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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2011/04/29

緊急寄稿(7)…ブロックされたハリウッド映画『HEREAFTER』

前回までは、日本で起きた大災害である東北地方太平洋沖地震が他国であるドイツに及ぼした数々の異変について述べてきました。今回は、ドイツから日本へのフライト移動の際に起きた異変についてご紹介したいと思います。

 

震災から3日後となる3月14日、このようなニュースが流れました。

 

【東日本大震災】津波描いた映画「ヒア アフター」の上映中止(MSN産経ニュース)

「ヒア アフター」とは、震災当時全国公開中だったアメリカ映画、クリント・イーストウッド監督作品『HEREAFTER』(配給・ワーナーブラザーズ)のことで、その冒頭部に2004年のスマトラ沖地震および大津波の描写があります。東北地方の津波災害の直後という状況に鑑み、この映画は3月15日より上映中止となりました。なお、公開前だった松竹配給の中国映画「唐山大地震 想い続けた32年」もまた、公開延期となったと報じられています。

 

この『HEREAFTER』、実は3月上旬に欧州に戻る飛行機内で観ることができました。『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)の海外ロケから日本に帰国してわずか3日後のフライトという強行軍でしたが、その全日空便のシートプログラムの目玉作品だったのが、このクリント・イーストウッドの最新作でした。ストーリーは3人の人物を軸に進んでいきます。2004年のスマトラ沖大地震後の大津波という天災を生き延びたフランス人の女性ニュースキャスター、2005年のロンドン地下鉄同時爆破事件の車両に乗り損ねたことで間一髪難を逃れたイギリス人少年、そして死者と対話ができるというアメリカ人霊能者です。何の関わりも接点もないはずの三つの人生が、微妙な絡まりを見せつつ一つのストーリーを紡いでいくという不思議な縁を、パリ・ロンドン・サンフランシスコという遠く離れた三大都市のロケを織り交ぜつつ大変丹念に描写しています。

 

ただ、東洋人の死生観と西洋人の死生観は元々違いがあります。例えば、「死後の世界」「死者との対話」「最愛の人に先立たれ者の生き方」といった東洋的な死生観をふんだんに盛り込んだ『シックス・センス』(1999)の成功で知られるM・ナイト・シャマラン監督は、インド系アメリカ人です。そのルーツが『シックス・センス』という作品に色濃く影響していると、監督自身が語っています。なお、同監督の作品には『アンブレイカブル』(2000年)もあります。ブルース・ウィリス扮する主人公が、131名もの乗客の命を奪う大惨事となった列車事故の中でただ一人、かすり傷ひとつ負わずに助かった…というシーンから進行していく話です。ナイト・シャマラン監督作品を一通り見ているためか、イーストウッド監督には大変申し訳ないのですが、私にとっての『HEREAFTER』は”『シックス・センス』と『アンブレイカブル』を足して2で割ったような話”という第一印象であったことは否めません。

 

それが、パリで日本の大震災の第一報を目にすることになります。このとき、フランスの朝のニュース番組が映し出した津波の映像こそ、「片やCG、片や残酷な現実」という相違点こそあれども、私にとってはまさに数日前に見たばかりの映画の” デジャビュ”(”deja vu”: 既視感)でありました。そして、それが現実なのか夢なのかさえ一瞬わからなくなるほどに目や耳を疑う報道の奥に、クリント・イーストウッド作品の迫力のある描写や真摯なメッセージが、急激に妙なまでの説得力をもって胸に訴えかけはじめたのでした。このような震災が現実のものになるとは想像だにできなかったとはいえ、あのときあの映画をもっと真剣に見ておけば良かったと後悔したと同時に、この映画は日本へ帰国する便ではおそらく上映不可能となっているだろう…とも推測していました。

 

そして、あの悲惨な震災から二週間後、日本に再帰国すべく全日空便に搭乗し、この想像もまた現実のものとなりました。『HEREAFTER』の機内上映を選択する画面に、こんな異変が起きていたのです。

 

   


 

前回の往路のフライトでは、この画面で右端の「PLAY」をクリックしたら上映がそのままスタートしたものでした。しかし、今回の復路のフライトで同様に「PLAY」をクリックするところ、以下のような表示があらわれたのです。

 

   


 

「この映画はブロックされています。他のプログラムをお選び下さい」という注意書きが表示されました。それもそのはずです。この映画は冒頭部にスマトラ大地震による津波の再現映像があり、これは東日本大震災における「現実の津波」の衝撃がまだ記憶に新しいこの時期に、上映はふさわしくないとと判断されたのでしょう。

 

かくして、他の映画の選択画面をみていったのですが、それについては来週に続きます。

 

<参考サイト>

Wikipedia – Hereafter (film)


Wikipedia – M. Night Shyamalan


映画.com - イーストウッド「ヒア アフター」で異例のCG使用

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