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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2011/03/11

大食い予選に見る大食いの資質(6)…「人に見られる職業」(グラビア・歌手etc)

『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)は先日本選を終了し、本年の新女王が無事に決定しました。その模様は、4月3日(日)のオンエアを予定しておりますので、是非ご期待下さい。番組スタッフも今頃は寝食を忘れて(?)編集作業に余念がないことと推察いたします。

さて、先週までは、そんな「本選」とは異なる「予選」「新人戦」に登場する選手には、一定の傾向があるのではないかと考察してきました。当番組の本選上位陣のような常人離れした大食いパーフォーマンスを披露する”プロ級大食い”とは異なる、”素人っぽい大食い”は確かに存在し、両者との間には移行関係がある場合もあれば、無い場合もある…最近私はそう実感しています。そして、何となくではありますが、大食いの”素人”から”プロ”へと進化するタイプに多いのは「元・肥満」「ダイエット」、そして、大食いとしてはどちらかというと永続しないタイプが「妊娠・出産」「授乳」というのが、これまでのロケを見てきた私の率直な印象であります。しかし、どんな”プロ”にも”素人”だった時代はあるはずです。そして、”プロ”に移行しやすいタイプの”素人”と、そうでないタイプがあっても不思議ではありません。

となると、そんな”素人大食い”から”プロ級大食い”へと進化する人とは、果たしてどういう人なのでしょうか?というのが、今週から考えるテーマです。そんな「進化」を遂げる人たちの条件として、私が真っ先に考えるキーワードは、「人に見られる職業」です。

当番組の予選にを見ていると、「グラビアアイドル」「タレントの卵」「歌手」といった人が頻繁に登場します。厳密に言えば、例えば大食いタレントの「ギャル曽根」こと曽根菜津子さんは、当番組に参加したばかりの頃はタレントではありませんでしたし、当番組に一般人として初参加した後にタレント業にシフトした人は他にもいます。ただ、昨年秋の本選に参加を果たしたavex所属歌手である光上せあらさんは、当番組の予選に初参加した時点で既にタレントでした。また、当番組の予選に限れば、特段よく目につくのがグラビア系タレントです。

これには、日本独特のテレビ事情ないしタレント所属事務所の戦略も関係している可能性があります。海外でテレビを見るたびに私が痛感するのは、日本のテレビは「素人参加型番組」が随分減ったなぁ…ということです。大食いに限らず高校野球放送などについても言える事ですが、日本のテレビには表現上の制約が驚くほど多く、極端にクレームに過敏な構図も出来上がっていると聞きます。そのような状況では、リアクションの不確定な素人さんをテレビ局側が使いたくないというのも、あながち理解できない話ではありません。といっても、メディアがいかに多様化したとはいえ、テレビの影響力は未だに絶大です。しかし、ある程度の知名度がないと出演できない番組が多い日本では、無名の(ないしデビュー前の)タレントをテレビに出そうと思ったら、数少ない素人参加番組をターゲットにせざるを得ないのでしょう。ただし、デビュー前のグラビアアイドルを出す先が「NHKのど自慢」「アタック25」「新婚さんいらっしゃい」となると、売り出しに果たしてプラスになるのか疑問なのと、何よりも番組の特性上、参加が一回きりにならざるをえず、繰り返しの露出に結びつきません。となると、売り出そうとするタレントの卵がもし他人よりも多少なりとも多く食べる人であった場合、当番組の予選・新人戦はこの上なく貴重な存在と断言できるでしょう。

この構造が、「グラビアアイドル」「新人歌手」といった、露出機会をテレビに求めるタレントの卵たちの大食いの才能開花に拍車をかけているのではないか…そう感じたのは、昨年秋の男女混合戦で初の本選進出を果たした光上せあらさんの急成長を見てからでした。

それまで何度か地方予選・新人戦に登場していた彼女の場合、その出演が契機となって本業たる歌手としての仕事が大幅に増え、CDの売れ行きも伸びたそうです。そして、その右肩上がりの仕事と比例するように、彼女の大食い能力も右肩上がりにアップしていったのが、前回本選での大活躍でした。番組では、何度も彼女に叱咤激励の声が投げかけられていました。

「これに勝てばゴールデン進出!19時以降もテレビに映れるんだよ!」
「(本選で勝ち進んで)20時過ぎても映っているのと、1回戦で終わるのとでは、雲泥の差だよキミ!」

この光景を見て思ったものです。人に見られる職業ならではのプレッシャー、売れてナンボ、後に引けない一発勝負の土壇場で発揮される精神力…この辺が、大食い競技のエンターテインメント性との親和性の高さ、質的な近さにつながっているのではないか…特に、それが「体型の維持」ひいては「ダイエット」を至上命題とするグラビア系タレントだった場合はなおさら、大食い選手としての「進化」へと繋がりやすいのかもしれない、と。

ちなみに、ドイツではDSDS(Deutschland Sucht den Superstar)というオーディション番組がここ数年大変な盛り上がりを見せています。この番組はイギリスの『Pop Idol』のドイツ版で、日本で敢えて例えるなら、最も近いのはかつての『スター誕生』(日本テレビ、1971-1983)でしょうか。しかし、『スタ誕』のようなシンプルなフォーマットの「歌手の登竜門」は日本ではすっかり過去のものとなり、『AKB』にしろ『韓流』にしろ、タレントを売り出す手法が手の込んだものとなり、仕掛け色ばかりが濃くなっているように見えます。そんな中、芸能界を生き抜く取っ掛かりを『大食い』で掴もうとするタレントが続出するということは、他の受け皿が乏しいことの裏返しなのかもしれません。このあまりに日本的な現象は、この国の多様化かつ複雑化を極めたエンターテインメントの世界そのものの姿でもあるのでしょう。



<参考サイト>
Wikipedia - DSDS-
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