なくない負荷が多数の国民に一度に課せられることになります。日々の情報源としても、ささやかな娯楽の源としても、非常時のインフラとしての側面もあるテレビ放送が、デジタル化の急激なる強行によってその受信機会の平等性を失う可能性があるとしたら、これを国策として推進するのはいささか乱暴…フランス政府にはそんな考えもあるのかもしれません。それが、アナログ停波の日を明記できない理由ではないかと推測されます。

となると、「一気にテレビ買い替え需要を喚起!」「それでいて古いテレビのリサイクル代金もしっかり頂く!」などという手法を採択できる国とは、一体どのような国なのでしょうか。よっほど国民に富があまねく行き届いている金持ち国家でないと、このようなこと自体が実現は困難ということでしょうか。それとも、みんなが相当な無理を強いられているとみるべきなのでしょうか。少なくとも、移民も明らかに多く、貧富の差もこれまた目に見える形で存在するフランスにおいて、ある日突然こんなことを強要されれば、間違いなく暴動が起きるでしょう。その上、まだ使えるものを捨てるという一点だけを見ても、ヨーロッパに多い環境団体が黙ってはいないでしょう。だからこそ、「今使える受信機は全てそのまま使い続けて良い」(Vous continuerez donc à recevoir normalement vos chaînes actuelles sans changer d’équipement)という一文があるのでしょうし(おそらく”壊れるまで”?)、この一文がなかったら、これまた濃厚に暴動の原因となりかねないと推測します。

デジタル化の号令のかけ方ひとつとっても、そこにはそれぞれのお国事情が反映されているようです。次回は、私の住むドイツを例にあげて説明したいと思います。


<参考サイト>
Quand la diffusion en analogique doit-elle s’arrêter? - numericable.fr -
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